<1174> 俳優高倉健の訃報に接して
それぞれが語る端々聞き及ぶ 健さん貴方の逝きし晩秋
映画俳優の高倉健が亡くなった。享年八十三歳。私生活を全く見せない俳優だった。任侠ものから人情ものまで何作品か見ているが、1977年作品の「幸福の黄色いハンカチ」がもっとも印象に残っている。ストイックで寡黙な人の印象が強いが、生前接した人々の彼への人物評はよくしゃべるやさしい心遣いの人だったという。だが、ほとんどのフアンにはそのような印象はなかったのではないか。そういうフアンの一人として、この度の訃報に接した次第で、ここに少しく俳優高倉健に寄せる歌を作るに至った。
不束にも歌は私自身の気持ちに帰るところがある。これは私が私自身の心を締め付けるもので、俳優たる彼の知ったことではなかろう。言うならば、これは私の至らなさから来るものにほかならない。このことを思うにつけ、彼の映画俳優としての道に対する厳しさが思われるところである。ただただご冥福をお祈り申し上げるのみである。以下は、映画俳優高倉健、彼への追悼の歌である。 写真は左が「幸福の黄色いハンカチ」の一シーン。中が「単騎千里を走る」の中国ロケで。右は「網走番外地」のワンカット(いずれもテレビ映像による)。
行き着けず戻れず 健さん ねえ健さん 律し切れざる不束にゐる
思ふこと尽きぬがゆゑに生はある 孔子思へば 孔子に惑ひ
男とは斯くあるべしと思はしむ 健さんあなたの旅の端々
スターとは貴方のやうな人を言ふ フアン一人一人の彼方
美は一つ 思ひて忍び尽くすこと 黙して立てる一樹のやうに
貫きし美学と辛さの等しさを単騎は千里走り遂せり
言葉とは思ひのゆゑにあると知る 言葉とともに ありし人生
人生の景色は死後に開かるる そんな貴方の今日の印象
コーヒーはいいよね 健さん 飲みながら貴方の映画見てゐたくゐる