日々のことを徒然に

地域や仲間とのふれあいの中で何かを発信出来るよう学びます

芭蕉のドラマ

2011年01月26日 | この木
           

1年の間に植物は色々な姿を見せる。それは大方が子孫へつなぐための営みだ。桜、葉を落とし、小枝は寒風にさらされながら蕾を育てる。そして花を咲かせる。人はそれを待ち、寒さの遠ざかりを喜び、新しい芽吹きも喜ぶ。そんな1年を送る桜も幹は逞しく根を張っている。

葉が風に小さく引き裂かれ始めると寒さがやってくる。その色は瑞々しい緑から黒こけた茶色へと変わる。その色が濃くなるに従い、葉はちぎれ落ち、茎は腐食したようにその背丈が次第に低くなりはじめ消える。そこにその植物が在ったことを知らなければ、見向きもされない。それは芭蕉。

冬らしい風が緩み始めると、季節の移りを待っていたかのように白っぽい緑色をした新しい芽が枯れ草の間に見え始める。その育ちぶりは驚異的で、数日も見なければそこらあたりに植えたように生えそろう。

ここ何年か芭蕉が繰り返す、枯れと生を見ていて、自然に備わったとはいえ1年1年を懸命に生きている健気な姿に、学ぶものを感じる。

昔は茎から繊維を採り、芭蕉布が織られ紙の原料にしたという。その葉をとって習字をしたともいう。風に破れやすいため庭忌草として敬遠される芭蕉だが、1年の間の変わり身にはドラマを感じる。

(写真:やがて茎も見えなくなる枯芭蕉)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする