shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Abbey Road / The Beatles

2009-10-01 | The Beatles
 「アビー・ロード」は実質的なビートルズのラスト・アルバムであり、最も売れたビートルズ・アルバムでもある。ファンの中にはこのアルバムを最高傑作に挙げる人も多い。どちらかというとシングル志向でノリノリ・ロックンロールが大好きな私ですらこのアルバムの完成度の高さを耳にすると、もう曲がどうの演奏がどうのという次元を超越して、そのあまりの素晴らしさに圧倒されてしまう。このアルバムはつまみ聴きをするのではなく、アルバム丸ごと1枚通して聴いて初めて “「アビー・ロード」という音楽” に浸る喜びが味わえる。その見事なまでのメロディーとサウンドのタペストリーはまるで魔法のようだ。UKオリジナル盤は32ポンド、アナログの素晴らしさが堪能できる豊潤なサウンドが嬉しい(^o^)丿
 ビートルズのアルバムのA面1曲目は例外なくカッコイイ曲で始まるが、そういう意味ではこのアルバムの①「カム・トゥゲザー」も文句なしにカッコイイ!初めて聴いた時は “シュッ!” という掛け声に続いてポールのベースが不気味な上昇下降フレーズを奏で、リンゴがウルトラ・ハイ・テクニックのドラミングでビシッとキメる驚異のイントロ4連発でまずブッ飛んだ。 “何じゃコレはぁ~(゜o゜)” と松田優作しているうちにジョンのヴォーカルが滑り込んでくる。旋律が「ユー・キャント・キャッチ・ミー」にそっくりだが、それがどーしたソー・ホワット、完全にジョン・レノンのワン・アンド・オンリーな世界が展開されていく。いわゆるひとつのポップでキャッチーな曲とは激しく一線を画すハードボイルドなナンバーで、エアロスミスやマイケル・ジャクソンがこぞってカヴァーしたのも頷けるカッコ良いロック曲だ。
 続くのはジョージの最高傑作の呼び声も高い②「サムシング」だ。少し前までのシタール三昧がウソのような滋味溢れる絶世の名曲で、ヘタなスタンダード・ナンバーも裸足で逃げ出す格調の高さである。それにしてもポールの歌心溢れるベース・ラインは凄いの一言。今回のリマスターでよりクリアに聴けるようになったことを大いに喜びたい。③「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」は「サージェント・ペパーズ」あたりに入っていてもおかしくないビートリィな雰囲気をもったポールお得意のノヴェルティー・ソングで、初めてこのアルバムを聴いた時、いの一番に気に入った思い出深い曲なのだ。マックスウェル・エディソンという薬学生の主人公が銀のハンマーで次々と人を殺していくシュールな歌詞をノホホンとしたサウンドに乗せ、ポールが何食わぬ顔で歌っているのがいい(^o^)丿 シンセサイザーの絶妙な使い方も◎だ。
 ④「オー・ダーリン」はポールがプレスリーの「ワン・ナイト」をリトル・リチャード風に叫び倒したような、ちょうど初期の「ロング・トール・サリー」や「アイム・ダウン」を彷彿とさせる絶叫系ナンバーで、ジョージのギターのカッティングもめっちゃカッコイイ(≧▽≦) それにしても南佳孝の「スローなブギにしてくれ」やジュリーの「おまえがパラダイス」を始めとして、邦楽にはこの曲を元ネタにしたパクリ、じゃなかったオマージュ曲(笑)が多いなぁ...(>_<) リンゴが書いた⑤「オクトパス・ガーデン」は“黄色い潜水艦”に続くリンゴの海洋シリーズ第2弾で、今度は “タコくんの庭” である。ビートルズにあってこういう曲にピタリとハマるのはリンゴの歌声しかない、海底を想わせるSEも微笑ましく、ハイ・テンションな④⑥の間に置かれて聴く者の頬を緩めさせる楽しいナンバーである。映画「レット・イット・ビー」でジョージがこの曲の作曲を手伝うシーンがたまらなく好きだ。
 A面ラストを飾る大作⑥「アイ・ウォント・ユー」はシンプルなギターのアルペジオに乗せてハービー・マンの「カミン・ホーム・ベイビー」を思わせるメロディーを持ったブルージーなヴァースが繰り返し歌われ、それが徐々に大きなうねりとなって強烈なグルーヴを生み出しているのだ。しかも5分40秒を過ぎたあたりからムーグ・シンセサイザーの轟音のようなノイズがオーヴァーダビングされ、凄まじいまでの切迫感が渦巻いている。そしてトドメはまるでナタでぶった切ったような唐突なエンディング...(゜o゜) これはもう鳥肌モノだ。まさにジョン・レノンの天才が炸裂した瞬間だろう。
