shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Styx Singles Collection

2009-02-28 | Rock & Pops (70's)
 昔、日本の一部のロック・ジャーナリズムにおいて、ジャーニー、フォリナー、ボストン、TOTO、スティクスらを一括りにして「産業ロック」と呼んで貶めるという風潮があった。ん?私の好きなバンドばかりではないか! ウィキペディアで調べてみると「商業的な成功のために大衆に媚びるばかりでロック本来の姿である大人社会への異議申し立てやアートとしての先鋭化をおろそかにしている」ということらしい。“大人社会への異議申し立て”って... ミュージック・シーンはいつから裁判所になったんや? しかも中高生やあるまいし、30才過ぎたエエおっさんつかまえて何を眠たいことゆぅてんねん!... 今ならこう言って笑い飛ばすことが出来るが、当時はブリティッシュ・ロックを持ち上げんがためにアメリカン・ロックを貶すこのような論法にぐうの音も出ず、悔しい思いをしていた。
 このように “悪しき産業ロックの代表” みたいに言われるスティクスだが彼らは何も最初から “商業的な成功” を享受していたわけではない。むしろ70年代には “アメリカン・プログレ・ハードの雄” として一目置かれる存在だったように思う。特に77年に出た「グランド・イリュージョン」からシングル・カットされ初のトップ10ヒットになった「カム・セイル・アウェイ」は必殺のメロディーが多発する名曲で、静と動のコントラストが見事に描かれており、スティクス浮上のきっかけとなった忘れがたい1曲だ。
Styx come sail away


 翌78年の「ピーシズ・オブ・エイト」からはパープルのジョン・ロードみたいなキーボードのイントロがカッコ良い「ブルー・カラー・マン」がヒットし、いよいよ79年彼らの代表作である「コーナーストーン」がリリースされる。ファースト・シングルで全米№1に輝いた「ベイブ」はデニス・デ・ヤングの甘口ヴォーカルに美しいコーラス・ハーモニーが寄り添うラヴ・バラッドの傑作だったが、私が本当の意味で「スティクスは凄い!」と実感したのは日本のみのシングル・カット「ボート・オン・ザ・リヴァー」を聴いた時だった。まるでロシア民謡のような哀愁を湛えたメロディーはとてもアメリカのバンドとは思えないもので、哀愁舞い散るマンドリンの音色とトミー・ショウの切ないヴォーカルが心の琴線をビンビン震わせてくれた。今でもスティクスといえばこの曲が一番好きだ。
Styx Boat On The River '82


 80年代に入っても彼らの快進撃は続き、勢いに乗って作られたコンセプト・アルバム「パラダイス・シアター」('81年)も再び大ヒット、そこからシングル・カットされた「ザ・ベスト・オブ・タイムズ」も絵に描いたような絶世の名曲で、彼らはまさに時代の波に乗ろうとしていた。しかし何を血迷ったのか、彼らはこの後何ともトホホなアルバムを作ってしまう。'83年にリリースされた「キルロイ・ワズ・ヒア」がそれだ。このアルバムを初めて聴いた時、私は唖然とした。いきなり「ドモアリガット、ミスター・ロボット~♪」である(>_<) 何なん、これは? ナメてんのか? 確かにノリが良くて印象に残る曲だけれど、それは名曲だからではなくあまりにもアホらしい曲だからであり、お笑いのネタとして仲間内で大笑いしながら聴いたものだった。しかもビデオ・クリップでは殴られたカエルみたいな顔をした C-3PO そっくりのロボットが登場、まったくバカも休み休みにしてほしいものだ。これがあの「ボート・オン・ザ・リヴァー」を、「ザ・ベスト・オブ・タイムズ」を作ったのと同じバンドなのか? 前2作が傑作だっただけにその凋落ぶりは凄まじく、メンバー間の不和も表面化してスティクスは長い沈黙に入ることになる。
Styx - The Best Of Times

Mr. Roboto- Styx


 その後、90年に活動を再開してリリースしたシングル「ショウ・ミー・ザ・ウェイ」は、その敬虔な歌詞が当時湾岸戦争で沈みきっていた人々の心に響き久々の大ヒット。当時私が聴いていたスコット・シャノンの「ロッキン・アメリカ」というチャート番組ではこの曲に開戦を宣言する当時のブッシュ(もちろん父親の方ですよ)大統領の声を重ね合わせた “デザート・ストーム・ミックス” を採用、米軍の「砂の嵐作戦」を痛烈に皮肉り、リスナーの喝采を浴びていたのを思い出す。残念ながらディスク化はされていないようだが、今聴いても痛快極まりないミックスだ。
 このように様々な思い出がいっぱい詰まったスティクスのベスト・アルバム、何と言われようが私にとっては大切な1枚なのだ。
Show Me The Way (Styx) Desert Storm Mix (Remastered)

Around Midnight / Julie London

2009-02-27 | Jazz Vocal
 ジュリー・ロンドンは本物の美人である。ルックスを問題にするのはけしからん!と言われるかもしれないが、やはり女性ヴォーカルは雰囲気なんである。前にも書いたが私は「女性ヴォーカル盤はジャケットで買え!」を座右の銘としていて、ジャケットが良くて好きな曲が入っていれば必ず買ってしまう。ジャケットを眺め、歌ってる姿を想像しながら聴いてどこが悪いねん!と開き直って(笑)悦楽の境地を楽しんでいる。私がジャズに興味を持ち、特に女性ヴォーカルを中心に聴き始めた頃、まず最初にハマッたのが彼女だった。当然、CDの小さなジャケでは満足できない。かといって大きけりゃ何でもエエのかというと、再発LPはカラーコピー並みの粗雑なジャケット写真が気に入らない。で、どうせ金を払って買うのなら趣味の世界ぐらい贅沢したれということでピカピカのコーティングが施された美麗オリジナル盤を探すことにした。彼女の場合、メジャーな歌手ということで希少性が低く、オリジ盤を血眼になって探している熱狂的マニアの対象外だったことも幸いし、一部の人気盤を除けば5,000円前後で入手できたのがラッキーだった。この「アラウンド・ミッドナイト」もそんな1枚で、大阪難波の EAST で5,800円、このお店の値付けはホンマに良心的でリーズナブルだ。ジュリーの全作品中一、二を争う人気盤が盤・ジャケット共に極上コンディションでこのお値段!エサ箱の中に見つけた時は嬉しくてたまらなかった(^o^)丿 ジュリーは何と言ってもあの低い、ハスキーを通り越してセクシーな声がたまらない魅力で、一度その虜になったら離れられない。何度聴いてもゾクゾクしてしまう。このアルバムは彼女の全盛期である1960年に録音された1枚で、ビッグ・バンドをバックにゴージャスな歌声を聴かせてくれる。①「ラウンド・ミッドナイト」では物憂げなストリングス・オーケストラの伴奏と彼女のやるせない超スロー・ヴォーカルがバッチリ合っていて、見事に真夜中のムードを表現している。地を這うようなベースのイントロで始まる②「ロンリー・ナイト・イン・パリス」は夫のボビー・トゥループ書き下ろしのスインギーなナンバーで、彼女の抑制の効いた歌い方がめちゃくちゃジャジーでカッコイイ。再びスローで迫る③「ミスティ」は秀逸なオーケストラ・アレンジ(特に木管)が彼女のあっさりした歌声と相まって実に爽やかな雰囲気を醸し出しており、とてもリラックスできる仕上がりだ。④「ブラック・コーヒー」はペギー・リーの名唱とタイマンを張れるくらいの出来映えで、彼女の気だるい歌い方がブルージーなムードを高めている。⑤⑥⑦とスロー・バラッドの三連投下で「もうそろそろ...」というこちらの気持ちを見透かしたかのようにミディアムでスイングする⑧「あなたと夜と音楽と」は彼女のハスキー・ヴォイスの魅力全開で迫ってくる。ガーシュウィンの⑪「バット・ノット・フォー・ミー」は⑧と並ぶこのアルバム最大の聴き所で、軽やかにスイングするジュリーが最高だ。特に1分42秒からの「ア~ィ ワァ~ザァ~ フ~♪」と語尾を伸ばすところなんかもうたまらない(≧▽≦) この曲のマイ・フェイヴァリット・ヴァージョンだ。ジャケットはジュリーの全身時計(?)が7時を指すデザインで、裏ジャケでは文字盤に曲名がダブッて印刷されている。よくよく見ると「ラウンド・ミッドナイト」が0時、「イン・ザ・ウィ・スモール・アワーズ...」が1時、「ドント・スモーク・イン・ベッド」が2時、「ブラック・コーヒー」が3時、「ザ・パーティーズ・オーバー」が4時というように曲名と時刻を上手く引っ掛けてあり、そのあたりの洒落たセンスにも脱帽だ。これは粋なスタンダード・ソングを夜のムードで見事に表現した、都会的センス溢れる名作だと思う。

