電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【吾妻ひでおの本を3冊注文した話・3】
2019年12月14日
【吾妻ひでおの本を3冊注文した話・3】
吾妻ひでお『失踪日記』イースト・プレスを読み終えた。マンガなのであっという間に読み終えてしまうけれど、あっという間に入ってくる情報量は多い。視覚表現が言語表現の数倍の情報を持つ場合がある。アル中が見る幻覚は当事者の漫画家が描いたことによってもたらされる理解が深い。一昨日、装丁を担当したマンガでわかる拘縮ケアの本を納品したけれど、マンガでわかるのもよいことだと改めて思う。もう一冊の『アル中病棟』も楽しみだ。
妻に「最後の方にあるアル中編だけでも読むといいよ」と言ったら「なんでわたしがアル中の本を読むといいの?」と言う。なるほど、たしかに。当事者でもないのになんでじぶんが他人の病気に関する本を好んで読むのか…これも掘り下げると面白いココロの問題ではある。
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【軸】
2019年12月13日
【軸】
辞書で「軸」をひくと思っていたよりたくさんの意外な意味に分類されており、じぶんが探していたそのうちのひとつである「軸」もまた、座標軸、対象軸、回転軸の三つに分類されている。
こころの中には軸が必要で、世界を認識し解釈をするとき基準となる「じぶん」という軸には、座標軸、対象軸、回転軸などを使い分けているように思われる。その「思われる」を確かめるために辞書をひいてみた。
じぶんは時と場合に応じて座標軸だったり、対象軸だったり、回転軸だったりして世界を見ている。たにんもまた座標軸、対象軸、回転軸のうちに、たにんであるじぶんを位置づけて見ている。
解釈とは位置づけのことであり、位置づけは軸の取り方の自由によって相互的である。だからひととひとは話が通じているようで通じていない。どうしてこいつはこんなに「わからんちん」なんだろうと腹が立つときは落ち着いて軸を変えてみる。
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【吾妻ひでおの本を3冊注文した話・2】
2019年12月12日
【吾妻ひでおの本を3冊注文した話・2】
先日亡くなった漫画家吾妻ひでおに関するネット記事を読んでいたらこの人のことをもっと知りたいときわめて真面目に思い、『21世紀のための吾妻ひでお』河出書房新社、『失踪日記』イースト・プレス、『アル中病棟』イースト・プレスを近所の書店に注文した。
+++++++++++++ご注文商品がご指定の書店に入荷いたしました
+++++++++++++お客様のご来店をお待ちしております。
というメールが届いて、『失踪日記』、『アル中病棟』の2冊が書店に到着したという。
まわりにアル中になった人が何人もいて、ある人は早逝し、ある人は立ち直り、ある人は病院に入っている。吾妻ひでおが入院していた病院が何度か訪問した長谷川病院であること、失踪してのホームレス体験に興味があったことも理由になり、まとめて注文した。
先日、書名を言おうとしたら「いしはらさまですね」と言われたのとは違う女性店員で、「吾妻ひでおが2冊届いているはずですが」と言ったら棚から取り出しながら「いつもありがとうございます」と言う。「カバーおかけしますか」と聞くので「いいです」と答えて袋には入れてもらった。
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【吾妻ひでおの本を3冊注文した話】
2019年12月12日
【吾妻ひでおの本を3冊注文した話】
先日亡くなった漫画家吾妻ひでおに関するネット記事を読んでいたらこの人のことをもっと知りたいときわめて真面目に思い、『21世紀のための吾妻ひでお』河出書房新社、『失踪日記』イースト・プレス、『アル中病棟』イースト・プレスを近所の書店に注文した。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ご注文商品がご指定の書店に入荷いたしました
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
お客様のご来店をお待ちしております。
というメールが届いて、まず『21世紀のための吾妻ひでお』が書店に到着したという。
ふと自分が頼んだ本を検索してみたら予想外の装幀でちょっと恥ずかしい。「若い女性店員がどんな男がとりにくるのかしら…と笑ってるんじゃないかな」と言ったら「かわりにとりに行ってあげようか?」と妻が笑う。ちゃんと自分でとりに行く。
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追記:レジに行って書名を言おうとしたら「いしはらさまですね」と言われた。なんでわかるのだろう。「カバーおかけしますか」と言うので「いいです」と答えたら袋に入れてくれた。
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【エクスタシー】
2019年12月11日
【エクスタシー】
未来にたくさんの可能性があるじぶんをひとつひとつ捨てることで、こどもだったわたしたちは「じぶん」になっていく。それを精神科医のロナルド・D・レインは「エクスタシーの放棄」と呼んだ、と読んでいる鷲田清一の本にあった。
念のためにエクスタシー【ecstasy】をスマホ内のデジタル大辞泉で引いて「夢中の忘我」という妥当な語義を自分なりに引き出しながら読んでいたら、なんと三項目目の定義に、
3 俗に、錠剤型の麻薬のこと。MDMA(メチレンジオキシメタンフェタミン)を主成分とするものが多い。
がのっていて驚いた。俳優の S 被告(33)=麻薬取締法違反罪で起訴中=も所持したとされる合成麻薬をニュースでたびたび耳にするけれど、合成麻薬 MDMA が若者の間で広がっているという話は、国語辞典にも載るほどの事実なのかと驚いた。
S 被告は麻薬常習からの立ち直りを誓っているというけれど、まさにむき出しの現実と向き合う、おとなの「エクスタシーの放棄」である。
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【マリメッコの奇跡】
2019年12月10日
【マリメッコの奇跡】
「マリメッコって何?」
と妻に聞いたら
「見ればわかるわよ」
とのことだったので、もし雨の日曜日になったら見に行くことにした。晴れたら高尾山に登る。
