shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Pure McCartney / Tim Christensen

2013-07-25 | Beatles Tribute
 4月にアマゾンで「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」や「ロック・ショウ」をチェックしていた時に、例の “この商品を買った人はこんな商品も買っています” 欄に今まで見たことのない、しかし明らかに「ラム」のデザインをパロッたような色使いのジャケットを見つけた。タイトルは「ピュア・マッカートニー」。早速チェックしてみると、ティム・クリステンセンというミュージシャンが我が最愛の「ラム」をライヴで完全再現したものだという。ティム・クリステンセン? 聞いたことのない名前だ。ル・マンで何度も優勝したレーシング・ドライバーのトム・クリステンセンなら知っているが...(>_<)  YouTube でDVD Official Trailer を試聴(?)してみるとかなり良い雰囲気のライヴだ。コレを見て面白そうだなぁ...と思わなければポール・ファンではない。
Pure McCartney - Official DVD-trailer


 「ラム」の完全再現というアイデアは何もこの「ピュア・マッカートニ―」が初めてというワケではなく、2年前にマイナー・レーベルからリリースされたデイヴ・デッパーの「ラム・プロジェクト」が最初だったと思うが、アレは多重録音を駆使してほとんど一人で作り上げたスタジオ録音盤で、その秀逸な発想には “ホンマによぉやるなぁ...” と感心はしたものの、音そのものはスカスカだったしアルバムとしてはイマイチ吸引力に欠けていたことも事実。カヴァー作品が “コレを聴くなら本物聴くわ” と言われないためには聴き手を魅きつけるサムシング・エルスが必要なのだ。
 このアルバムは元々ティム・クリステンセンが去年の6月18日に彼の地元コペンハーゲンでポールの70歳の誕生日を祝おうと企画したもので、友人のマイク・ヴァイオラやトレイシー・ボーナムといった “ポール大好き” ミュージシャン達の協力を得てオリジナル・アルバムの曲順通りに「ラム」を忠実にステージで再現、演っている本人たちが心底楽しんでいる様子がダイレクトに伝わってくるライヴになっていて、同じポール・ファンとして聴いてて実に幸せな気持ちになれるところが◎。どこを切ってもポールへの、そして「ラム」への並々ならぬ愛情が感じられるのが嬉しい。ポール御大は「ラム」の曲をライヴで取り上げることがほとんどないので、そういう意味でも “ライヴで全曲演奏” したこのアルバムは非常に貴重だと思う。
 まずは①「トゥー・メニー・ピープル」、ピッタリと息の合ったティムとマイクのヴォーカルも、リンダと化して絶妙のタイミングでバック・コーラスを付けるトレイシーも、ギターのオブリガートもドラムスの入り方も、そのすべてがオリジナルの雰囲気を見事に再現しているのにビックリ(゜o゜)  私の予想を遥かに超えた完成度の高い演奏だ。②「3 レッグズ」では例の変声パートを拡声器を使って再現するなど、色々と工夫しているところがめっちゃ楽しい。DVDで見ているとよく分かるが、ステージを含めて会場全体がアットホームな雰囲気に包まれており、まるで “マッカートニー・ファンの集い” 的なノリの、手作り感覚溢れるライヴになっている。③「ラム・オン」のイントロ部分も実にマニアックな再現ぶりで聴き手の頬を緩ませてくれるし、拍子木もジャケット・デザイン風のカラーリングで嬉しくなってしまう。自然発生的に湧き起った手拍子も実に良い雰囲気だ。
Pure McCartney: Too Many People

Pure McCartney: 3 Legs/Ram on


 個人的に前半のハイライトと言えるのが④「ディア・ボーイ」だ。「ユア・マザー・シュッド・ノウ」の流れを汲むこの名曲のヴォーカルを取るマイクはまるでポールが憑依したかのようだ。彼はインタビューでこの曲が一番好きだと答えていたが、歌い終えた後の満足そうな表情がすべてを物語る名演になっている。⑤「アンクル・アルバート~アドミラル・ハルセイ」ではメイン・ヴォーカルのティムに対しマイクが拡声器を駆使して擬音を担当、原曲でポールが声を変えて歌う所はトレイシーが受け持つという見事なチームワークでこの名曲を再現している。それにしてもコレを聴いて改めて本家ポールの変幻自在ヴォーカルの凄さを再認識させられた。オリジナルに忠実に前曲と間を開けずにソリッドなギターのイントロからスタートする⑥「スマイル・アウェイ」ではバンドのギタリストがリード・ヴォーカルを取り、3人はコーラス・ワークに徹しているのだが、コレが又実に素晴らしくてオリジナルが持っていたグルーヴを見事に蘇えらせており、オーディエンスも大喝采だ。ただ、欲を言えば後半盛り上がる所でポールのはっちゃけた雄叫びまで再現してくれたら最高やったのに...
Pure McCartney: Dear Boy