Julie London - You And The Night And The Music

B'z GLORY DAYS

2009-02-26 | B'z
 今朝起きてみるとテーブルの上にアマゾンから届いたメール便が置かれていた。母が新聞を取ろうとしたら土砂降りの雨に濡れながら郵便受けに入っていたらしい。朝の7時にメール便??? あの濡れ方はどう考えても一晩中雨ざらしになってたとしか思えん(>_<) コンサート当日も雨、DVD配達日も雨、そしてパッケージも水滴をイメージしたエンボス加工と、とことん雨尽くしである。前回の「ヒドゥン・プレジャー」みたいにフラゲでけたらエエなぁと思いながら昨日は1時間おきぐらいにアマゾンの「配送状況の確認」をクリックして心待ちにしていたのだが、一体いつ配達したんやろ?今見たら「24日に配達完了」になってるやん。日付が変わる前に配達ってか??? アマゾン恐るべし(゜o゜) とにかく1分1秒でも早く見たいけど、仕事サボるわけにもいかんので、帰ってからのお楽しみ...
 で、ついさっき見終わったところなのだが、今はただ、とにかく感動した!という言葉しかでてこない。演奏曲目では「孤独のRunaway」(←超カッコイイ!)や「NATIVE DANCE」といったDVD初収録映像(たぶん...)、それにファンなら涙なしには見れない新曲「「いつかまたここで」「グローリー・デイズ」が入っているのが嬉しい。しかし、そんなことはこの際大きな問題ではない。このDVDが特別なのは、ファンがB'zに寄せる熱き想い、B'zからそんなファンへの感謝の気持ち、そして両者を結ぶゆるぎないものひとつ...つまり信頼関係というミエナイチカラがコンサート映像全編に横溢しているところである。あえて超ド派手なステージ演出を極力抑えてシンプルにすることによって、懐かしい楽曲の数々を楽しみながらB'zの20年間の歩みをしみじみと振り返ることができるというわけだ。一度は封印したプレジャーを5年ぶりに復活させたのはそういう理由からだと思う。
 まずはオープニング・ムービーで白人の少女が赤ん坊からB'zのヒット曲と共に成長していく映像が映し出されるのだが、突然その女性がステージ上に現れスクリーンに大写しになり “Well, I really don’t know how to say it, but I guess I love you...” と呟く。何というカッコイイ演出だろう!20周年の集大成ライブにふさわしい秀逸なオープニングである。又、「恋心」でのTAKハートマークも笑えるし、89年の「TV初登場シ-ン」の映像でクネクネと腰を振りまくる姿なんかもう大爆笑モノ。「サウンド・ジョーカー」コーナーでリラックスした雰囲気で昔のエピソードを紹介するお二人の喋りも楽しい。「LOVE PHANTOM」のレーザー&スモーク、「juice」の火炎放射、「愛バク」の花火と音の饗宴、短パン復活「ギリcho」のカラフルなタオル乱舞と、お祭り気分も最高潮だ。そしてRUNを歌う前の稲葉さんのMCには涙ちょちょぎれる。男の私でも惚れ惚れするカッコ良さだ。恒例の「お疲れ~!」の後、フィールドを1周しながらファンに手を振り再びステージに上がってハグする二人のBrotherhoodにも熱いものがこみ上げてくる。
 今の世の中、確かに嫌なことや鬱陶しいことも多いが、その一方でこんなに素晴らしい世界が存在する。ポジティヴでビューティフル... 大袈裟でなく、人間やっててよかったなぁと実感する。私はB'zファン暦12年になるが、このDVDを見て改めて彼らのファンであることを誇りに思う。そしてファンの一人として彼らに最大級の感謝の言葉を送りたい気持ちでいっぱいだ。

