shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ヴィッキー特集

2024-02-04 | European Pops

①恋はみずいろ
 ヴィッキーの日本におけるデビュー・シングルがこの「恋はみずいろ」だ。彼女を知らない人でもこの曲のメロディーはどこかで聞いたことがあるのではないか。彼女がユーロヴィジョン・コンテストで歌った翌年にポール・モーリアがカヴァーして5週連続全米№1を記録する大ヒットになったのだが、毒にも薬にもならないイージーリスニングには何の興味もない私にとってはヴィッキーのオリジナル・ヴァージョンこそがザ・ワン・アンド・オンリーだ。リー・ワイリーの「Manhattan」やヘレン・メリルの「You'd Be So Nice To Come Home To」のように、歌い手は “まるで自分が歌うために書かれたような曲” に出会えるかどうかで決まると私は常々考えているのだが、ヴィッキーにとってはまさにこの曲がそれだと思う。因みにB'zの松本さんはライヴで「もう一度キスしたかった」のエンディングにこの曲のメロディーを混ぜ込んで弾くのが定番になっているが、中々良いセンスしてるなぁと思う。
ヴィッキー Vicky/恋はみずいろ L' Amour Est Bleu ( Love is Blue )  (1967年)


②星空のマサチューセッツ
 この曲はもちろんビージーズがオリジナル。私は1970年代後半に一世を風靡したディスコ期のビージーズは超苦手なのだが(→軽薄なディスコのリズムはもちろん嫌いだが、それ以上にあのファルセット・ヴォイスが生理的に無理...)、この「星空のマサチューセッツ」は彼らがまだ真っ当なソフトロックをやっていた1967年のヒット曲で、彼らの楽曲の中では「Melody Fair」と並ぶ名曲だ。ヴィッキーのカヴァー・ヴァージョンは日本での2枚目のシングル「待ちくたびれた日曜日」のB面に収められているが、カタコト日本語歌謡のA面とは比べものにならないくらい伸び伸びと歌っており、私はいつもB面のこの曲ばかり聴いてしまう。キャッチーな美旋律にヴィッキーの醸し出すホンワカ・ムードが怖いくらいにピッタリ合った名曲名唱だ。
ヴィッキー Vicky/星空のマサチューセッツ Massachusetts (1967年)


③私の好きなチョコレート
 外国人歌手の日本語盤には、ミーナの「砂に消えた涙」やマージョリー・ノエルの「そよ風にのって」のように元歌に日本語詞を付けて歌う “漣健児パターン” と、ブレンダ・リーの「ワン・レイニー・ナイト・イントーキョー」やカテリーナ・ヴァレンテの「恋のバカンス」のように歌謡曲にチャレンジして日本語で歌うパターンの2つに大別されるのが普通だが、ヴィッキーの「私の好きなチョコレート」は森永チョコレートのCMソングとして彼女のために日本語で書き下ろされたオリジナル曲という非常に稀なケースだ。私にとってこのレコードの一番の魅力は “届けてくれた忘れもの だけどお礼は言わないの あなたが半分食べちゃった 私の好きなチョコレート... ♪” という変てこりんな歌詞にあり、忘れもののチョコレートを半分食べて届ける奴が一体どこにおるんや...??? とツッコミたくなる珍曲なのだ。ジャケットに書かれた “チョコ人気投票アンケートに答えて抽選でハワイ7日間の旅ご招待” という宣伝がいかにも昭和らしくて懐かしい。
ヴィッキーVicky/私の好きなチョコレート(日本語) (1968年)


④マイ・スウィート・ロード
 前回ボビー・ジェントリーの日本語盤を聴きながら“昔はこの手の怪しい日本語ヴァージョンってわりとあったよなぁ...” と思いを巡らせていて、「フール・オン・ザ・ヒル」と同じビートルズ関連モノで頭に浮かんだのがヴィッキーの「マイ・スウィート・ロード」日本語盤だった。“せっかくやから久しぶりにヴィッキーでも聴こか...” と思ってシングル棚のイエイエ・コーナーから彼女のレコードを引っ張り出して聴き始めたところ、これがもうめちゃくちゃ良くて自分でもビックリしたのが今回の特集のきっかけだ。このレコードは彼女にとって日本で12枚目のシングルにあたり、大ヒットしたジョージのオリジナル・ヴァージョンと同じ1971年にリリースされたのだが、サビの “かぁ~みぃ~よぉ~♪” が妙に耳に残るスルメ・チューンだ。尚、B面には同曲のドイツ語ヴァージョン(←これは珍しい!)が収められている。
ヴィッキー Vicky/マイ・スウィート・ロード My Sweet Lord(日本語版)(1971年)

