【陸の息、海の息】

【陸の息、海の息】
 
 

(『電脳六義園通信所』アーカイブに加筆訂正した 2005 年 9 月 14 日の日記再掲

はっきり言って年老いた親を介護しながらの同居は息苦しい。

年老いた親に限らず人間同士が同居するというのは、ある程度互いが自立して勝手気ままができるから風通しがよいのであって、じっとり汗ばむような依存関係になると毎晩の団らんが息苦しくてたまらなくなる。

九月中旬とはいえ蒸し暑い夜はことさら息苦しく、団扇を顔の真正面に向けて思い切り扇ぐと強い風圧で空気が口や鼻に向かって供給過剰となり呼吸が困難になる。台風の日などに向かい風に向かって歩くと苦しいのと同じだ。

9 月 4 日日曜日の静岡県清水袖師町。
JR 清水駅東口駅前から袖師臨港道路通称しみずマリンロードを、東亜ゼネラル石油のタンクを右手に見ながら北北東に自転車で全力疾走してみる。風を真正面に受けて息が苦しい。小学生の頃、伯父のポンポン(清水ではバイクのことをそう呼んでいた)に乗せられて、袖師海水浴場へ通った思い出の道である。
 
息が苦しくて「もうダメ!」と思う頃、右手に大きなコンクリートで囲まれた湾が現れ、それが清水港袖師船溜まりである。もう海水浴場の面影すらない※。

……と書いたら伝言板で、袖師船溜は昔から船溜だったのであり、袖師海水浴場は庵原川を渡った北側だったと教えていただいた。そうだそうだ、思い出した。橋を渡ってポンポンを停めるとコンクリの欄干近くから海水浴場の砂浜に降りた記憶がある。

袖師船溜と早朝の釣りをする恵比寿さま
Data:RICOH Caplio R1

清水の岸壁にいると陸風・海風(りくふう・かいふう)が吹くのがよくわかる。

日中は海より陸の方が早く温まりやすいので上昇気流が発生して気圧が低くなる。そこへ海から冷たくて重たい風が吹き込むのが海風である。逆に夜になると海より陸の方が早く冷えやすいので風向きが逆転し、陸から海へと吹くのが陸風である。陸風は穏やかだが海風はかなり強く吹くことも多い。

風が吹くと魚が釣れないらしいので、岸壁の釣りは海風が吹く前、早朝の釣りがよいのだと思う。

午前中遅くなってから吹き出す海風に向かって海の匂いを嗅ぐのが好きだ。強風のときは前に身体を倒し気味にし、息をするのがやっとのくらいに苦しいときもあるけれど、なぜかそうしているのが好きなのだ。

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