グローリーデイズ

Open Up And Say... Ahh! / Poison

2009-02-25 | Hard Rock
 88年の夏、それまで平穏だった全米アルバム・チャートに異変が起こった。いきなりポイズンのセカンド・ アルバム「オープン・アップ・アンド・セイ・アー」が赤丸急上昇で2位にまで上がってきたのだ。それもこのおどろおどろしいジャケットでだ。いくらボン・ジョヴィやガンズ&ローゼズ、デフ・レパードらが大ブレイクしていたとはいえ、これには正直ビックリした。彼らを初めて聴いたのはその1年前、ファースト・アルバム「ルック・ホワット・ザ・キャット・ドラッグド・イン」からシングル・カットされた「トーク・ダーティー・トゥ・ミー」で、南斗紅鶴拳のユダのような派手な化粧を施してプレイするL.A.グラム・メタル・バンドという強烈なイメージが先行し、曲も単なる荒削りなロックンロールという印象しかなく、あまり気にも留めなかった。それがちょっと目を離した隙にこの快進撃だ。一体何がどーなってんねん?... 確かにその予兆はあった。全米チャートで13位まで上がってきた彼らの4枚目のシングル「アイ・ウォント・フォーゲット・ユー」を聴いて、まだ洗練されていないとはいえその歌心溢れる切ないバラッドに「これがあのユダみたいな化粧をしたバンドの曲か?」と不思議に思いながらも結構気に入って聴いたものだったし、映画「レス・ザン・ゼロ」のサントラ盤に入っていた彼らのキッス・カヴァー「ロックンロール・オール・ナイト」も疾走感に満ちた実に楽しさ溢れるヴァージョンに仕上がっていたからだ。そんなある日、ラジオのアメリカン・トップ40で最新シングルの②「ナッシン・バット・ア・グッド・タイム」を耳にしてぶっ飛んだ。「ナッシン、バラ、グッタァ~ィ♪」って思わず口ずさみたくなるような楽しさ... ちょうど70年代のキッスみたいな、元気ハツラツ・ドライヴ感溢れるノリノリのロックンロールが爆裂!これはエエわ(^o^)丿 「毎日奴隷のように働きづめで... 気分転換しなくちゃな... 楽しい時を過ごせりゃそれでいいのさ... これ以上のことはないぜ!」と歌う歌詞は下のビデオクリップ冒頭に出てくるような若者たちの鬱積した気持ちをストレートに代弁したもので、大いなる共感とともにロックンロールの原始的な衝動を呼び起こした。つまり、アメリカでも同じようにみんなラジオで聞いて(or ビデオクリップを見て)感動し、ライブを観て燃え、レコード店に走ったということだろう。そもそもメイクとファッションだけでアルバムがミリオン・セラーになるわけがない。彼らは見せるバンドから魅せるバンドへと大きく成長していたのだ。プロデューサーはモトリー・クルーやチープ・トリックetcを手掛けたトム・ワーマン、まさにバンドの方向性にピッタリの人選だ。①「ラヴ・オン・ザ・ロックス」のイントロのギターを聴いただけでウキウキした気分になれる。楽しいロックンロール・ショーの始まりだ。難しい理屈は抜きにしてとにかく楽しもうぜ、とポイズンは叫んでいる。このアルバムからはブレイクのきっかけとなったスマッシュ・ヒット②の他にも軽快なロックンロール⑦「フォールン・エンジェル」、3週連続全米№1の名バラッド⑧「エヴリ・ローズ・ハズ・イッツ・ソーン」、ロギンズ&メッシーナのめちゃくちゃ楽しい傑作カヴァー⑨「ママはダンスを踊らない」とシングル・ヒットのアメアラレ攻撃で、全米だけで500万枚売り上げたのも頷ける楽曲群の充実振りだ。要するに曲が良ければヒットするというお手本のようなアルバムであり、同時にストーンズの「イッツ・オンリー・ロックンロール・バット・アイ・ライク・イット」という一節を思い起こさせてくれる大好きなアルバムだ。

POISON - Nothin' but a good time
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Local Gentry / Bobbie Gentry

2009-02-24 | Beatles Tribute
 オムニバス盤というとどうしても「ただの寄せ集め」的なイメージが強く、ついつい軽視してしまいがちだが、時々とんでもない拾い物が入っていることがあり、決しておろそかにはできない。たまたま聴いたその1曲からあるアーティストを知り、自分の好みに合えば次はそのベスト盤なり口コミで人気の高いオリジナル盤なりに手を伸ばし、芋づる式に自分の音楽世界が広がっていく。こんな楽しいことはない。
 今から10年以上も前のことになるが、「ゴールデン・スランバーズⅡ」というビートルズ・カヴァー集を買った。東芝EMIが自社音源を切り売りするかのように定期的に曲目を少しずつ変えながら出しているオムニバス・ビートルズ・カヴァーCDの1枚だ。私はビートルズ関係はとりあえず何でも買うことにしているので、ウチの家には似たような内容の東芝音源オムニバス盤がゴロゴロすることになった(笑)
 しかしこの盤には他の盤には入っていない珠玉の1曲がひっそりと収められていた。それがボビー・ジェントリーの「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」である。彼女のことは「ビリー・ジョーの唄」というヒット曲があるという事実を活字情報として知っていただけで歌を実際に聴いたのはこの時が初めてだった。アコギの弾き語り風のイントロで始まり、軽やかなテンポで彼女が歌いだすと0分32秒からブラッシュがスルスルと滑り込んできてビートを刻み、ヴァイブが彼女のヴォーカルに色づけしながらこのままいくのかと思えば1分00秒あたりで何処からともなくストリングスが飛来、テンポ・チェンジしてスローで切々と歌い上げると再び1分35秒あたりからウエス・モンゴメリーのような歌心溢れる軽快なアコギ・ソロに突入し、そのままフェイド・アウトしていくという疾風怒濤の展開で、まるでハミングでもしているかのような変幻自在の歌と演奏が楽しめる極上の2分25秒があっという間に過ぎていく。
 「これは一生モノだ!」と直感した私は彼女のディスコグラフィーを調べ上げ、この曲が「ローカル・ジェントリー」という彼女のサード・アルバムに入っていることを突き止めた。当時はまだCD化されていなかったのでそれからというもの、大阪・京都・神戸のレコード屋を探しまわり、ついに大阪梅田の「ミュージック・イン」でUS原盤をゲット、人気がないというか知名度が圧倒的に低いというか、この盤の存在は殆ど知られてなかったようで、1,800円というウソみたいな値段で入手できた。しかも嬉しいことにこのアルバムには「フール・オン・ザ・ヒル」と「エリナー・リグビー」のカヴァーまで入っていたのだ!
 帰って早速聴いてみるとそれらがまた期待以上の素晴らしい出来でもう笑いが止まらない。「フール...」はレイドバックした雰囲気横溢の素朴な味わい深いトラックで、日本語ヴァージョンがシングル化されていたのをご存知の方もおられるかもしれない。「エリナー...」は低く過激に走るベースの動き、哀愁舞い散るギターのフレーズ、縦横無尽にグルーヴを生み出すオルガンの響き、隠し味的に投入されるタンバリンの連打、といったバックのサウンドが彼女の抑制の効いたヴォーカルと音楽的・有機的・必然的に結びつき、一体となってめちゃくちゃカッコ良いヴァージョンに仕上がっているのだ(^o^)丿 それ以外の8曲も奇跡的に全曲素晴らしく、私にとってはビートルズ・カヴァー入りアルバムの最高峰として、「自分だけの名盤」の最右翼といえる1枚だ。
Bobbie Gentry - Fool On The Hill

