つまりは・・・

2021-02-13 | 【断想】音楽

 FLY ME TO THE MOON:月へ飛ぶ思い
 渡辺貞夫が、アルト・サックスで奏でる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」を時折、聞く。何十年も以前からだ。
 ヴォーカルで、トニー・ベネットのを聞く。
 でも、もともとの歌詞は、次のような意のもので、女性の心情をあらわしている。
 In other words と言う言い方、女性的じゃないかな。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 わたしをあの月まで連れて行って
 燦めく星たちのあいだで遊ばせて
 木星や火星の春はどんなようすなの
 ね こういうことなのよ わたしの手をとって
 そうよ こういうことなの わたしにキスして 
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 それで、美形で、女優でもあるジュリー・ロンドンが歌うものを聞く。
  やっぱり、女性が歌うのがいい。


ムーン・リバー:Moon River

2021-02-13 | 【断想】音楽

 アンディー・ウィリアムスで。
 ニッキ・パロットで。
 サラ・ヴォーンで。
 映画「ティファニーで朝食を」の中で、オードリー・ヘップバーンが歌った「ムーン・リバー」を聞いた。
 Moon River, wider than a mile
 ムーン・リバーは、とっても広い川
 その川を渡ってみせるわ
 あなたと一緒につかむの
 虹の向こうの夢を
 そんなような歌詞をした歌。


胸しめつけられる旅へ

2021-02-11 | 【断想】音楽

 センチメンタル・ジャーニー:Sentimenntal Journey
 作詞:バド・クリーン
 作曲:レス・ブラウン&エンジャミン・ホーマー
 1944年公開の同名映画の主題歌であり、ドリス・デイが歌って大ヒットした。
 「センチメンタル・ジャーニー」と言うタイトルから、恋に破れ、悲しみにうちひしがれた心を癒しに出かける一人旅のようにとらえる人がいるかも知れない。
 しかし、この歌は、そうではない。
 作られたのが1944年、第二次世界大戦中である。
 行き先はホームなのだ。
 戦地を渡り歩いたあと、故郷に向かう旅程につけるようになった。
 懐かしさに胸がしめつけられる。
 さあ、出かけようと言う、望郷の歌なのだ。
 ジャッキー・マクリーンが、サックスを吹く「センチメンタル・ジャーニー」を聞いた。
 本命、ドリス・デイの歌うのを聞いた。
 そして、ジュリー・ロンドンの歌で。


“JAZZING”

2021-02-11 | 読書

 先般、新宿のディスク・ユニオンに書籍コーナーがあることを知った。
 そこで、好みの本を見つけた。
 「山本容子のジャズ絵本・JAZZING」なるほぼA4版の本。
 2006年、講談社からの出版である。
 ジャズ・ヴォーカルのスタンダード・ナンバー24曲が、1曲2ページで取り上げられている。
 見開きで、左が見て楽しくなる山本容子の絵(版画)、右が、その曲にまつわるエッセイになっている。絵は、曲にちなんで、描かれている。
 くつろぎのひとときに、絵と音楽、いいですよ、いかがですか、人に見せたくなる本だ。
 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン、センチメンタル・ジャーニー、マイ・ファニー・バレンタイン、セプテンバー・ソング、オータム・リーブス、サマー・タイム・・・・このブログでも一言ふれた曲を改めて聞くことになる。
 谷川賢作氏のプロデュースになるCDが付録になっていて、本の24曲の演奏を聞くことも出来る。
 さて、「センチメンタル・ジャーニー」をもう一度。
 山本氏は、この曲を歌う時、ドリス・ディに変身し、時に、マリリン・モンロー風になって色気を出して、失敗するそうだ。


ハッサンの夢

2021-02-08 | 【断想】音楽

 リー・モーガンの「LEE MORGAN Vol.3」(BLUE NOTE)から「ハッサンの夢:HASAAN' DREAM」。
 このタイトル、「アラビアの宮殿で、宝物などを見た夜、少年がみた夢」と言うことである。
 1957年の録音。
 若くして人気を博し、売れっ子になって、愛憎沙汰で、33歳のとき、銃弾であの世行きとなったリー・モーガンのトランペットを。
 ほんとうに輪郭明瞭なトランペットの音。
 テナー・サックスはベニー・ゴルソン、このアルバムは、ゴルソンの作曲・編曲で出来ている。
 アラビアの雰囲気を出すためにあれこれやっている曲。


