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現代ジャーナリズム事典 公共圏・公共性・公共図書館

『現代ジャーナリズム事典』より

▲公共圏

 (語義)「公共圏(Offentlichkeit)」は、多義的な概念で語義も様々である。しかし、メディアジャーナリズム研究に大きな影響を与えた中核的な思想は、ドイツの社会学者ュルゲン・ハ-バーマスの『公共性の構造転換』(初版1962年)の公共圏概念といえよう。

 (影響)同書によると、17、18世紀の市民革命前夜、市場経済が徐々に発展して社会が国家から独立し、財産と教養を手に入れたブルジョア層が出現した。この新たな社会階層から芸術や文化を語り合う「文芸的公共圏」が生まれた後、都市部においてより自由な政治的言論空間へと発展した。当初は富裕層など参加資格が限定されたサロン的空間であったが、やがて、新聞ジャーナリズムによって公共圏は拡大し、市民革命と民主主義発展の原動力となった。この段階において、市民は公共的利害について議論する主体、つまり「公論の担い手」(=公衆)となった。これが、リベラルな政治的公共圏の誕生である。

 しかし、現代社会では、公共圏は脱政治化し、一部の有名人や企業による操作的パブリシティと広報機能の空間へと「再封建化」されたと、ハ-バーマスは同書で批判した。

 欧州の歴史から抽出されたノヽ-バーマスの規範的公共圏概念に対しては、ブルジョア公共圏だけに注目している、平民的公共圏を無視している、女性を排除している、文化産業を牛耳る人々の操作能力を過大評価している、ュートピアで理想像に過ぎないなど、様々な観点から異論も多い。

 1990年代以降、ハ-バーマスは、公共圏を既存のマスメディアに支配されている空間に限らず、人々の生活世界に根差す積極的コミュニケーション空間として捉え直した。今日、オンライン公共圏の形成などが活発に議論され、「公共圏」がなお注目されている。

▲公共性

 (語義)私的なもの、個人的なものを超える集合的・共同的な性格のことをいう。ただし、その詳細は語られる文脈や観点によって大きく異なる。日本の場合、国家的公共性ないし全体性のために個人の権利が犠牲にされてきた戦前の経験から、戦後は社会全体(への服従)を想起させる「公共性」なる言葉を、消極的・限定的に解する傾向が強かった。

 例えば、日本国憲法13条は人権制約根拠として「公共の福祉」を掲げるが、通説は、これをあくまで人権間の矛盾・衝突の調整原理として捉え、かかる概念の中に人権を超える社会公共的利益を読み込むことを峻拒してきた。ただし、近年は、ノヽ-バーマス流の市民社会(Zivilgesellschaft)論の発展などにより、こうした狭溢な「公共性」概念は克服されつつあり、これをより積極的に、あるいは規範的に捉える見解が有力化している。その中には、「公共性」を、公開の討議と反省を経た公論の維持・形成や、権力を批判すると同時にその正当性の源泉ともなるような豊かなコミュニケーション的空間の構築と関連付けて捉える見解がある。こうした「市民的公共性」論によれば、単なる多数人の利益や選好とは異なる(規範的)「公共性」のために、特定個人の自由や権利が制約されることもある。

 (実例)ジャーナリズムとの関係でも、「公共性」を有する表現が、個人の名誉権やプライバシー権に優位することがある。

 例えば、刑法は、名誉毀損を犯罪としながらも(230条)、①公共の利害に関する事実に係り、かつ、②その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、③事実の真否を判断し、そこで真実性の証明があったときは、|これを罰しない]としている(230条の2)。裁判例によれば、①の「公共」的事実とは、上述のような規範的含意から、「多数人の単なる好奇心の対象となる事実」ではなく、「当該事実が多数一般の利害に関係するところから右事実につき関心を寄せることが正当と認められるものを指す」とされる(東京高判平成13年7月5日)。要するに、ここでは、①が、国民間で議論される「べき」問題に関する事実であると考えられている。