The Runaways Japanese Singles Collection

2009-02-23 | Rock & Pops (70's)
 ザ・ランナウェイズといえばガールズ・ロック・バンドのパイオニアであり、彼女達がいなければゴーゴーズも、バングルズも、プリンセス・プリンセスも存在しなかったかもしれない。77年のデビュー盤「悩殺爆弾~禁断のロックンロール・クイーン」(しかし凄いタイトルつけるよなぁ...)発売当時、日本では“コルセットとガーターベルトの下着姿で歌うヤンキー娘”という下世話な話題だけが先行して色物的な扱いを受けていたが、彼女達は決してセクシーさだけを売り物にしたカワイコチャン・バンドではない。何といってもあの“ロックンロール一筋の姐御”ジョーン・ジェットと“リッチー・ブラックモア信者”のリタ・フォードというガールズ・ロック界最強のツイン・ギターである。又、バンドに一時期在籍していたマイケル・スティールは後にバングルズに加入し、大成功を収めているのだ。世間の(そして当時の私の)視線は下着姿のリード・ヴォーカル、シェリー・カーリーのみに向けられていたが、今にして思えば凄いメンツだったのだ。そんな懐かしのザ・ランナウェイズが日本で出したシングルの両面をリリース順に収録したベスト盤がこの「ザ・ランナウェイズ・ジャパニーズ・シングル・コレクション」である。ジャパニーズ・シングルのコレクションなのに日本盤はなくUKが原盤というのが面白い。ファースト・シングルの①「チェリー・ボム」は“ど真ん中の直球勝負!”と言わんばかりの小気味良いロックンロールで、これこそまさに数年後にソロで大ブレイクするジョーン姐さんが目指したストレートアヘッドなサウンドだ。77年当時のミュージック・シーンを考えれば十分にニュー・ウェイヴでありパンクな要素も持っている。それにしても邦題を付けた日本フォノグラムのディレクター、いくら何でも「ボンブ」はないやろ!じゃあ combは昆布か?英語ワカランかったらせめて辞書ぐらい引いて発音調べろよ(´・ω・`) 因みに「深紫伝説」の王様によるセクシー・ロック直訳メドレー「お色気牧場」に入ってる「さくらんぼう爆弾」も抱腹絶倒カヴァーとしてオススメだ。④「ロックンロール」はスワッ、ゼッペリン・カヴァーか、と思ったが、ルー・リードの同名異曲だった。けっこう渋いやん(>_<) ⑤「ネオン・エンジェル」はヘヴィーなギターのイントロからして風雲急を告げる緊張感に溢れ、その後のハードな展開は男も女も関係ない、まさに彼女らのロック魂が炸裂するスリリングな曲。姐さんのギターのリフといい、リタのソロといい、めちゃくちゃカッコエエなぁ(≧▽≦) ⑧「ブラックメイル」はスタジオ・テイク②のライヴ・ヴァージョンで、その骨太なサウンドと重心の低さで②を凌駕する出来になっている。⑪「ママ・ウィアー・オール・クレイジー・ナウ」は言わずと知れたスレイドのヒット曲で、カッチリまとまった演奏を聴かせてくれるが、グリッター・ロックの象徴のようなこの曲はトゥイステッド・シスターが演ったようにもっとハチャメチャにハジケてほしかった気がする。それと同じことが⑫「エイト・デイズ・ア・ウイーク」にも言え、スロー化してしまったことによってビートルズの原曲が持っていた躍動感、エネルギーの奔流が損なわれてしまっているのが残念だ。⑭「ブラック・レザー」は姐さんのソロ活動を予見させるようなロック・スピリット溢れるナンバーで、このバンドの核は曲の大半を書いていた彼女だったと改めて実感させられる。もう一度そういう耳でザ・ランナウェイズを聴き直してみると色々と新たな発見があるかもしれない。

The Runaways - Cherry Bomb

Birgit Lystager

2009-02-22 | World Music
 英語圏以外の人の名前というのは読みにくい。スウェーデンのジャズ・ヴォーカリスト Monica Zetterlund は「セッテルンド」か「ゼタールンド」かハッキリしないし、大好きなギタリスト Stochelo Rosenberg も「ストーシェロ」か「ストーケロ」か悩んだものだ(←別に悩むほどのことか!)。今回ご紹介するデンマークの歌姫 Birgit Lystager は「ビアギッテ・ルゥストゥエア」と読むらしい。何だか噛んでしまいそうな覚えづらい名前だが、アルバムには一度聴いたら忘れられないような素晴らしい音楽がギッシリ詰まっている。一言で言い表すと「北欧系ソフト・ボッサ」... いわゆるひとつのオルガンバー・サバービアというやつであり、その筋ではマニア垂涎の盤らしい。このアルバムは1970年の録音で、まず何と言ってもジャケットが素晴らしい。麗しの美女がチャーミングな笑顔を湛えながら佇んでいる姿は中身を知らなくても聴いてみたいなぁという気にさせるほど魅力的だし、実際に聴いてみるとジャケット通りの美しい歌声が流れくるのに驚かされる。「女性ヴォーカル盤はジャケットで買え!」という名言はここでも生きていた。内容は当時のヒット曲が非常に洗練されたボッサ・アレンジで歌われていて、彼女の優しい歌声と共にデンマークのジャズメンによる極上のサウンドも楽しめるという超お徳用盤なのだ。ブラジルのピアニスト、アントニオ・アドルフォ作の①「プリティー・ワールド」はイントロのボッサ・ギターからブラジリアン・テイスト全開で、ちょうどカーペンターズの「シング」のようなバックのサウンドに絡む彼女の透明感溢れる可憐な歌声がたまらない。コロコロ転がるような歌心溢れるピアノのプレイも絶品だ。②「フール・オン・ザ・ヒル」でも原曲の持つ哀愁を大切にしながら当時世界中で流行っていたセルジオ・メンデス&ブラジル66風の華麗なボッサ・アレンジが施され、リラクセイションに溢れるヴァージョンに仕上がっている。バカラックの③「クロース・トゥ・ユー」は彼女の伸びやかな温かみのある歌声が心に染みわたる。今やスタンダードともいえるカーペンターズのヴァージョンに比肩する素晴らしいトラックだ。④「ギミ・リトル・サイン」を取り上げているあたりにも1970年という時代性を強く感じさせるが、ブレントン・ウッドのソウル・クラシックを完全に自分の世界に引き込んで料理し、洗練された北欧系ソフト・ロックとして聴かせるあたり、タダモノではない。ボビー・ヘブの名曲⑤「サニー」は私の大好きな曲で、オルガンをフィーチャーしたジャジーなアレンジがキラリと光るグルーヴィーな演奏をバックに彼女のアーシーなヴォーカルが冴え渡る。⑥「ワイト・イズ・ワイト」はフランスのシンガー・ソングライター、ミッシェル・デルペッシュがワイト島フェスティバルにインスパイアされて作ったヒッピー賛歌で、彼女のゆったりとした寄せては返す波のような雄大な歌声はバックのストリングスと見事に調和し、アンプのヴォリュームを上げれば彼女の歌声に包まれ心が浄化されていくようで癒し効果も抜群だ。小野リサちっくな⑦「トリステーザ」は子供達と一緒に楽しげにコーラスする彼女の歌声が聴き手の頬を緩めさせる。静謐な⑧「メイク・イット・ウィズ・ユー」に続いて再びバカラックの⑨「恋よさようなら」... 彼女のクセのない歌声がこの曲の魅力を120%引き出しており、同曲の他ヴァージョンが一瞬にして砕け散るほど圧倒的に、超越的に素晴らしい。「ビアギッテ・ルゥストゥエア」... 一部のマニアだけに楽しませておくのは勿体ない、万人に愛されて然るべき美しいアルバムだ。

ビアギッテ・ルゥストゥエア
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Rock 'n' Roll / John Lennon

