大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2014年11月19日 | 写詩・写歌・写俳

<1171> 米国と中国、そして、日本 (5)

       国家とはおぎゃーと生まれ出づるより関わりとなるそれぞれにして

 中国の遠心における今一つの特徴は中国から世界各地に赴いている華僑の存在がある。これは異国を目指す決意によるもので、いろんな事情によることが思われるが、そこには中国人のバイタリティーが潜んでいる。そして、このバイタリティーにより成功者を出す。これは米国の移民や移民が抱くアメリカンドリームを思わせるが。米国は受け入れ側に当たり、中国は送り出す側にあって、そこには遠心と求心の違いがある。

 世界各国に見られるチャイナタウンや中華街の存在は、アメリカ村と呼ばれる街区とはその形態からして異なり、そこには中国人がいて中国人のバイタリティーが感じられる。華僑で最もよく知られるのはシンガポールであり、ベトナムやマレーシアなどにも見受けられる。この中国の遠心の現れは最近のアフリカ諸国などの開発途上国における中国進出の形に見えるところがある。

 この中国人の進出に言える特徴は、資本の導入のみでなく、現地に中国人を送り込んで、中国人の一団によって事業を展開するというやり方である。これは華僑に同じく、遠心のケースであり、求心の米国には見られないやり方であることが言える。このやり方は増え続ける人口に関わりがあるとも受け取れる。世界の七十二億人中、漢民族と呼ばれる中国人は、中国国内に約十三億人、国外に約四億人いて、計十七億人が存在すると言われる。これは世界人口の二十パーセント以上に及ぶもので、世界で一番多い民族と言われている。

 この数字は、如何に中国人が多く、如何に世界に散らばって存在しているかを物語るもので、中国の遠心の構図がよくわかる現象である。言わば、中国人の国外への移住は、多数に上る民族の生きて行く方策の一つに違いなく、国が意志する遠心の働きによると言って差支えなかろう。これは少子化に悩む日本とは正反対の状況で、一人っ子政策というような方法も打ち出されているほどである。

 だが、この政策に不満を抱く国民も現れ、国外で出産するケースが最近増えているという。その国外に米国を選ぶというのが流行っていると言われる。これは米国で生まれた子供が米国籍を取得出来るからで、この出産のケースは遠心的な中国と求心的な米国の事情による出入りの関係がぴったり一致することによって成り立っているのがわかる。

                             

 以上、米中両大国の国のあり方にはっきりとした違いのあることに気づくが、ここで、少し両国の現状について見てみたいと思う。国というのは国民の安心・安泰、即ち、幸せをもってまとまることを理想とするのであろうが、そこに近づけるためには幾つかの課題がある。それは実生活における国民の希求を叶えることにあると言える。で、基本的なものを幾つかあげることが出来る。

 即ち、(1)食糧、(2)エネルギー、(3)金融・経済・雇用、(4)安全保障・防衛、(5)福祉・社会保障、(6)環境など、これらの課題。果して十分に行き届き、国民を満足させているか、米中両国を眺めてみるに、(1)の場合はともに農業国の側面があり、輸出している点がうかがえる。(2)については、ともに十分確保出来ているのであろう。米国にはシェ―ルガスの採取は大きい。(3)については、市場原理主義によって米国の優位が見られ、中国は米国支配の金融システムに対抗すべく、別の枠組み作りを模索している。(4)については米国にはイスラム国への対応が緊急を要するところであるが、今のところ自国に直接大きく関わることのない問題である。(5)、(6)については、貧富の差の問題や温暖化の問題、中国では大気汚染など公害が深刻化していることが思われる。

 国として、これらの課題に応ずるには情報の入手が大切で、この情報如何によって民意にも影響し、混乱にも繋がる。よって、情報は為政者に必要かつ重要なことで、両国ともに情報収集に力を注いでいるのがうかがえる。貧富の差や温暖化、公害の問題は、科学優先の物質文明、即ち、デカルトの理性主義の反映の側面と見なすことも出来るわけで、問われるところでもある。また、中国の発展途上国への進出に翳りが見えると言われるのは、遠心の基になっている中華思想の問われるところと言えなくもないことが思われる。

 日本は、こうした事情にある米中の大国に対し、どのように向かい合えばよいのだろうか、最後に、日本という国とその立場について触れてみたいと思う。 写真は北京におけるAPECの首脳会談で顔を合わせるオバマ大統領と習国家主席(テレビ映像による)。 ~ 続く ~