酔生夢死浪人日記

 日々、思いついたさまざまなことを気ままに綴っていく

WWE&NFL~米国発スポーツエンターテインメントの今

2014-09-09 23:34:26 | スポーツ
 人生は消去法だ。齢を重ねるにつれ可能性は消え、関心の範囲も狭まる。57歳の今、俺がファンといえるスポーツはNFL、競馬、WWEだ。ボクシングを観戦する感覚で楽しんでいる将棋も、俺の中ではスポーツに含まれる。

 とはいえ野次馬だから、周りが騒ぐと顔を突っ込む。錦織圭の快進撃を追い掛けながら、亡き父を思い出していた。スポーツ全般を〝亡国病〟と切り捨てていた父だが、ボルグに肩入れしていた。意志薄弱の息子に、「あの粘り強さを見倣え」と言いたかったのか。

 四半世紀ぶりに集中してテニスを見たが、理詰めの解説とバスルームブレークに、時の流れを感じた。錦織は奔放な天才、ジョコビッチは真面目な努力家と、これまでの日本人と外国人ではコントラストが逆だ。13歳からアメリカで過ごした錦織は、日本とは無縁の土壌で個性と感覚を磨いた。

 糸谷6段が3番勝負で羽生名人を下し、竜王位の挑戦権を獲得した。故村山聖9段以来、森信雄門下から個性的な棋士が続々と誕生しているが、中でも糸谷は際立っている。巧まざるユーモアを感じる自然児だが、阪大大学院で哲学を専攻する学究派でもある。

 3週間のタイムラグで、WWEの4大PPVの一つ「サマースラム」を見た。会社の規模(売上高、純益、総資産、社員数など)でいえば吉本興業に近いWWEは100カ国以上で放映されており、グローバル化(=普遍性の獲得)が最大の課題だ。政治的に軋轢のある中国や中近東、文化的にアメリカと距離を置くフランスやドイツでも地歩を築きつつある。

 グローバル化のコンテンツとして打ち出したのが「WWEネットワーク」だ。月額99㌦99㌣(約1000円)で全PPV、お宝映像、企画物が全世界で視聴出来る。WWEの姿勢は、ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」に近い。アドリブ、ハプニングは全て織り込み済みで、シナリオを練り上げ、リハーサルを重ねて、完璧なエンターテインメントを作り上げる。WWE製作のドキュメンタリー「ビヨンド・ザ・マット」(00年)は、ロックとミック・フォーリーの死闘の舞台裏を余すところなく描いていた。

 今回の「サマースラム」は「WWEネットワーク」が配信する最初のPPVになった。3児の母である〝横暴な経営者〟ステファニー・マクマホン(大株主)が、〝楯突く従業員〟ブリー・ベラとリングで闘う。ブリーは反逆児ダニエル・ブライアンの妻で、双子の姉ニッキーと確執を抱えている。ブライアンの浮気が捏造されるなど、世界中のファンは<虚実ないまぜのソープオペラ>を満喫したはずだ。

 シナはファーム(OVW)時代に鎬を削ったブロック・レスナーに完膚なきまで叩きのめされ、王座を奪われる。NCAA、WWE、UFCで頂点を極めたレスナーは史上最強のレスラーだが、プロレスは強さだけでは決まらない。今回の王座獲得は、来年の「レッスルマニア」への布石といえるだろう。

 長年見ていると、次の展開が読めるようになる。レスナーは年内のPPVで、復活したアンダーテイカーの介入によって王座から転落する。テイカーは来年の「レッスルマニア」でレスナーに勝って引退し、ローマン・レインズが後継者になる……。これが俺の予想だ。

 NFLが開幕した。この時季になると「CSI科学捜査班」の第8シーズン最終話で殉職したウォリック・ブラウン(ゲイリー・ドゥーダン)を思い出す。鋭い直感と暗い情念で異彩を放ったウォリックは、フットボール賭博(合法)にハマっているという設定だった。

 シーホークス対パッカーズの開幕試合をNHKで解説した河口正史氏は「予想は当たったためしがない」と自嘲気味に語っていた。シーズンの行方どころか、4チームで争う地区優勝を当てることさえ難しい。サラリーキャップで戦力の均等化が図られており、首脳陣、選手の入れ替わりが激しいから、チームのファンダメンタルは未知数だ。

 各試合にも〝運命の一ひねり〟がちりばめられており、ハリウッドの脚本家さえ考えつかないアクシデントが頻繁に起きる。コーチになった気分で展開を読む時間がファンに用意されるNFLは、参加型のエンターテインメントといえる。

 昨季王者シーホークスは36対16と圧勝した。1年前はダークホースだったが、連覇の可能性も高い。強力な守備、着実なランニングゲームに加え、モバイルQBのウィルソンがパサー、チームリーダーとして進歩を遂げた。偉大なモチベーターであるキャロルHCは選手から絶大の信頼を寄せられている。盤石に思えるが、どこかに陥穽が待ち受けているはずだ。

 開幕週で見応えが一番あったのはNFC南の同地区対決だった。ファルコンズがオーバータイムの激戦でセインツを下す。この両チームは確実にプレーオフに進出するだろう。俺は数試合見てからその年の贔屓チームを決める。物差しは攻守にわたる想像力とギャンブル性だ。今のところ、AFCはドルフィンズ、NFCはライオンズが候補だ。

 俺の中で解説の2トップは、明晰で緻密な村田斉潔氏(龍谷大HC、GAORA専属)と上記の河口氏だ。経験に裏打ちされた直感で勝負する河口氏はNHK、GAORA、G+の全てに出演する。当人の実力に加え、事務所(吉本興業)の力も大きいかもしれない。

 あれやこれや慌ただしい日々に、NFLと竜王戦がアクセントを添える。読書の秋にはなりそうもない。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 出でよ、新しい水夫たち~映... | トップ | 「蝦夷地別件」~俯瞰によっ... »

コメントを投稿

スポーツ」カテゴリの最新記事