【追悼】フランス・ギャル特集

2018-01-08 | European Pops
 昨日の晩、いつものようにオークション・チェックをしようとパソコンを開いて何気なくヤフー・ニュース欄を見ると “フランスギャルさんが死去” というショッキングなニュースが目に飛び込んできた。えー、ウソやろ...(*_*)  私は今から十数年ほど前に901さんに「夢見るシャンソン人形」のシングル盤を聴かせていただいて、その昭和歌謡にも相通ずる哀愁のメロディーに一発KOされて彼女の大ファンになり、仏オリジナルLPやらEPやら(←60年代に活躍したフレンチ・ポップスの歌手はLPよりもむしろ4曲入りEP盤の方がメインという人が多かった...)を狂ったように集めまくったものだった。わざわざ仏和辞典を買ってフランス人のセラーとメールで交渉してようやく手に入れた彼女のレコードの数々は私の大切な宝物だ。今日はそんなレコードの中から選りすぐりの愛聴曲をピックアップして(←「夢見るシャンソン人形」はカヴァー曲も含めてこれまで何度も取り上げているので今回は除きます)彼女の早過ぎる死を悼もうと思う。

①Laisse tomber les filles(邦題「娘たちにかまわないで」)
フランス版ズンドコ節(?)みたいなリフが耳に残るこの曲は「夢見るシャンソン人形」と並ぶフランス・ギャルの代表曲で、様々なアーティストによってカヴァーされているイエイエの代名詞的なナンバーだ。ダンサブルなイエイエ・ビートに乗ってグルーヴするギャルが最高にカッコイイ(^o^)丿
France Gall - Laisse Tomber Les Filles (1964) HD 1080p Interactive.mp4


②N'écoute pas les idoles(邦題「アイドルばかり聞かないで」)
 上記①の三軒隣りに住んでいるようなこの②も印象的なリフが支配するイエイエ・ナンバーで、こちらはゲンスブール版「恋の片道切符」という感じ。アイドルであるギャルに「アイドルばかり聞かないで♪」と歌わせてしまうあたりがいかにも曲者のゲンスブールらしい。
France Gall - 1965 - N'écoute pas les idoles (Stéréo)


③Dis a ton capitaine(邦題「あなたのキャプテンに言いなさい」)
 心の琴線をビンビン刺激するマイナー調のメロディーを舌っ足らずでキュートなギャルの萌え萌えヴォーカルで楽しめるというキラー・チューンがコレ。それにしてもこのこっ恥ずかしい直訳邦題はもーちょっと何とかならんかったんか...
France Gall --Dis a Ton Capitaine


④Le temps de la rentrée(邦題「恋の家路(新学期)」)
 “ベンチャーズ歌謡”的な雰囲気を持ったこの曲は軽快なリズムに乗って炸裂するギャルのウィスパー・ヴォイスがたまらない。ダブル・トラック処理されたヴォーカルによるギャルの“一人二重唱” が曲の魅力を更に引き立てている。
France Gall "Le temps de la rentrée" | Archive INA


⑤Polichinelle(邦題「恋のためいき」)
 私が好きなフランス・ギャルの曲は昭和歌謡を想わせるマイナー調のナンバーが多いが、この「ポリシネル」という曲なんかもうその典型と言っていいだろう。鼻歌でも歌うかのように“ル~ル~ル~ル~♪” とハミングする彼女に絡みつくフルートが実に良い味を出している。
France Gall - Polichinelle


