shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles Live at the BBC (Disc 2-Pt. 3)

2009-10-31 | The Beatles
 「BBCライブ」もいよいよ最終回、Disc-2 の後半はビートルズ珠玉のヒット曲アメアラレ攻撃だ。⑱「アイ・フィール・ファイン」、⑲「アイム・ア・ルーザー」、⑳「エヴリバディーズ・トライング・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」、(21)「ロックンロール・ミュージック」、(22)「ティケット・トゥ・ライド」、(23)「ディジー・ミス・リジー」、(24)「カンザス・シティ~ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」と、怒涛の7連発なのだ。エ~イ、頭が高い(笑)。この「BBCライブ」は公式録音曲以外のカヴァー曲を良い音で聴けるというのが私にとって一番の魅力で、チャック・ベリーやリトル・リチャードといった偉大なる先人達の、いわゆる “ロックンロール・クラシックス” を彼らなりにどう料理して聴かせてくれるかに一喜一憂しているのだが、逆にこれだけヒット曲を並べて “どうだ!” と言われると “参りました” と平伏すしかない(笑)。ただ、⑱⑲⑳は先述の⑨「シーズ・ア・ウーマン」と同様、オーヴァーダブを駆使してほとんど公式テイクに近いヴァージョンに仕上げてあり、確かに完成度は上がったかもしれないがライブ特有の熱いノリは後退、もちろん感じ方は人それぞれだろうが “「スター・クラブ・ライブ」のような熱気溢れる演奏を出来るだけ良い音で聴きたい” 私のような人間にとっては(21)~(24)の方が遥かに嬉しい。特に(21)はビートルズ史上最強のカヴァーと言ってもいいぐらいの素晴らしい公式テイク(←ジョージ・マーティンのピアノが絶品!!!)には敵わないものの、かなり気合いの入った演奏が聴けて大満足。イントロの “ジャジャジャジャ♪” に続いてジョンが歌い始めるとアッという間に彼の歌声に惹き込まれていってしまう(≧▽≦) ドライヴ感溢れる演奏も圧巻で、日本公演(特に6/30)とは別のバンドみたいやね(笑)。ただ、何か広~い部屋で歌っているようなエコーがヴォーカルにかかっているように感じられるのが謎だ。又、(24)は62年の「スター・クラブ・ライブ」でのハイスピード疾走ヴァージョンよりもテンポが落とされ、この1年後に「フォー・セール」に収録される公式テイクにかなり近づいた、いわゆる “過渡期ヴァージョン” として聴けば非常に興味深いものがある。「アンソロジー」でも明らかになったように、現状に満足せず貪欲に最高のモノを追求していく姿勢にはホンマ頭が下がる思いだ。
 リンゴのヴォーカルというとどうしてもC&W色の強い「アクト・ナチュラリー」が真っ先に頭に浮かんでしまうのだが、この(26)「マッチボックス」では実にエエ感じでロックしている。私は「パスト・マスターズVol.1」に入った公式テイクよりもこっちの方がノリが良くて好きだ。間奏のギター・ソロに入る時に “All right, John!” と叫ぶリンゴの溌剌とした感じもいい(^.^) (27)「アイ・フォーゴット・トゥ・リメンバー・トゥ・フォーゲット」は実に珍しいジョージのエルヴィス・カヴァー。こういうレアな音源が聴けるのもこのアルバムの魅力の一つだろう。チャック・ベリーのカヴァー(29)「アイ・ゴット・トゥ・ファインド・マイ・ベイビー」は当然ジョンがヴォーカルで、オリジナルに忠実な節回しを聴かせてくれる。尚、曲が始まる前にジョンが間奏のハーモニカっぽい音は “ハープ” なんだと拘りを見せていたが、ネットで調べるとハーモニカのことをハープ(ブルースハープ?)とも言うらしく、何のこっちゃよく分からない。彼一流のジョークでDJをからかってたのかな?
 (30)「オー・マイ・ソウル」はリトル・リチャードの曲で(←曲想が彼自身の「ジェニ・ジェニ」にそっくりな気がするんやけど...)ポールがさっきのジョン同様、オリジナルに忠実なスタイルのヴォーカルを聴かせてくれる。その歌声からは “ボク、リトル・リチャード大好きなんだヨ!” という感情がダイレクトに伝わってくる。ゴフィン=キングの(32)「ドント・エヴァー・チェンジ」はジョンとポールの息の合ったハーモニーによって完全に “ビートルズの曲” と化している。(33)「スロー・ダウン」はジョンの“ブルルルルゥ~♪” がない以外は公式テイクに遜色ない疾走系ヴァージョンに仕上がっている。そして、後半の目玉は何と言ってもジョンが歌う(34)「ハニー・ドント」だ。公式テイクではリンゴが歌っていたが、まさかジョンの歌声で聴けるとは思わなんだ(^o^)丿 リンゴには悪いがジョンのヴォーカルが持っている抜群の表現力、強烈な吸引力は圧倒的だ (≧▽≦) そして「BBCライブ」のシメはデビュー曲(35)「ラヴ・ミー・ドゥ」だ。アルバム・ヴァージョンでは叩かせてもらえなかったリンゴがしっかりしたビートを刻み、ポールが実に丁寧に、そしてノビノビと歌っている。コレは公式テイクよりエエかも...(^.^)
 ということで6回に分けて聴いてきた「BBCライブ」、バリバリのライブ盤と思って聴くと肩透かしを食うが、彼らのルーツを知ることのできる選曲といい、全56曲というヴォリューム満点の内容といい、センスの良いセピア色のジャケットといい、初期ビートルズ好きにとってのマスト・アイテムといっていい好盤だと思う。

The Beatles - "Honey Don't"
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The Beatles Live at the BBC (Disc 2-Pt. 2)

2009-10-30 | The Beatles
 Disc-2 の中盤には興味深いカヴァー・ヴァージョンが立て続けに収録されている。まずは⑫「ロンサム・ティアーズ・イン・マイ・アイズ」、オリジナルは1960年に「ドリーミン」(邦題:夢にみる恋)で大ヒットを飛ばしたジョニー・バーネットがまだ売れる前の1956年にコーラル・レーベルからリリースしたノーテンキなロカビリーなのだが、このBBCライブのビートルズ・ヴァージョンで初めて聴いた時はビックリした。このギターのフレーズ、後年の「ジョンとヨーコのバラード」そのまんまやん!乱暴に言えばメロディーをちょっと辛口に変え、テンポを上げてロックンロールのビートで武装すれば一丁上がりだ。しかしその “一丁上がり” をジョン・レノンとポール・マッカートニーという稀代の天才2人でレコーディングするとあのような超名曲名演になるのだから、ビートルズのマジックは本当に凄い。それにしても「ラン・フォー・ユア・ライフ」といい、「カム・トゥゲザー」といい、ジョンは先人達のフレーズを巧くパクッてそこから元ネタを遥かに超えるカッコイイ曲を作る天才やね(笑)。この⑫を聴いた後に続けて「ジョンとヨーコのバラード」を聴くと、その偉大さが分かると思う。
 ⑬「ナッシン・シェイキン」は正式なタイトルが「エイント・ナッシン・シェイキン・バット・ザ・リーヴズ・オン・ザ・トゥリーズ」という何の芸も華もない長ったらしいモノなのだが、このメロディーは妙に心に引っかかる魅力を持っている。これを聴くまでは「スター・クラブ・ライブ」でのアップテンポなヴァージョンがそこそこ好きだったのだが、ここではオリジナルのエディー・フォンテーン・ヴァージョンに忠実にミディアム・テンポで歌うジョージのヴォーカルがこの曲の良さを見事に引き出しており、私の中で一気に「ナッシン・シェイキン」株が急上昇したのを覚えている。「ディジー・ミス・リジー」の親戚みたいなイントロも含め、ジョージ大活躍の巻だ。
 ⑭「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」はチャン・ロメロのオリジナルよりもスウィンギング・ブルージーンズのヒット曲と言った方が分かりやすいが、この手のリトル・リチャード・タイプのシャウト・ナンバーはポールの十八番。喉も張り裂けんばかりにブチかますハイトーンのシャウトは貫録十分だ。⑮「グラッド・オール・オーヴァー」は最初曲目を見た時、一瞬DC5のカヴァーしてんのか!と色めき立ったが、実際に聴いてみると何のことはないよくある同名異曲というヤツで、これはカール・パーキンスのカヴァー。とにかくパーキンスといえばジョージだが、 “グラッド~♪” で声が裏返るところが面白くて大好きだ(笑)。
 ⑯「アイ・ジャスト・ドント・アンダースタンド」はスタンダード・ソングも歌う美人女優アン・マーグレットのヒット曲で、当時の彼らとしては超異色の選曲だ。ジョンは軽~く流しているが、それでも聴かせてしまうのは天性のヴォーカリストとしての実力か。⑰「ソー・ハウ・カム」は彼らがリスペクトするエヴァリー・ブラザーズのカヴァーで、珍しいジョンとジョージのデュエットが実に見事にエヴァリーズなハーモニーを再現している。それにしてもグループの中にこれほど歌えるヴォーカリストが3人もいるというのは実に強烈な武器だろう。コーラス・グループとしての一面だけを見てもビートルズは凄いグループだったと思う。

