▼胸突坂

 

文京区内には胸突坂という名の坂が三箇所ある。ひとつは本郷5丁目、ひとつは関口2丁目と目白台1丁目の間、そしてもうひとつは西片2丁目と白山1丁目の間にある。



2010年4月26日、胸突坂にて。



施設に入所した義父母の住まいを片付けていたらあれこれ必要なものが出てきたので、文京区白山のオリンピックまで散歩を兼ねて往復した。白山から胸突坂を登って向丘に出て、坂上から旧中山道を辿って白山上、白山上から本郷通りを進み右手に曹洞宗諏訪山吉祥寺の山門が見えると、もうわが家も近い。

1995年、富山を引き払って上京し、同じマンション内で同居を始めた義父母と迎えた新年は、毎年吉祥寺、天祖神社、富士神社とまわるのが恒例になっていた。ここ数年は、歩行が難しくなった義父を車椅子に乗せての初詣になったが、今年の元日は車椅子が重く、ますます太って身体が重くなった義父が車椅子からずり落ちそうになるので押すのに一苦労した。



元日になると毎年家族揃って歩いた吉祥寺参道を山門越しに見る。



身体が動かないように見えても微妙にバランスをとる力が人間に残されているから車椅子も楽に押せるのかもしれない。今年の義父はすわりの悪い砂袋のように不安定で、シートベルトのようなもので固定しない限り、もう車椅子での外出は難しいかもしれないと思った。車椅子で外出してみると歩道も決して障害者向けに平坦とは言えないし。

そんなことを考えながら車椅子を押して後ろを歩いていたら、義母もふらふらとして足もとがおぼつかなく、これはおかあさんも長距離を歩くのは無理かもしれないと思った。いま思い返してみれば、義父母ともこの春がそろそろ在宅で過ごす胸突き八丁だったのかもしれない。

 
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