2009-02-21 | John Lennon
 才能のことを英語で gift という。キリスト教の文化では、天賦の才能は神様からの贈り物ということだろう。では歌手にとっての「才能」とは何だろう?それはヴォイス・トレーニングetcで鍛えることの可能な歌唱力ではなく、先天的に生まれ持った「声」だと思う。星の数ほどいるヴォーカリスト達の中で、そのような「声」を持った天性の歌手といえる人は数えるほどしかいない。一声発すればその場の空気が一変して自分の色に染め上げてしまうような人達だ。
 ジョン・レノンはそんな数少ない“本物の”ヴォーカリストだった。「ツイスト・アンド・シャウト」も、「イット・ウォント・ビー・ロング」も、「マネー」も、「ロックンロール・ミュージック」も、みんなジョンのあの翳りのある太いシャウト・ヴォイスを得て新たな生命が吹き込まれ、生き生きと躍動し始めるのだ。ジョンの歌声を聴いた後では他のシンガーのヴァージョンが貧相に聞こえてしまう。ジョン・レノンのカヴァーをするということはベスト・ヴォーカリストと同じ俎上に乗って比較されるだけの覚悟が必要だし、ジョン・レノンによってカヴァーされるということは(それだけでも名誉なことだが...)オリジナルである自分の存在が消し飛ぶ危険性をはらんでいるというわけだ。それほどジョンの「声」の存在感は圧倒的なのである。
 そういう意味において、私にとっては「ジョンの声」+「ノリの良いロックンロール」=「最強」なのだ。だから私が常日頃愛聴しているジョンは、世評の高いソロ初期の「ジョンの魂」や「イマジン」よりも、ラウドなロッケンローが一杯詰まったこの「ロックンロール」なのだ。正直「ジョン・レノン=イマジンでキマリ!」みたいな世間の風潮にはウンザリする。ジョンを「愛と平和の使者」として神棚に祭り上げるのはもう止めてくれ。ビートルズといえば、ジョン・レノンといえば何よりもまずロックンロールではなかったか! 平和運動は他の人間にも出来るが、あんな凄いロックンロールを歌えるのはこの地球上にジョンをおいて他にいない。
 ついついコーフンしてしまったが、この盤には初期ビートルズもレパートリーにしていたような炎のロックンロールが満載なのである。しかも別居中に製作されたこともあってこの盤には私の苦手な「ヨーコの影」が微塵もない。つまり「ジョン&ヨーコの」アルバムではなく唯一の「ジョン・レノンの」アルバムということで、もういいことずくめの1枚なのだ。
 いきなり「ウェ~♪」からロック・シンガーとしてワン&オンリーの存在感を示す①「ビー・バップ・ア・ルーラ」、艶っぽい歌唱でオリジナルのベン・E・キングの存在を完全に消し去った②「スタンド・バイ・ミー」、リトル・リチャードの2曲をメドレーにして豪快に料理した③「リップ・イット・アップ~レディ・テディ」、「カム・トゥゲザー」の出自を自ら示した④「ユー・キャント・キャッチ・ミー」、まるで自分の曲であるかのように生き生きとした歌いっぷりでがむしゃらに突っ走る⑧「スリッピン・アンド・スライディン」、バディー・ホリーのしゃっくり唱法をそのまま真似てみせた⑨「ペギー・スー」、強烈なグルーヴ感に圧倒される⑪「ボニー・モロニー」、3人のビートルたちへのメッセージに涙ちょちょぎれる⑰「ジャスト・ビコーズ」...どこを切っても会心のロックンロールが飛び出してくる。
 ジャケットに映るのはハンブルグのスター・クラブ前でポーズを取る若き日のジョン・レノン。「ジョンの魂」は今も昔も「ロックンロール」なのである。

John Lennon Slippin' And Slidin' 1975 The Hit Factory NYC
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The Best Of Annette

2009-02-20 | Oldies (50's & 60's)
 アネットは50年代後半から60年代前半にかけてアメリカの“究極のティーン・エイジャー”と呼ばれたアイドルで、その屈託のない健康美はまさに「古き良きアメリカ」を象徴していた。彼女は泣く子も黙るウォルト・ディズニーが直々にスカウトしてウォルト・ディズニー・プロダクション入りし、「ミッキーマウス・クラブ」というテレビ番組のダンス&コーラス担当グループ「マウスケティアーズ」のメンバーとして抜擢されて一躍人気者になった。しばらくして彼女はポール・アンカと恋仲になり、全曲ポール・アンカ作品の「アネット・シングズ・アンカ」というアルバムも作ったりもしたが、“歌のお姉さん”の色恋沙汰はご法度ということでイメージを大切にするウォルト・ディズニーの逆鱗に触れ、二人は別れさせられたたしい。このあたりは極東のどっかの国の某芸能事務所にそっくりだ(笑) 彼女はその後ポップ・アイドルとしてコンスタントにヒットを飛ばし、更にカリフォルニアのサーファーたちの青春を描いたいわゆるビーチ・パーティーもの映画にも数多く出演した。これはそんなアネットの日本特別編集によるベスト盤で、幻のミッキーマウス・レーベル音源を始め、ブエナ・ヴィスタ・レーベルの10枚のオリジナル・アルバムからセレクトされた26曲が収録されている。①「ミッキーマウス・クラブ・クロージング・テーマ」は「ミッキーマウス・マーチ」の超スロー・ヴァージョンで、アネットはマウスケティアーズの24人コーラスの一人として参加している。彼女初の、そして最大のヒットとなった④「トール・ポール」は楽しさ溢れる曲調が耳に残るティーン・アイドルらしいヒット曲。タイトルは当時付き合ってたポール・アンカとは何の関係もないとのこと。ホンマかいな?⑥「ファースト・ネーム・イニシャル」も④同様、絵に描いたような明るいティーン・ポップスで、彼女のちょっと舌っ足らずな歌い方がたまらない。私のようにこの魅力にハマッたオールディーズ・ファンは中々抜け出せないと思う。ポール・アンカ作の名曲⑩「トレイン・オブ・ラヴ(恋の汽車ポッポ)」では、声自体は甘ったるいのだが歌い方は実にキリリと引き締まっており目は笑っていない。そのあたりのサジ加減というかバランスが絶妙で、アネットの歌声とバックの軽快なリズムがベストのマッチングをみせる。イギリスでは「ポケット・トランジスター」のアルマ・コーガンが、日本では「白い蝶のサンバ」の森山加代子がそれぞれカヴァーして、スマッシュ・ヒットさせていた。アネットの代表曲とでもいうべき⑫「パイナップル・プリンセス」ではあのスティール・ギターのイントロが聞こえてきただけで気分はもう完全にハワイアネット(笑)、嫌なことはすべて忘れてウキウキした気分にさせてくれる。これぞまさにアネットの世界である。日本では田代みどりのカヴァーが有名だが、他にも森山加代子、栗田ひろみ、松島トモ子らがカヴァーしていた。⑬「ドリーム・ボーイ」は何かどっかで聴いたメロディーやなぁと思ってたら何のことはない、イタリア民謡の「フニクリ・フニクラ」だった。この曲を聴いてすぐに細野晴臣ヴァージョンが思い浮かんだ私って一体...(>_<) ビーチ・ボーイズとの共演(24)「モンキーズ・アンクル」はアネットのヴォーカルとビーチ・ボーイズのコーラス・ハーモニーの絡みが最高で涙ちょちょぎれる。大好きなアネットの中でもベスト・オブ・ベストと胸を張って言える名曲名演だ。それにしても「ビーチ・ボーイズ」+「アネット」+「ウォルト・ディズニー」って古き良きアメリカの「明」の部分を象徴するような最強の組み合わせやなぁ... (≧▽≦)