The Beatles- Lonesome Tears In My Eyes (Live at the BBC)
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The Beatles Live at the BBC (Disc 2-Pt. 1)

2009-10-29 | The Beatles
 Disc-2 になると俄然ビートルズ公式録音曲(カヴァーも含む)の含有率が高くなる。Disc-1 が28曲中9曲と32%だったのに対し、Disc-2 では28曲中17曲で61%と約2倍近くまでアップしている。普通ならキャーキャーうるさい嬌声に邪魔されずに白熱のスタジオ・ライブが聴けると大喜びなのだが、このアルバムの編集ではそう単純に喜んでばかりもいられない。
 まず②「ア・ハード・デイズ・ナイト」、何じゃいコレは?具体的に言うと1分18秒から1分32秒までの間奏部分だけレコードの音で、その前後がスタジオ・ライブという何ともブサイクな編集なのだ。それも誰が聴いても明らかに分かるような稚拙な繋ぎ方で、他にも良い音源があったはずなのに何でわざわざこんな不自然極まりないテイクを入れたのかワケがわからない。歌の方もノリがイマイチで切れ味に欠け、特にアタマの部分は何か一瞬躊躇してから歌い出しているような感じがするし、全般的にいつもの大爆発が感じられない。ジョンもポールも揃って疲れてたんかな?
 それから⑧「シングス・ウィー・セッド・トゥデイ」、サビに入ると(1分1秒、1分43秒から)なぜかいきなり音が潰れたような歪み方をするのだ。全トラックの音質を均一に揃えてくれとは言わんけど、もーちょっと何とかならんかったんか?カーステで聴いててもめっちゃ違和感あったから、スピーカーの大音量で聴くとちょっとキツイもんがある(>_<) 選曲・編集したのはジョージ・マーティンを中心とする制作スタッフとのことだが、もう少し気持ちよく聴ける編集にしてほしかったというのが正直なところ。
 更に⑨「シーズ・ア・ウーマン」、演奏自体はケチのつけようのない素晴らしさなのだが、1分16秒、2分11秒からのサビの部分でヴォーカルにオーヴァーダブっちゅーのはちょっと興ざめで、これでは「ライブ」の看板に偽りありと言われても仕方がない。私としては、ハリウッド・ボウルや日本武道館でのストレートアヘッドでグルーヴィーな「シーズ・ア・ウーマン」の方がライブの醍醐味が味わえて何倍も好きだ。
 まぁ文句はこれぐらいにして(笑)、それ以外はさすがビートルズ、と唸るような演奏が並ぶ。④「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」では日本公演で見せたあの全身を震わせながら歌うリンゴの姿が目に浮かぶような熱い歌声が聴けるし、⑥「ロール・オーヴァー・ベートーベン」もキャヴァーン時代からイヤというほどプレイしてきただけあって実に余裕を感じさせる演奏だ。特にジョージのギターの切れ味は聴いてて気持ちエエなぁ...(^.^) 私の大好きな⑦「オール・マイ・ラヴィング」ではリンゴが公式テイクとは違う叩き方をしており、それが独特なグルーヴを生んでいて面白い。ビートルズはBBCライブを色々な試行錯誤の場として活用していたのかもしれない。
 ⑩「スウィート・リトル・シックスティーン」といえばチャック・ベリー、チャック・ベリーといえばジョン・レノンと決まっているのだが、それにしてもこの曲とジョンの相性の良さはハンパではない。高校生の時に「スター・クラブ・ライブ」で初めてこの曲を知って一発で好きになり、それ以来私にとって「スウィート・リトル・シックスティーン」といえばジョン・レノンなのだ。曲そのものも典型的なロックンロールでエエ感じで、ジョンのドスの効いた太いシャウト・ヴォイスを得て、唯一無比というか、ザ・ワン・アンド・オンリーというか、とにかくドライヴ感溢れる最高の「スウィート・リトル・シックスティーン」になっている。このBBCライヴはジョン・レノンという稀代のロックンローラーの凄みを実感させてくれる貴重なアルバムだ。

Early Beatles "sweet little sixteen"

The Beatles Live at the BBC (Disc 1-Pt. 3)

2009-10-28 | The Beatles
 「ライブ・アット・ザ・BBC」Disc-1の後半もヒット曲あり名カヴァーありで全く気が抜けない。(21)「クライング、ウエイティング、ホーピング」はジョージがリード・ヴォーカルを取るバディ・ホリーのカヴァーで、「フォー・セール」のB面あたりにぴったりハマりそうな軽快な歌と演奏だ。気のせいか、ジョージの歌声はレコードで聴けるものよりもリラックスしているように思えるし、ジョンとポールの絶妙なコーラス・ハーモニーも言うことなしだ。スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのカヴァー (23)「ユー・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」は「ウィズ・ザ・ビートルズ」はもちろん、「アンソロジー1」にもスウェーデンのラジオ番組用ライブ音源が収められていた彼らお気に入りのナンバーで、ジョンとジョージのツイン・リード・ヴォーカルが実にエエ味を出している。
 (24)「トゥ・ノウ・ハー・イズ・トゥ・ラヴ・ハー」はフィル・スペクターにとって初の全米№1ソング(テディ・ベアーズ名義)で、「スター・クラブ・ライブ」ではイマイチだったが、このBBCヴァージョンは素晴らしい!これはもう何と言ってもジョンの成熟し切った繊細なヴォーカルに尽きるのだが、ジョージのバック・コーラスも雰囲気バツグンだ。荒削りなロックンロールをブチかます一方で、このようなアメリカン・ポップスも涼しい顔でカヴァーしてしまうあたり、ビートルズの音楽性の幅広さを物語っている。続く(25)「ア・テイスト・オブ・ハニー」は色々な人によってカヴァーされているバリバリのスタンダード・ソングで、こーゆーのを歌わせたらポールの右に出る人はいない。彼らも「スター・クラブ・ライブ」や「プリーズ・プリーズ・ミー」で取り上げるなどデビュー当時の重要レパートリーであり、ここでもポールが威風堂々たるヴォーカルを聴かせてくれる。
 ジョンがチャック・ベリー担当とすればポールはリトル・リチャードだ。この(26)「ロング・トール・サリー」以外にも(31)「ルシール」を歌っているし、Disc-2 でも「ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」や「オー・マイ・ソウル」でリード・ヴォーカルを取っている。後の「アイム・ダウン」や「ヘルター・スケルター」、「オー・ダーリン」でも分かるように、彼のシャウト系ロックンロールのルーツがリトル・リチャードなのだろう。それにしても「ア・テイスト・オブ・ハニー」から「ロング・トール・サリー」まで何でも歌いこなしてしまうポールの器用さには脱帽だ。この「ロング・トール・サリー」に続いて間髪をいれずに(27)「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」に突入、(32)「キャント・バイ・ミー・ラヴ」にも言えることだが、これを聴くと改めて “レノンマッカートニー曲” の素晴らしさが実感できる。もちろんカヴァーも素晴らしいのだが、曲そのものの勢いというか躍動感が段違いだ(^o^)丿
 (28)「ザ・ハネムーン・ソング」はいかにもポール好みの甘口ソングで、後年彼がプロデュースしたメリー・ホプキンの「ポストカード」にも入っていたが、どちらかというとあまりビートルズ向きではないように思う。それに比べてチャック・ベリーのカヴァー(29)「ジョニー・ビー・グッド」の圧倒的なグルーヴときたら... これぞロックンロール!、これぞジョン・レノン!、これぞビートルズ!と、思わず!の3連発をかましたくなるぐらいのカッコ良さだ。続く(30)「メンフィス・テネシー」もチャック・ベリー曲なのだが、個人的にこの曲そのものがイマイチ苦手というか単調すぎて華がないように思えるので、このディスクの後半部はいつも(28)と(30)を飛ばして(26)から(32)までの疾走系ロックンロール5連発を楽しんでいる。そしてDisc-1 のシメはポールの名唱(34)「ティル・ゼア・ワズ・ユー」というニクイ選曲だ。ジョージの歌心溢れるギターは公式テイクよりも出来が良いと思う。

The Beatles - Johnny B. Goode (Live at BBC)

The Beatles Live at the BBC (Disc 1-Pt. 2)