Pure McCartney: Uncle Albert Admiral Halsey

Pure McCartney: Smile Away


 LPならB面1曲目にあたる⑦「ハート・オブ・ザ・カントリー」はポールが高音で歌っていたこともあってトレイシーがリード・ヴォーカルを取っているが、コレがもうピッタリとハマっていて言うことナシ。特にスキャット部分は水を得た魚のように活き活きとした歌声を聴かせてくれる。⑧「モンクベリー・ムーン・デライト」でポールの狂気すら孕んだ超絶ヴォーカルに挑むのはマイク。さすがに高音部は少し苦しそうだが原曲の持つピンと張りつめた様な緊張感をしっかりと再現しており、この人のヴォーカリストとしてのレベルの高さがよく分かるトラックになっている。ノリノリの⑨「イート・アット・ホーム」はティムとステイシーのデュエットで聴かせる。ステイシーの歌が上手すぎてオリジナルで抜群の存在感を誇っていたリンダのヘタウマ感(?)が出せなかったことと、ギター・ソロがオリジナルと違っていて違和感を覚えること以外は文句の付けようがない名演だ。
Pure McCartney: Heart Of The Country

Pure McCartney: Monkberry Moon Delight

Pure McCartney: Eat At Home


 個々の音だけでなく原曲の持つ雄大なグルーヴ感までも見事に再現した⑩「ロング・ヘアード・レディ」も圧倒的に素晴らしい。オーディエンスも手拍子で盛り上がる。自分もこの場に居合わせたかったなぁ... と思わせる雰囲気の良さだ。オリジナルではこのあと短い「ラム・オン」のリプリーズがあるのだが、残念なことにこのライヴではすっ飛ばされている。ここまで完璧に再現してきたのに何で演ってくれないのだろう? あの軽快にして簡潔な「リプリーズ」があってこそ、ラストの⑪「バック・シート・オブ・マイ・カー」が活きるのに... あの鼻歌感覚で歌われる「ビッグ・バーン・ベッド」のフェイド・アウトから一転して力強い⑪のイントロが始まらないと「ラム」は完結しない。画龍点睛を欠くとはこのことだ。
 しかし⑪単体の出来は圧倒的に、芸術的に、超越的に素晴らしい。トレイシーのヴォーカルから入るのには意表を突かれるが、トレイシー→ティム→マイクと3人がそれぞれの持ち味を生かしながらヴォーカルを回していくというアイデアは大正解で、“ポール・マッカートニー・ナイト” 本編(←これ以降の6曲はボートラというか、番外編的位置付けですね...)の最後を飾るに相応しいトラックになっている。特に後半部の “Oh, we believe that we can't be long~♪” の盛り上がりは圧巻だ。第2弾が可能なら是非ともこのメンツで「USAライヴ」の完全再現を!と思わせる素晴らしいパフォーマンスである。
 ポールを、そして「ラム」をこよなく愛するミュージシャンが集まって名作「ラム」を再現したこのアルバム、ライヴ後半で演奏された「ヴィーナス・アンド・マース」や「バンド・オン・ザ・ラン」といった「ラム」以外の名曲の数々も含め、これこそまさにポール・ファンの、ポール・ファンによる、ポール・ファンのための1枚と言えるだろう。買うなら CD と同内容の DVD が付いた初回生産限定盤が超オススメだ。
Pure McCartney: Long Haired Lady

Pure McCartney: The Back Seat Of My Car
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RAM [Super Deluxe Edition] / Paul McCartney

