今回は予告通り、キュアーを取り上げる。<モノクロームでカラフルな万華鏡>とは明らかに矛盾する表現だが、キュアーのファンなら納得されるに違いない。キュアーとはバンドというより、ロバート・スミスという怪物が、自らの天分を発揮するために準備した<形>といえる。メンバーチェンジは頻繁だったが、<ロバート・スミス=キュアー>という構図は変わることはない。
デビュー当時のロバートは、商業的成功に無頓着だった。カミュの「異邦人」をモチーフにした“Killing An Arab”でデビューするなど文学通で、安部公房やカフカに言及したインタビュー記事を読んだ記憶がある。3rd“Faith”で地歩を固めたロバートは、スージー&バンシーズにギタリストとして加入した。バンシーズにインスパイアされたのか、4th“Pornography”は暗いトーンに貫かれていた。80年代中盤、“Top”~“The Head On The Door ”~“Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me ”を立て続けに発表し、UKシーンで存在感を増していく。
ニューウェーブを総括する大傑作“Disintegration”(89年)を経て、“Wish”(92年)がビルボードのアルバムチャート2位を記録する。カルトヒーローがようやくアメリカで認知されたのだ。静謐でメランコリックな“Disintegration”と開放感に満ちた“Wish”が、キュアーにとってツインピークスといえる。“Wish”以降の3枚のアルバムの中では、“Bloodflowers”(00年)が枯れた境地を示す佳作だった。
“In Orange”(87年)と“Show”(93年)がともに廃盤で、入手可能のライブ映像はベルリン公演を収録した“Trilogy”(03年)だけだ。“Pornography”、“Disintegration”、“Bloodflowers”の3枚のアルバムを全曲演奏するという画期的な試み(3時間半)で、キュアーの凄みに触れることができるお薦めアイテムだ。
ポストパンクのトップランナー、UKオルタナの旗手、ゴスの先駆者、ポップの求道者……。キュアーは幾つもの形容詞で語られる。どれもが一面を言い当てているが、全体像は霧に霞んでいる。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ドアーズ、デヴィッド・ボウイ、ジョイ・ディヴィジョンらの精神を継承して膨らんだのがキュアーで、その<ブラックホール>に後進のアーティストたちが、列をなして齧り付いている。ストーン・テンプル・パイロッツ、ナイン・インチ・ネイルズにもキュアーの影響は感じられるし、昨年の全米ツアーにはミューズ、クーパー・テンプル・クロース、インターポールら自他ともに認める「キュアー・チルドレン」が帯同していた。
別稿(8日)で触れた浅井健一(ベンジー)も同様だ。好きなギタリストを尋ねられ、「スージー&バンシーズのギタリスト」と答えていた。バンシーズ来日時のギタリストはロバート・スミスである。“Last Dance”はブランキーのファイナルライブを収録した作品(CD、DVD)のタイトルだが、“Disintegration”に同名の曲が収録されている。シャーベッツの「フクロウ」のジャケットは、“Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me ”の裏ジャケットと酷似していた。何よりキュアーへの傾倒が窺えるのは、ブランキー以降のベンジーの歌詞だ。イメージの連なりを紡いでいく手法を確立したのは、ロバート・スミスその人である。
最後に、リーズ留学中の後輩から届いたメールを紹介する。さすが本場というべきか、コールドプレイ、フー・ファイターズ、ステレオフォニックスなど、関心あるライブは目白押しだが、チケット代が日本の倍というケースもあるという。オアシスを巧みに利用し、ボノやゲルドフを手玉に取ったブレアだが、ロックに恩恵を受けている割に、ファンには還元していないようである。
レンタルで探したんだけどありませんでした。
やっぱり買わないとダメかな?
キュアーのアルバム買うなら
何がお勧めですか?
取るべき手段その①…廉価盤が店頭に並ぶことを想定し、待つ。歌詞カードをご覧になりたいのなら、有効な作戦です。
その②…つなぎとして輸入盤のライブアルバムを購入する。“SHOW”と“PARIS”は同時期の録音で、前者は90年前後の曲を中心にしたアメリカでのライブ、後者は主に初期の曲を収録したパリでのライブです。曲のダブリはなく、併せて聴けばキュアーの雰囲気はつかめます。
その③…コアな世界に触れたいならDVD「トリロジー」を買う。暗めで重いアルバム3枚から全曲演奏しており、キュアーの本質に触れることが出来ます。
まあ、こんな感じでしょうか。
O'も、もちろんキュアー好きです!
ファンになって、かれこれ21年になります。(^_^;)
初来日公演行かれましたか?(^^)O'は行きました。
素晴らしかったですね!(^^)v又行きたいです…(T_T)。
良かったら、又O'の所に遊びに来て下さい☆
国内盤は品切れ状態ですか・・。
歌詞カードはあきらめるかな・・(涙
アマゾンでWishの視聴が出来ました。
ちょっとしか聴けなかったけど
好きかも・・と思わせられました(笑)
とりあえず輸入盤で聴いてみます。
大江君にキース・ムーンに、どこにコメントしようかと迷いましたが、結局キュアーに。
「Trilogy」を見るたびに、なかなか来日しない彼らを呪いたい気持ちになってしまいます(笑)。
「あれやこれやグツグツ煮た鍋のような」
という文にいたく感動しましてコメント入れさせていただきました。
(自分のブログ名が『Hexenkessel:なんでもかんでも、「魔女の大釜」にぶち込んで』なもので)
Trilogyで聴いてはいたものの、あらためてCDでじっくり聴くと、演奏も歌も素晴らしく、その良さが実感できますね。(やっぱり、キーボードも必要なんじゃ・・・と思ってしまいます)
日本版ボーナストラックの「Coming Up」も好きです。
Disintegrationも大好きですが、40を過ぎて聴くBloodflowersは、聴いていてじんときます。
こんなスケールの大きい、いいアルバムをまた作って欲しいです。
21世紀に入って傑作をもう一枚というのが、ファンの願いでしょう。でも、声は衰えませんね。天性なのか……、いや、腹筋とかトレーニングをしてるのかな。想像はつかないけど。
先週アルバム「The Cure」を買いました。
4月か5月に新作が出る前に、聴いておいた方がいいかなと思ったからです。
シングルとして出た3曲以外は初めて聴きました。
最初はあのボーカルの勢いに圧倒されたんですが、繰り返し聴くうちにそれがかえってクセになり、ボリュームいっぱいで聴きほれています。
ほとんどがライブ録音ということで、これまでとは違い、変化球、小細工無しの直球勝負という印象を受けました。
ラストの「Going Nowhere」はロバートの得意の美しく、物悲しいラブソング。涙無しには聴けません。
これで、ますます新作への期待が高まりました。
新作、少し遅れそうな気もします。昨秋からツアー中だし。まあ、気長に待ちましょう。