靴底


D810 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G

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この時期、行きつけの靴屋さんで話していると、初めて革靴を買うという若いお客さんが来る。
今までスニーカーしか履いたことがない人たちで、革靴についてはほとんど知識がない。
どの人も雑誌から得た情報はあるが、実体験は伴っていない。
横で見ていて、僕程度の知識でも多少は役に立ちそうなので、一言二言会話を交わすこともある。

ここでいつも話題になるのが、革の靴底である。
彼らが履きなれたラバーのようなグリップ力はないので、まったく知識の無い状態で履くのは少し危険である。
滑って頭でも打ったら致命傷になりかねないし、転ぶのを何とか踏みとどまっても腰を痛めたりする。
そのため革靴に慣れていないお客さんには、お店でもあらかじめ注意を促すようだ。

僕でさえ、新しい革靴をおろす時は、まず靴底の滑り具合を確かめる。
靴によって同じ革底でも滑り具合に差があるのだ。
さらには床の材質により、滑る場所とほとんど滑らない場所があるので厄介である。
床の材質が切り替わった場所で、いきなりズルッとくる。
最初に一歩踏み出した時に怪しいと感じたら、瞬間的に歩き方を変えなければならない。

身近で危ない場所は、雨の日のコンビニの床だ。
大理石調のパネルが敷き詰めてあるお店が危険で、スケートが出来そうなほどよく滑る。
雨だからと慌てて室内に走りこむのは、極めて危険な行為である。

今までで一番酷かったのは、神戸の近くのとある駅で、雨の日に革靴で歩いたのだが、改札を抜けたところでいきなり床の材質が変わった。
足を踏み出すたびに、スカッ、スカッと空振りするように滑る。
まるで漫画みたいに脚だけバタバタと動かし、身体が全然前に進んでいかない。
本当にスケートリンクを歩いているような状態であった。

あの床って、ゴム底の靴しか知らない人が作ったのだろうか?
古い駅だったから、革靴で歩くことを想定していない・・なんて事はないはずだ。
それとも、ああいう滑りやすい場所を、上手く歩く方法があるのだろうか。
駅は走ることが多い場所なので、あれだと非常に危険だと思うのだが・・・

滑るのが嫌な場合は、靴の底にゴムを張るくらいしか対処方法はない。
お店でも、初めての人にはそういうアドバイスをしている。
しかし全面にゴムを張ると、べたっと硬く重くなるので、快適性は少し失われる。

僕の経験では、ヒール部分をゴム製にするだけでも、かなり効果的だと感じている。
最初に地面と接するのが踵の部分で、ここがしっかりグリップすれば安定感が増すし、地面を蹴る際に少し空振りする程度で済む。
実際アレン・エドモンズなど多くのメーカーの靴が、そういう構造になっている。

前にも書いたのだが、僕の年齢になると、若い頃のように急に走ったりする機会が少なくなる。
そのため革底でもそれほど苦にならない。
その点は、活動的な若い人とは違うところである。

そうなると、逆に革の靴底の良さが捨てがたくなる。
履いていて快適だし、音も小気味いい。
実際お気に入りの靴の多くは底が革製だし、ラバーに交換したいとも思っていない。
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