2009-10-27 | The Beatles
 この「ライブ・アット・ザ・BBC」は聴き所満載なので「アンソロジー」の時みたいに数回に分けてじっくりやりたい。今週はBBCウイークだ(笑)。⑦「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」はポールがティーンエイジャーの時に書いたナンバーで、「フォー・セール」収録の「アイル・フォロー・ザ・サン」をピーター&ゴードンに贈った「愛なき世界」で包み込んでオーブンで焼き上げ、仕上げに (21)「クライング、ウエイティング、ホーピング」をふりかけたような(?)名曲で、特にジョンとポールのコーラス・ハーモニーなんかもう鳥肌モノだ(≧▽≦) コースターズのカヴァー⑧「ヤング・ブラッド」はジョージのリード・ヴォーカルに絡むジョンのツッコミが面白いが、私的には曲がイマイチ単調なように思う。⑨「ア・ショット・オブ・リズム・アンド・ブルース」は「アンナ」のアーサー・アレキサンダーがオリジナルで、「ツイスト・アンド・シャウト」なイントロが面白い。このトラックも音質が良くないのが残念だ。カール・パーキンスの⑩「シュア・トゥ・フォール」は私的には曲が地味すぎてイマイチ。この曲に限らず、ロックンロールというよりむしろC&W色の強いカール・パーキンスの曲は個人的にはあんまり好きじゃない。それに比べて躍動感に溢れる⑪「サム・アザー・ガイ」の何とカッコイイことよ!聴いてるだけで身体が揺れてくる。理屈は要らない。これぞロックンロール、これぞビートルズなのだ(^o^)丿
 この盤はロックンロールのスタンダード・ナンバーのカヴァーを中心にして所々にレノン=マッカートニーの曲が入っているのだが、⑧から⑪まで他人の曲が続いた後、この⑫「サンキュー・ガール」を聴くと何か空気感が一変したような、そんな錯覚に陥ってしまう。この曲自体は「フロム・ミー・トゥ・ユー」のB面にひっそりと収められていた、どちらかというとビートルズ曲の中でも地味な存在の曲だと思うのだが、ここではかなり目立っている。個人的には公式ヴァージョンよりもこっちの方がノリが良くて断然好きだ。続く⑭「ベイビー・イッツ・ユー」は彼らのオリジナル曲ではないが、「プリーズ・プリーズ・ミー」収録の公式ヴァージョンにおけるジョンの歌声はオリジナルのシュレルズを遥かに凌駕する素晴らしさで、私の中ではほとんど “ビートルズの曲” という認識なのだが、ここでも見事なヴォーカルとコーラスが楽しめて言うことなしだ(^o^)丿
 ⑮「ザッツ・オールライト」はご存じエルヴィス・プレスリーのサン・セッションを代表するナンバーだが、この曲を歌うポールはまるでエルヴィスが憑依したのかと思えるぐらい声も歌い方もソックリで、特に抑揚の付け方や間の取り方なんかもう名人芸と言ってもいいぐらい似ており、このあたりにもヴォーカリストとしてのポールの器用さが窺える。⑯「キャロル」はチャック・ベリーがオリジナルで、リード・ヴォーカルは当然ジョンだ。このBBC ライブでも「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」、「ジョニー・ビー・グッド」、「スウィート・リトル・シックスティーン」とチャック・ベリー曲を数多く歌っているし、「フォー・セール」収録の「ロックンロール・ミュージック」の名唱は忘れ難い。ジョンのチャック・ベリー好きは相当なものだ。それにしてもアタマの “オ~ キャロル♪” からもうジョンのヴォーカルに耳が釘付けになってしまう。まさにロックンロールを歌うために生まれてきた男、ジョン・レノンの真骨頂だ。
 アーサー・アレキサンダーの⑰「ソルジャー・オブ・ラヴ」は「アンナ」路線のミディアム・テンポのナンバーでジョンの大人っぽいヴォーカルが堪能できる。バック・コーラスもエエ感じだ。⑲「クララベラ」はポールの十八番ともいえる「ロング・トール・サリー」路線の絶叫型ロックンロールで、水を得た魚のように生き生きとしたポールのシャウトが炸裂する。ジョンのハーモニカも実に効果的に使われており、この演奏全体が醸し出す圧倒的なグルーヴ感がたまらない(≧▽≦) プレスリーのカヴァー⑳「アイム・ゴナ・シット・ライト・ダウン・アンド・クライ」ではジョンとポールがヴォーカルを分け合うスタイルだが一番目立っているのはリンゴで、イントロから強烈なドラム・ロールを炸裂させ、もうノリノリである。4人がせ~ので疾走するような躍動感溢れるロックンロール...私にとってBBCライブは宝の山だ(^o^)丿

The Beatles Live at The BBC - Clarabella
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The Beatles Live at the BBC (Disc 1-Pt. 1)

2009-10-26 | The Beatles
 私が中学生の頃からビートルズの海賊盤を買い漁っていたことは「ハリウッド・ボウル・ライブ」の時に書いたが、ライブもの以外でははスタジオ・セッションの音源が主流で、その代表格がゲット・バック・セッション、デッカ・セッション、そしてBBCセッションだった。だから当時買った「イエロー・マター・カスタード」や「スタジオ・セッションズ」、「ヤングブラッド」、「ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ」、「ブロードキャスツLK4450」といった盤でBBC音源はかなり聴いていたし、「スター・クラブ・ライブ」ともかなり選曲が重なる部分があるので、この「ライブ・アット・ザ・BBC」が出た時は内容的に見れば天地がひっくり返るほどの大きな衝撃というのはなかったが、やはりこれらの素晴らしい演奏がオフィシャル盤で聴けるというのは感慨深いものがあったし、海賊盤よりもクリアな音で聴けるのが何よりも嬉しかった。
 このアルバムは1962年から65年の間にビートルズがBBCラジオに出演して演奏した全92曲270テイクの中からジョージ・マーティンが厳選した56曲を2枚組CDに編集したもので、演奏はそのほとんどが一発録りのスタジオ・ライブ形式。「ウィズ・ザ・ビートルズ」あたりのアルバムが大好きな私のような人間には垂涎モノの内容だ。選曲も彼らが聴いて育ったロックンロールのスタンダード・ナンバーの比重が大きく、彼らのルーツがよくわかるのと同時に、ロックンローラーとしての本性を白日の下に曝け出すアルバムと言える。
 ④「アイ・ガット・ア・ウーマン」はレイ・チャールズをプレスリーがカヴァーしたものを更にカヴァーしたもので、演奏面でのビートルズ独特のグルーヴ感は希薄なせいか、逆にジョンのヴォーカルの存在感が際立っている。私が思うに彼らにはこの④のようなややカントリーがかったロカビリーよりも正調ロックンロールの方がピッタリ合うのではないか。そのよい例がチャック・ベリーのオリジナル⑤「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」で、彼らは水を得た魚のように生き生きした演奏を聴かせてくれる。この曲を初めて聴いたのは上記の海賊盤「ヤングブラッド」で、ノリノリのロックンロール調というのがめっちゃ気に入ったし、何よりも “モンキー・ビジネス” (← “インチキ” という意味の成句だなんて中学生にわかるワケもなく、猿商売って何???と思ってた...)という言葉の響きが妙に可笑しくてインパクト大だった(笑)。ジョンの貫録十分のヴォーカルといい、ドライヴ感溢れる演奏といい、とにかくコレは文句なしの名演だ。因みにビートルズ以外で私が愛聴しているのはヤードバーズのライブ・ヴァージョン。若き日のクラプトンのハイ・テンションの超速弾きが圧巻なので一聴をオススメします(^.^)
 ⑥「キープ・ユア・ハンズ・オフ・マイ・ベイビー」はキャロル・キング=ジェリー・ゴフィンのコンビの作品で、リトル・エヴァでヒットした典型的なブリル・ビルディング系ポップス。あのビートルズが古き良きガール・グループ的なノリで歌い、演奏しているのだ。彼らの “ガール・グループ好き” はドネイズの「デヴィル・イン・ハー・ハート」をカヴァーしていることでも明らかだが、まさかリトル・エヴァでくるとは思わなんだ(^.^) 特にマーヴェレッツやマーサ&ザ・ヴァンデラスみたいなグルーヴを生み出すコーラスの付け方なんてもう絶品ではないか。 “ベェイ エィ ベ~♪” と歌うジョンのヴォーカルもまるで黒人ガール・グループのリード・シンガーが憑依したかのような粘っこいグルーヴを醸し出しており、彼がこの手の音楽を相当聴き込んでいたのが分かる。モータウンでも十分やっていけそうだ(笑)。初期ビートルズにおいて天才ヴォーカリスト、ジョン・レノンの存在の大きさを知らしめる1曲だし、バリバリのロックンロール一辺倒ではなく、このようなポップ感覚溢れる曲をも見事にカヴァーしてしまうあたりの音楽性の幅広さ、懐の深さがビートルズと他の凡百のバンドとの決定的な違いだろう。尚、このトラックだけ音質がイマイチだが、そんなことは全く気にならないぐらいの素晴らしい歌と演奏だと思う。