⑥Attens ou va t'en(邦題「涙のシャンソン日記」)
 昔ホンダCR-XのCMソングに使われたこともあるこの曲は哀愁舞い散るハーモニカのイントロからセンチメンタルなムードが横溢、2拍子のリズムに乗ってギャルが切々と歌うというまさに絵に描いたような名曲名演だ。そのアレンジの見事さにはもう脱帽するしかない。
France Gall. "Attens ou va t'en"


⑦La guerre des chansons(邦題「シャンソン戦争」)
 フランス・ギャルを舌っ足らずでキュートなだけのカワイコチャン歌手だと誤解している人はこの曲を聴けば彼女のヴォーカルのキメ細やかな表現力を実感できるだろう。オルガンを上手く使ったゲンスブールの器楽アレンジの妙も聴き所だ。
France Gall La guerre des chansons 1966


⑧Pense à moi(邦題「パンス・ア・モア」)
 フランス・ギャルの “裏の顔” とでも言うべき魅力が炸裂しているのがこの曲だ。デイヴ・ブルーベックの「テイク・ファイヴ」を裏返しにした様なこのジャジーなナンバーをも楽々と歌いこなしてしまう懐の深いシンガーがフランス・ギャルなのだ。
France Gall - Pense à moi (1963) (Restaurée)


⑨Jazz à go go(邦題「ジャズ・ア・ゴー・ゴー」)
 「ジャズ・ア・ゴー・ゴー」という曲名からも明らかなようにバリバリのジャズサウンドをバックに堂々たるスキャットを聴かせるフランス・ギャルにビックリ。「夢見るシャンソン人形」と同一人物とは思えないクールなヴォーカルがめちゃくちゃカッコイイ。
FRANCE GALL JAZZ A GO GO (1964)


⑩Boom Boom(邦題「ブーム・ブーム」)
この「ブーム・ブーム」は彼女の数多い隠れ名曲の中でも三指に入る名演で、ジャジーなイントロ、瀟洒なブラッシュ、雰囲気抜群のサックス、そしてアンニュイなギャルの歌声と、ソフィスティケーションの極みとでも言うべきメロウなポップスに仕上がっている。やっぱりフランス・ギャルはエエなぁ...
France Gall - Boom boom

