2002年のアルバム「30℃」以降はすっかり “オシャレ系フレンチ・ポップス” 路線が定着した感のあるクレモンティーヌだが、それ以前の彼女はライト感覚のジャズやボッサを取り上げた盤が多かった。特にデビューから90年代中盤までの彼女はジャジーな盤を次々とリリースしており、ベン・シドラン・プロデュースの「スプレッド・ユア・ウイングス」、「パリス・ウォーク」、「ソリータ」を始め、ジョニー・グリフィンをゲストに迎えた「コンティノン・ブルー」、ケニー・ドリュー・トリオと競演した「メ・ニュイ・メ・ジュール」、そして2000年以降でははアンリ・ルノー監修による「リル・ダーリン」など、かなりの数のジャズ・アルバムを出している。個人的には愛聴曲満載の「ソリータ」が断トツに好きなのだが、一番有名で世評も高いのは多分「コンティノン・ブルー」だろう。
彼女のヴォーカルは強い吸引力で聴く者をグイグイと引きつけながらスイングするタイプではない。ジャズを歌う時はその柔らかい声質でアンニュイなムードを醸し出し、ヴォーカルをも含めたサウンド全体の雰囲気で勝負するスタイルだ。だから旋律が薄味だと私のような “曲聴き派” はちょっとツライものがある。
私はジャズのスタンダード・ナンバーで “コレが入ってたら買う” レベルの愛聴曲が160曲ほどあるのだが、この盤にはそれらが1曲も入ってない。辛うじて②「イージー・リヴィング」と⑫「ガール・トーク」が “そこそこ好き” レベルで、マイルスの⑦「オール・ブルース」やコルトレーンの⑭「ジャイアント・ステップス」のようないわゆるひとつの “モード曲” はハッキリ言って苦手である。モードってどちらかというと “リスナーが聴くための曲” ではなく、 “ミュージシャンが演奏するための曲” という感じがして全然楽しめないのだ。
しかしどんなに疎遠な曲だらけに見えても彼女のアルバムには “未知の名曲” が潜んでいることが多い。このアルバムにもそんな宝物のような曲があった。アントニオ・カルロス・ジョビンの④「オウトラ・ヴェズ」である。ボッサ・ファンの方には有名な曲なのかもしれないが、ボサノヴァをほとんど知らない私にとっては新鮮な出会いであり、この1曲が入っているだけで十分満足、と言いたくなる軽快なメロディーがめっちゃクールでカッコイイ(^o^)丿 名曲は名演を生む、の言葉通りのウキウキするようなグリフィンのテナー・ソロも絶品だ。
このように、このアルバムのもう一つの魅力はバックのインストの素晴らしさにある。テナー・サックスの大御所ジョニー・グリフィンとピアノのパトリス・ガラスを中心に、ジミー・ウッディ(ベース) & ベン・ライリー(ドラムス)とニールス・ペデルセン(ベース & ボビー・ダーハム(ドラムス)という別のリズム・セクションを起用した2つのセッションでレコーディングされたこのアルバムは、時には主役のクレモンティーヌが霞んでしまうぐらい見事な演奏が楽しめるのだ。
中でも弾むようにスイングする③「ライン・フォー・リヨン」(←“ライオンズ” っていう誤表記が多いけど、サファリ・パークじゃあるまいし...笑)なんかノリノリやし、スローに迫る②「イージー・リヴィング」も瀟洒なブラッシュに絶妙なピアノのオブリガート、歌心溢れるテナーに彼女の脱力系ウィスパー・ヴォイスが絡み合いってジャジーなムードが横溢しており、私的にはこの曲の名演トップ3に入れたい素晴らしさ。他のトラックもアンニュイで洗練された彼女の世界が展開されており、青緑色のタイトル文字が映えるシックなジャケット(←躍動感を感じさせる彼女の不思議なポーズが印象的だ...)と相まって、彼女を語る上で欠かせない1枚になっている。