 具体的には、(a)公権力への批判を含意する、政府や公職者に関する報道、(b)我々の社会を批判的・反省的に捉える契機となる、犯罪や裁判に関する報道、(c)社会において一定の影響力をもつ者(「公人」とも呼ばれる)の行状等(私生活上の削犬も含む)に関する報道(月刊ペン事件)が、「公共の利害に関する事実」にあたると考えられている。

▲公共図書館

 (語義)広く市民の利用に供されている図書館のこと。日本では、「図書館法」(1950年制定)に規定されている図書館を指す。同法では、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」(2条)と定義している。2012年度で全国に3234館が設置されている。

 (実例)公共図書館には、公立図書館と私立図書館がある。私立図書館は、日本では少数しか存在せず、そのため、一般的には“公立図書館=公共図書館”と認識されている。

 公立図書館は、地方公共団体が設置する図書館である。都道府県が設置するものと市町村が設置するものとがある。前者は、後者のバックアップ機能(市町村立図書館支援)も果たしている。「図書館法」では、公立図書館について、「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」(17条)と定めている。都道府県と市では、図書館設置率はほぼ100%であるが、町村では50%超にとどまっている(2012年度)。公立図書館未設置の町村では、「社会教育法」(1949年制定)に規定する公民館に図書室を設けて代用しているところが多い。近年、行財政改革の一環として、公立図書館の経営をアウトソーシング(指定管理者やPFIなど)する地方公共団体が増えている。これによりサービスが向上したと評価する意見がある一方、利用者の個人情報の管理や職員の専門性の継承などを不安視する意見も根強い。

 私立図書館を設置できるのは日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人であり、全国に20館が設置されているにすぎない(12年度)。成田山仏教図書館や東京子ども図書館などである。公立図書館と違って、入館料や図書館資料の利用に対する対価を徴収することが認められている。
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仮想通貨革命 起業が容易になれば社会は進歩する

『仮想通貨革命』より 分散市場と自動化企業が作る未来社会

起業が容易になれば社会は進歩する

 社会の進歩は、技術革新や新しいビジネスモデルによってもたらされる。それらの多くは、伝統的な企業の中から生まれるのではなく、新しく興された企業によってもたらされる。だから、起業の可能性が高まることは、社会の進歩にとって本質的に重要な意味を持つ。

 ビットコインとその拡張技術は、さまざまな意味において、起業の可能性を増大させる。とりわけ、4で述べた分散市場とDAC(自動化された企業)が持つ潜在的可能性は、きわめて大きい。

 これらの大部分がまだ構想段階であり、現実に存在していないのは事実である。だから、「そんなことが実現できればすごいが、実現できないだろう」と考える人が多いかもしれない。

 しかし、いま状況は急速に展開している。数カ月経つただけで、事態はかなり変わってしまっている。以下では、最近の動向を紹介することとしよう。

 それに先立って、まず、現在すでに存在している仕組みを見ておこう。第一は、起業のための資金調達、第二は予測市場である。

注目を集めるキックスターター

 新事業の資金調達手段としては、現在、つぎのようなものがある。

 第一は、IPO(新規株式公開)である。ただし、これにはコストがかかる。IPOの手数料率は、通常は資金調達額の三~七%と言われる。フェイスブックの場合は一%程度に抑えたと言われるが、資金調達額が一六〇億ドルと大きかったため、手数料総額は一億〇七六〇万ドル程度になったと言われる。ツイッターは、IPOに6000万ドルの手数料を支払ったとされる。これらは特別な例としても、IPOには巨額の費用が必要だ。

 監督官庁による審査を通る必要もある。そのために膨大な資料を準備しなければならず、さまざまな点で監督官庁の指導に従わなければならない。

 また、そもそもIPOは、非上場企業の事業が軌道に乗り、安定的な収益を上げられる見通しが立った後に行なうものである。ネットスケープは事業の目処がつかないうちにIPOを行なったが、これはまったくの例外だ。事業のアイディアだけでIPOすることは、普通はできない。