Keep Your Hands off my Baby - The Beatles

Yesterday & Today (Butcher Cover) / The Beatles

2009-10-25 | The Beatles
 いきなりのこのジャケット、いやはや強烈なインパクトである。ということで今日はブッチャー・カヴァーを取り上げよう。ある一定の年齢層以上の平均的日本人にとって “ブッチャー” といえば黒い呪術師だが、ビートルズ・ファンにとっては泣く子も黙るブッチャー・カヴァーしかない。正確に言うとアメリカにおけるビートルズのアルバム「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」の初版のことで、一旦は発売直前までいったものの、白衣を着た4人が肉屋に扮して首の取れた赤ん坊の人形や肉片を持って笑っているというシュールというか悪趣味というか、そのあまりにもエグいジャケットのために “こんなモン店に並べられるかいな!” と小売店から苦情が殺到し、慌てたキャピトル・レコードがそれらを全て回収し、時間がなかったこともあってブッチャーの上から新しいジャケット写真(4人がトランクに腰かけている通称 “トランク・カヴァー” と呼ばれるもの)を貼り付けて発売したという、いわくつきのレコードである。
 このような回収騒ぎがあると回収漏れになったブツにはプレミアが付いてコレクターの絶好の標的になるのが常で、ましてやそれが天下のビートルズとなるとその価格もハンパなものではない。一説によると1st state と呼ばれる正真正銘のオリジナル盤(要するに回収されなかったブツ)は状態が良ければ軽く2,000ドル以上はするらしいし、トランク・カヴァーの下にブッチャー写真が透けて見える 2nd state の paste over やトランク・カヴァーをキレイに剥がした 3rd state の peeled cover でも1000ドル以上するというから開いた口がふさがらない(゜o゜)  しかも出荷枚数の少なかったステレオ盤の方がモノラル盤よりも希少価値があって更に値が張るというから、これはもう究極のコレクターズ・アイテムだ。そういえば昔 “トランク・カヴァーの剥がし方講習会” なんてものもあったなぁ...(笑) YouTube で見つけたピーリング映像を下に貼っといたので興味のある方はどーぞ。とにかくジャケットの希少価値だけのために30万円だなんて、ビンボー人の私には想像もつかない驚異の世界だ。
 何だかジャケットの話ばかりになってしまったが、このアルバムはジャケットこそがすべてであり、ブッチャー・カヴァーの盤質がどーしたとか、音楽性がこーしたとかいうハナシは今まで一度たりとも聞いたことがない。しかも私は UK 盤の選曲・配列が身体に染み込んでいるので今更 US 盤を聴いてみようという気にもならない(>_<) それこそジャケットのブッチャーさながらにビートルズのオリジナル・アルバム「ヘルプ!」「ラバー・ソウル」「リヴォルヴァー」の3枚をバラバラに解体し、ムチャクチャな配列で(一体キャピトルの誰が曲順とか決めてるんやろ?)再構成したアルバムなんてアホらしゅーて聴いてられない。私にとって US盤はジャケットだけあれば十分だ。因みに私が持っているのは安物のカウンターフィット盤で、未だに一度も針を落としたことがない。私の部屋は壁に無数のフックが取り付けてあってちょうど昔のレコ屋みたいにLPレコードのジャケットを何枚も飾っているのだが、このレコードも話のネタにと買ってみたもので、ビートルズ・レアジャケ特集の時に壁面を飾っている(笑)。まぁコレクションの中に1枚ぐらい聴かずに見るだけのレコードというのがあってもいいと思う。

Peeling of Beatles Butcher Album Jacket Cover Part 1

The Beatles Rockband Mixes 09 09 09

2009-10-24 | The Beatles
 今日は天気も良かったので昼から仕事を休んで大阪梅田のACTⅢで開かれた “レコードフェスタ大阪” へ行ってきた。この何年かはレコードやCDを買うのにネットオークションや通販で満足してしまい、このようなレコード・バーゲンは plinco さんや 901 さんに誘っていただいた時にちょこちょこ顔を出すぐらいで昔日のような積極性は微塵もなかったのだが、先々週神戸で「ロックンロール・ミュージック」のUK盤を格安で見つけて以来血が騒いで仕方なかった(笑)。そんな状態の私に舞い込んだのが “レコードフェスタ大阪” 開催の知らせで、大阪はもとより東京、名古屋、仙台、福岡と日本全国から27のレコ屋が参加するとのこと。これは絶対に行かねばならない。ターゲットはビートルズのコレクターズ盤、折角なので他の店も何軒か廻ることにした。
 大阪に早く着いたので関西におけるコレクターズ盤の相場を知るためにまずミナミのCOME TOGETHER へと向かう。例の個室ビデオ店放火事件のあったすぐそばだ。楽器屋の2階にあるこのお店、いかにもブート置いてます、という雰囲気だ。ビートルズはかなりの数が置いてあったが値段の方もハンパではなく、From Kinfauns To Chaos なんかCD-R 2枚組で9,000円近い値札が付いており唖然とさせられる。どうやら長居は無用のようだ。次は梅田エストのそばにある MUSIC INN へ行ってみる。ここはCDだけでなくLPやDVD も置いてあり、ビートルズの品揃えは充実している。値段設定もさっきの店よりは良心的だ。因みに最近みながわさんにDLを教えていただいた「ロックバンド・ソングトラックス」の2CD-R + 1DVD-R 盤は4,200円だった。ヤフオク価格やね(^.^) そうこうしているうちにバーゲン開場時間の3時になったのでACT Ⅲホールへと向かう。バーゲン会場に入ると結構人が多い。金曜の3時ならまだ余裕ですいているだろうという私の考えは甘かったようだ。
 LPは「ア・ハード・デイズ・ナイト」や「ラバー・ソウル」のUKオリジ盤や「リヴォルヴァー」のUSオリジ盤、「レット・イット・ビー」のUK 2nd プレス盤(裏ジャケが青リンゴのヤツ)なんかもあったが、どちらかというと日本盤が中心だ。CD では「ラム」の別ミックス集と「ヴィーナス・アンド・マース」のラフ・ミックス集をゲット、1枚995円ならハズレてもまぁ知れている。そして圧巻だったのがコレクターズDVD のコーナーでその周辺だけ物凄い人だかりである。カゴがないのでみんな手にブツを一杯抱えながらエサ箱を漁っている。大体1枚500円から1,500円ぐらいと非常に安いので大人買いが出来るのだろう。 “激安コレクターズDVD アウトレット 西新宿流!” という看板に偽りなしだ。私はここでポールの「アンプラグド・ジャパニーズ・ブロードキャスト」(←ジャケがロシア向けのロックンロール・アルバムになってるのは何故?)、ケイト・ブッシュの「TV アピアランシズ」と「プロモ・ビデオ&ライブ・パフォーマンシズ」の3枚をゲット、2層式のプレス盤で1枚1,480円って... ちゃんと元取れるんかいな?
 そして本日最大の収穫がビートルズの「ロックバンド・ミックシーズ・09・09・09」。これはDVD コーナーに平積みされていたが、次から次へと売れていく。もちろん私も1枚確保しながら猟盤していたのだが、レジへ向かう時に見るともうあと1枚しか残っていなかった。内容はメーカー・インフォに書いてあるんでそれを写します:
『★話題のビートルズ2009 年最新別音源が映像付で登場! ★ジャイルズ・マーティン新MIX"ROCKBAND"音源収録! ★ビートルズ最新ビデオ・クリップ集としても楽しめます!! アップルが全力を傾けたゲームソフト “The Beatles Rockband”。この音源はジャイルズ・マーティンにより新たにマッシュアップされた注目すべきもの。 “I Am The Warlus” のエンディング後の今まで聴けなかったSE や、 “Hey Bulldog” のエンディングのロング・ヴァージョン、そして “Good Morning Good Morning” のラストでの別ヴォーカル。 “Dear Purudence” はイントロやエンディングがフェイドインされない(←この日本語、変ですね...)ヴァージョン。 “Helter Skelter” では今まで聴けなかった終盤のFadeOut~FadeIn パートも初めて陽の目をみました。 “Paperback Writer” は一瞬のエンディングの為ににわざわざ日本公演?の音を繋いだとジャイルズは言っています!(←ホンマかいな?)本作はその新音源に既出の良質のビートルズのミュージック・クリップとシンクロして収録。音楽ソフトとして楽しみながら新音源の違いを考察・探求できるビギナーにもマニアにも満足できるような内容に昇華。さらには2009リマスターやそのROCKBAND関連の予告編トレイラーやプロモ・クリップ、1969年8月8日のアビーロード横断歩道を渡る4人が何と動いているCM クリップなども追加収録。』
 何となくワカるようなワカランような説明だが、まぁ大体その通りですわ(笑) 要するに「ツイスト・アンド・シャウト」「サージェント・ペパーズ」「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ」「グッド・モーニング・グッド・モーニング」、そして「トゥモロウ・ネヴァーノウズ~ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」の5曲はゲームのCG に、それ以外の曲はビデオ・クリップにそれぞれリミックスされた音源を被せてあり、ほぼ全ての曲のアタマにカウントが付いている(←オリジナルじゃないのも多いと思うけど...)と言えば分ってもらえるだろうか。
 他にもいくつか店を廻るつもりだったが、昼間結構暑い中歩き回ったし、レコフェスで2時間ぐらい粘って(冷房ガンガン効いてた...)さすがに疲れたので今日はこれで切り上げることにした。結局今日の収穫はDVD 4枚にCD 2枚で約1万円... 実に充実したマジカル・オーサカ・ツアーだった。