The Beach Boys: The Monkey's Uncle

My Baby Just Cares For Me / Nina Simone

2009-02-19 | Jazz Vocal
 イギリスのミュージック・シーンはとても面白いところで、時々信じられないような珍現象が起きる。広大な土地を持つアメリカとは違い、日本と同様狭い島国のため局所的なブームがあっという間にイギリス全土に広がっていくのだろう。
 80'sポップス全盛時代、私はラジオで全米&全英チャートを毎週チェックするだけでは飽き足らず、テレビでも「ベスト・ヒットUSA」や「MTVジャパン」を見ていた。87年の秋のこと、BSで「全英トップ20」を見ていると突然ニーナ・シモンの「マイ・ベイビー・ジャスト・ケアーズ・フォー・ミー」が5位に入ってきた。バリバリのジャズ・ヴォーカルである。当時の私はジャズのジャの字も知らないロック/ポップス一筋人間だったので、自分がそれまで聴いてきた音楽とは明らかに異質なサウンド... 感情を抑制したかのようなクールなヴォーカル、何かを語りかけてくるような歌心溢れるピアノ、エレベとは明らかに違うアコベのリアルな響き、そして脳の快楽中枢を刺激する瀟洒なブラッシュ... すべてが新鮮で、その“古くて新しい”サウンドに耳が釘付けになった。確かにそれまでにも何の前触れもなくいきなりジャッキー・ウィルソンやエディ・コクランがチャート・インしてきてビックリしたことはあったが、それらはあくまでも同じポップスというジャンルの中でのリバイバル・ヒットだったので、オールディーズ好きのイギリス人の嗜好を考えれば頷ける話だった。しかしこの曲は57年録音の生粋のジャズ・ヴォーカル。バナナラマやジョージ・マイケル、ペット・ショップ・ボーイズといった80'sダンス・ビート・サウンドの中でポツンと、しかし力強く自己主張するニーナ・シモンの歌声は強烈なインパクトがあった。そしてこれが私にとってジャズ・ヴォーカルとの初遭遇となった。
 私の好きなジャズ・ヴォーカルのスタイルは「クールに、軽やかに、粋にスイング!」、これに尽きる。できればハスキーな声でビッグバンドよりもスモール・コンボをバックに、小さなクラブでスタンダード・ソングを歌うような感じがベストだ。だからクリス・コナーやアニタ・オデイ、ヘレン・メリルといったハスキー系白人女性ヴォーカルが大好きなのだが、このニーナ・シモンのヴォーカルには黒人ヴォーカル特有のネチッこさがなく実に洗練されていてカッコイイのだ。それともう一つ、この曲の魅力を高めている要因として、実にユニークなミュージック・ビデオの存在が挙げられる。ネコのクレイアニメを巧く使ったこのビデオがなかったら私もこれほどまでにハマらなかったかもしれない。特に間奏部分でのピアノ、ベース、ブラッシュのモノクロ映像がミディアム・スローでゆったりとスイングする演奏とコワイぐらいにピッタリ合っていて、こんな手法もあったのかと感心させられる。とにかくこれは私の中では5指に入るほどのお気に入りビデオ・クリップなのだ。その後私は90年代半ばになって初めて本格的にジャズを聴き始めることになるのだが、ひょっとするとこの時に私のDNAの中にジャジーなサウンドの刷り込みがなされたのかもしれない。とにかくジャズ・ヴォーカルなんて取っ付きにくそうでちょっと... というポップス・ファンでも目と耳の両方で楽しめる、実に聴きやすくてクリエイティヴな作品だと思う。

Nina Simone - My Baby Just Cares For Me

Private Eyes / Daryl Hall & John Oates

2009-02-18 | Rock & Pops (80's)
 ホール&オーツは私に80年代の扉を開いてくれた思い出深いアーティストである。初めて彼らを聴いたのは「ウェイト・フォー・ミー」で、その頃は「ブルー・アイド・ソウル」とか言われても何のことかサッパリ分からず、ダリル・ホールの粘っこいヴォーカルがやや暑苦しく感じられ、彼らのサウンドもいまいちピンとこなかった。続いてヒットしたライチャス・ブラザーズのカヴァー「ふられた気持ち」も同様に胃にもたれるようなネチッこさが自分には合わず、この2曲でホール&オーツに対する先入観が形成された。翌81年、関西地区で小林克也さんの名番組「ベスト・ヒットUSA」が始まり大喜びで毎週見ていると、ある時ホール&オーツの「キッス・オン・マイ・リスト」が紹介された。それは今まで自分が彼らに対して抱いていたイメージとは全く違う洗練された音作りで、先進のデジタル・サウンドと彼らの持ち味であるソウル・フィーリングが絶妙にブレンドされ、非常にクオリティーの高いポップスに昇華されていた。この曲は物凄い勢いでチャートを駆け上がり、3週連続№1に居座り続けた。続いてカットされたアルバム・タイトル曲「ユー・メイク・マイ・ドリームズ」も同一アルバムから4枚目のシングルながら5位まで上昇、ダリル・ホールのヴォーカルもベタつくどころかシャープな切れ味抜群で気分爽快だ。このように一気に上昇気流に乗った彼らがその年の秋に満を持してリリースしたのがこの「プライベート・アイズ」なのだ。アルバムからの先行シングルであるタイトル曲はあっという間に全米№1に... テレビやラジオの洋楽番組でも超ヘビー・ローテーションで、もう何度聴いたかわからない耳タコ状態だった。だから私のような「ベスト・ヒットUSA」世代の人間ならイントロを聴いただけですぐさま28年前にタイムスリップしてしまうだろう。歯切れの良いキーボードが全体を支配し、キャッチーなコーラスとここぞという時に炸裂するシンセのデジタル・ハンド・クラッピング(?)が印象的な名曲だ。セカンド・シングルになった③「アイ・キャント・ゴー・フォー・ザット」も最新のテクノロジーを駆使したデジタル・エレクトリック感覚溢れるダンサブルなポップ・チューンだったが、当時10週連続№1を独走していたオリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」に代わって№1に輝いたのには正直驚いてしまった。それまでは1枚のアルバムから何枚もの№1ヒットが出るなんてことは滅多になかったからだ。しかしこの頃の彼らは「出せば売れる」モードに突入しており、見事なコーラス・ワークが生み出す爽快感がたまらないサード・シングル⑤「ディド・イット・イン・ア・ミニット」、単調なメロディーの繰り返しに知らないうちにハマッしまう不思議なスルメ・チューンの4thシングル⑩「ユア・イマジネーション」と、向かうところ敵なし状態だった。これらの曲で顕著なように、彼らの成功の秘訣はブラック・ミュージックの一番美味しい部分を白人リスナーでも楽しめるようにダンス・ポップ・ニューウエイヴ風のコーティングを施し、美しいコーラス・ハーモニーで味付けしてポンと提示したところにある。シングル曲以外でも、70年代メンフィス・ソウルを80年代風にリメイクしたような②「ルッキング・フォー・ア・グッド・サイン」、印象的なサビのコーラス・メロディとこれまたお約束のハンド・クラッピングが耳に残る④「マノ・ア・マノ」、疾走するキーボードのスピード感がたまらない⑥「ヘッド・アバヴ・ウォーター」、躍動感溢れるコーラス・ハーモニーにシビレる⑧「フライディ・レット・ミー・ダウン」と、全曲シングル・カットが可能なくらいキャッチーなメロディーに溢れるこのアルバム、80年代ポップスの王道を行く1枚だ。

Hall and Oates - Private Eyes
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You Are My Lucky Star / Petula Clark

