▼人の内外

 


毎週末、義父母が暮らす特別養護老人ホームに面会に出掛けるが、それ以前から仕事がらみで各種老人施設等を訪問し、入所者である高齢者と会話をする機会が多かった。そして後になって、あの方は痴呆があり在宅介護が無理だということになって入所されたのだなどと聞かなければ、ごく普通のおじいさん、おばあさんであることに驚くことが多かった。



6月26日、東京オペラシティにて。



自分の親がそうなって実感としてわかるようになったのだけれど、人としての家族、場としての家庭に対してのみ呆けるということが年老いた人には起こりえるのかもしれない。年のわりに明晰で、穏やかな気性で、他人を思いやることもできるよいお年寄りだと思える人が、家庭では家族を悩ませ、これ以上の在宅介護では家族が共倒れになると苦渋の選択を選ばせるような人であることが、あり得るのだと思う。



6月26日、東京オペラシティにて。



世間ではごく常識的な良い人だと思われている人が、人としての家族、場としての家庭に対するとき別人のような一面を持っていることを知って驚くことがある。呆けて入所している人が家庭を出て家族以外の他人に接するときにはちっとも呆けていないように見えて驚くのと逆に、まだ若くてごく普通の社会生活をおくっている人が、家庭に戻って家族に対するときだけ異様な一面を露わにすることを知って驚くこともある。それも一種の呆けなんじゃないかと思うとき、他人にも家族にも良かれ悪しかれ同じような態度で接することができるか否かが、自分の呆け予報のための尺度になるんじゃないかと思う。

 
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