みことばの光的毎日

聖書同盟「みことばの光」編集者が綴るあれこれ

主は…ご覧になって

2013年03月15日 | 創世記
創世記29章15-35節


 ヤコブはラケルとの結婚を切望していました。愛する人を自分の妻とするためには、どんな苦労をもいとわないということでしょうか。それにしても、7年がほんの数日のように思われるとは、驚きです。しかもヤコブは、7年が満ちた時に、伯父のラバンにだまされて、ラケルではなくてレアをあてがわれるのです。これまでの努力は何だったのだろう! と力が抜けるような出来事です。
 けれどもヤコブは、ラケルとの結婚を条件にさらに7年ラバンに仕えます。合計14年。

 「レアの目は弱々しかった」(17節)とのことばを、新共同訳聖書はレアに好意的に、「レアの目は優しかった」と訳します。一方の訳だけしか読まないと、レアの印象はずいぶんと違ってきます。多くの英訳聖書は、「弱かった」と訳し、あるものは「弱く、くすんでいた」とまで訳しています。調べてみると、原語には「弱い」「力が足りない」の他に、「優しい」「柔らかい」との意味もあります。ですから新改訳聖書も、同じことばを他の箇所では「優しい」と訳すのです。
 ただ、レアについての描写を後半のラケルと比べていると考えますと、やはり「弱かった」という意味なのかもしれません。どちらにしても、ヤコブとラケルとの摂理的な出会い、熱烈な愛の前では、レアはかすんで見えるということなのでしょう。
 
 ヤコブはラケルを愛し、レアを嫌う…。姉妹間の心の葛藤はどれほどのものだったかと想像してしまいます。
 レアとしても、好んでヤコブの妻となったのではおそらくなく、父の策略に巻き込まれてのことだったでしょう。夫の愛が自分にではなく妹に向けられているのを知った上で、妻であり続けるのはどれほどの苦痛であったかと思います。

 そのレアを主がご覧になっていったと聖書は記します。そして、彼女は子に恵まれるのです。ヤコブと妻たちとの間に生まれた12人の子どもたちは、イスラエル民族の始めとなっていきます。その中のルベン、シメオン、レビ、そしてユダは、レアの子どもです。ユダの子孫はダビデ、そして救い主としてお生まれになったイエス・キリストヘとつながります。

 救い主降誕への道筋には、夫をめぐって苦しみ嫉妬する女性も含まれているのです。

 
   


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