青山あたりのオシャレなカフェで流れていそうな(←あくまでもイメージです...笑)このアルバム、強烈なインパクトを持ったトラックが無い分、小音量で BGM として軽く聴き流すのにはかえって最適な1枚と言えるかもしれない。尚、この「コンティノン・ブルー」はソニーお得意の DSD マスタリングで高音質化された2000年の再発盤(SRCS-9628)の方が1989年に出た初盤(CSCS-5026)よりも断然狙い目だ。
オウトラ・ヴェズ
彼女のヴォーカルは強い吸引力で聴く者をグイグイと引きつけながらスイングするタイプではない。ジャズを歌う時はその柔らかい声質でアンニュイなムードを醸し出し、ヴォーカルをも含めたサウンド全体の雰囲気で勝負するスタイルだ。だから旋律が薄味だと私のような “曲聴き派” はちょっとツライものがある。
私はジャズのスタンダード・ナンバーで “コレが入ってたら買う” レベルの愛聴曲が160曲ほどあるのだが、この盤にはそれらが1曲も入ってない。辛うじて②「イージー・リヴィング」と⑫「ガール・トーク」が “そこそこ好き” レベルで、マイルスの⑦「オール・ブルース」やコルトレーンの⑭「ジャイアント・ステップス」のようないわゆるひとつの “モード曲” はハッキリ言って苦手である。モードってどちらかというと “リスナーが聴くための曲” ではなく、 “ミュージシャンが演奏するための曲” という感じがして全然楽しめないのだ。
しかしどんなに疎遠な曲だらけに見えても彼女のアルバムには “未知の名曲” が潜んでいることが多い。このアルバムにもそんな宝物のような曲があった。アントニオ・カルロス・ジョビンの④「オウトラ・ヴェズ」である。ボッサ・ファンの方には有名な曲なのかもしれないが、ボサノヴァをほとんど知らない私にとっては新鮮な出会いであり、この1曲が入っているだけで十分満足、と言いたくなる軽快なメロディーがめっちゃクールでカッコイイ(^o^)丿 名曲は名演を生む、の言葉通りのウキウキするようなグリフィンのテナー・ソロも絶品だ。
このように、このアルバムのもう一つの魅力はバックのインストの素晴らしさにある。テナー・サックスの大御所ジョニー・グリフィンとピアノのパトリス・ガラスを中心に、ジミー・ウッディ(ベース) & ベン・ライリー(ドラムス)とニールス・ペデルセン(ベース & ボビー・ダーハム(ドラムス)という別のリズム・セクションを起用した2つのセッションでレコーディングされたこのアルバムは、時には主役のクレモンティーヌが霞んでしまうぐらい見事な演奏が楽しめるのだ。
中でも弾むようにスイングする③「ライン・フォー・リヨン」(←“ライオンズ” っていう誤表記が多いけど、サファリ・パークじゃあるまいし...笑)なんかノリノリやし、スローに迫る②「イージー・リヴィング」も瀟洒なブラッシュに絶妙なピアノのオブリガート、歌心溢れるテナーに彼女の脱力系ウィスパー・ヴォイスが絡み合いってジャジーなムードが横溢しており、私的にはこの曲の名演トップ3に入れたい素晴らしさ。他のトラックもアンニュイで洗練された彼女の世界が展開されており、青緑色のタイトル文字が映えるシックなジャケット(←躍動感を感じさせる彼女の不思議なポーズが印象的だ...)と相まって、彼女を語る上で欠かせない1枚になっている。
青山あたりのオシャレなカフェで流れていそうな(←あくまでもイメージです...笑)このアルバム、強烈なインパクトを持ったトラックが無い分、小音量で BGM として軽く聴き流すのにはかえって最適な1枚と言えるかもしれない。尚、この「コンティノン・ブルー」はソニーお得意の DSD マスタリングで高音質化された2000年の再発盤(SRCS-9628)の方が1989年に出た初盤(CSCS-5026)よりも断然狙い目だ。
オウトラ・ヴェズ