The Beatles Rock Band - Come Together TV advert official game trailer for PlayStation 3/Xbox 360/Wii
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The Beatles Anthology 3 (Disc 2-Pt. 2)

2009-10-23 | The Beatles
 まるで “ゲット・バック・セッション” のように長々と続けてきた(笑)このアンソロジー・シリーズも今日で完結、3のDisc-2 後半は “アビー・ロード・セッション” が中心だ。「ジョンとヨーコのバラード」のB面曲⑬「オールド・ブラウン・シュー」は⑩⑯と同じくジョージが一人でオーヴァーダブを駆使して作り上げたデモ・テイクで、整然とした公式ヴァージョンに比べて泥臭いフィーリングが横溢しているところが面白い。これ、結構好きかも...(^.^) ⑭「オクトパス・ガーデン」は映画「レット・イット・ビー」でリンゴが作曲途中のこの曲をジョージに聞かせ、ジョージがコード進行のアドヴァイスをするシーン(←ジョンのリズム感抜群のドラミングが何気にメチャウマ!)が何かホノボノしてて好きなのだが、ここではテイク2を収録、もちろんまだ効果音etcのオーヴァーダブ前なのでギターのフレーズ等、演奏の細部までクリアに楽しめるのが嬉しい。⑮「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」は後にジョンがインタビューで “ポールに何度もレコーディングさせられてウンザリした大嫌いな曲” と言っているが、確かにどのテイクを聴いてもノッてるのはポールだけなような気がする。ここでも2分3秒あたりからおふざけ・スキャット全開状態に入るなど、超ゴキゲンだ。曲が終わった後、ポールの “もう1回やろう” が挿入されてるのにはワロタ(^.^)
 ⑯「サムシング」はジョージの独演によるデモ・テイクで確かに興味深い音源ではあるが、これは出来ればビートルズ・ヴァージョンの初期テイクを聴いてみたかった気がする。⑰「カム・トゥゲザー」は公式ヴァージョンの端正なヴォーカルからは想像もできないくらいファンキーなジョンの歌声が楽しめる。これは実に生々しい。それまで “シュッ!” としか聞こえなかったアタマの “Shoot me!” が初めて“シュート ミー” と聞こえたし、とにかくジョン自身ノリノリで、説得力溢れるヴォーカルで聴く者をグイグイ引き込んでいく。ロック魂迸る名唱だ。⑱「カム・アンド・ゲット・イット」はポールがリンゴとピーター・セラーズの共演映画「マジック・クリスチャン」のテーマ曲として書き上げ、アップル所属のアーティストであるバッドフィンガーに贈ったもので、ここに収録されたのはポール自身が多重録音したデモ・テイク。何となく「ワイルド・ライフ」~「レッド・ローズ・スピードウェイ」あたりの頃のポールのサウンドを彷彿とさせるポップなナンバーだ。⑲「エイント・シー・スウィート」は元々は1920年代に書かれたティン・パン・アレイ、いわゆる古いジャズのスタンダード・ソングなのだが、彼らはジーン・ヴィンセントのカヴァーとしてトニー・シェリダンのバックバンド時代にレコーディングしており、アンソロジー1にも収められている。このヴァージョンではジョンの抑制の効いたヴォーカルが実にエエ味を出している。
 ここからはアンソロジー・シリーズも大団円に向けて一気に加速。まず⑳「ビコーズ」のアカペラ・ヴァージョンをイントロのようにして始まる (21)「レット・イット・ビー」を聴くと万感胸に迫るものがある。テイク1ということで、ポールが “この曲は君らをノック・アウトするよ” と言ってから歌い出し、曲が終わった後で今度はジョンの声で “さぁ、オーヴァーダブしよう... おっとそれはやっちゃいけないんだったな...” という言葉が入っている。 “ゲット・バック・セッション” の原点を再確認するために入れたのか、それとも誰かに対する痛烈な皮肉なのか...??? (22)「アイ・ミー・マイン」はビートルズ最後の録音曲としての収録だろう。スペクターが手を加えた公式ヴァージョンよりも遥かにロックを感じさせる演奏だ。(23)「ジ・エンド」はこのCD用にリミックスされた新ヴァージョンで、公式テイクのアタマの部分 “Oh yeah, all right, are you gonna be in my dream tonight...♪” をカット、リンゴのドラム・ソロにギターを被せ、そこから例のギター・ソロ回しへと突入、オーケストラが入った感動的なエンディングの後、「ハー・マジェスティ」の代わりというワケでもないだろうが、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のピアノの “ガァ~ン” が用意されている。この粋な演出でアンソロジー・シリーズは幕となるのだ。メデタシメデタシ(^o^)丿

Beatles - Come Together (Rare)

The Beatles Anthology 3 (Disc 2-Pt. 1)

