馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

尺骨骨折プレート固定は仰臥でナローで

2023-12-25 | 整形外科

当歳馬の尺骨骨折が来院。

発症からもう4-5日経っている。

最初はひどい跛行だったが、だいぶ痛みがとれたようで患肢も使って歩いてきた。

          ー

8孔DCPで固定。

当歳といってももう300kg近くあるので、しっかりした固定をする必要がある。

尺骨は薄い骨で、成馬でも尾側にはナロープレートしか乗らない。

ナロープレートは成人男性の腕力で撓むが、馬の上腕三頭筋はわれわれの腕の数倍の太さがある。

本当は成馬の尺骨骨折ではナローは強度不足だ。

          ー

牛は尺骨骨折はまれ。

しかし、私は1例経験がある

Farm Animal Surgery は牛の骨折治療について詳述されている良い本だが、

牛の尺骨骨折を固定したプレートが折れてしまった症例がなんと2箇所に紹介されている。

折れてしまったので、2枚重ねで固定しなおした症例だ。

これは良い方法ではなく、ナロープレートでは強度が足らなかったのなら、

尺骨の尾側と、外側にもプレートを当てて、ダブルプレート固定するのが良いのだろうと思う。

         ー

うちでは以前から尺骨骨折のプレート固定手術も仰臥位で行っている。

その方がアプローチも容易で、

X線撮影もしやすく、

手術中にプレートを落っことす心配もなく、

術者もドリルを扱い易く、

プレートを良い位置に乗せやすい、と考えている。

           ー

尺骨骨折のプレート固定手術では、スクリューを良い方向へ入れるのが難しい。

薄い尺骨からスクリューがはみ出さないように、はみ出していないかどうか、尺骨の内側外側を鈍性に剥離し指を入れることができる。

必要なときには、anconeal processまで指を入れることも可能。

           ー

何を経験してきて

何を考えてやって来て

何を学んできたか

伝え残していきたいと思っている

           ///////////

私の新しいトレーニングスペース。

なかなか好いよ。

もっと乳酸が溜まるほど追い込まないとスノボには筋力不足だとわかった。

耐乳酸トレーニングってやつだね。

 

 



6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (はとぽっけ)
2023-12-25 20:23:41
 尺骨骨折のプレート固定手術の仰臥位は牽引の整復への影響はあまり考慮されないように思うのですが、その点では有意性はないものでしょうか?

 なんかまたストイックに取り組みそうなの来ましたね。
 骨粗鬆症対策にはルームランナーかな?と検討中。
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2023-12-26 04:42:46
尺骨は上腕三頭筋に牽引されるための骨ですので、骨折を整復するためには上腕三頭筋をゆるめるポジション、つまり肘を体幹へと引き上げた状態を創るのが良いです。しかし、それだと尺骨頭は胸の横へ来てしまい、手術しにくいし、胸と重ねずにX線撮影できません。頭側遠位へ、骨折線が開かない程度に牽引して手術するのが好ましいと考えています。このポジションも横臥ではできにくいです。

ルームランナーも好いですね。縄跳び、トランポリンはもっと骨量を維持してくれると思いますがどうですか?
返信する
Unknown (zebra)
2023-12-29 05:58:23
AO的接合が上手くいかないDCPはいろいろ難しいのでしょうね。
骨折面が負重すればプレートから支点が逃げると思いますが、そうで無いから折れる。
違う方向からあてがう事で、合成の支点が外に出てきますから、折損リスクは格段に減るのでしょうね。
プレート2枚重ねも軸が一致しているだけで、ダブルプレートの一種ではあります。
ただ、骨に接しないプレートはLCPにでもしないと本当に意味がないと思いますけれどね。
細い言及までは存じませんが、一期癒合だけに着眼されているならAO1.0と言えるかも知れません。
ヒト医療で骨折面で負重しないと整復が上手くいかないよという場面は少ないでしょうから、そういう視点は育たないかも知れませんけれどね。

高気密だと冷気入り込まないから吹き抜け構造にしても平気みたいですね。
ただ、上の窓開けると煙突からサンタクロースが、となることもあるみたいです。
そういうのもイベントみたいなものでしょうから、楽しいうちでしょう。
返信する
>zebraさん (hig)
2023-12-29 17:58:46
尺骨は体重を支える骨ではなく、片側へへし曲げられる骨なので、普通の骨とちがいますね。プレートはテンションサイドに当てられるのですが、尺骨に力がかかるように整復と固定をしないとプレートは折れます。

小動物の骨折内固定の本に、プレートを2枚重ねる方法が記載されていました。驚きです。

吹き抜けと気密性ですか?うちは二階の方が暖かいな・・・
返信する
Unknown (zebra)
2023-12-30 05:54:02
体重というより、荷重といった方が良かったのでしょうね。
プレート引っ張られて骨潰れるならDCP一番得意なのではないかと思いますが、どちらかというとそうならないのはどこか過小評価されている部分があるからなのでしょうね。
プレートにプレート固定したら面白そうとは思いますが、金工細工まではしないでしょうね。

スースーの日本家屋を吹き抜けすると暖気が全部2階に抜けて床下から冷気入って寒い、となるんですよ笑
階段すら暖簾吊るせ、となります。
高気密に煙突仕掛けると唯一の冷気侵入口となり、2階窓開けて暖気出したら煙突から灰と共に冷気噴き出しとなるパターンがごく稀に起こるみたいなんですよ。
暖炉みたいな煙突だと誰か落ちた?みたいな事しょっちゅうだったのではないのですかね。
返信する
>zebraさん (hig)
2023-12-31 05:07:25
現在のようなプレートが使われるようになってヒトの方では70年。一連の歴史があるわけですが、動物では忠実にその後を追いかけてきたのではなく、脇道に入り込んだり、一部はすっとばしたりしてきたように思います。
プレート2枚重ねは、ヒト整形では許されないんじゃないでしょうか。
強度が足りないときに、「馬用の5.5mmインプラントがありますが、使ってみますか?」なんてのも許されないんでしょうね。

そういうと古い住宅は、畳を上げてみてびっくり、床下NO断熱なんてこともありましたね。畳が断熱材だったのでしょうね。隙間風が24時間換気で。
しかし、今建てられているような家が本当の健康住宅かどうかは、30年ー50年経ってみないとわからないのだと思います。
返信する

コメントを投稿