2009-02-17 | Oldies (50's & 60's)
 ぺトゥラ・クラークというと日本では「恋のダウンタウン」のイメージが強い。いわずと知れた65年の全米№1ヒットである。確かに悪い曲ではないが、私に言わせればアレはあくまで平均点のぺトゥラ・クラークである。同時期の作品なら「ドント・スリープ・イン・ザ・サブウェイ」の方が優れていると思うし、「抱きしめたい」や「恋を抱きしめよう」「ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア」といった秀逸なビートルズ・カヴァーをはじめ、他にももっと凄いのはいくらでもゴロゴロしている。しかし残念ながらそれらは日本ではほとんど知られていない。
 彼女のキャリアは案外古くてレコード・デビューは49年、何と78回転SP盤だった。彼女が世界的にヒットを飛ばしてブレイクするのはプロデューサーにトニー・ハッチを迎え、ワーナー・ブラザーズに移籍した64年以降のことだが、私が好きなのはジャズのスタンダードを積極的に取り上げていた50年代後半のニクサ・レーベル時代、そしてフランス語でリトル・ペギー・マーチやニール・セダカ、ビートルズetc のカヴァーを吹きこんでいた60年代初めのヴォーグ・レーベル時代なのだ。そんな中で私がベストと信ずるのが30~40年代のハリウッド映画の主題歌を歌ったファースト・アルバム「ユー・アー・マイ・ラッキー・スター」である。この盤のことはジャズ批評77号の「女性シンガー大百科」で坂田一生氏が絶賛されていたのを見て初めて知った。それまでは私も「ぺトゥラ=ダウンタウン」と思い込んでいたので正直???だったが、「若き日のドリス・デイやジョニー・ソマーズなどにも通ずるそのオチャメでセンチな隣の女の子といった感じのチャーミングな歌声」なんて言われた日にゃあ無関心でいられるわけがない。趣味嗜好が自分と似通っている氏の言葉を信じてUSアマゾンで買ってみたら、コレが大正解\(^o^)/ 何という瑞々しい歌声だろう!特に気に入ったのがスモール・コンボをバックにしたノリノリの③「ジング・ウェント・ザ・ストリング・オブ・マイ・ハート」や⑩「イッツ・ザ・ナチュラル・シング・トゥ・ドゥ」で、瀟洒なブラッシュを中心にピアノ、ヴァイブ、ギターが生み出す軽快なサウンドに乗って弾けるようにスイングするペトゥラが最高だ。ビッグ・バンドをバックに気持ち良さそうにスイングする⑧「スラミング・オン・パーク・アヴェニュー」やタイトル曲⑫「ユー・アー・マイ・ラッキー・スター」は40年代のバンド・シンガーを彷彿とさせるような貫禄で見事なグルーヴ感を醸し出していてウキウキした気分にさせてくれる。ストリングス・オーケストラをバックに切々と歌うスロー・バラッドでは②「ソニー・ボーイ」や⑨「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」etcのソフト&メロウな感覚、④「アローン」や「グッドナイト・マイ・ラヴ」で聴かせるしっとり感と、イギリスのトップ女性ヴォーカリストとしての実力を遺憾なく発揮している。それと、C5 Records の復刻CDには⑤「アイ・ヤイ・ヤイ・ヤイ・ヤイ」の別テイク⑬がボーナス・トラックとして入っており、そちらの方が遥かに出来が良いという坂田氏のご指摘に私も激しく同意したい。一般大衆向けによりアップテンポなアレンジに変えて再録音したのだろうか?まぁ何にせよ、このようなテイク違いを聴き比べて楽しめるというのもこのCDのオイシイところ。女性ヴォーカル・ファンはあるうちにゲットしましょう。

Petula Clark - don't sleep in the subway

The Concert In Central Park / Simon & Garfunkel

2009-02-16 | Oldies (50's & 60's)
 サイモン&ガーファンクルには苦い思い出がある。彼らは81年にセントラル・パークでの再結成コンサートで大成功を収め、翌82年にその勢いをかって来日した。当時大学生だった私は喜び勇んで大阪球場公演のチケットを買い求め、何とか外野席(内野席との境界付近の、ちょうどライト・ポールの下あたり)を確保した。いよいよ待ちに待ったコンサート当日、球場入りして自分の席に着き、ステージの方を見た私は愕然とした。私の位置からはセカンド・ベース後方付近にホームベース方向に向けて設置されたステージをちょうど右真横から見ることになり、見えるのは高く積み上げられたアンプやスピーカー群のみ... 何じゃいコレは!!!!! そんな私の気持ちを逆撫でするようにコンサートは始まった。ポールもアートも全然見えない(>_<) 見えるのはインフィールドのかぶりつき特等席で狂喜乱舞しながらノリまくるオーディエンスの姿のみ... 何やねん、この落差は!まるで大金払って大阪球場くんだりまでのこのこ出かけて行って巨大スピーカーでライヴ盤レコードを聴かされてるようなモンやんけ!瞬間湯沸かし器の異名を取る私もブチギレたが、私の周りにいた聴衆も当然怒っていた。こういった状況に置かれた時の大阪人の怒りは凄まじい。1曲目が終わる頃にはコンサートそっちのけで「見えへんぞぉ~!」「金返せ!」コールが沸き起こり、不穏な空気があたり一帯を支配、ネットによじ登る者やケンカを始める者など、暴動寸前モードに突入、とても音楽を聴くような雰囲気ではない。とりあえずフーリガンみたいな連中の巻き添えを食わないように安全な場所へ移動しながら、プロモーターの事務所に爆弾でも放り込んでやりたい気分だった。
 そんな忌まわしい出来事も25年以上の時が経った今となっては過去の思い出になってしまったが、この「セントラル・パーク・コンサート」を聴くと当時の興奮がそんな思い出と共に蘇ってくる。①「ミセス・ロビンソン」ではまだ手探り状態だったものが②「ホームワード・バウンド」、③「アメリカ」で調子を掴み、私の大好きな④「僕とフリオと校庭で」に突入。このギターのリズム・カッティングは快感の一言!疾走するようなスピード感もたまらない(≧▽≦) ⑤「スカボロー・フェア」や⑥「四月になれば彼女は」、エヴァリー・ブラザーズの⑦「起きろよスージー」を経て二人のソロ・ナンバー6連発へとなだれ込むのだが、この中ではダントツに⑨「アメリカの歌」が気に入っている。S&G時代の「アメリカ」とごっちゃになりそうな紛らわしいタイトルだが、個人的にはこっちの方が好きだ。「ライヴ・ライミン」でのポールの独唱も捨てがたいがやはり二人のハモリで聴くと感無量だ。⑩「追憶の夜」ではスティーヴ・ガッドの神業のようなドラミングに息を呑む。この人、ホンマに巧いねぇ。「アィガラ ナァ~イコーン(ニコンのことね)キャァメラ♪」のフレーズにシビレる⑬「僕のコダクローム」でもピッタリ息の合ったハーモニーを聴かせてくれてやっぱりこの二人は最強デュオやなぁと実感。リチャード・ティーのゴスペルっぽいピアノがぴったりハマッた⑭「明日に架ける橋」、アタマの部分でポールがミスるのも何のその、万感胸に迫る⑯「ボクサー」と大名曲が続き、いよいよクライマックスの⑱「フィーリン・グルーヴィー」~⑲「サウンド・オブ・サイレンス」でコンサートは幕。もちろんセントラル・パークには行けなかったし、大阪球場では暴動の一歩手前(笑)だったけれど、この世紀の一大イベントをリアルタイムで体験できただけで幸せだ。