2009-10-22 | The Beatles
 アンソロジー・シリーズもいよいよ大詰め、3のDisc-2 に突入だ。この盤は大雑把に言うと、前半がいわゆる “ゲット・バック・セッション” 、後半が “アビー・ロード・セッション” という構成になっている。この時期のアウトテイクスはアナログLP時代にセッセと音の悪いブートで集めたきりだったので、このアンソロジー3で初めて耳にしたテイクも多く、ワクワクドキドキしながら聴いたものだった。 “ゲット・バック・セッション” 音源は当然ながら雰囲気の悪かったトゥイッケンナム・フィルム・スタジオでのものではなく、ビリー・プレストンが参加して生まれ変わったように素晴らしい演奏を繰り広げたアップル・スタジオでのものが採用されているのが嬉しい。
 ①「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」は数あるこの曲のテイクの中でも私が一番好きな歌と演奏で、ポールの鬼気迫るヴォーカルといい、ノリノリで雄叫びを上げる(1分31秒)ジョンといい、気合い十分だ。このグルーヴこそがビートルズなんだと快哉を叫びたくなるようなヴァージョンだ。曲が終った後でジョンが “俺のギター・アンプの音量ちょっと上げすぎちゃったけど、そんなに悪くなかったろ?” とポールに言っているのが微笑ましい。②「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」は後に「アビー・ロード」に収録される完璧なテイクの原型ともいうべきラフな演奏が聴けて実に興味深い。それはまるでダイアモンドの原石のようだ。尚、曲が終わった後、ポールがジョンに “ここんところ、もっと色んなアレンジのヴァリエーションを試したい...” と言っているのが生々しい。③「ディグ・ア・ポニー」は演奏のノリが抜群で、①同様ここに収められたヴァージョンが一番好きだ。彼らも満足そうで、曲が終わった後にポールが “俺たち時間をかければかけるほど良くなっていくんだぜ。高級ワインみたいなモンさ!” と言っている。
 ④「トゥー・オブ・アス」はアコースティック・ヴァージョンはどれも公式ヴァージョンと雰囲気が似てしまうものだが、このテイクは2人のヴォーカルがラフな分(アコースティック・アレンジに変えてから、まだ時間が経ってない初期リハ段階?)吸引力が増し、かえって印象に残る。めっちゃカッコイイ入り方をする⑤「フォー・ユー・ブルー」も、言っちゃ悪いがスペクターの公式ヴァージョンなんか足元にも及ばないぐらい躍動感に溢れた演奏だ。コレを聴いて私の中の「フォー・ユー・ブルー」に対する評価は急騰した。とにかくアンソロジー収録の “ゲット・バック・セッション” 音源は最高だ!⑥「テディ・ボーイ」は当初幻のアルバム「ゲット・バック」に入っていたが結局は外されてポールの1st ソロ「マッカートニー」で日の目を見たナンバー。ここではビートルズによるこの曲の初期の(多分...)リハ・テイクが聴ける。
 ⑦「リップ・イット・アップ / シェイク・ラトル・アンド・ロール / ブルー・スウェード・シューズ」はロックンロール・クラシックスのカヴァー3連発をメドレーにしたもので、たとえライブ活動をやめてもビートルズがバリバリのロックンロール・バンドであることを満天下に示す名演だ。彼らも実に楽しそうで、ジョンなんか “ブラウン・スウェード・ブーツ、イェ♪” (2分49秒)とアドリブをかましてノリまくっている。⑧「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」はもう何の説明も不要なぐらいに語り尽くされてきた “ポールが意図した” シンプルなヴァージョン。アルバム「レット・イット・ビー」の時にも書いたが、私はこの素朴そのものの和食ヴァージョン(笑)が大好きだ。⑨「オー・ダーリン」も②同様、「アビー・ロード」ヴァージョンの原型ともいうべき荒削りな演奏ながら、リラックスした雰囲気が伝わってきてめっちゃエエ感じ。一旦曲が終わった後、ジョンが “ヨーコの離婚が成立して嬉しいなったら嬉しいな~♪” とアドリブで歌い始め、その替え歌にポールがハーモニーを付けるところが面白い。相変わらずの仲良しさんだ(^.^)
 ⑩「オール・シングス・マスト・パス」は言わずと知れたジョージの3枚組大作のタイトル曲で彼のソロ・レコーディング、⑪「メイルマン、ブリング・ミー・ノ・モア・ブルース」はバディ・ホリーのカヴァーで、ジョンが気だるそうな感じで歌っている。コレに思いっきりエコーをかけて情け容赦ないリヴァーヴ攻撃に晒したら、75年のソロ「ロックンロール」に入りそう...かな?
 ⑫「ゲット・バック」はルーフトップ・コンサートのエンディングで歌われた方のヴァージョンで、屋上に上がってきた警官の指示で演奏途中にジョンとジョージのギターのアンプがオフにされた、あの演奏だ。この曲は何と言っても演奏をグイグイ引っ張るリンゴのドラミングとドライヴ感あふれるジョンのリード・ギターが圧巻なのだが、映画「レット・イット・ビー」の中で、ジョンが歌い続けるポールの方を向いてアンプを指さして “どないすんねん?” みたいなポーズをし(←39秒あたり)、その後ジョージがアンプのスイッチを入れて、これまためちゃくちゃカッコ良いリズム・ストロークを再開するところ(←47秒あたり)なんかもう何度見てもゾクゾクする。そして何よりも嬉しかったのが、ずぅ~っとヨーコにベッタリで終始ヤル気のなさそうだったジョンが実に生き生きとギターを弾き、ポールの方を向いて笑顔を見せ(2分40秒)、楽しくてたまらん!みたいな感じでリズムを取るシーン(2分54秒)を見れたこと。いくらケンカしていても一旦演奏が始まればすぐに最高の4人組に戻れるっていうのが素晴らしい。何かめっちゃ暗~い感じで始まったあの映画にこんなイカしたエンディングが用意されていたなんて、やっぱりビートルズは何をやっても絵になるなぁ...(≧▽≦)

The Beatles - Get Back : Version 2 (Apple Rooftop) [HD]
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The Beatles Anthology 3 (Disc 1-Pt. 2)

2009-10-21 | The Beatles
 アンソロジー・シリーズは複数のテイクを組み合わせた “新ヴァージョン” を積極的に生み出したが、⑫「グッド・ナイト」なんかも初期のリハ・テイクとテイク34のストリングスを合成させてあり(←ちょうどアンソロ2の「イエス・イット・イズ」と同じ手法)、エンディングがまだ完成してなかったとはいえ、 “木に竹を接ぎました感” が強く、私としては前半部の素朴な感じを活かした編集にしてくれた方が良かったように思うが、これはまぁ人それぞれなのだろう。
 このアンソロジー3のディスク1はそれまでのアンソロジー1、2の計4枚に比べてアコースティック色が強く、しかも一聴して公式ヴァージョンと大して変わらないようなテイクも結構含まれている(←コレはコレである意味凄いことなのだが...)ので1枚通して聴くとやや単調で地味な印象を受けてしまう。例えば⑬「クライ・ベイビー・クライ」や⑭「ブラックバード」、⑲「マザー・ネイチャーズ・サン」なんかがそうだと思うが、もっとロックンロール色の強いナンバー(「バック・イン・ザ・USSR」や「バースデー」、「ミー&マイ・モンキー」etc)の初期テイクで先の「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」みたいに思わず唸ってしまうような新ヴァージョン発掘を期待してしまうのは贅沢なのかな?
 そんな中で一見地味ながら私の心にグッと食い込んできたのが⑯「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」のアコースティック・ヴァージョンで、スパイス程度にポールのオルガンが入っている以外はジョージのアコギ弾き語りという超シンプルな歌と演奏なのだが、これがもう涙ちょちょぎれるぐらい素晴らしい!もちろんクラプトンが泣きまくる公式ヴァージョンがエエのは論を待たないが、このシンプルイズベストを絵に描いたようなヴァージョンからは幽玄の美のような儚さが滲み出ておりめちゃくちゃ感動的だ。アンソロジー・ビデオの第7巻の最後にこの曲が流れてきた時はゾクッとしたし、主人公が非業の死を遂げるような大作ドラマのエンディング曲なんかに使ったらぴったりハマりそうな気がする。そう言えば、2006年に出たアルバム「ラヴ」でジョージ・マーティン父子がここからオルガンをイレースし、代わりにストリングスを被せてリミックスしていたが、ずーっとやってみたかったんやろなぁ... 
 ⑰「ヘイ・ジュード」はリハーサル・テイクで、アタマの部分でジョンが “From the heart of the black country” とカマし、それを受けてすかさずポールが “When I was a robber in a Boston place... you gathered round me with fine embrace...” と歌い、そのまま“ヘイ ジュー♪” へとなだれ込む。この辺の生々しさがタマランわぁ... (≧▽≦) 4分21秒という長さもちょうどいい感じで言うことなし。他のポール曲では手探り状態から徐々に曲を練り上げていく様子がわかる(21)「ロッキー・ラックーン」、屈指の大名曲はテイク1から既にほぼ出来上がっていたことが判明した(25)「アイ・ウィル」、それと同じセッションで即興で歌われた(23)「ステップ・インサイド・ラヴ / ロス・パラノイアス」、ただひたすら同じフレーズを繰り返しながら様々な歌い方を試し、最後に誰かに向って(ジョン?マーティン?) “どれがエエと思う?” と意見を求める(26)「ホワイ・ドント・ウィー・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード」と、ポールの絶好調ぶりが伝わってくる。
 ジョージの未発表曲⑱「ノット・ギルティ」は1979年のソロ・アルバム「慈愛の輝き」でアコースティックなヴァージョンが日の目を見たが、このビートルズ・ヴァージョンはこの時代らしいへヴィーでエッジの効いたギターのサウンドがカッコ良い。単調な旋律の曲なので、サウンドに凝るしかなかったのだろうが、2分35秒を過ぎたあたりからギターが唸りまくるところなんか大好きだ。
 この時期のジョンは出来不出来が激しいように思えるのだが、特に意味不明なのが未発表曲(22)「ホワッツ・ザ・ニュー・メリー・ジェーン」で、「レヴォリューション9」と同様、ヨーコの前衛趣味に感染したかのようなワケのわからん曲だ(>_<) ⑮「セクシー・セディ」や(24)「アイム・ソー・タイアード」も何となく重苦しい雰囲気で聴いてて正直しんどくなることがある。それに比べて⑳「グラス・オニオン」の痛快なまでのカッコ良さ、これでこそジョン・レノンだ。様々な効果音も満載で特に電話のベルやガラスの割れる音なんかは面白いが、これを聴いた後に公式ヴァージョンを聴けばそういった効果音の代わりに弦楽器のオーヴァーダブを提案したジョージ・マーティンの鋭さが実感できる。ラストの(27)「ジュリア」は演奏終了後のジョンとポール(多分コントロール・ルームで演奏を聴いてた...)の会話が印象的で、 “スッゲー良かったけど、1・2ヶ所あやしいとこもあったからもう1回演ってみぃひんか?” “あれぐらい別にかまへんやん...” “まぁそぉ言わんと...” “完璧ちゃうん?” “確かに良かったで。でもな、...” というやり取りが和やかなムードで交わされるのだ。やっぱりこの二人、仲エエんちゃうの(^o^)丿

The Beatles - "While My Guitar Gently Weeps" (Anthology Version)

