人間と荷物

2014年3月30日(日)
人間と荷物

00
東海道線普通電車に、リュックを背負って、バッグを提げ、車付きコロコロを引いた若い豊満な女性が乗り込んできて、向かいの空席に腰掛けようとしている。大変な荷物持ちである。

01
まず腕に提げたバッグを網棚にのせ、続いて背負ったリュックを外して網棚にのせていたら電車が発車し、立てかけてあったコロコロが倒れそうになったので、慌てて引き手を掴んだら、床にスマフォが飛んだ。

02
この陽気で暑くないのかと思うほど厚着してマスクをかけ頭にベレー帽をのせており、慌てずにスマフォを拾い上げると、落ち着いて腰を下ろして脚を組み、小指を丸めたタッチアンドスワイプでスマフォをいじり始めた。

03
次の駅で痩せてがに股気味の高齢女性が乗ってきて、若い豊満で厚着してベレー帽をかぶった女性の隣にドスッと腰掛け、腕に提げたたくさんの買い物バッグや紙袋を脇にガサッと置いた。

04
ガサッと置いた荷物をいまいましげに睨みつけると、おもむろに中身を引っ張り出しにかかり、たくさんの袋をひとつの袋にまとめたいらしい。手際が悪いので作業がうまく行かなくてガサガサと音ばかりうるさく、隣りでスマフォを弄っている女性に肘うちを喰らわせたりしながら、ますます眉がつり上がって怒っているように見える。

05
ようやくひとつにまとまったら、今度は空になった袋を畳んでリュックにしまいたいらしいが、背負ったまま腰掛けたので、まずリュックを背中からおろさなければならない。

06
立ち上がってやればいいのに腰掛けたままリュックを外そうともがくので、隣の女性にぶつかってうまく行かない。隣の女性がちらっと顔を向けたので迷惑をかけているのに気づいたらしいが、「悪いのはこの荷物どもだからね」とでも言うように眉をしかめて格闘している。

07
ようやくリュックがはずれ袋どもをしまい終えたら、もう終点熱海駅が近いとアナウンスが流れている。スマフォを弄っている女性の肘にまたぶつけながらリュックを背負い、ひとつになった袋を持って降車扉の方へよたよたと歩いて行った。

08
若くて豊満で厚着してマスクをかけベレー帽をかぶった女性はスマフォをしまい、前とは逆の手順で、まずリュックを網棚からおろして背負い、バッグをおろして左腕に掛け、コロコロの引き手を持って、忘れ物がないか振り返りながら歩いて行った。

09
落ち着いて手順を考え、周りの迷惑にならない方法で、腹を立てずに落ち着いて物事ができるというのは、性格というより年齢による体力差なのだと思う。年をとると段取りが悪くなり、それが他人のせいであるかのように怒りっぽくなる。豊満で厚着してマスクをかけベレー帽かぶってたくさんの荷物を持ち、それでもスマフォを弄る余裕があるのは若いからだ。年をとったら身軽な格好で暮らして、人生の荷物はどんどん減らした方がいい。

3月29日は静岡県立中央図書館に調べ物帰省した。往復東海道線普通電車に乗り、駒込を5時に出て19時過ぎに帰り着いた。沿線では桜が咲き始め、六義園は落として道で溶けたキャンディに蟻が群がるような人出だった。

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