
子どものころのおやつ、サツマ芋の思いでは多い。ふかし芋、干し芋、焼き芋と品も形も同じだがそれぞれちがった美味さだった。特に干し芋はふかした芋を厚めに切り天日干しする。何日かするとしわしわの厚い煎餅状のあめ色に変わる。この甘みはたまらなかった。
寒くなると祖父は学校から帰る時間を見計らっていたかのかように、焚き火をしてその中へ芋を隠していた。隠しても隠しきれるものではない。匂いといつものことでアツアツのそれは、夕方までの遊びのエネルギーに変わった。
スーパーでも焼き芋を販売している。店中とはいわないが釜の周辺ではいい匂いがする。焼き上がりの予定時間も掲示してある。売れ行き好調なのだろう。サツマ芋の種類は多い、好みもあろうが焼き芋には相応しいのはどれだろう。
菜園を囲む垣に干からびたサツマ芋の蔓があちこちと掛かっている。役目を終えた蔓はどうなるのだろう。市場でサツマ芋が品不足、という報道を読んだ。戦後すぐならいざ知らず、今にして不思議に思う。干からびた蔓は風に揺られ、がさがさと騒いでいる。
(写真:美味しい焼き芋の味を知らない干からびた蔓)