<439> 2012・紅葉さまざま (1)
紅葉の 山から下りて 来る声す
紅葉と言えば、日本の原風景である里の紅葉を歌った文部省唱歌「紅葉」(もみじ)がある。高野辰之作詞、岡野貞一作曲によるもので、明治四十四年に発表された。一番の歌詞が印象的で、子供のころからよく歌った。
(一) (二)
秋の夕日に照る山紅葉、 渓の流れに散り浮く紅葉、
濃いも薄いも数ある中に、 波にゆられて離れて寄って
松をいろどる楓や蔦は、 赤や黄色の色様々に
山のふもとの裾模様。 水の上にも織る錦
紅葉にはさまざまあって、その色彩のグラデーションはまさに「山のふもとの裾模様」である。その色は常緑の松に映えるという次第で、歌詞にもその表現が見える。常緑と言えば、スギやヒノキの植林帯があるが、その植林帯にときとしてケヤキが見られ、秋にはそのケヤキだけが紅葉し、よく目につく。これは多分、植林するときケヤキだけ目印に残したのではないかと思われる。紅葉とは言うが、山では黄葉の方が正しいかもしれない。ケヤキの紅葉は変化があって捨て難いところがある。
紅葉は主に落葉樹に見られる現象で、葉緑素の変化によると言われ、大きく分けて、赤色系の紅葉、黄色系の黄葉、それに茶褐色系の褐葉があると言われる。紅葉ではカエデ、ツタ、ツツジ類など、黄葉ではイチョウ、ハギ、ダンコウバイなど、褐葉ではブナ、クヌギなどがあげられる。ケヤキの場合は赤みの強い木と黄みの強い木とが見られ、その中間色が多いように思われる。紅葉はアントシアン、黄葉はカロチノイド系の色素が影響し、褐葉は加えるところタンニンの作用によると言われる。
写真は左から植林されたスギ林の中でひと際鮮やかなケヤキの紅葉、みごとに紅葉したツタウルシ、ブナの褐葉、晴れた空に映えるコハウチワカエデの紅葉、みごとなイチョウの黄葉。大和の山野では今、紅葉(黄葉)が真っ盛りである。