Paul Simon & Art Garfunkel 3 - Kodachrome/Maybellene

Great Balls Of Fire! / Jerry Lee Lewis

2009-02-15 | Oldies (50's & 60's)
 ロックンロールの花形楽器といえばギターであり、それをベースとドラムがバックに廻って支えるというのがお約束の基本パターンだ。ピアノが主役を張るなんて考えられなかった... この男が現れるまでは。ジェリー・リー・ルイス、「ザ・キラー」の異名を取るロックンロール界の偉大なる奇人である。元来クラシックの楽器であるピアノには指先だけでパラパラ綺麗に弾くというイメージがあるが、ニュー・オーリンズ生まれのラグタイムから派生したブギウギ・ピアノはクラシックとは無縁のダンス音楽としてアメリカ南部を中心に根付いていった。ジェリー・リーはそんなブギウギ・ピアノの伝統の上に立ちながらも新時代の音楽であるロックンロールに合わせてよりワイルドにモディファイし、三連を主体にしながら叩きつけるようにピアノを弾く彼独自の奏法、いわゆる「パンピン・ピアノ・スタイル」を編み出した。その後、エルヴィスをRCAに引き抜かれたサン・レコードからデビュー、「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」や「火の玉ロック」で大ヒットを飛ばし一躍スターダムにのし上がった。彼のステージ・パフォーマンスは強烈で、金髪を振り乱しながら震えるような声でシャウトし、ガンガン叩きつけるようにピアノを弾きながら、ノッてくるとイスを後方に蹴飛ばして立ち上がり、挙句の果てにはピアノの上に登って弾いたりピアノに火を放ったりともうやりたい放題。ジミヘンがギターを燃やすより10年も前に、よりにもよってピアノを燃やす奴がおったとは... 世の中、上には上がいるものだ(笑) これはそんな彼の自伝映画「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」のサントラ盤で、ジェリー・リー本人の再録ヴァージョンが8曲、「火の玉ロック」のオリジ・ヴァージョン、そして映画に使われた他のアーティストの曲が3曲収録されている。これまでの経験から言って、過去の名曲名演のセルフ・リメイクによる再録というのは期待ハズレに終わることが多かったが、このジェリー・リー・ルイスという男、全盛期から約30年も経っているというのに全く衰えを知らないワイルドでエネルギッシュな歌声を聴かせてくれるのだ。ありえへん...(>_<) それどころか録音技術の進歩によって音が遥かに良くなった分だけパワー・アップしたかのような感すらある。その自由奔放に弾きまくるダイナミックなパフォーマンスは圧巻だ。特に①「グレート・ボールズ・オブ・ファイア」、②「ハイスクール・コンフィデンシャル」、④「アイム・オン・ファイア」、⑥「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」、⑧「ブレスレス」、⑩「ワイルド・ワン」といったアップ・テンポの曲で聴かせるパワフルなパンピン・ピアノが生み出すノリの凄まじさ... 50'sロックンロール特有の炸裂せんばかりのヤケクソ感が圧倒的に素晴らしい。それ以外のトラックではヴァレリー・ウェリントンの⑦「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」がめちゃくちゃカッコイイ。ジェリー・リーの同曲⑥と連続して入っているが、ノリノリで疾走感溢れるジェリー・リー版に対し、腹の底からグツグツと沸き上がってくるソウルをグルーヴィーに歌い上げたウェリントン版という感じで両者甲乙付けがたい。それにしても同じ曲でも料理の仕方でこれほどまでに感じが違うとは...これだから音楽は面白い(^o^)丿 映画の方も音楽好きならきっと楽しめるような内容なので、特にオールディーズ・ファンの方は一見の価値アリだと思う。

Great balls of fire! jerry lee lewis

The Best Of Sam Cooke

2009-02-14 | Oldies (50's & 60's)
 “ローリング・ストーンズはサム・クックと会うことを熱望し、ビートルズはサム・クックと話がしたくてたまらなかった。ロッド・スチュワートはサム・クックになりたかった” ... これは5年前にリリースされたサム・クックのドキュメンタリーDVDのキャッチ・コピーである。ロッドのサム・クック崇拝は知っていたがストーンズやビートルズまでもがサム・クックのファンだとは知らなかった。しかしよくよく考えてみると彼らはみなイギリスで悶々としながらアメリカの黒人音楽であるロックンロールやリズム&ブルースを聴いて十代を過ごしたのだから当然といえば当然だ。そーいえば80年代に活躍したポール・ヤングやヒューイ・ルイスらもサム・クックの大ファンを公言していた。とにかく近代ソウル・ミュージックの始祖とも言われる伝説のシンガー、サム・クックを敬愛するミュージシャンは数多い。ソウルという狭いジャンルにとどまらず、ロック、ポップ、ゴスペル、ジャズと、時代やジャンルを超越したシンガー、それがサム・クックなのだ。
 私のサム・クック体験は遅かった。黄金の80年代が終わり、90年代に入ってアメリカン・チャートが急速にその魅力を失いつつあった頃、既に音楽なしには生きていけない身体になっていた私は当時のヒット曲を追うのを止め、50~60年代のオールディーズに深~く、深~くハマリ込んでいった。そんな折、何かのガイド本で絶賛されていたサム・クックに興味を持ち、買ってみたのがこのベスト盤。早速聴いてみて、そのソフトな歌声で切々と歌い上げるスタイルにすっかり魅了されてしまった。全曲素晴らしいのだが、特に1曲となるとやはり⑤「ワンダフル・ワールド」だろう。私はこの曲を聴くといつも映画「刑事ジョン・ブック 目撃者」の中のワン・シーン... カーラジオから流れてくるこの曲をバックにハリソン・フォードがアーミッシュの女性レイチェルと踊る姿が目に浮かぶ。映画の中で使われたのはグレッグ・チャップマンによるカヴァー・ヴァージョンだったが、それにしても何という見事な演出だろう!ポップスがこれほど上手く映画に使われた例を私は他に知らない。今ふと思ったのだが彼の軽快なヴォーカルはデジタル・リマスターしてハイ・ファイ・オーディオ・システムで聴くよりもさりげなくラジオから流れてくる方がよく似合うのではないか。その絶妙なる軽さが自由な空気を運んできて、「音楽ってエエなぁ...」と実感させてくれるのだ。ロッドが「グレイト・アメリカン・ソングブック」シリーズでチャカ・カーンとデュエットしていた①「ユー・センド・ミー」はサム・クックの代表曲で、②「オンリー・シックスティーン」でも聴ける彼の人間的な温かさがにじみ出るようなヴォーカルは1度ハマッたら抜け出せない。ビロードのような甘い歌声が感動的な④「センチメンタル・リーズン」は彼独特の歌いまわしが心の琴線に触れまくって胸キュン状態だ。ガーシュウィンの大スタンダード⑥「サマータイム」もサム・クックのソウルフルな歌声にかかると彼のオリジナル・ソングのように響く。手拍子入りでノリノリ状態の⑨「ツイストで踊り明かそう」は楽しい雰囲気がダイレクトに伝わってきて何度も何度も繰り返し聴いてしまう(^o^)丿 聴けば聴くほど好きになる、まさに本物のエヴァーグリーン!サム・クックってホンマにエエわぁ... (≧▽≦)

What a wonderful world this would be (Harrison Ford)