The Beatles Anthology 3 (Disc 1-Pt. 1)

2009-10-20 | The Beatles
 アンソロジー3のDisc-1 は「ホワイト・アルバム」の音源が中心だ。②と④~⑨の計7曲はインドから帰国後にイギリスのイーシャーにあるジョージの別荘にメンバーが集まって「ホワイト・アルバム」のリハーサルを行った時の、通称 “イーシャー・デモ” からの音源で、アコースティック・ギター1本の弾き語りというシンプルな形態がそれぞれの楽曲の原型を露わにし、色々とサウンド・プロダクションを施していく前の“ネイキッド”な姿を見せてくれる。まさに “アンプラグド・ホワイト・アルバム” といった塩梅だ。ただ、ホーム・レコーディングのデモ・テイクとはいっても、4トラック・レコーダーを使ってヴォーカル・パートのオーヴァーダブが行われているので侮れない。
 ②「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」はまだまだ歌詞も未完成っぽいが、途中で “Yoko Ono oh no, Yoko Ono oh yes...♪” などというさぶいアドリブをかましながらジョンが淡々と歌っている(>_<) ④「ミーン・ミスター・マスタード」と⑤「ポリシーン・パン」の2曲は結局「ホワイト・アルバム」に間に合うように完成させることが出来ず、結局「アビー・ロード」のB面大メドレーに組み込まれることになったのだが、元々は繋がっていなかったこの2曲(この時点ではマスタード氏の妹の名は “パン” ではなくまだ “シェリー” だ!)を並べてメドレーの中間部の核にした(←最初はこの2曲の間に「ハー・マジェスティ」が入ってたというから驚き!)彼らのセンスに脱帽だ。それにしてもこの2曲、アンプラグド・アコースティック・セットにピッタリ合っててエエ感じで、特に⑤では1分15秒を過ぎたあたりからジョンの速射砲のような早口ヴォーカルが楽しめる。そのノリは⑥「グラス・オニオン」にも引き継がれ、歌詞が未完成なパートを早口で一気にまくし立てて(←⑤⑥どちらもダブル・トラック効果で面白さ抜群!)誤魔化しているところがいかにもジョンらしい(^.^)
 ポールの1st ソロ「マッカートニー」に収録された隠れ名曲⑦「ジャンク」がビートルズ・ヴァージョンで聴ける幸せを何と表現しよう!この哀愁、たまらんなぁ... (≧▽≦) それはそうと、バックに聞こえるコーラス・ハーモニーは誰やろ?⑧「ピッギーズ」の公式ヴァージョンはハープシコードが弾くバロック調の旋律が効いていたが、ここではアコギでシンプルに処理しており、中間部では口笛まで聞こえる。尚、この時点ではまだ歌詞の最後が “ブタどもがフォークとナイフでポークチョップを切り刻む” だが、完成ヴァージョンではジョンのアドヴァイスを入れて “ベーコンを食べる” というエグイ表現(←共食いやもんね...)に変えられていた。さすがはジョン、風刺が効いてまんなぁ(笑)。⑨「ハニー・パイ」はこのまま発表してもイケそうな、 “アンプラグドの鏡(?)” のような演奏で、肩の力の抜けたポールの変幻自在な歌声がめちゃくちゃカッコイイ!!! このトラックめっちゃ好きやわぁ...(≧▽≦)
 で、何でイーシャー・デモを分断するように収録したのか分からない③「ヘルター・スケルター」だが、3回行われたリハーサルのうちのテイク2(12分以上あった!)を短く編集したもので、世間で噂になっていたテイク3(何と27分もあるらしい...おぉコワ)は収録を見送られたらしい。このテイク2は凄まじいハードロックの公式ヴァージョンとは全く違うスロー・テンポのR&B っぽい演奏で、かえってそれが大爆発前の鳴動の如く不気味に響く。それにしてもこれが「ジャンク」や「ハニー・パイ」と同じ人間とは... ポール・マッカートニー恐るべしである。
 ⑩「ドント・パス・ミー・バイ」は公式ヴァージョンとあまり変わらないほぼ完成したヴァージョン。この後フィドルとかをオーヴァーダブしてより C&W 色を出そうとしたのだろう。⑪「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」はピアノの代わりにアコギを大きくフィーチャーしたテイクで、テンポもやや速めでドライヴ感があり、公式ヴァージョンが耳タコだったこともあり、初めて聴いた時はその軽快さが実に新鮮に感じられ、いっぺんに気に入ってしまった。もちろん完成度という点では公式ヴァージョンに一歩譲るが、これはこれで大いにアリの魅力的なトラックだと思う。

The Beatles - "Ob-La-Di, Ob-La-Da" (Anthology Version)

The Beatles Anthology 2 (Disc 2-Pt. 2)

2009-10-19 | The Beatles
 アンソロジー2収録のペパーズ曲でダントツに好きなのがこの⑫「サージェント・ペパーズ(リプリーズ)」。他の曲でもそうだが、スタジオ芸術の最高峰と言われる「ペパーズ」の核にあるのはあくまでもロックンロール・バンドであり続けようとするビートルズのロック魂であり、それを最も如実に伝えるのが躍動感溢れるこのトラックだ。ただのガイド・ヴォーカルだというのにポールはノリノリだし、何と言ってもリンゴの一撃必殺ドラミングがビシバシと面白いようにキマッて気持ちエエことこの上ない。これがたったの1分27秒で終わるなんてもったいない、もっとずぅーっと続いてくれ、と思わせるカッコ良いヴァージョンだ。
 ⑬「ユー・ノウ・マイ・ネーム」はシングル「レット・イット・ビー」のB面曲で、最終ミックス時の編集でカットされたパートを復活させたコンプリート・ヴァージョンらしいが、元々が酔っ払いのドンチャン騒ぎみたいな(笑)面白い曲なのであまり大きな違いは感じられない。それよりも、一聴アヴァンギャルドなナンバーでありながら、聴いてて不快なだけのムチャクチャな演奏ではなく、ちゃーんと一本筋の通ったメロディアスなものになっているところがビートルズのビートルズたる由縁だろう。そしてこれに続くのがサイケの極北⑭「アイ・アム・ザ・ウォルラス」という凄まじさ。これはストリングスやコーラスなどのオーヴァーダビングを重ねる前のベーシック・トラックで、ジョンが “Yellow matter custard~♪” という歌詞に入るタイミングを1小節間違え(1分39秒あたり)、言葉を飲み込むところが生々しい。それにしても一連のペパーズものに続けてこの⑬→⑭を聴くと、ビートルズとは何と懐の深い、プログレッシヴなバンドだったのかと改めて痛感させられる(≧▽≦)
 「フール・オン・ザ・ヒル」は「ノー・リプライ」の時と同じく⑮「デモ」と⑰「テイク4」が分散収録されており、これもCD-Rに連続収録して感動を味わっている。何より凄いのはまだ「デモ」の段階だというのに既に品格滴り落ちる大名曲の顔をしているということ。そしてそれをビートルズとして磨き上げていった完成形一歩手前の音源が「テイク4」ということで、この後に公式ヴァージョンを続けて聴くことによって “曲よし演奏よしアレンジよし” の3拍子揃った名曲名演誕生物語が完結するのだ。⑮⑰に挟まれた形の⑯「ユア・マザー・シュッド・ノウ」はアタマの部分で “レッツォーゲラッパァ~ン... レッツォーゲラッパン ダンス トゥアソン...♪” と曲に入るタイミングを計るかのようなポールの歌い出しがカッコイイ!それに輪をかけて凄いのがリンゴの変幻自在のドラミング。どんな曲を演ってもそれぞれの曲に最適にファイン・チューンされたビートを刻み続け、他の誰にもマネの出来ない圧倒的なグルーヴを生み出す彼こそがビートルズ・サウンドの要だということを改めて示す強烈なトラックだ。
 ⑱「ハロー・グッバイ」は公式ヴァージョンの元になったテイク16 でほぼ完成されているが、イントロのギターのパートがちょっと違うし、1分20秒あたりに入るはずの “ワゥワゥワゥ ワゥワゥワゥ ドゥユセ~♪” のパートもまだない “完成一歩手前” 状態が聴ける。⑲「レディ・マドンナ」はテイク3と4とを合わせたニュー・リミックス・ヴァージョンで、中間部とエンディングのホーン・アレンジが公式ヴァージョンとは違うところが耳に新鮮に響く。まぁ別テイクが一つ増えたようなモンだろう。⑳「アクロス・ザ・ユニヴァーズ」に関してはこのブログでも何回か取り上げてきたが、ここに収録されたのはオーケストラやコーラス、効果音etc の入っていないシンプルなヴァージョンで、フィル・スペクターがあれこれ手を加える前の貴重な音源だ。コッテリしたソースの味付けの妙で食べさせるフランス料理のようなスペクター流プロデュースに対し、こちらは素材の旨味だけで食べさせるシンプルな和食の味わいといったところだろうか。味付けの好みが十人十色であるように、この「アクロス・ザ・ユニヴァーズ」論争(?)に決着がつくことはないだろう。

