【トップハット】

【トップハット】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2005 年 9 月 12 日の日記再掲

静岡県清水万世町。コーヒーの名店『トップハット』に入ってみる。ひょっとすると 25 年振りくらいかもしれない。

子どもの頃、この辺りは賑やかで旭町、島崎町、万世町、巴町など人が掃いて捨てるほどうようよ歩いていたけれど、今は当時の面影を偲べば見る影もないほどに閑散とした町になってしまった。

中学生時代、賑やかだったのは町ばかりでなく、清水の『トップハット』といえば伊東ゆかり、園まり、中尾ミエなどと並んで有名だった某女性歌手の失踪騒ぎでマスコミに登場したりし「すっげー『トップハット』って全国的に有名じゃん!」などと大喜びし、大騒ぎし、妙な誇りを抱いたりしたのである。

すっかり静かになった街であらためて『トップハット』の建物を見上げ、けっしてこういう商売に適した立地条件とも思えない場所でよく今日まで頑張られているなぁ、としみじみ昔を思いだし、恐る恐るドアを開けて中に入ったらびっくりした。

DATA:Panasonic LUMIX DMC-FX8

25年間何事も無かったかのようにのんびりコーヒーを飲む客で満員だし、次々に客が回転して活気に溢れている。

近所の常連がぶらっと立ち寄ったという風情の客もあれば、美味しいコーヒーが飲みたくてわざわざ車を運転してやってきたらしい家族連れもいる。

出てきたコーヒーを味わい「(トップハットのブレンドって昔からこんなアメリカンローストだったかしら)」と思いつつも、東京でひどいアメリカンを飲んでいるので美味しくて思わずお代わりを注文する。

DATA:Panasonic LUMIX DMC-FX8

はっきりいって旧清水市より旧静岡市の方が圧倒的に小洒落た店が多い。

それでも他地域から来た友人たちを連れて行きたくなる店が清水にも何軒かあり、そういう店は繁盛の度合いに差はあるものの、ちゃんと常連客があって地元の力で下支えされている。静岡より清水で商売するのは楽じゃないけど、ちゃんとした店なら客は近場で消費する気はあるのだと思う。

カップに印刷された山高帽(トップハット)が笑っている。

「山高きが故に貴からず樹有るを以て貴しとなす」
(やまたかきがゆえにたっとからず/きあるをもってたっとしとなす)」

【新生丸】

9 月 10 日、友人をメールと携帯電話で一本釣りし、母が生前ひとかたならぬお世話になった礼を兼ねて巴町の名店地魚料理の『新生丸』へ。

午後5時の開店前に駆け込んで男 2 人分のカウンター席を確保するが、あっという間にカウンターも座敷も満席になり、遅れをとった客は「申し訳ない、いっばいになっちゃったもんで」と断られて悔しそうに苦笑いで立ち去って行く。

DATA:Panasonic LUMIX DMC-FX8

場所も良くないし、古びた小さな店だけれど、開店 30 分で連日満員御礼になる店が清水にもある。

地元で良い店を見つけた客はみな幸せそうであり、『新生丸』の暖簾もまた笑っている。

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