酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

「メメント」~内なる迷宮への彷徨

2006-12-05 01:24:41 | 映画、ドラマ
 「温故知新」というけれど、俺の映画との接し方は「温故」に偏っている。ガイド誌やHPを参考に、スカパーと衛星放送を録画しているが、そのうち記憶が薄れ、「こんなの録ったっけ」てな具合になる。先日見た「メメント」(00年)もそんな感じだったが、巧みな構成と鋭い映像に、映画の可能性の広がりを実感することができた。

 主人公のレナードは妻の死のショックで前向性健忘を発症し、10分間しか記憶を保てない。ポラロイド写真、多数のメモ、肉体に刻んだタトゥーで抜け落ちる記憶を補っている。時間を逆回転させてストーリーを遡行させる手法は、斬新かつ実験的だ。肝というべきは編集で、見る側が混乱しないような工夫が施されている。レナードが語るサミー夫妻の悲劇が合わせ鏡になり、ストーリーの全体像をかたどっている。

 レナードの「記憶」と「記録」は果たして「真実」だろうか……。10分間に生じたレナードの「感情」や「願望」が「記憶」や「記録」に波及することはありえないだろうか……。自己防衛や癒やしのため、「記憶」や「記録」が無意識のうちに改変されることはないだろうか……。衝撃のラストに、それぞれの答えが用意されている。

 レナードを駆り立てているのは妻への狂おしい愛、喪失感、贖罪意識だ。「目を閉じていても、そこに世界はあるはずだ」というレナードのモノローグ(時系列としては起点)で映画は終わる。レナードは<内なる迷宮>を彷徨いつつ、外の世界を混乱に陥れるのだ。
 
 「メメント」には「記憶」や「思い出」だけでなく、「忘れるな」という警告の意味もある。言葉同様、本作も多義的で、ロールプレーイングゲームの要素も強い。「CSI科学捜査班」のサラ役でおなじみのジョージャ・フォックスがレナードの妻を演じているのも興味深かった。

 物忘れのDNAを受け継いだ俺にとり、「記憶」は身につまされるテーマといえる。両親は「刑事コロンボ」の再放送を初めて見るように何度も楽しんでいたが、五十の坂を越えた俺にとって、「相棒」、「CSI」、「名探偵コナン」は2度おいしいアイテムになっている。人の名前を覚えるのが苦手だし、インターネットがなければブログ更新は不可能だ。既に健忘症だが、症状が進まないことを祈るばかりである。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (バレーボーイズ)
2006-12-07 11:31:03

自分はメメントを見て、すごい衝撃を受けました
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マシニストも (酔生夢死浪人)
2006-12-07 22:58:15
 私も衝撃を受けました。先に「マシニスト」を見ましたが、テーマ的にも、手法的にも近い部分があります。
返信する

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