チェット・ベイカーが歌い、トランペットを奏でる「セプテンバー・ソング」を聞いた。
1983年、パリのニューモーニング・クラブで演奏され、Marshmallow Recordsからリリースされたアルバム「セプテンバー・ソング:SEPTEMBER SONG」(CD)で。
ピアノはデューク・ジョーダン、ベースはジェスパー・ランドガードのドラムレス・トリオでの演奏。
チェット・ベイカー54歳、死の5年前である。
「セプテンバー・ソング」は、もともとは、ブロードウェイのミュージカル「ニッカポッカ・ホリディ」の中で歌われたもの。
ミュージカルで役を演じたウォルター・ヒューストンが歌っている。
作曲は、「三文オペラ」で有名なクルト・ヴァイル、作詞は、マックスウェル・アンダーソンである。
「ニッカポッカ・ホリディ」は、1938年から1939年に上演され、1040年に、映画化もされれいる。
「セプテンバー・ソング」が、ひろく知られるようになったのは、1950年10月に公開されたアメリカ映画「旅愁:September Affair」のテーマ・ソングとして使われてからとなる。
「旅愁」は、ウィリアム・ディターレ監督、ジョン・フォンティス、ジョゼフ・コットンの二人が主役を演じる恋愛映画。旅客機に乗り合わせたピアニストの女性と妻子ある男性の恋である。不倫ものと言っていいのだろう。
この映画の中で歌われた「セプテンバー・ソング」は、後に、ビング・クロスビーやフランク・シナトラ他に歌われ、人気を博した。
この歌の詞、春から秋、冬への季節のめぐりと人生の歩みが重ね合わされて感じられる。
この世の黄昏時の哀感、将来に希望がもてる若いときから、生きてある日が残り少なくなってきた老年の心境が歌われているように感じられる。
クールでハンサムともてはやされたチェット・ベイカーが、ドラッグのせいが強いのだろうが、痩せて、深い皺がきざまれた顔で歌う「セプテンバー・ソング」は、ひとしおである。
歌っている詞は、もとのものの全てではない。ある意味、余計な部分カットされている。
以下、チェット・ベイカーが歌っている部分の英文と和訳。
和訳は、私の思いを入れたもの。
Oh, it's a long,long while from May to December
But the days grow short
When you reach September
When the autumn weather turns the leanes to flame
One hasn't bot time for the waiting game
Oh, the days dwindle down to a precious few
September,
November
And these few precious days
I'll spend with you
These precious days
I'll spend with you
五月から十二月への日々はたっぷりとある
でも 九月ともなると残された日々は少なくなる
秋には木々の葉は色づき枯れる
わたしも枯れる
「明日があるさ ゆっくりやればいいさ」
なんて言えなくなってしまう
残された日々はわずかに
枯葉の九月
そして 枯れ果てた十一月に
かけがえのない日々
君と過ごそうよ
このかけがえのない日々を
君と過ごそうよ
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