2013-07-20 | Paul McCartney
 このブログでポール祭りを再開した翌日に “ポール来日決定!!!” のニュースが飛び込んできた。5月に「アウト・ゼア・ツアー」ブラジル公演の模様を取り上げた時に “日本に来てくれへんかなぁ...” と希望的観測を書いたが、それが現実になったのだ(^o^)丿 7月の初め頃から来日の噂がネット上を駆け巡っていたので “ひょっとすると...” と思ってはいたのだが、いやはや全く感無量である。ビートルズ・ファンとして生を受けた以上はどーしても生ポールが見たい! ということでこの1週間はチケットが取れるかどうか気になって気になって仕事も全然手につかない。大阪公演は一応11月12日と決まったものの、会場の発表すらなく詳細未定だからだ。ハッキリ言ってこれでは生殺しである。とにかく今はチケット情報配信メールが届くのを一日千秋の想いで待つ毎日だ。どーかチケットが取れますように... と念じつつポール祭りも後半戦に突入。前回は「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」を取り上げたので、今日はスーパー・デラックス・エディション繋がりで「ラム」にしよう(^.^)
 平均的日本人は「ラム」と言えばまず「うる星やつら」を思い浮かべるだろうが(←でしょ?)、ビートルズ・ファンにとってはポールが1971年にリリースしたセカンド・アルバムを指すことは言うまでもない。何を隠そうポールのソロ作品中で私が一番好きなのがこのアルバムであり、“無人島ディスク” 候補を考える時にいつも真っ先に頭に浮かぶのもこのラムちゃんなのだ。このアルバムは発表当時アホなクリティック連中からボロクソにけなされていたらしく、私が音楽を聴き始めた70年代半ばでもやはりその評価は低いままで、私はそれらの酷評を読むたびに “コレの一体どこがアカンっちゅーねん? 完璧なポップ・アルバムやないか!” と怒りがこみあげたものだった。あれから40年近い年月が経ち、今回のアーカイヴ・コレクションのリマスターでようやく再評価が進んでいるようだが、何を今更と言いたい <`ヘ´>
 そんな「ラム」狂の私でもこの “スーパー・デラックス・エディション” の15,000円という価格設定にはビックリさせられた。冷静に考えればいくらボーナス・ディスクや写真集が付くとは言え「ラム」だけでビートルズのリマスター・ボックス16枚組と数千円しか違わないなんてボッタクリ以外の何物でもない。普通なら通常盤で十分と言いたいところだが、問題なのはラジオ局に配るプロモ盤用に制作され eBay では$500を下らない値段で取り引きされているという幻の “モノラル・ミックス” がボーナス・ディスクとして聴けること。これはエライコッチャである。ゼップの時にも大騒ぎしたが(笑)、私はモノラル盤が三度の飯より好きな “モノ・マニア” なので、大好きなポールの、これまた大好きな「ラム」を、大好きなモノラル・ミックスで聴けるとあっては見過ごすわけにはいかない。結局発売から2ヶ月ぐらい経ってからアマゾン・マーケットプレイスで未開封のブツを見つけ9,700円でゲット。値動きを毎日チェックしていた甲斐があったというものだ。
 このボックス・セットには例によって例の如く写真集やイラスト集といった多数のメモラビリアが入っているが、ポールとリンダが(多分)最も幸せな時間を過ごしていたスコットランドの農場での思い出を真空パックしたようなアイテムばかりで、キャンバス生地を使った手作り感溢れるボックスの中にポールのリンダへの愛が一杯詰まっているような気がする。
Paul McCartney - "RAM" 2012 Deluxe Edition Box: Inside View [HiD]


 このボックス・セットには①リマスターされた本編ディスク、②ボーナス・オーディオ・ディスク、③モノラル・ミックス、④スリリントン、⑤ボーナス映像入りDVD、の計5枚のディスクが入っているが、開封してイの一番に聴いたのはやはり③のモノラル盤。私がモノ・ミックスに期待するのは “金パロ” や “ラバー・ソウルのラウド・カット盤” のようなガツン!とくる音作りで理屈抜きに楽しませてくれるか、あるいは “ペパーズ” や “ホワイトアルバム” のモノ盤のように一聴して明らかに違うミックスで驚かせてくれるかのどちらかなのだが、この「ラム」に関しては明らかに前者だ。一つ一つのアタック音が強烈で、大音量で聴いた時の躍動感はハンパない。特に癒し系アコースティック・ナンバー「ハート・オブ・ザ・カントリー」の変身ぶりには目を見張らせるものがあった。
Paul McCartney - Heart Of The Country (Rare Mono Mix)


 敢えてステレオ・ミックスとの違いを探すと、例えばフェイド・アウトが数秒長いとか、エコーが深くかかっているとか、そういう重箱の隅をつつくようなレベルの違いしか無いように思えるが、唯一ハッキリと違いが分かったのが「ロング・ヘアード・レディ」後半のリフレイン部分で、バック・コーラスやポールの掛け声が少し違うし、エンディングで次曲「ラム・オン」のイントロがクロスフェードして入ってくるところもステレオ・ミックスとは違っている。
Paul McCartney - Long Haired Lady (Rare Mono Mix)