ラスト・デイト:LAST DATE

2021-02-07 | 【断想】音楽

 エリック・ドルフィーは、1928年にロサンゼルスに生まれ、1964年にドイツのベルリンで亡くなっている。
 36年の生涯だった。
 特別の才能を持ったジャズメンのひとりだ。
 ほぼ同世代で一般におおいに評価されているジョン・コルトレーンより、桁違いに魅力を感じる。
 コルトレーンは、音楽的にはなにがしかの功績を残したと言っていいのだろうが、人間的には凡庸で、燦めくものがなかったと言えるのでなかろうか。
 ドルフィーは、ちょっと表現が難しいが、独特の世界を展開させた。
 精神的に高いとか低いとか言うのとは別次元で。
 際立つものに接したくて、1964年6月に吹き込まれた「ラスト・デイト:LAST DATE」(フォンタナ-EmArCy)。
 この月の29日に死亡。
 エリック・ドルフィーは、生前には、余り評価されることはなく、経済的にも苦しかったそうだ。
 人って、こういうことよくある。
 人の才能と社会的評価は一致しない。


"戦闘の歌"

2021-02-07 | 【断想】音楽

 生命力がみなぎる曲を。
 チャールズ・ミンガスの「ミンガス・アー・ウム:MINGUS AH UM」の中の「フォーバス知事の寓話」。
 ミンガスの反骨精神が横溢した勢いある曲だ。
 1957年に「リトルロック事件」。
 1958年に作曲。
 1959年に、コロムビアから「ミンガス・ア・ウム」
 同じく、チャールズ・ミンガスの「ザ・クラウン:THE CLOWN:道化師」(1957 ATLANTIC)の中の「ハイチ人の戦闘の歌」。
 素晴らしい。
 好きだ。


イン・ローゼンハイム

2021-02-07 | 【断想】音楽

 チェット・ベイカーの最期の年、ドイツのローゼンハイムでのライブ。
 Chet Baker's last recording as quatet
 1988.4.17,  Live in ROSENHEIM
 TIMELESS RECORDS
 Chet Baker(tp,vo,p)
 Nicola Stilo(g,fl)
 Marc Abrams(b)
 Luca Flores(p)
 1.Funk in deep freeze
 2.I'm a fool to want you
 3.Portrait in black and white
 4.In a sentimental mood
 5.If I should lose you
 6.Arborway
 みんな、いきいきと熱演という感じ。
 いささか気負い気味になっているくらい。
 チェット・ベイカーの音に、死の影はない。


“お気に入りの歌”

2021-02-06 | 【断想】音楽

 The Last Great Concert Vol.1-My Favourite Songs(1988.4.28 enja)
  Chet Baker:チェット・ベイカー(tp,vo)
 Herb Geller:ハーブ・ゲラー(as)
 Wallter Norris:ウォルター・ノリス(p)
 NDR Big Band & Radio Symphony Hannover
  1988年、チェット・ベイカーが死を迎えた年に録音されたライブ・アルバム。
 死の2週間前の ラスト・コンサートである。
 enjiからのもので、ビッグ・バンド、オケをバックにしている。
 同じレーベルからの「ザ・レガシーvol.1~5」(1978)と似ている。
 さて、お気に入りの歌とは。
 1.オール・ブルース
 2.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
 3.ウェル・ユー・ニードント
 4.サマー・タイム
 5.イン・ユア・オウン・スウィート・アウェイ
 6.ジャンゴ
 7.アイ・フォールイン・ラブ・トゥー・イージリー
 ここのところ、チェット・ベイカーをよく聞いている。
 ビック・バンドを従えての演奏、チェット・ベイカーの静かな魅力のためには、あまりいいとは思えないが。
 小川隆夫著「ジャズメン死亡診断書」(2017 シンコー・ミュージック・エンタテイメント)には、チェット・ベイカーの死因について、「麻薬のバッド・トリップによる事故死」と書いてある。2階の窓からの「転落死」と言われても、それだけでは、自殺かなと思ってしまう。だから、小川氏の書き方、いいなと思った。
 自殺の場合とは、心の中が、まるっきり違うのだから。