 そこで、IPOが可能になる前の段階にある事業の資金調達が必要になる。IT革命で大きな役割を果たしたのは、ベンチャーキャピタルだ。アップル、ヤフーなど多くのベンチャー企業が、これによって事業をスタートさせた。シリコンバレーのIT企業にとって、ペンチャーキャピタルは本質的な役割を果たした(『アメリカ型成功者の物語』を参照)。

 比較的最近行なわれるようになったものとして、クラウドファンディング(crowdfunding)がある。これは、インターネット上でアイディアを公開し、それに賛同する不特定多数の人々から比較的少額の資金を募る仕組みだ。中でも、二〇〇九年に設立された「キックスターター」(Kickstarter)が注目されている。

 これは、クリエイティブなプロジェクトのためのクラウドファンディングだ。対象とするのは、新商品の開発、映画、音楽、演劇など。「インディゴーゴー」(indiegogo)も同様のサービスを提供している。商品化プロジェクトに資金を提供した者は、商品化後に一般販売価格よりも低価格で入手できる。ただし、プロジェクトの所有権を主張することはできないし、コントロールもできない。

 これまで個人のアイディアの商品化は難しかった。この仕組みを使うことで、大組織に属していなくとも、アイディアを実現することができるようになったと言われる。
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パートナーとの会話

未唯へ

 今週の始まりは水曜日です。Iさんが居ないと、始まった気がしない。

パートナーとの会話

 「今日、話した件で、Oさんに相談しました。確定した、要件の話題になり、自分は聞いていない発言がまた出ました。自分が腹落ちするために、何のために実施するのかを明確にしてから仕事は進めるようにと小言を散々言われました。私は担当していない案件です。言い訳になりますが、気にしすぎだと思います」

 「オーラルの確認をしていた時に、要件検討で、全体を見ながら、進めていくことが重要だと感じました。開発品質を上げるのは、現場でツールを有効に活用し、お客様に最大限のサービスをして、お客様満足に繋げるためであり、現システムが現場ニーズにあっているのか、現状評価を実施したい。さらに、現システムの構造上の問題を整理し、より使いやすい仕組み提案ができるようにしていきたい。担当者にそのスタンスがない。心のリニューアルが必要です。」

 「私はシステム開発には向いていません。Oさんに言わせれば、現場を知らない、このような改修が必要なのか掘り下げていない。だから、なぜなぜが足りない、担当者へのヒアリングが不足している。」

 「関係ない人が何を考えているのかを考えるのは避けた方がいい。他者が何を考えているかを分かることはありえない。これは現代の哲学の基本です。何しろ、同じものを見ていることも保証されていないのだから。哲学の基本は自分の存在から考えよ!ということです。」

 「以下の見方は間違っている。・現場を知らない⇒今のJの中で、唯一、現場発想している。・このような改修が必要なのか掘り下げていない⇒毎回、なぜなぜをしているのは確かです。安易に答を出さないことがその現れです。」

 「彼らは自分に自信がないからです。そんなものはどうでも良い。それよりも、何が悪いのかをトコトン、追い詰めてください。絶対に、あなたのことを正当に見ている人はいます。」

 「辻褄合わせの「システム開発」ではなく、まともな「システム設計」に行くべきだと言ったはずです。ローカルで行っていることをグローバルで考えられ、グローバルで行っていることをローカルで考えられる人材です。」

 「パートナーを鍛えるために、彼らは存在していると思えば、それなりに興味が出ます。なぜ、彼らはそう考えるのか、それでも組織がもっているのは、何故なのか。販売店へ果たすミッション、お客様にどのように向かうのかと掛け合わせれば、自分のやることが出てきます。」
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