このプロジェクトの一番の面白さは選曲の組み合わせの妙にあると思うのだが、「Yesterday」を知る人ぞ知る隠れ名曲「'39」風アレンジで聴かせるという発想が素晴らしい。同じアコースティック曲というのもあるが、結果的に「Yesterday」のテンポがアップしたことにより、この稀代のバラッド名曲を「I've Just Seen A Face」的なノリで楽しめるという実に新鮮な体験をすることができた。これはちょっとクセになりますぜ...
Yesterday - Queen play The Beatles
「Now I'm Here」が憑依した「Day Tripper」も痛快そのもの。どちらも一度聴いたら忘れられないようなギター・リフが売り物のロックンロール・ナンバーだが、ここではそれらが見事に合体・融合させて強烈なグルーヴを生み出している。どちらもシングル・ヒットを量産しているモンスター級のバンドだけにコード進行とかも自然とクラシックというか王道的なものになって共通ポイントが多くあるのかもしれない... などという分析が野暮に聞こえるくらい縦横無尽に暴れ回るブライアン・メイ風ギターが超カッコイイヽ(^o^)丿
Day Tripper - Queen play The Beatles
「When I'm Sixty-Four」は同じヴォードヴィル・テイストの「Bring Back That Leroy Brown」と組み合わせるというアイデアがまず秀逸。クイーンのアルバムの中でも最も多彩な曲が入っている「A Night at the Opera」だが、このマッシュアップを聴いているとあのアルバムこそまさにクイーンにとっての「Sgt. Pepper's」だったんだなぁという思いを強くさせられた。
When I'm Sixty-Four - Queen play The Beatles
「Let It Be」も実によく出来ている。「Somebody To Love」のピアノのイントロに導かれて「Let It Be」が始まるのだが、両曲のゴスペルとしての本質を見抜いた見事な組み合わせだ。さすがは音楽プロデューサーである。旋律は完全に「Let It Be」なのにクイーンそっくりの分厚いコーラス・ワークや唯一無比の音色を誇るブライアン・メイ風ギター(笑)がここぞとばかりに降り注いでクイーンのフレイバーをまき散らすところが笑えます。最後のピアノの一音も「Somebody To Love」に忠実にパロッてあって、作成者のマニアックな拘りぶりにニヤリとさせられること間違いなし。
Let It Be - Queen play The Beatles
「My Best Friend」のイントロからごくごく自然に「Penny Lane」が始まるのにも参った。この曲のキモであるピッコロ・トランペットもブライアン・メイ風のギターで違和感なく代用できてしまうのにビックリ。「Strawberry Fields Forever」のメロトロンと同様に、レッド・スペシャルは、とりあえず “あの音色” さえあればクイーン風になってしまう... という万能楽器的な使われ方をしているのが面白い。
Penny Lane - Queen play The Beatles (...and nobody used AI)
“シュガー、プラム、フェアリー” を練り込んだイントロのアカペラ・コーラス(←芸が細かいというか、マニアックというか、この人のパロディー・センス凄いなぁ...)で始まる「A Day In The Life」は同じく長尺の大作「Bohemian Rhapsody」との組み合わせなのだが、「Bohemian Rhapsody」のピアノの伴奏をバックに歌われる “I read the news today, oh boy〜♪” の何と自然なことよ! “Woke up, fell out of bed〜♪” で始まる中盤のドリーム・パートも「Bohemian Rhapsody」の転調と見事にシンクロさせてあり、作成者の音楽的センスに脱帽するしかない。いやぁ、これはホンマに凄いですわ。
A day in the life - Queen play The Beatles
とまぁこのようにビートルズ・ファンとしてもクイーン・ファンとしても大いに楽しめる笑劇のケッ作。カヴァーでは原曲に対する愛情とリスペクト、そしてユーモアのセンスが如何に大事かを教えてくれる最高のお手本だ。ただひとつ難を言えば、プロジェクト名の “Queatles And Been” の “And Been” って要らんやろ... 私はこれこそ “蛇足” 以外の何物でもないと思うのだが...