電脳六義園通信所別室
僕の寄り道――電気山羊は電子の紙を食べるか
【ラインマーカーを使う人たち】
2019年12月5日
【ラインマーカーを使う人たち】
初めて仕事を一緒にする女性編集者が原稿を渡してくれるとき、説明しながら「これ」と「それ」と「あれ」を、オレンジやピンクやイエローのラインマーカーに持ち替え、ハイライトさせながら説明してくれる。その様子は眺めて楽しい。この人にとってラインマーカーは大切なコミュニケーションツールなのだ。なるほど。
色分けされたハイライトは「こそあどことば」の「こ」「そ」「あ」になって、その他どれもおなじ文字の塊である「ど」と区別されていく。線引きして説明され、説明を受けながら、打ち合わせテーブル全体をもう一歩引いた別の自分になって眺め、他人に説明するようなことばにする。いわばラインマーカーによるハイライトは「これ」「それ」「あれ」「どれ」という指示語の生成である。指示された「もの」の「強弱遠近」がそれとわかり、修飾を加えることで文章の内容がより正しく読み手に伝わるようになるわけだ。
自分の仕事を他人の仕事として眺めるように観察するのは、仕事の現場で社会見学をする児童になったようで楽しい。他人の仕事場では、まじめなふまじめという態度を楽しむ。客観化とはまじめなふまじめのことである。
豊島区長崎1丁目 2019/12/04
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