 煌びやかなポップ・アルバムとしての「ラム」の最大の長所はそのキメ細やかで多彩なアレンジにあると思うので、「ラム」全曲をオーケストラでカヴァーした④「スリリントン」を初めて聴いた時はポールのヴォーカルもリンダのコーラスもロックのダイナミズムも無しということで気の抜けたコーラみたいに思えたが(笑)、何度も聴くうちにそれぞれの楽曲の魅力が別の角度から捉えられているのに気がついた。特に「ディア・ボーイ」でのジャジーなコーラス・アレンジには目からウロコだったし、「バック・シート・オブ・マイ・カー」のサックスも実に良い味を出していて気に入っている。
Percy Thrills Thrillington - Dear Boy

Percy "Thrills" Thrillington - Back Seat of My Car #Thrillington#


 ハイレゾ音源のダウンロードには “Limited” と “Unlimited” の2種類あって、その方面の知識が乏しい私には “ピーク・リミッターの使用が云々” とか言われても違いがイマイチ分からないのだが、どちらもめっちゃエエ音であるということだけは断言できる。私が使ってる安物のイヤホンで聴いても瑞々しい音が楽しめるので、この音を巨大スピーカーで聴いたらきっと凄いやろなぁと思わせてくれる。
 ⑤のボーナス映像入りDVDの目玉は「ラミング」と題されたアルバム・ストーリーで、ポール自らが当時の状況を振り返りながら曲の出自を解説をしてくれるものだ。ちょうど「マッカートニー・アンソロジー」DVDの「ラム」版とでも言えばいいのか。内容は興味深い話が満載で、例えばアルバム・タイトルのramがオスの羊というのは知っていたが、動詞rammingの“強く前方に押すこと”というのは知らなんだ。それと、ポールがリンダの声のトーンに言及しているのを聞いて、前々から同じように感じていた私は我が意を得たりと嬉しくなった。世間ではリンダの評価は不当なぐらいに低いが、彼女のバック・コーラスがあってこその「ラム」であり、「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」だと思う。気持ち悪い奇声を発して夫の作品を台無しにする誰かさんとはエライ違いである。
 「ディア・ボーイ」がリンダの元夫のことを歌ったものだというのも初めて知った。そう言われてみれば歌詞の内容は十分納得がいく。また、「トゥー・メニー・ピープル」や「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ」といった曲のを引き合いに出してジョンとの “歌戦争” に言及しているのも興味深い。事実として知ってはいても実際にポールの肉声で語られると重みが違うのだ。「Quite Well, Thank You」(快眠さ)という曲を出しかけたというエピソードも面白い。
 このボックス・セット、確かに値段は高いし収納にも困るのだが、ポール・ファン、ラム・ファンとしては “ホンマに買って良かったぁ...(^o^)丿” と思える一生モノの宝箱。やっぱり「ラム」は最高だっちゃ!
RAMMING Complete HD720p
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Wings Over America [Deluxe Edition] / Paul McCartney & Wings

2013-07-14 | Paul McCartney
 6月半ばから始めたB'zベスト盤特集も一段落したので今日からまたポール・マッカートニー祭りを再開だ。まずは “アーカイヴ・コレクション・シリーズ” の超豪華版「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」から。
 アマゾンからブツが届いたのは5月30日で、まず驚いたのはその重さだ。スーパー・デラックス・エディションを買うのは「マッカートニーⅡ」、「ラム」に続いてこれで3回目だが、今回の重さは前2作の比ではなく、まるで鉛でも入ってるんちゃうかと思うぐらいズッシリ重い。開けてみると百科事典みたいな感じのソリッドなボックスにツアー・ブックやフォト・ブックといったメモラビリアがギッシリ詰まっている。これはもうCDのリマスター再発云々というよりは、ポール&ウイングスの歴史的USツアーのすべてを封じ込めたタイムカプセルとと言った方がいいかもしれない。
Wings 'Wings Over America' - Deluxe Edition #Out Now!#


 とはいえ、やはり気になるのはリマスターされた “音” である。さっそく手持ちの旧CDと聴き比べてみたがその差は歴然で、平板で薄っぺらかった旧CDの音に対しライヴならではのダイナミズムが格段にアップしている。それもただ単に音圧を上げただけの似非リマスターではなく、一つ一つの楽器の音の粒立ちが良く、立体感を感じさせる力強い音に仕上がっているのだ。特に印象的なのがポールのブンブン唸るベースの音で、UKオリジナルLPと遜色ないぐらいのド迫力サウンドになっているし、ジョーのドラムの音も厚みがあってキレが良く、その結果として音楽全体のドライヴ感が大幅に向上しているように感じられる。ポールのリマスターにハズレ無し、だ。
 とまぁこのように音に関しては大満足なのだが、ポールのスーパー・デラックス・エディション、いや、箱モノ共通の難点である利便性の悪さは相変わらずで、CDを聴くためにいちいちこのクソ重い箱からツアーブックを引っ張り出して、そこから更にディスクを取り出すなんて面倒くさい作業はいらちの私には絶対に無理。ということで私は旧CDと中身をソックリ入れ替え、ボーナス・ディスクは他のケースに入れて(←当然オリジナル・ジャケットも作りました...)楽しんでいる。
Wings - Wings Over America (Full Album)


