名勝・錦帯橋近くにある岩国徴古館は幕末の志士赤禰武人(あかねたけと)の生涯を漫画で紹介した。冊子は「幕末を駆けた一陣の風 赤禰武人伝」でA4版20頁。幕末の志士・赤禰武人その人を知る人は多くないだろう。だが妙円寺僧侶・月性、吉田松陰、高杉晋作、久坂玄端などと共に時代の夜明けのため奔放した一人として国中を動き回った。
冊子は15歳の秋、1853(寛永6)年に生誕地の岩国市柱島から一艘の小舟を漕ぎながら誰にも告げずに島を離れるとこから始まる。月性や松陰に学び広く活動する中で次第に才を認められ、高杉晋作発案の騎兵隊第三代総督に就く。第2次長州征伐(四境に役)を防ぐため薩長盟約に奔走するも、高杉晋作らの誤解を生み、生誕地で藩役人に捕らわれ1866(慶応2)年斬首、享年29歳。獄衣の背中に「真似偽 偽似真」記した、その意は「真実は偽りに似て 偽りは真実に似る」。
武人の死後1カ月半、薩長盟約は成立、幕府は長州征伐に失敗、明治維新へ向けて時代は動く。高杉晋作は赤禰武人と同じ29歳で没した。冊子の終わりに晋作が残した「武人の心情を洞察すること能わず、其の生命を保たしめざりしは遺憾とするところなり」という記録があり武人の名誉回復になる。
赤禰武人没後150年を機に作成された冊子。各ページの下段に登場する人物紹介、安政の大獄、英国公使館焼き討ち、禁門の変などの史実が簡明に記されていて、私のような素人にも分かりやすく読みごたえもある。冊子は「歴史には高杉晋作のような英雄がいる しかしその陰で志をおなじくし、必死に働きながら、非業の死を遂げた者も多い 赤禰武人もその一人であった」と結ぶ。現世にも通じると味わう。
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