肩甲骨の骨折でもっとも多いのは、生産地では関節窩上結節骨折だ(左)。
肩先を蹴られたり、牧柵にぶつかったりして折れるとも考えられるが、この結節には強大な上腕二頭筋がついていて下へ引っ張られているので、その力で引きちぎられるようにして折れるのかもしれない。
この骨折線の部分は若い馬では骨が成長する部分、成長板(化骨線、骨端板ともいう)があるので弱いのだ。
最初はひどい跛行を示す。
しかし、1週間単位で跛行はだんだん良くなる。
ほとんど跛行がわからなくなった馬も知っている。
しかし・・・・・・・肩関節の先に大きな骨片が変位したまま残るので、肩が完全には前へ出なくなる。
関節面が壊れているので、調教するとまた跛行を始めたりすることもある。
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8字状のワイヤーで縛り、スクリューを入れて固定した報告(左)。
しかし、肩甲骨は薄い板のような骨でスクリューを正しく入れるのは難しい。
また、ちゃんと骨髄がある。だから、圧迫スクリュー法 lag screw を入れても骨片を海綿骨へ引っ張ることになり、強度には不安がある。
ワイヤーは・・・・・・この骨片を引っ張る筋肉の力よりはるかに弱い。
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骨片を整復固定することを優先して、骨片を下へ引っ張る腱を切って手術する方法も
報告されている。
治癒後は障害は残らなかったとされている。
この報告ではスクリューで固定している(右)。
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スクリューを入れるだけのように思われるかもしれないが、肩の前には大きな筋肉があり、それをどけておいて手術するだけでもたいへんだ。
それでも骨をむき出しにして手術するのは難しいので、ドリルで孔をあけ、デプスゲージで深さを測り、骨から突き出ていないことを確認して、タップでねじ山を切って、スクリューを差し込んで、骨折線が閉じるように締める。ということをするのはたいへん難しい。
ドリル孔がどこにあいているのかわからなくなる。
以前やった症例では、完全にスクリューで圧迫することはできず、数週間後には固定は崩れてしまった。
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私は今は、T字プレートを使って固定する方法が良いのではないかと考えている(左)。
骨折線はほぼ閉じているし、関節面も再建されている。
ただ、骨折してから日数が経っていると骨片を整復するために上腕二頭筋の腱を切断しなければならない。
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突然、ひどい肩跛行を示した若馬を診る獣医師にお願いしたい。
その日のうちか、翌日にはX線撮影して欲しい。
全身麻酔して倒馬する必要はない。
患肢の肩の外側にカセットを当てる。患肢を前へ伸ばす。反対側、すなわち肩甲骨の内側から狙い定めて肩関節だけを撮影する。
それでもX線量が不足しそうなら、少し頭(前)よりから撮っても良い。
肩甲骨関節窩上結節の骨折かどうかだけわかれば良い。
骨折して数日のうちに手術すれば競走馬にできる可能性も大いにあると考えている。
今日通知が来ましたので、今の所、私出席予定なのですが、もしいらっしゃるようでしたら、遠くからお姿拝見させて頂きますm(__)m
はい。行きます。よろしければ声をかけてください。