 ボーナスCD「ライヴ・アット・カウ・パレス」は曲目は本編とすべて被っているし曲数もわずか8曲と少ないしであまり期待はしていなかったのだが、実際に聴いてみるとこれが中々良い感じ。会場となったサンフランシスコのカウ・パレスはキャパシティが約1万人という比較的小さめの会場なので音の響きが一聴してハッキリわかるほど本編CDとは違っており、実に臨場感あふれる生々しいサウンドが楽しめるのだ。これでもっと曲数が多かったら最高やのに...
Wings Over San Francisco 1976 Paul McCartney


 スーパー・デラックス・エディションを買って一番苦労するのが例のハイレゾ音源のダウンロードだ。私はパソコンに関してはスーパーウルトラド素人なので “圧縮” だの “解凍” だのと言われても何のこっちゃで意味不明(>_<)  ワケが分からないままにテキトーにやった「ラム」の時はビギナーズラック(?)でうまくいったのだが、「マッカートニーⅡ」はウチのパソコンに入っているLhaplus では解凍できず、ネットで色々調べてみると Explzh という解凍ソフトが良いとのことで早速トライしてみたのだが、いくつかのファイルで解凍エラーが生じてあえなく失敗(>_<)  結局あれこれ試して AL Zip というソフトで何とか無事解凍できたという忌まわしい過去(←ほぼ丸1日つぶれました...)があるため今回のハイレゾ・ダウンロードも正直言って不安で不安で非常に気が重かったのだが、この AL Zip というヤツはかなり優秀らしく、私のようなド素人でもこの「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」は1時間ぐらいですべて解凍することが出来た。音の方はまだスピーカーで聴けるシステムを持っていないのでCDやLPとの比較も出来ずにイヤホンでチマチマと楽しんでいるが、良い音であることだけは間違いなさそうだ。だんだんハイレゾ音源も増えてきたのでそろそろ D/Aコンバーターが欲しいなぁ...
 ボーナスDVDの「ウイングス・オーヴァー・ザ・ワールド」は1979年に米CBSで制作されたもので、文字通りポール&ウイングスのワールド・ツアーに密着したドキュメンタリー作品になっている。確か私がまだ高校生の頃だったと思うが NHKのヤング・ミュージック・ショーで放送され、テレビにかじりついて見た記憶がある。当時はまだ YouTube はおろかビデオデッキすらなく、動くポールが見れるというだけで大コーフンしたものだ。
 もちろんUSツアーのライヴ映像が中心になっているが、他にもグラスゴーでのコンサートのアンコールで全員がスコットランドの民族衣装で登場し大喝采を浴びるシーンとか、シドニー公演のリハーサルで「イエスタデイ」を “Scrambled Egg~♪” とオリジナルの歌詞で歌うポールのリラックスした姿など、ファンにとってはたまらない内容になっている。又、バック・ステージやプライベートの映像などもふんだんに盛り込まれており、楽屋を訪れたリンゴとの心温まる再会シーンや和気あいあいとしたポールのバースデーパーティーの様子など、貴重な映像が満載だ。
 このDVD単体のブートが確か5,000~6,000円ぐらいの値段で出回っていることを考えると、本編CD2枚にボーナスCDやハイレゾ・ダウンロード、ツアー・ブックなども併せて14,000円出す価値はポール・ファンなら十分にあると思う。
Paul McCartney - Wings Over The World [High Quality]
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B'z The Best XXV 1999-2012 (Pt. 2)

2013-07-07 | B'z
 2枚のベスト盤発売に合わせて始めたB'z祭りもいよいよ最終回。今日は「B'z The Best XXV」黒盤のパート2で2006年以降の彼らの軌跡を振り返ります。