Paint It Black / Marie Laforet

2011-07-11 | European Pops
 昨日サムとデイヴがウチへ遊びに来てくれた。2月に続いて2度目なのだが、今回はもうすぐ日本を去る2人のためのフェアウェル・ディナー&ロックンロール・パーティーである。私は「料理の鉄人」の大ファンで、大切なゲストを迎える時はいつも自分でテーマ食材を決めて料理を作ることにしているのだが、前回はベジタリアンの2人のためにトマトを使ったイタリアン・コースにしたので、今回は豆腐をメイン食材にして和のテイストを活かした料理を作ってみた。2人によるとオーストラリアでも料理の鉄人は有名らしく、例のキッチン・スタジアムでの料理バトルが怪しい英語の吹き替え付きで放送されているらしい。2人は審査員のモノマネをしながら盛り上がっていたが(笑)、特に “木綿豆腐のソテー香味ソース・ガーリック乗せ” と “高野豆腐のフライ・BBQソース” を気に入ってくれて、2人から “アイアン・シェフ” の称号を頂いた。次に彼らが再来日した時には得意のメキシカン・ディナーでも作ろうかな(^.^)
 食事が終わるとリスニング・ルームへと移動、前回はレコード棚の整理がええかげんでLPを探しにくそうだったので今回はジャンル枠ごとにラベルを貼り付けておいたのだが(←レコード・ショップみたい!と笑われてしまった...)、これで見やすくなったのかサクサクと LP を引き抜き “ツギ コレ オネガイ” と手渡してくれる。結局約4時間で31曲をフル・ヴォリュームで聴きまくった。プレイリストは以下の通り;
 Rolling Stones / Sympathy For The Devil
 Clash / Bankrobber
 Queen / We Will Rock You
 Bruce Springsteen / Dancing In The Dark
 Bon Jovi / Wanted Dead Or Alive
 Clash / Rudie Can't Fail
 Clash / The Guns Of Brixton
 Clash / Police & Thieves
 Frankie Lymon & The Teenagers / Why Do Fools Fall In Love
 Miles Davis / Milestones
 Guns N' Roses / Patience
 Roxette / The Look
 Roxette / Dangerous
 Beach Boys / California Dreamin'
 Led Zeppelin / No Quarter
 Bobbie Gentry / Fancy
 Sam Cooke / Ol' Man River
 Jackie Wilson / Lonely Teardrops
 Poison / Nothin' But A Good Time
 Poison / Your Mama Don’t Dance
 Marie Laforet / House Of The Rising Sun
 Marie Laforet / Paint It Black
 Beatles / Michelle
 Stevie Ray Vaughan / Manic Depression
 Stevie Ray Vaughan / Little Wing
 Cream / SWLABR
 Doors / The Crystal Ship
 Doors / The End
 Metallica / Enter Sandman
 Led Zeppelin / Communication Breakdown
 Beatles / I Saw Her Standing There
サムのサム・クック好き、デイヴのクラッシュ好きは知っていたが、アラサーの2人にとって80'sポップスが子供時代の懐かしい思い出の曲というのは知らなんだ。特にロクセットの LP を見つけた時のデイヴのコーフンぶりは微笑ましかったし、ポイズンの「オープン・アップ・アンド・セイ・アー」を持ってべろを出して記念撮影するなど、とにかく大はしゃぎだった。
 LP 棚の一角にあるロング・ボックス CD コーナーの中からマリー・ラフォレの 3CD Long Box に興味を示したサムのためにアニマルズの「ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン」とストーンズの「ペイント・イット・ブラック」のラフォレ・ヴァージョンをかけたところ、そのユニークな歌声が凄く気に入ったようなので CD-R に焼いて進呈することにした。ラフォレは他にも「サウンド・オブ・サイレンス」、「エル・コンドル・パサ」、「ブロウイン・イン・ザ・ウインド」などの60'sの名曲カヴァーが存在するが、そのどれもが彼女のか細い声で囁くように歌うスタイルによって独特の雰囲気を醸し出しており、そのあたりが英米のロック中心に聴いてきたサムの耳には新鮮に響いたようだ。そんな中で「ペイント・イット・ブラック」は彼女にしては珍しいアップテンポのカヴァーで、所々フランス・ギャルを想わせるようなイエ・イエっぽい歌い方をしているのが面白い。それにしてもフランス語の歌ってどれを聴いても何を歌ってるのかさっぱりワカランなぁ... (>_<)
 11時を回ってデイヴの目がトロ~っとしてきた(笑)ので、最後はメタリカ→ゼッペリン→金パロと、部屋中が鳴動するくらいのラウドなロックンロールの3連発で幕。今回も3人で浴びるほど音楽を聴いてホンマに楽しいひと時だった。彼らが日本を去るのはめちゃくちゃ淋しいが、出会いがあれば別れもあるのが人生である。一旦オーストラリアへ帰った後、来年にはロンドンへ移住する予定の2人、“絶対にイギリスへ遊びに来てや。アビー・ロードへ案内するから (^o^)丿” と言ってくれた。いつになるかワカランけど、この続きをビートルズの母国でやるのもエエかもしれない...

Marie Laforet - Marie Douceur Marie Colere (Paint in Black)


Marie Laforet - House of the rising sun


Marie Laforet - La Voix Du Silence / "Le Laureat" Movie dub


【おまけ】デイヴが着ていたスター・ウォーズのTシャツを見て思い出したんですけど、こんなオモロイ動画を見つけました。ギャングの喧嘩が一転...大爆笑! こういうユーモア大好きです(^o^)丿
Gang Fight! Knocked out!
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恋はみずいろ / ヴィッキー

