【夏の朝のひと仕事】

【夏の朝のひと仕事】

 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2006 年 7 月 29 日の日記再掲

7 月 29 日土曜日、清水はゴミ収集日なので早起きして膨大なゴミ出しをする。

午前 8 時半から清水清掃工場への家庭ゴミ持ち込みが可能なので、不燃ゴミとガラスを集めた 45 リットルの静岡市推奨ゴミ袋 30 袋ほどを車に積んでピストン輸送する。

ゴミ処理場にはたくさんの職員がいてゴミを厳しくチェックしており、チェックがうるさいという人もいるけれど、ゴミ出しマニュアルを読んでしっかり分類し不燃ゴミや循環再利用外ガラス類であることなどを油性マーカーで大きく書いて明記していくと、汗だくの僕を見て職員が
「こちらでやりますから全部パワーショベルの前に下ろすだけでいいです」
などと言ってくれ、夏の朝の円滑な共同作業ができて嬉しい。
「ありがとう、ご苦労様です」
と会釈して切っておいた車のエンジンキーを回す。

■静岡県清水新富町。まだ羽に緑色が見える若々しいクマゼミ。
NIKON COOLPIX S4

静岡県清水入江南町から八坂町の清掃工場まで、何回かピストン輸送するあいだ、カーラジオをつけていたら夏休み子ども電話相談室のような番組を放送しており、「(ああ、もう子どもたちは夏休みなんだなぁ)」と我に返って巡り来た季節を思う。

最近は回答者の先生が若返っているのが新鮮で、たどたどしい子どもたちの質問にどう答えるのかを興味津々で聞き入ってしまう。

蛍をとって網の中で飼い始めたのだけれどどんな餌をやったらいいのかと質問する子どもがおり、回答者の先生はその子がどんな飼い方をしているのかをまず質問し、ちゃんと勉強して環境作りのポイントを一通り押さえていることを確かめ、それでもわからない餌やりの質問をしているということを理解してから、
「〇〇くん、実はね……」
と話しかける。

昆虫にとって、さなぎから成虫になって外に出ることの目標は、外敵にやられる前にいちはやく交尾をして子孫を残すことであり、それが済めばさっさと死んでしまう昆虫が多く、例外的にスポーツドリンクを与えたら飲んだなどという話も聞くけれど、大人になってからは餌など食べないので餌やりの必要はないのだと言う。メスはさなぎになるまでのうちにちゃんと卵をお腹の中で育てて産まれてくるのだから。

そして、
「極端な例では、カイコなんか成虫になったときには、たとえ食べたくても口がないんですよ……」
と付け加え、子どもは「へぇ~……」とつぶやき、同席している先生たちやアナウンサーは「はぁ~……」と苦笑いするようなため息をついている。

いちはやく後尾をして子孫を残すという第一義は都合良く理解できても、そのために食べる楽しみなどはない……という生涯の厳しさに「はぁ~……」と声が出てしまう大人たちが可笑しい。

■数枚シャッターを切ったらもうこんなことに。むこうがわのセミの腹には空洞状の共鳴体がついているのでオスであることがわかる。
NIKON COOLPIX S4

■交尾作業にとりかかっているカップルの上 10 センチほどのところで、ひとりひたむきに鳴き続けている別のセミ。
NIKON COOLPIX S4

郷里静岡県清水は東京にくらべて街で鳴くセミの種類としてはクマゼミが圧倒的であり、早朝から耳をつんざくほどの鳴き声を上げている。見上げたら木の幹に姿が見えるので撮影してみた。

まだ緑色の若々しい羽で鳴いているセミの姿に何枚かシャッターを切っていたら「ツイッ!」ともう一匹のセミが飛んできてからだを合わせ、いちはやく交尾をして子孫を残す作業に取りかかっていた。

セミもまた夏の朝の円滑な共同作業ができて嬉しいに違いない。

「ありがとう、ご苦労様です」

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