The Beatles "Across The Universe"
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The Beatles Anthology 2 (Disc 2-Pt. 1)

2009-10-18 | The Beatles
 アンソロジー2のDisc-2 は、「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」怒涛の3連発で幕を開ける。①「デモ・シークエンス」はジョンの弾き語りによるホーム・レコーディング、②はメロトロンを大きくフィーチャーしたテイク1、③は公式ヴァージョンの前半に使われたテイク7と、ジョン中期の傑作がどのようなプロセスを経て完成されていったのかが分かる編集になっている。特に③の3分2秒から炸裂するリンゴのドラム連打は必聴!複雑なリズムを駆使してビシビシと演奏に強烈なグルーヴを与えている。「レイン」や「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」なんかでも際立っていたが、リンゴのドラミングはメチャウマだ(^o^)丿 ④「ペニー・レイン」は複数のテイクを繋ぎ合せた新生ヴァージョンだが、一番の特徴は中間部にピッコロ・トランペットではなく何とオーボエが使われていることで、しかもエンディングはシンプルに演奏の余韻を活かした公式ヴァージョンとは一味違う、USプロモ・シングル用のトランペット・エンディングが繋げられているのだ。私としては木に竹を接いだような違和感を禁じ得ないが、この摩訶不思議な編集のおかげでオーボエよりもピッコロ・トランペットの方が断然この曲に合っていることはよく分かる。
 ⑤「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」も3つのテイクが繋げられているがこっちは実に自然な編集で、アタマのジョンのカウント“シュガー プラム フェアリー、シュガー プラム フェアリー...” からもう雰囲気抜群だ。アンソロジー・ビデオでジョージ・マーティンがこのカウントを聴きながら当時を回想する場面があるが、まるで昔さんざん手を焼いたやんちゃな生徒を懐かしそうに思い出す校長先生みたいな彼の表情(←DVD Vol.5 チャプター2の8分21秒あたり)がとっても印象的だった。話戻って、水も漏らさぬような完璧なペパーズの、しかも壮大なエンディング曲の初期の姿(ロード・マネージャー、マル・エヴァンスのカウントや、ミドル・パートでトチッたポールの “Oh, shit!” という声まで入ってる!)が聴けるだけでもこのヴァージョンは価値がある。最後のガーン!!!の代わりにポールと誰かのおしゃべり(←“こーゆーのやる時って最初はみんな懐疑的でほんとイヤになっちゃうよ、ったく...” って愚痴ってるけど、相手は誰やろ?)が効果音的に入れられている。⑥「グッド・モーニング・グッド・モーニング」はブラスや様々な効果音をオーヴァーダビングする前の、まさに “ネイキッド” なベーシック・トラックが聴けて大満足。このライブ感溢れる演奏は強烈だ。特にリンゴ、あんたは凄い、いや、凄すぎる(≧▽≦)
 ⑦「オンリー・ア・ノーザン・ソング」はペパーズ・セッション時にレコーディングされたのでこの位置なのだろう。ジョージの弾くハモンド・オルガンがめっちゃ目立っている。⑧⑨「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」ではまずエンジニアのジェフ・エメリックがタイトルを “フォー・ザ・ベネフィット...” とアナウンスするとジョンがすかさず “ビーイング...” と言い直したり、曲のテンポを調整したり、ポールが歌い方をアドヴァイスしたりと、レコーディング現場での生々しい会話のやりとりが興味をそそる。ジョンのヴォーカルはいつ聴いても “ザ・ワン・アンド・オンリー” だ。⑩「ルーシー・イン・ザ・スカイ」も様々なテイクを繋いで生み出されたツギハギ・ヴァージョンで賛否両論ありそうだが、サウンド・プロダクションがやや凝り過ぎの感があった公式ヴァージョンよりもジョンのヴォーカルがリアルにミックスされているし、サウンドのもやが晴れて相対的にタンブーラが強調された結果、サウンドがよりサイケ色を増していて、私はこっちの方が好きだ。それにしてもこの時期のビートルズの創造性って神懸り的やなぁ... (≧▽≦)

Strawberry fields forever

The Beatles Anthology 2 (Disc 1-Pt. 2)

2009-10-17 | The Beatles
 今日はアンソロジー2・Disc-1 の後半戦、さぁ、ここからいよいよ「ラバー・ソウル」、そして「リヴォルヴァー」へと突入だ。⑭「ノーウェジアン・ウッド」のテイク1ではシタールが全編で大きくフィーチャーされて目立っているが曲としてはほぼ完成されており、後はいかにサウンド・プロダクションを練り上げて狙ったサウンドを作り上げるか、といった段階。それは公式ヴァージョンよりもテンポを下げて粘っこい演奏を聴かせる⑮「アイム・ルッキング・スルー・ユー」のテイク1にも言えることで、これはこれで立派に “出来上がっている” ように思えるのだが、⑭といい⑮といい、そこから斬新な発想でありったけのアイデアを投入し、様々な試行錯誤を経てあの公式ヴァージョンが生み出されたのかと思うと実にスリリングだ。こんな風に思わせてくれるアーティストは後にも先にもビートルズしかいない。⑯「12・バー・オリジナル」は世にも珍しいインストの未発表曲で、ブッカーT & ザ・MGsを想わせるようなグルーヴィーな演奏がカッコイイ!ただ、これはビートルズのどのアルバムにもフィットしそうにはないが...(>_<)
 そして出たっ!⑰「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」だ。まだタイトルは決まっておらず「マーク1」と呼ばれていたテイク1で、アンソロジー・ビデオでもコレを聴きながらポール、ジョージ、リンゴ、そしてジョージ・マーティンが思い出話に花を咲かせていたのでご存知の方も多いだろうが、初めてこのテイクを聴いた時は本当にブッ飛んだ。まだカモメのテープ・ループを始めとするオーヴァーダブが施される前だというのに、混沌としたサウンドの向こうからジョンの不気味にうねるヴォーカルが響いてくるだけでもうゾクゾクする。テイク1やっちゅーのにめっちゃリヴォッてるやん(^o^)丿 何百回、いや何千回聴いてもそのグルーヴには圧倒されるし、何よりも曲単位でみた場合、この「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」こそ “あの時代” の代表ではないか。
 ⑱「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」は随所で聴けるコーラス・ハーモニーのアレンジが実に新鮮で気持ちいいし、クスリでもキメていたのかジョンとポールがゲラゲラ笑いながら歌い切る⑲「アンド・ユア・バード・キャン・シング」の “ハイパー・大笑い・ヴァージョン” なんか聴いてるこっちまで楽しくなってくる。歌詞も “When your bike is broken, will it bring you down?” と替え歌にして楽しんでいるし、エンディングも口笛でシメるなど、最後まで超ゴキゲンなお二人さんだ。
 最終完成形にはなかった早口コーラスが聴ける⑳「タックスマン」では彼らが実に様々なアイデアを試しながら楽曲を完成させていったプロセスの一端が垣間見れるが、すんなりと終わるこのヴァージョンを聴くことによって、逆に公式ヴァージョンでエンディングに過激なギター・ソロをくっつけた感性の鋭さに脱帽する。アレがない「タックスマン」はフェラーリ抜きのF1みたいなモンだ。「アイム・オンリー・スリーピング」は(22)がリハ・テイクで、涼しげなヴァイブの音色にビックリ。そのジャジーな雰囲気からはとてもあのサイケの極北のような最終形は想像できない。(23)のテイク1はそのサイケデリック公式ヴァージョンよりもテンポの速い“アンプラグド・リヴォルヴァー” みたいな感じでこれまためっちゃ面白い。
 このDisc-1 のラストを飾るのは (24)「ロックンロール・ミュージック」と(25)「シーズ・ア・ウーマン」の2曲で、日本公演のライヴがこーやって正式な音源として聴けるのは非常に嬉しいのだが、それなら何で出来の良かった 7/1 じゃなくて調子の悪かった6/30 の方を採用したんやろ?それに一連の「リヴォルヴァー」ものを聴いてきた後でこの2曲というのは、何か時計の針を無理やり過去に押し戻したような違和感を感じてしまう...(>_<) 私は曲順を変えてCD-Rに入れて楽しんでいる。まぁ何やかんや言ってもこの「アンソロ2」のDisc-1 は聴き所満載で、ビートルズ・ファンにはたまらない1枚だと思う。

The Beatles - (Funny) And Your Bird Can Sing (Take 2)