①衝動
 この「衝動」はシンプル&ストレートなノリを持った疾走感溢れるロックンロール・ナンバーで、前年末にベスト盤「Pleasure Ⅱ」でそれまでの活動を総括してまだ間もない2006年1月にこの曲がシングルとして出た時は、休むことなく前進を続ける彼らの創作意欲の高さと自分達の原点であるロックンロールに拘り続ける姿勢に感動したものだ。この曲はノリノリな曲調と同様に歌詞の方も “誰もが無限の可能性を抱きしめて生まれてきたんでしょう? ねえ♪” や “希望とは目の前にある道~♪” など前向きなフレーズが満載で、車の中で聴きながらアクセルベタ踏みでカッ飛ばすとストレスも一気に解消できるという効能(?)もある。ミュージック・ビデオは稲さんが “しょーどう!!!” と渾身のシャウトをキメている後ろで書道の大家っぽい人がモップみたいなデカい筆を振り回すというユニークなもので、 “衝動” と “書道” とを引っ掛けたダジャレの成否は別として(笑)、エンディングで見れる “衝動” の2文字の力強さがこの曲の持つエネルギー感と見事にマッチしている。尚、アルバム「MONSTER」収録の “MONSTER MIX” はギター・ソロやラストのシャウト部分が差し替えられており、より躍動感に溢れたハイ・テンションなヴァージョンになっている。
B'z / 衝動


②SPLASH!
 最近の B'z の曲は基本的に “ストレートに押しまくるロックンロール” と “熱く歌い上げるバラッド” の2タイプに分類されるが、この「SPLASH!」はそのどちらにも属さないダンサブルなミディアム・テンポのナンバーで、聴けば聴くほど “カッティングの魔術師” 松ちゃんの硬質なギター・サウンドが耳について離れなくなるスルメ・チューンだ。ジュリーの「酒場でダバダ」を想わせる “歌謡ロック” そのもののイントロ、違和感なしにBメロから転調する見事な構成、畳み掛けるような稲さんの言葉の速射砲が楽しめるサビ(←ちょっと「DEEP KISS」に似てる?)、彼らお得意のツイン・ヴォーカルっぽいコーラスと、実に細かい部分まで丁寧に作り込まれた作品で、まさに “熟練の職人の仕事” と言っていい出来ばえだ。稲さん曰く “人間の生存本能を描いた詞” という歌詞は、 “交わり合う性と生♪” “愛のタネでいのちの花咲かせて~♪” “ムキ身のままでまっすぐDive~♪” “あなたの中でビュンビュンほとばしる~♪” など、あの「juice」をも凌駕するキワドイ表現連発のエロエロ路線なのだが、性についてこれほどストレートに歌いながら下世話ないやらしさを微塵も感じさせないのは稲さんのヴォーカリストとしての資質のなせる業なのだろう。
B'z


③BURN –フメツノフェイス–
 この「BURN –フメツノフェイス–」は今から5年前、つまりB'z 20周年にあたる2008年に唯一リリースされた記念すべきシングルなのだが、当時TV出演etcによるプロモーション活動が一切無かったことや、世間の注目が「ウルプレ」や「ウルトレ」といったベスト・アルバムの方に向いていたこともあって、話題性の面でやや盛り上がりに欠けた不憫なナンバーなんである。しかし私はこの曲が大好きで、 “世間は何でこの曲の良さがわからんのやろ?” と納得がいかなかった。確かに曲名はディープ・パープルだし、イントロのリフはサイモン&ガーファンクルの「A Hazy Shade Of Winter」そのまんま、Aメロはピンク・レディーの「サウスポー」を想わせるが、洋邦問わずにそういった過去の名曲たちのオイシイ部分を巧く消化して B'z ならではの歌謡ロックへと昇華させているところが私的にツボなのだ。私の記憶が正しければ「FIREBALL」以来の化粧品タイアップ曲(←これも曲名がディープ・パープルなのは単なる偶然なのか???)だったと思うが、今回も歌詞の中に商品キャッチコピーである “フ~メ~ツ~ノ~ フェイス!” を巧く織り込むあたり、さすがという他ない。特殊な視覚効果満載のミュージック・ビデオもちょっと目がチカチカするけど文句なしのカッコ良さだ。
B'z / BURN -フメツノフェイス-


④イチブトゼンブ
 「イチブトゼンブ / DIVE」は「ミエナイチカラ / MOVE」以来13年ぶりとなる両A面シングルで(←カタカナと4文字英語というカップリングは単なる偶然か...)、世間的にはドラマタイアップの「イチブトゼンブ」の方が大ヒットしていたが、私は最初のうちはイージーリスニングみたいな歌メロのこの曲よりもイケイケ・オラオラ調のロックンロール「DIVE」の方が好きだった。しかしこの曲のライヴ・ヴァージョンを見てすっかり気に入り、何度も何度も聴くうちにすっかりハマってしまって今では大の愛聴曲... その真価が分かるまで時間を要したニクイ1曲なのだ。曲としては「ミエナイチカラ」を想わせるミディアム・テンポの爽やか系ポップスで、松ちゃんのトレモロ攻撃や稲さんの一人追っかけコーラスも抜群の効果を上げているが、何と言ってもこの曲の素晴らしさはその歌詞だ。特に愛する人との関係においてついつい陥りやすい落とし穴を簡潔明瞭に指摘した “愛しぬけるポイントがひとつありゃいいのに~♪” のラインにはマジで瞠目させられた。稲さんってホンマにエエ詞を書くよなぁ... (≧▽≦)
イチブトゼンブ LIVE