この世のなごり:レガシー

2021-02-06 | 【断想】音楽

 チェット・ベイカーは、休業状態にあったが、1970年代半ばに、ジャズ・シーンにカムバック。
 ジェリー・マリガンやジム・ホールと演奏の機会を持ち、その後、ヨーロッパへ。
  1978年、ドイツのレーベルENJA:enja(European New Jazz)で録音したのが、「The Legacy vol.1~5」として、売られている。
 vol.4は、先日聞いた「クレイジー・ムーン」。
 今夜は、vol.1の「レガシー」を聞こう。ライブ録音である。
 「レガシー」は、遺産とか名残と言う意味だ。
 なごり雪と言う場合の「なごり」と解すれば、詩情も。
 演奏は、以下の4人とNDRビッグ・バンド。
 チェット・ベイカー(tp)
 ウォルター・ノリス(p)
 ハーブ・ゲラー(b)
 アレックス・リール(ds)
 1.HERE'S THAT RAINY DAY:港町に雨が降る雰囲気。洒落ている。
 2.HOW DEEP IS THE OCEAN
 3.MISTER B
 4.IN YOUR OWN SWEET WAY
 5.ALL OF YOU
 6.DOLPHIN DANCE
 7.LOOK FOR THE SILVER LINING
 8.DJANGO
 9.ALL BLUES
 このアルバムには、ウエスト・コーストの明るい光と風がある。
 チェット・ベイカーは、この時、50歳くらいだが、まだまだ若い感覚を失っていない。
 気持ちよく聞ける。
 持って生まれたものだな。
 チェット・ベイカーは、終生、優しい詩心を持っていた。
 質はちょっと違うが、アルバート・アイラーにも、それを感じる。
 エレクトリックな共同演奏になることはなかった。
 ジャズ本来のスタイルからはずれることはなかった。
 あくまで、「個」であるのだ。
 人の魅力なのだ。
 このアルバムでは、ビック・バンドとやっているが、メインは、チェット・ベイカーのトランペットなのだ。
 トランペット協奏曲だ。
 チェット・ベイカーは、麻薬にとりつかれていたが、リリシズムを失うことはなかった。


九月の歌:SEPTEMBER SONG

2021-02-06 | 【断想】音楽

 チェット・ベイカーが歌い、トランペットを奏でる「セプテンバー・ソング」を聞いた。
 1983年、パリのニューモーニング・クラブで演奏され、Marshmallow Recordsからリリースされたアルバム「セプテンバー・ソング:SEPTEMBER SONG」(CD)で。
 ピアノはデューク・ジョーダン、ベースはジェスパー・ランドガードのドラムレス・トリオでの演奏。
 チェット・ベイカー54歳、死の5年前である。
 「セプテンバー・ソング」は、もともとは、ブロードウェイのミュージカル「ニッカポッカ・ホリディ」の中で歌われたもの。
 ミュージカルで役を演じたウォルター・ヒューストンが歌っている。
 作曲は、「三文オペラ」で有名なクルト・ヴァイル、作詞は、マックスウェル・アンダーソンである。
 「ニッカポッカ・ホリディ」は、1938年から1939年に上演され、1040年に、映画化もされれいる。
 「セプテンバー・ソング」が、ひろく知られるようになったのは、1950年10月に公開されたアメリカ映画「旅愁:September Affair」のテーマ・ソングとして使われてからとなる。
  「旅愁」は、ウィリアム・ディターレ監督、ジョン・フォンティス、ジョゼフ・コットンの二人が主役を演じる恋愛映画。旅客機に乗り合わせたピアニストの女性と妻子ある男性の恋である。不倫ものと言っていいのだろう。
 この映画の中で歌われた「セプテンバー・ソング」は、後に、ビング・クロスビーやフランク・シナトラ他に歌われ、人気を博した。
 この歌の詞、春から秋、冬への季節のめぐりと人生の歩みが重ね合わされて感じられる。
 この世の黄昏時の哀感、将来に希望がもてる若いときから、生きてある日が残り少なくなってきた老年の心境が歌われているように感じられる。
 クールでハンサムともてはやされたチェット・ベイカーが、ドラッグのせいが強いのだろうが、痩せて、深い皺がきざまれた顔で歌う「セプテンバー・ソング」は、ひとしおである。
 歌っている詞は、もとのものの全てではない。ある意味、余計な部分カットされている。
 以下、チェット・ベイカーが歌っている部分の英文と和訳。
 和訳は、私の思いを入れたもの。

