錦帯橋から大明小路を数百メートル下ったところに、小豆色の昭和初期に建てられたというレトロ風な2階建てがある。入口の上に「場眞寫田細」という文字が並んでいる。年配者ならすぐに右から読む、と分かる。時代を偲ばせる表札だ。
見合い用、そして結婚式、孫の宮参り、節目節目でお世話になった。記憶は薄くなったが、2階への階段、そこにある写場の作り、備えられていた写真機、椅子や机など、今どきのようなカタカナで書くことははばかれる歴史を感じるな品々だった。
昭和30年代中ころから自分のカメラで撮りはじめた。当時はフィルム写真、この写真店にもどのくらい通っただろう。トリミングをはじめ素人の注文をよくこなしてもらった。しかし、デジカメになって訪れることはなくなった。
建物は歴史を感じさせるが、スタジオ撮影され展示されているいる作品はどれもいま風で、家族写真はいいな、と感じる。この季節、まるでスターのように撮られた七五三の子どもたちの笑顔が見る者を楽しませる。
子どものころ、錦帯橋界隈にはこうした写真館が3軒あった。ほかの2軒も外装は石造りで歴史を感じさせるものだった。2軒とも解体されその姿を偲ぶものはない。由緒ありそうな建築物は保存を叫ばれながら、一方では現代風の便利さの前に姿を消していく。住む人にとって残すか建て替えるか、それは苦衷の選択だろう。
(写真:子どものころから変わらない姿で建っている写真館)
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