⑤MY LONELY TOWN
 この曲が収められた「MAGIC」は数多いB'zのアルバム中でも三指に入る愛聴盤なのだが、その理由は一にも二にも “歌謡ロック” としての完成度の高さにある。日本人としてのアイデンティティーに裏打ちされた哀愁のメロディーとB'z流ロックが高い次元で見事に融合しているのだ。そんな名盤「MAGIC」の中で圧倒的な存在感を誇っているのがこの「MY LONELY TOWN」で、ミスチルの「ニシエヒガシエ」みたいなイントロに続いてパワフルなブルース・ロックが炸裂、畳み掛けるように展開するサビの部分ではストリングスが実に効果的に使われており、珠玉のメロディーをより引き立たせているところが素晴らしい。人と人との心の繋がりを歌った歌詞も心に響く。松ちゃんもアルバムのメイキングDVDの中で “久々の会心の一発” と語っていたくらいの名曲名演だ。軍艦島で撮影されたミュージック・ビデオもインパクト抜群で、曲想とピッタリ合った映像が楽しめる逸品に仕上がっている。
B'z / MY LONELY TOWN


【おまけ】先日YouTubeで放送されたB'z特番が公式にアップされたので貼っときます。あの伊藤政則氏がインタビュアーを務めているだけあって彼らの音楽的ルーツを掘り下げるなど他の番組とは一味も二味も違う興味深い内容です。
B'z 25th Anniversary YouTube Special Program

B'z The Best XXV 1999-2012 (Pt. 1)

2013-07-01 | B'z
 今日は「B'z The Best XXV」黒盤のパート1。1999年から2004年までの、何か吹っ切れたかのようにケレン味のないハードロックを演っていた頃の B'z です。

①juice
 この「juice」はB'z のシングル曲でも一二を争うヘヴィーなリフが支配するアグレッシヴなタテノリ・ハードロックで、随所で爆裂するドラムのオカズも実に効果的... ハイ・テンションで突っ走る驚愕のドライヴ感は理屈抜きのカッコ良さだ。聴く者のアドレナリンを大爆発させる野性のエナジー全開のこの曲はライブでめっちゃ盛り上がる定番曲で、この問答無用のゴリゴリ感がたまらない(≧▽≦)  歌詞の方も稲さんお得意の “エロ隠喩路線” の王道を行く傑作で、下品さを微塵も感じさせずにこれほどクールなセックス描写をできるのは凄いとしか言いようがない。ミュージック・ビデオは札幌で行われたゲリラライブを撮影したもので、周りをビルに囲まれた狭~い駐車場みたいな所に作られたステージで炸裂する B'zロックが痛快そのものだ。ナマB'zを一目見ようと制服姿で駆け出すOL達やビルの窓から覗いてる人達の姿もいっぱい映っていて、ビートルズのルーフトップ・コンサートやU2の「Where The Streets Have No Name」と並ぶ私的3大ファイバリット・ゲリラライブ・ビデオになっている。
B'z / juice


②ultra soul
 B'zのルーツがレッド・ゼッペリンやエアロスミスを始めとする70'sハードロックであることは論を待たないが、もう一つ忘れてならないのが彼らが聴いて育った昭和歌謡の存在である。それは様々なシンガーをフィーチャーして往年の歌謡曲をカヴァーした松ちゃんのソロ・アルバム「The Hit Parade」の中で「勝手にしやがれ」「異邦人」「涙の太陽」「イミテイション・ゴールド」といった日本人好みのマイナー・メロディーを持った昭和歌謡を代表する名曲の数々を取り上げていることからも明らかだ。そんな彼らが上記の「juice」で開陳した洋楽ハードロック的成分を封印し、日本人にしか出来ない “歌謡ロック” の究極の作品として作り上げたのがこの「ultra soul」だ。日本人の心の琴線をビンビン刺激するキャッチーなサビメロといい(←ラッツ&スターの「め組のひと」を想わせるサビのラスト “ウルトラソゥ、ハイ!!!♪” がたまらん...)、初期を彷彿とさせる打ち込みサウンドを巧く使った抜群のアレンジ・センスといい、ハードロック趣味に走った後の反動・埋め合わせ(?)として出された “一般ピープル向けの” B'zシングルとして非の打ち所のない逸品に仕上がっている。
B'z / ultra soul


