おたがいさまの思想

2014年3月29日(土)

おたがいさまの思想

00
道端で見かける側溝に用いるコンクリート製の部材は、見た通りの名前で「L 形側溝」といい、JIS などで規格化されている。

01
コンクリートを固めただけのものと鉄筋コンクリート入りの L 形側溝があり、折れ曲がった縁の高さの違いにより、車乗入れ部用とか、歩行者横断及び車いす乗入れ用とか、境界・L 形曲線用 R ブロックという歩道巻込み部や道路曲線部に用いるカーブしたものなどがある。

02
道路に面した居住者の段差解消のための渡り石ブロックという製品も用意されているが、盛り土された家の基礎が一段高い家への石段として、ひっくり返した L 形側溝が使われているのを昔から目にし、その軽妙なアイデアを今でも微笑ましく思う。

03
鍵型をしたものを、もう一つ 180 度回転させてのせると必ず平行四辺形になる。その原理を利用して蓋を兼ねた石段にしているわけだが、うまいことを考えたなあと感心してしまう。

04
こういう形の組み合わせ方の工夫には日常生活で時折出会う。例えば左右一組の靴を箱にしまうときなどがそうで、 L 形や三角形の断面を持つ物体の特性を利用している。

05
そういう組み合わせ方を言葉で簡潔に言い表すことは難しく、適切な言葉が見当たらない。「たがいちがいに組み合わせて」と言ってみたくなるが、たがいちがいはもっと別の状態を言う。

06
たがいを言い表す漢字「互」はまさに L 字型を組み合わせたものなので、「同じものを『互』型に組み合わせる」と言えば適切な気もするが意味が伝わりにくいだろう。

07
エルビス・プレスリーが歌ってヒットさせた曲に「A Fool Such as I」があり、「バカはおたがいさま」などという邦題がついていたが、うまいこと訳したものだと思う。

08
たがいが補い合って、双方の利益になるような関係はうまく言い表せないからこそ愉快であり、「ははは、おたがいさまですから」などと言って笑いあうことができる。街角で見かける L 形側溝を組み合わせた段差解消はまさに「おたがいさま」、助け合いの思想を視覚化したものなのかもしれない。

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