 Oh, it's a long,long while from May to December
  But the days grow short
 When you reach September
  When the autumn weather turns the leanes to flame
 One hasn't bot time for the waiting game
 Oh, the days dwindle down to a precious few
 September,
 November
 And these few precious days
 I'll spend with you
 These precious days
 I'll spend with you

 五月から十二月への日々はたっぷりとある
 でも 九月ともなると残された日々は少なくなる
 秋には木々の葉は色づき枯れる
 わたしも枯れる
 「明日があるさ ゆっくりやればいいさ」
 なんて言えなくなってしまう
 残された日々はわずかに
 枯葉の九月
 そして 枯れ果てた十一月に
 かけがえのない日々
 君と過ごそうよ
 このかけがえのない日々を
 君と過ごそうよ


マイ・ファニー・バレンタイン

2021-02-01 | 【樹木】エッセイ

 新型コロナウィルスのせいばかりではないが、美女と酒を酌み交わす機会が少なくなってしまった。これは、まぎれもない不幸であるが、おうち時間が長くなったことによって得たものもある。
 かつて集めたモダン・ジャズのLP、CDを片っ端から聞き直した。それが契機で、これまで聞くことのなかったミュージシャンにも関心が広まった。
 広まったのは、年齢のせいが大きいと思うが、激しさや奇抜さがなく、静かで、癒やし系のジャンル。
 その中で、ジェリー・マリガンの「ナイト・ライツ」がなんとも気持ちを落ち着けてくれ、今では、就寝前に聞くようになった。
 もう一曲、チェット・ベイカーのトランペットによる「マイ・ファニー・バレンタイン」も静かなムードでよく聞く。
●あなた大好き!
 「マイ・ファニー・バレンタイン」は、もとは「ベイブス・イン・アームス」と言うミュージカルの中の歌で、一九三七年に作詞・作曲されている。
 その後、ジャズのスタンダード・ナンバーともなり、多くのミュージシャンに歌われ、演奏されている。
 「わたしの彼は、特別カッコいいわけじゃないけど、大好きよ」と言うような歌詞で、女性から男性に向けた恋歌なのだ。
 世の中、醜男、凶悪な男にも寄り添う女がいるもの、女性の優しさははかり知れない
  ヴォーカルでは、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンのが有名である。でも、出色は、トランペット奏者のチェット・ベイカーがやさしい声で歌うもの。シャイな青年のおもむきで、男だって魅せられてしまうから、女性はもちろんと言うところだろう。
 だけど、人の声が煩わしいこともある。そんな時は、彼が、ジェリー・マリガンのバリトン・サックスとともにトランペットを奏でるのを聞くとよい。どこかさみしげな音に、思わずひきこまれてしまう。これが夜の愛聴盤。
●恋の予感
 また、この曲は、マイルス・ディビスのトランペットのも素晴らしい。
 マイルスには、曲名そのものをアルバム名にしたのがあるが、わたしは一九五六年の「クッキン」なるアルバムに収められたのが好きだ。ミュートを効かし、孤愁ただよう絶品である。
 ひとりさみしく歩く夜の道だけど、それだけじゃない、ほのかに芽生えた恋の予感・・・そんな思いを誘う音である。
 その他に、ピアノのビル・エヴァンスとギターのジム・ホールによる「アンダー・カレント」と言うアルバムに収められたのが定評がある。
 だけどこれは、二人のインタープレイの凄さに圧倒されて、曲自体を愉しむには向いていないように感じる。
 曲そのものを楽しむには、オーソドックスな演奏で、ジャズの愉悦にあふれているピアノのエディ・ヒギンズのがいい。
 ヴィーナス・レコードからの発売で、そのジャケットはどれも、美女をモデルにしたもの。ランジェリーが透けていて、なかなかエロチック、つい見つめてしまうのも。
 新型コロナウイルスは、新しい愉しみももたらしてくれた次第です。

(月刊誌「改革者」2021年1月号掲載)