【朝は嫌いですか?】

【朝は嫌いですか?】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2006 年 3 月 3 日の日記再掲

子どものころから朝が好きで日暮れは悲しい。
 
人は誰でも朝が好きで日暮れは悲しいに違いないとばかり思っていたけれど、日暮れが好きで朝が悲しいと感じる人が身近にいると知って驚いた。そして酒を飲んだりして打ち解けて話すうちに、同じように日暮れが好きで朝が悲しいと感じる人が世の中には当たり前に存在することを知った。

■ 1971(昭和 46 )年、秋頃。時刻は午前5時をちょっと回ったところ。あまり変わっていないような変わっているような……不思議な清水駅前。

minolta SRT101 Rokkor 21mm F4

年上の友人である工業デザイナーなどは、仕事場の窓に夕暮れが忍び寄っているのに気づくと
「やった!やっと夜がくる!」
と喜ぶのである。そして朝は憂鬱で
「朝なんて来なければいいのに!」
と思うのだと言う。

■ 1971(昭和 46 )年、秋頃。この年には西友清水店がまだなかったことがわかる。

minolta SRT101 Rokkor 21mm F4

断然朝が嬉しい。東の空が白み始めるとニワトリのように「東天紅~~!」と鳴きながら寝床を出て起きたくてたまらなくなるし、日暮れてくればカラスのように「カァ~~」と鳴いて山の古巣に帰り、さっさと寝たくなる。

■ 1971(昭和46)年、秋頃。始業前の清水駅前静鉄バスターミナル。

minolta SRT101 Rokkor 58mm F1.4

郷里静岡県清水。
息子を連れて故郷に帰り、市役所脇の飲食街に店をかまえて人生の大勝負に出た時、母は 36 歳だった。

店の二階で寝起きし、営業時間外でも客がガラス戸を叩けば(当時の清水は酒精依存症者が多かったと思う)スクランブル発進して店を開けた母は、どちらかといえば朝は憂鬱で日暮れに嬉々とする人であり、店を持つ以前は休日など雨戸を締め切ったアパートの部屋で昼近くまで寝ていたものだった。

■ 1971(昭和 46 )年、秋頃。時刻は午前5時半頃。

minolta SRT101 Rokkor 21mm F4

深夜まで店を開けて商売をし、翌朝は昼近くまで寝ている暮らしは母の性分に合っていたのかも知れなくて、日暮れが嬉しい人は皆そういう仕事のし方が得意だ。フレックスタイムなどと言って昼近くに出社して夜間まで仕事をしている人も周りに多いが、彼らもまたそういうタイプかもしれない。

■ 1971(昭和 46 )年、秋頃。花菱デパートはもう完成している。屋上にモノレールと観覧車が見える。

minolta SRT101 Rokkor 21mm F4

日暮れとともに定時で退社し、そのかわり翌朝は 3 時間早く出社する、などということは望むところであり、そういう会社がなかったので自分で興した。母もまた自分の店を持ちたいと思った背景には、逆の性格的な願望があったのかもしれない。

■ 1971(昭和 46 )年、秋頃。はっきり言って「ゴミ溜めの街」のような時代だった。それでも清水の町が好きだったし、清水で迎える朝はいつも希望に満ちていた。

minolta SRT101 Rokkor 58mm F1.4

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