中手骨遠位の顆骨折にも気をつけなければならい。
背-掌方向で撮影しているから顆骨折なんて見逃さない?
顆骨折は掌側や底側の皮質だけに亀裂が入る unicortical condylar fracture 単一皮質顆骨折を起こすことがあることが報告されている。
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Unicortical condylar fracture of the Thoroughbred fetlock: 45 cases (2006-2013)
Equine Veterinary Journal 47 (2015) 680-683
要約
研究実施の理由
中手骨/中足骨の顆の骨折は、通常、前駆的病理学的変化があってから起こる。
損傷を早期に発見することは、ひどく悪化するリスクを抑えることに不可欠である。
しかし、単一皮質の顆骨折の臨床的、診断上の特徴は現在までほとんど記述されていない。
目的
中手骨/中足骨の短い単一皮質骨折と初診で診断された競走馬の症状、画像、予後について記述すること。
研究デザイン
回顧的症例調査
方法
2006から2013年のイギリスの獣医療の一次診療で最初の1回の見解で単一皮質顆骨折があったすべての平地競走馬を、
画像記録で検証し、臨床経過、病変の部位、治療、リハビリ指導、および結果について分析した。
結果
調査期間中に45症例が検出された。
前肢に多かった(35/45、77.8%)。
症例の平均年齢は3.4±1.3歳であった。
球節部の触診でわかる臨床的異常は明確ではなかった。
多く(35/45、77.8%)の損傷はX線画像で診断された(屈曲させての背掌/底方向撮影)。
残りの症例はMRIが必要だった。
7頭は最初の診断で、あるいは後の損傷で手術になった。
30頭のうち28頭(93.3%)は、無関係な他の理由で引退せず、競走復帰したが、
5頭(16.7%)は保存的管理をされているうちに再発し、中央値305日であった。
診断ミスのために2頭は致命的な骨折に至った。
結論
単一皮質顆骨折の臨床所見は軽度であることがあり、適切な診断画像が損傷発見のために必要である。
損傷の診断の失敗は致命的な骨折につながりうる。
ほとんどの症例は保存療法に反応し競走復帰したが、再損傷のリスクは一部の症例で手術を考慮することに根拠を与える。
獣医師の警告と適時の介入は、競走馬の球節の顆完全骨折の発生を有意に減らす可能性を持っている。
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競走馬の中手骨/中足骨の顆は、掌側や底側の皮質だけが割れることがある。
普通の背-掌/底方向撮影では骨折線が写らないことがある。
写し出すためには、球節を屈曲させて遠位背側-近位掌/底側方向で撮影する必要がある。
大きく打ち下ろししているX線画像ではない。
球節を屈曲させて”打ち上げ”ている。
そのことで、掌/底側皮質を描出できる。
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撮影方向と必要性については1988年に報告されている。
A flexed dorso-palmar projection of the equine fetlock in demonstrating lesions of the distal third metacarpus
Veterinary Record (1988) 122, 332-333
この文献の図。
球節をかなり曲げて、中手骨が垂直であるなら垂線から125°(つまり35°打ち上げる);右端の図。
そのことで、顆の掌側の皮質を写すことができ、しかも種子骨と重ならないようにできる。
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地方競馬場で球節に骨片骨折が見つかり、先週、手術に来院した競走馬。
全身麻酔する前に、しっかり球節を画像診断した方が良いと考えた。
そして・・・
当たり前の撮影でもわかる内側顆の骨折が見つかった。
ただのchip fracture だと思っていきなり全身麻酔しなくて良かった。
関節鏡手術で骨片を取り出したあとは、外内方向のX線撮影しかしない。
覚醒起立にはとてもリスクがあっただろう。
この馬は、関節鏡手術で骨片を取り出し、顆はscrew固定し、キャストを巻いて覚醒起立させた。
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内側顆の骨折は、背掌/底方向撮影で2本の骨折線が見えることが多い。
背側と掌/底側の骨折線がずれて写るからだ。
この症例は、掌側の骨折線しか見えなかった。
珍しいが、背側の骨折線がほとんど伸びていないのだ。
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unicortical condylar fracture 単一皮質顆骨折なんて、とても珍しいんじゃないかって?
(つづく)
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きょうは、
顆粒膜細胞腫の卵巣摘出手術。
肢軸異常のscrew抜去手術。
あがり馬の疝痛、結腸便秘。
午後は、
当歳馬の臍ヘルニア。
2歳馬のDDSPの軟口蓋laser焼灼。
当歳馬の顔面骨折のプレート抜去。
当歳馬の飛節近位部の皮下膿瘍の切開。
黒毛繁殖雌の疝痛、腸閉塞。
入院厩舎に、結腸捻転の繁殖雌馬。
もりだくさんでした。
盛りだくさんは獣医さんにとって醍醐味でしょね
道の際もきれにしていて、気持ち良いですね。
顔なじみのおんまさんを散歩に誘いたいけど、雨が続きそう。降ると冷えるこの頃です。じめじめよりはずっといい。
夜中は子馬の小腸捻転でした。ちょっともりだくさん過ぎます;笑
ゴミの不法投棄は多いんですよ。恥ずかしいことです。
自分でないと思いたいです・・・
兎にも角にも気をつけます
だけど、それをやってないと見逃すかもよ、という記事でした。
どのくらい適応例があるか、今度書きます。
そりゃ重なるものが多い方向で骨折片確認しようなどとはならないですね。
対側肢も‥となると無限ですね。
骨折線は吸収が進まないと写らないという微細なものは、hig先生のところに行くまで間があれば結果が違うということもありそうです。
自己責任で撮り直すのは不可欠なのかも知れません。
私はそんなに繊細な仕事をしていませんが、勉強になります。
掌側/底側の皮質だけが割れていることがあるよ、それを描出するには屈曲させて打ち上げだよ、というポイントを記憶し、実践してもらいたいのです。