③熱き鼓動の果て
 この曲を聴くといつも2002 ワールドカップ FIFA オフィシャル・コンサートでの彼らの雄姿が目に浮かぶ。イントロ無しでいきなりサビの歌い出しから入る前半のアコースティック・セットの爽快感と、松ちゃんがアコギからエレキに持ち替えてバンドが一体となって燃え上がる後半の疾走感のコントラスト(←ゆったりした “選手入場” から一転して “試合開始”、というイメージか...)が絶妙だ。特にヴォーカルに寄り添うようなコーラス・ハーモニーのアレンジが私的にはめっちゃツボで、稲さんの “ベイベ~♪” や “ハリケィン♪” といった一人追っかけコーラスの響きもたまらない。歌詞の方も稲葉ワールド全開と言っていいカッコ良さで、 “圧倒的孤独を味わい尽くし~♪” という浮世離れしたフレーズも凄いが、何と言っても私が好きなのは“土砂降りの雨だって 君となら喜んで濡れよう~♪” のラインで、“稲さんってホンマにエエ詞を書くよなぁ... (≧▽≦)” と感心したものだ。呪文のように繰り返される “モウスグデ アナタニアエル...♪” からスパッと切り落としたかのように唐突に終わるエンディングも秀逸で、有象無象の使い捨てJ-ポップスがバッコする日本のヒット・チャートには勿体ない名曲名演だと思う。
B'z FIFA 2002 熱き鼓動の果て


④IT'S SHOWTIME!!
 これはB'z 15周年記念で盛り上がっていた2003年にリリースされたシングルで、あれから10年も経ったのかと思うと時の流れの速さに驚かされる。曲調は疾走感溢れるB'z流ハードロックで、“獣たちも色めく 歓声(おたけび)はアリーナ揺らす~♪” や “チケットを握り ゲートをくぐれ~♪” のようにこれから始まるライブへの期待感をストレートに表した歌詞と相まって、これでもかとばかりに聴き手の高揚感を煽りまくるライブ定番曲になっている。 “灼熱への招待... ここじゃすべてがLive...” とたたみかけ、 “天井知らずの It's showtime!!” と韻を踏みながらストンと落とす稲さんの作詞センスに脱帽だ。縦横無尽に弾きまくる松ちゃんのギターもハンパない。シングル・ヴァージョンはシャリシャリした打ち込みドラム・サウンドでせっつくような感じを巧く出しているが、アルバム「BIG MACHINE」収録のヴァージョンはシェーン・ガラースの生ドラムをフィーチャーしておりライヴ感が格段にアップしている。尚、ミュージック・ビデオはロスのオルフェウム・シアターで撮影されたもので、スピード感溢れるカメラワークが音楽と見事にマッチしており、B'zのロック・ユニットとしての魅力を存分に引き出している。
B'z / IT'S SHOWTIME!!


⑤ARIGATO
 この曲を初めて聴いたのは確かテレ朝のタイアップか何かで、番組中に例の “ありがとぉ~ ありがとぉ~♪” とそれに続く“キュルルキュルルキュルルキュルル~♪” というギター・ソロのパートが断片的に流れてきて “何じゃこれは...???” と思ったのだが、その後フル・コーラスを聴いてみて第一印象とは全然違うのにビックリ(・o・) めちゃくちゃ壮大で力強いバラッドではないか! 松ちゃんの哀愁舞い散るギターの音色には涙ちょちょぎれるし、完全にコントロールされた稲さんのグルーヴィーなヴォーカルも圧巻だ。しかし何よりも凄いのはその曲構成で、前半の “静” から後半の “動” へとテンポ・チェンジしてエンディングまで一気呵成に突っ走るドラマチックな展開はまさに鳥肌モノ(≧▽≦)  レッド・ゼッペリンの名曲「天国への階段」にも通じるカッコ良さである。B'zのシングル曲の中では一般受けしない部類に入ると思うが、本物のロックを聴き込んできた人ならこの曲の完成度の高さに驚倒するだろう。個人的にはB'z名曲名演トップ3に入れたい超愛聴曲だ。ただ、曲のタイトルは、取って付けた様な「ARIGATO」よりも当初に予定されていた「そこに誰もいなくても」の方が良かったかな...
B'z / ARIGATO