このところ近所の区立図書館で開かれる、小さな映画会や講演会にふたりで出かけている。無料なので見て聞いて損をしたという経験がなくて、見て聞いてタダで何かがわかることは、ちいさな人生のもうけものにほかならない。
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【フェアリーピコ】
2019年12月10日
【フェアリーピコ】
郷里の友人から宅急便でシクラメンが届いて嬉しい。小輪半八重咲き品種で『フェアリーピコ』という名前がついている。
日当たりの良い自宅に比べ、北西向きで陰りがちな仕事場だけれど、照明を完全 LED 化したら観葉植物が天井目指してぐいぐい元気なので、照明下の窓辺に置くことにした。
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【あのうた いいと おもわない?】
2019年12月9日
【あのうた いいと おもわない?】
【あきになると しろいわたが とれます】
2019年12月8日
【あきになると しろいわたが とれます】
やがて秋になり、秋が終わって冬が来ても白いワタが見えない。白いもの見たさに割ってみるようなこともできないので、横目で眺めて図書館通いしながら、このまま立ち腐れてしまうのではないかなどと思うこともあった。
千石図書館 2019/12/08
借り出した CD を返却するため、昼食後に出かけたら、実が一つはだけて白いワタがのぞいていた。よかったよかった。
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【商务人士】
2019年12月8日
【商务人士】
米国企業の差し出し元をかたったスパムメールが毎日届く。少しずつ巧妙になっているけれど、やはり中国が発信元だとそれとわかる。日本語が間違っていたり、日本人が使わない熟語が混じっているからだ。「惜しい!」と心の中でつぶやいて消去している。
文京区向丘2丁目 2019/12/06
ネット検索で欲しいものを見つけたら中国製だ。中国製で一向に構わないので購入したが、その商品は「家庭主婦や商务人士に大人気」だという。商务人士ってなんだろうと調べたら「为在东京工作的商务人士提供全面的私人定制式的医疗信息」的中文ばかりが出てきて日本語的意味がわからない。英訳では Business People のことらしい。自然な日本語に訳せば「家庭でも職場でも大人気」ということだろう、「惜しい!」。
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【冬桜】
2019年12月7日
【冬桜】
本郷通りを歩いて向丘の堀江米店に行く途中、駒込吉祥寺山内をのぞいたら、山門脇で冬桜が咲いていた。親たちが健在の頃は、駒込吉祥寺に初詣でをし、この桜の前で記念撮影をした。十月から翌年一月までに咲く桜の総称を冬桜というが、やつれかけた花の様子を見ると先月が満開だったと思われる。
駒込吉祥寺 2019/12/06
わが家の墓がある静岡県清水の保蟹寺(ほうかいじ)住職はこの寺から出た人だった。今年の春、義母の納骨を終えた翌日、法事のため上京した住職もこの桜の前を通ったはずだが、数ヶ月後に亡くなられた。今年の冬桜はいろいろと感慨深い。
ミルキークイーンを 5 キロ精米してもらい、重いので帰りは向丘二丁目からバスに乗った。Suica が空っぽなので久しぶりに現金を料金箱に入れたら「お客さん!お客さん!」と呼び止められ「 210 円!」とマイクで言う。都バスが消費税便乗値上げされたのを知らなかった。なんだかせこい。
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【アメであるとはどのようなことか】
2019年12月6日
【アメであるとはどのようなことか】
数年前の夏、東海道本線を途中下車して海辺に寄り道し、波打ち際で熱く乾いた小石を拾い、口に入れたら予想通りしょっぱかった。海中から砂浜に打ち寄せられて乾燥した小石の表面には塩分が残る。それを口に入れて舐めてみる人間がいることにより、小石と塩と人間とのあいだに関係がはたらき、小石にも主観的体験が生まれ、「海辺の小石にとって、海辺の小石であるとはどのようなことか」と問うことが可能になる。
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千石図書館 2019/12
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【ラインマーカーを使う人たち】
2019年12月5日
【ラインマーカーを使う人たち】
初めて仕事を一緒にする女性編集者が原稿を渡してくれるとき、説明しながら「これ」と「それ」と「あれ」を、オレンジやピンクやイエローのラインマーカーに持ち替え、ハイライトさせながら説明してくれる。その様子は眺めて楽しい。この人にとってラインマーカーは大切なコミュニケーションツールなのだ。なるほど。
色分けされたハイライトは「こそあどことば」の「こ」「そ」「あ」になって、その他どれもおなじ文字の塊である「ど」と区別されていく。線引きして説明され、説明を受けながら、打ち合わせテーブル全体をもう一歩引いた別の自分になって眺め、他人に説明するようなことばにする。いわばラインマーカーによるハイライトは「これ」「それ」「あれ」「どれ」という指示語の生成である。指示された「もの」の「強弱遠近」がそれとわかり、修飾を加えることで文章の内容がより正しく読み手に伝わるようになるわけだ。
自分の仕事を他人の仕事として眺めるように観察するのは、仕事の現場で社会見学をする児童になったようで楽しい。他人の仕事場では、まじめなふまじめという態度を楽しむ。客観化とはまじめなふまじめのことである。
豊島区長崎1丁目 2019/12/04
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【ものもらい】
2019年12月3日
【ものもらい】
妻に「ものもらいができた」と言うと、右の二重まぶたが変なのですぐわかったと言う。「ひどくなったら駅前の眼科に行ってくる」と言ったら、義父が世話になったデイサービス職員推奨のあっちの眼科がいいと言う。なんだか面倒くさくなったので忘れることにしたら、いつの間にか治ってしまった。気にして擦ったりしなければ自然に治るのだろう。
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【昔はものを思はざりけり】
2019年12月3日
【昔はものを思はざりけり】
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