 B面はジョージの⑦「ヒア・カムズ・ザ・サン」でスタート、Aラスの重厚な⑥と好対照をなす軽妙なテンポがたまらない絵に描いたような名曲で、個人的には②をも超えるジョージの最高傑作、究極の鼻歌ソング(←私流の最大限の褒め言葉ですねん!)だと思う。天衣無縫とでもいうべき美しいメロディーを優しい音色でアコギが奏で、ハンド・クラッピングやムーグが絶妙な隠し味にして完璧な逸品に仕上げている。それにしてもこのアルバムのジョージは凄い、凄すぎる(≧▽≦)
 ⑧「ビコーズ」は最初の頃はあまり好きではなかった。確かにコーラス・ハーモニーは美しいのだが、まるでビージーズみたいに軟弱に聞こえ、ビートルズらしい力強さ(←たとえバラッドであっても)が感じられなかったからだ。そういう意味では⑩「サン・キング」も似たようなモンで、かなり長い間 “これのどこがエエねん?” と思っていた。しかしある時ふと気付いたのだが、⑧のエンディングの余韻に続いて流れる⑨のイントロのピアノが入ってくる瞬間のゾクゾク感はハンパではないし、⑩から⑪へと移る時のドンピシャなタイミングで炸裂するリンゴのドラムでパッと景色が変わるようなコントラストの妙が感じられるのだ。つまりこの⑧と⑩は単品としてではなく、この大メドレーの中のつなぎ曲として効果を発揮しているのだと思う。メドレーは形の上では⑨から始まっているが、これはつまり⑧もサウンド的に見ればメドレーの一部と考えるのが妥当であり、もっと言えば⑦をも含めたB面全体が一つの大きな流れを形成しているように思えてならない。そのB面前半部の要と言えるのが3部構成の⑨「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」で、前半部のせつなくメランコリックな雰囲気に浸っていると途中から一気に加速し、ポールの歌声も一変、ホンキートンク・ピアノが乱入し、ジョージもお得意のフレーズを連発するなど大盛り上がりで、やがて混沌としたサウンドにSEが被さりフェイドアウトしながら次曲へと繋がっていく。その変幻自在の曲想はポールの本領発揮といったところか。
 ジョンの⑪「ミーン・ミスター・マスタード」と⑫「ポリシーン・パン」の2曲はどちらも未完成だったが、それを違和感なく繋げた感性は実に鋭い。ミディアム・スローの⑪からアップ・テンポの⑫へと切り替わる瞬間のギター・カッティングがめちゃくちゃカッコイイ!!! わずか1分強の短い曲なのが勿体ないぐらいの名曲名演だ。そしてジョンとポールの阿吽の呼吸で⑬「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」になだれ込む。この目も眩むような怒涛の展開は間違いなくB面メドレーの見せ場の一つだろう。いかにもロックを感じさせるグルーヴィーな演奏は熱気に満ち溢れ、ライヴ感いっぱいだ。
 ⑭「ゴールデン・スランバーズ」はどことなく懐かしい感じにさせてくれる優しさ溢れる子守唄で、胸を締め付けられるようなポールの歌声に涙ちょちょぎれる。この曲は次の⑮「キャリー・ザット・ウェイト」とワン・セットになっており、リンゴの一撃と共に爆裂するポール、ジョージ、リンゴ3人のの大合唱も、途中で挿入される⑨のフレーズも、それに続くジョージ入魂のギター・ソロも、そのすべてが感動的で言葉を失う。切れ目なしに続く⑯「ジ・エンド」はこの大メドレーを締めくくるような怒涛の展開が圧巻だ。まずはリンゴ・スター最初で最後のドラム・ソロから始まり、ポール→ジョージ→ジョンの順でギター・バトルが繰り広げられるのだが、これがもう圧倒的に、超越的に素晴らしい。いつまでも聴いていたい、そんな気にさせてくれる三者三様の味のあるプレイの波状攻撃だ。そして “結局、君が受ける愛は君が与える愛に等しいのさ” という、これ以上ないぐらいビートルズらしいメッセージを残してのカッコ良すぎるエンディング。私にとっては何物にも代え難い至福の2分21秒だ。で、これでもうおしまいか... と余韻に浸っているといきなりそんな空気をブチ壊すかのようにやって来るのが人を食ったような⑰「ハー・マジェスティ」。ビートルズは最後の最後までビートルズやねぇ...と思わず苦笑いさせられてしまう1曲だ。
 夢は終わった。類稀なる才能と斬新なアイデアで奇跡的とも言える名曲名演を生み出し続けたばかりでなく、その圧倒的な存在感で音楽シーンを、いや、時代をリードしてきたビートルズはこのアルバムで自らの最終章を最高の形で締めくくったのだ。それは音楽が最も豊かだった60年代の終焉と混沌とした70年代の幕開けをも意味していた。

The Beatles Abbey road medley


※ いつもコメントを下さるみながわさんに教えていただいた貴重な映像を追加です。
何回も見直してしまうぐらいよく出来てますね。
ホンマにエエもんを教えていただき、ありがとうございました!!!
Rock Band : The Beatles - The End Expert Guitar 100% FC

コメント (18)