先週末はちょうどお盆の5連休でしかも台風が近畿直撃ということもあって家にこもってレコード三昧しようと(←お盆じゃなくても台風来なくてもするくせに...)テンションアゲアゲ状態だった。昼過ぎまで寝て(←目覚ましかけへん生活最高や!!!)レコード・クリーニングしながら次から次へとレコードを聴きまくるという、まさにこの世の極楽と言える2日間を過ごし、連休3日目にあたる13日の日曜日に事件は起きた(←大袈裟な...)。
うちの家は何故か埃がたまりやすくてちょっとでも気を抜くと雪化粧みたいな感じで薄っすらと埃が積もってしまう。当然レコードプレイヤー周辺も例外ではなく、レコード盤が静電気を帯びていると埃をガンガン吸い寄せてしまって片面聴き終わるころには針先に埃がたまりまくるなんていう悲惨なことにもなりかねないので定期的な掃除は欠かせない。
私はその日、残り3日間も気持ち良くレコ三昧しようとレコードを聴き始める前にプレイヤー周辺をキレイに掃除したのだが、その時にプレイヤーと昇圧トランスを繋ぐコネクターが外れてしまい、慌てて手探りで差し込もうとゴソゴソやってた時に(←このズサンな性格がアカンのよね...)カプラー部の線が切れてしまったのだ。この部分は脆弱な作りになっているのでこれまでは気を付けていたのだが、その時は魔がさしたというか、連休で気が緩んでいたのだろう。
私は焦った。これは相当めちゃくちゃ激しくヤバい... このままではレコードが聴けないではないか。そうかと言って自分ではんだ付けなんかよーせんし、そもそも家にそんな道具もないし、どないしよ... (+_+) いつもならこんな時はすぐにオーディオ南海に電話するところだが、よりにもよってお盆の真っ最中である。私は目の前が真っ暗になった。とりあえずその日はCDを聴いて過ごしたが、自分のつまらないミスで断線させてしまった後悔で頭が一杯で、とてもじゃないが音楽を楽しむような気分にはなれなかった。
翌14日の月曜日に私は意を決してダメ元でオーディオ南海に電話してみた。ちょうど台風が紀伊半島目前に迫っていたあの日である。幸いなことに尾崎さんがすぐに携帯に出られたので事情を事細かに説明して “お盆が明けたらご都合の付く日に出張修理をお願いできますか?” と尋ねたところ、“実は今日から休みにして三重へ里帰りしようと思うてたんやけど、台風がまともに来るから帰れなくなってヒマなんですよ。台風直撃は明日やろうからよければ今日行ったげましょか?” とのこと。何たる幸運! 私はぜひお願いします、とその申し出に飛びついた。
その日の午後、尾崎さんは足元の悪い中をわざわざ奈良まで来て下さった。さっそく問題のコネクター部分(5本ある線のうち2本切れてた...)をはんだ付けしていただき(←プレイヤーを外してラックを動かす時間が無かったので無理な姿勢で作業しづらそうやった... ホンマにすんません...)音出しチェックをするが、どこか接触が悪い箇所があるらしくていまいち音が安定しない。
すると尾崎さんはすべての接点の通電を再チェックし、更に “せっかく来たんやから、接点全部クリーニングしといてあげますわ。” とカバンをゴソゴソやって1本のスプレー缶を取り出された。“何ですか、それは?” と尋ねると“接点復活スプレーです。普通のヤツよりも遥かに強力ですよ。僕の秘密兵器です。” とのこと。綿棒にシュッと一吹きして(←噴射が強力なので直接吹き付けるのはNGとのこと...)プレイヤー ⇔ トランス ⇔ プリアンプ ⇔ メインアンプ を繋ぐ接点をゴシゴシ、更にカートリッジとヘッドシェルのコネクター部を念入りにクリーニングして下さり、再び音出しを行ったのだが、出てきた音を聴いて私は腰を抜かすほどビックリした。
音の描写をする時に私はよく低音がスベったとか高音がコロんだとかいう表現をするのだが、尾崎さんのクリーニングによって音の全帯域のエネルギー感が飛躍的にアップ、さっきまでのヘタレな音は一体何やってん?と言いたくなるくらいの変わりようだ。例えるならくたびれた中古車から新車に乗り換えたような感じ、あるいは中高年が20歳の頃に若返ったような感じ、とでも言えばいいのか。“さっきの音とエライ違いですね” とコーフン気味に私が言うと “半年に1回ぐらいはこーやってクリーニングしてやった方がエエですよ。特に shiotchさんとこみたいなヴィンテージ・オーディオには効果テキメンですわ。” と仰る。“そのスプレー、銘柄を教えてください。アマゾンとかで買えますか?” と訊くと “これね、ケイグ(CAIG)の D5 っていうやつです。ネットで2,000円台で買えますよ。” とのことだったので、尾崎さんが帰られた後すぐにアマゾンで注文。2,750円をたまたまセール中ということで13%オフの2,400円で買えてラッキーした。
その日の晩から連休最終日にかけて、私は好きなレコードを聴きまくった。特に超の付く愛聴盤ばかり選りすぐって聴いてみたのだが、どのレコードもみなそれまで以上にもの凄い音で鳴ってくれるのが嬉しくてたまらない。「With The Beatles」の -7N盤はラウドカットみたいな音で朗々と鳴るし、真正ラウドカットの -1N盤なんかもう思わずぶっ飛びそうなくらい強烈な “スーパーウルトラハイパー・ラウドカット(笑)” レベルの凄まじい音で鳴ってくれて大喜びだ。
私のしょーもないやらかしのせいでレコードが聴けなくなり、一時はどうなることかと心配したものの、台風で尾崎さんの時間に空きが出来たおかげげで被害を最小限にとどめることができ、しかもオーディオ・システムの音まで若返ったという、まさに “災い転じて福となす” を地で行く今回の出来事だった。しかし何よりもまず、お盆休みでしかも台風という悪条件にもかかわらず嫌な顔一つせずに奈良くんだりまで来て下さった尾崎さんに感謝したい。レコード・マニアたるもの、持つべきものは親切で信頼できるオーディオ屋さんですな。
【店主トーク】皆さんへのお願い~接点復活剤などの使用について