保護猫と暮らす隠居爺の“自然農法”野菜作りとスキーの日記

5~11月は自然農法による自給用野菜作りと冬に備えた体力作り、12~4月はスキーに明け暮れ、保護猫活動は1年中無休です。

“想定外”について考える…②自動車を造る場合

2011年05月19日 | 世の中のあんなコト、こんな事

前回、工学的なモノ作りにおける
想定、事象、対策の5つのシナリオをお話しました。

A)事象を想定し、影響を評価し、対策を取る。
B)事象を想定し、影響を評価するが十分な対策は諦める。
C)事象を想定するが、影響を十分に評価できないため
最大限の安全係数をもって対策とみなす。
D)事象を想定するが、影響を評価できないため対策も取られない。
E)事象を想定せず、対策も取られない。

具体的に、自動車を製造するケースに当てはめて見ると
想定される事象で最も代表的なものは衝突事故でしょう。

自動車の設計には、衝突時を想定したさまざまな対策が取られていて
シートベルト、エアバッグを筆頭に
ボディの壊れ方の工夫、エンジン等の重量物の落下などなど
おびただしい数の項目が検討され、実際の衝突実験を通して検証され
その結果が設計に活かされていきます。

人体についてもダミーと呼ばれる高価な人形を
使って肉体的損傷が評価されます。

この時に最も重要な前提は
対策を取るべき異常な条件と事象の悪影響の範囲、つまり
時速何km/hまでの全面あるいはオフセット衝突であれば
どの部分が守られ、どの部分が守られないかということが
設計段階で明らかになっていることです。

いかに衝突時の対策が施されていても
時速150km/hでコンクリート壁に正面衝突した場合に
搭乗者の肉体が損傷を受けないという設計は、多分
一般消費者向けにはどこのメーカーでも行われていないはずで
これこそが想定外なのです。

これは、その対策のためのコストがあまりに膨大で
ほとんど誰も買うことができない
安全装置の塊のような代物になってしまうからに他なりません。

そのため、このような事故の安全性は諦めてください、という
暗黙の了解の下に自動車は設計され、売られ
そして消費者に買われているわけです。

これは上記シナリオのB)に該当します。  

では、時速40km/hで対向車とオフセット衝突をした場合はどうでしょう?

この場合、かなりの確率で搭乗者の命が守られる設計になっているのは
そのためのコストと長年の技術開発のおかげで
一般消費者が負担できる程度に抑えられているからで
これは上記シナリオのA)に該当します。 

世の中のほとんどのモノが作り易いのは
想定する条件下での事象及び影響を実験により検証、評価できることで
これを公表すれば、消費者に想定外を知ってもらうことにもなるからです。

自動車については、スピードを上げると衝突の危険が増すという
想定する条件とそれに起因する事象との関係が明確で
その物的、人的被害(悪影響)は周知の事実になっているのですから
早く着きたい効用を事故の確率が上がるリスクに優先した本人が
命と引き換えにすることを了解している、ということになるでしょう。

(続く)

 

 

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