2010-03-06 | European Pops
 いつもコメントを下さるみながわさんから “恋はみずいろ” 大会のリクエストをいただいた。 “春のフレンチ祭り” のきっかけを作ってくださったことへの感謝の意を込めて、早速 “恋はみずいろ” 大会、気合いを入れてやらせていただきます☆彡
 この曲は1967年にヴィッキー・レアンドロスがユーロヴィジョン・コンテストにルクセンブルク代表として参加した時のエントリー曲だったのだが、結局優勝したのはイギリスのサンディ・ショウで、彼女は4位に終わってしまう。しかしその翌年、ポール・モーリアのインスト・ヴァージョンが突如全米で大ブレイク、5週連続№1に輝いたのだから世の中一体どーなってるのかワケが分からない。聞くところによるとフランス産ポップス唯一の全米№1らしいが、私の耳には上質なイージー・リスニングにしか聞こえない。まぁこの頃のアメリカン・チャートって何でもアリのグチャグチャ状態やったけど...(>_<) 
 手持ちのレコードやCDをチェックしてみて思ったのは、この曲のカヴァー・パターンは大きく分けて4つに分類できるということ; (1)60'sフレンチ女性シンガー、(2)60's~70's歌謡曲の女性歌手、(3)ギター・インスト・バンド、(4)その他の特殊楽器、である。因みにイージー・リスニング系は持ってません。私が好きなのは(1)と(2)で、(3)ではベンチャーズ、スプートニクス、それにジェフ・ベック大先生なんかもこの曲を取り上げているのだが、どれもこれも “歌のない歌謡曲” みたいでピリッとしない。(4)はウクレレやハープなど、マイナーな弦楽器に向いているようだ。

①Vicky
 私にとっての “恋はみずいろ” はヴィッキーが原点であり、スタンダードであり、そして最高峰である。これほどこの曲の髄を見事に引き出した歌唱を私は他に知らない。彼女の伸びやかな歌声を最大限に活かした絶妙な器楽アレンジも素晴らしい。
ヴィッキー=レアンドロス ♪L'AMOUR EST BLEU <邦題:恋はみずいろ> (67)


②Claudine Longet
 舌っ足らずのフランス語がたまらないクロディーヌ・ロンジェがこの名曲を甘~いウィスパー・ヴォイスで歌うのだから萌えるなと言う方が無理(≧▽≦) 私と同じくその筋系が好きなご貴兄はフニャフニャと腰砕けのメロメロ状態になること請け合いだ。
Claudine Longet- L'amour Est Bleu (Love Is Blue)


③Sylvie Vartan
 70年代初め、洋邦問わずこの曲をカヴァーするシンガーが多かったが、シルヴィも1974年の日本企画アルバム「サバの女王」でこの曲を取り上げている。歌は良いが、この時代特有の薄っぺらいバックの演奏がイマイチ好きになれない(>_<)
シルヴィ・バルタン Love is blue 恋はみずいろ


④サンディー
 アジアン・ビューティ、サンディーが巨匠ハーブ・オオタの哀愁舞い散るウクレレ演奏をバックに歌うこのヴァージョンはヴィッキー版に比肩するぐらい気に入っている。彼女の優しく包み込むような歌声は癒し効果抜群だ(≧▽≦)
恋はみずいろ


⑤天地真理
 70年代前半に活躍したアイドル歌手の初期アルバム用埋め草には欧米ポップスのカヴァーが使われることが多くて結構狙い目なのだが、これはそんな中でも掘り出し物のひとつ。彼女の透明感溢れる歌声が曲想と上手く合っている。
天地真理【恋は水色】LOVE IS BLUE

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さよならを教えて / フランソワーズ・アルディ

2010-03-05 | European Pops
 フレンチ・ポップスというとどうしてもシルヴィ・バルタンやフランス・ギャルといったイエイエ・アイドルのイメージが強いが、もちろん60年代フレンチ女性歌手のみんながみんなキャピキャピしていたわけではなく、落ち着きがあって知的でお洒落という “カッコイイ女性” 一派もちゃーんと存在していた。そんな一人が今日取り上げるフランソワーズ・アルディである。
 数年前、フレンチ・ポップスに目覚めて様々な女性シンガーを聴き漁っていくうちにフランソワーズ・アルディという名前に出くわした。フランソワーズか... もう名前だけで雰囲気抜群である。早速試聴してみると、どっかで聞いたことのあるような懐かしいメロディーが流れてきた。それがテレビの CM だったのかドラマの主題歌だったのかすら思い出せないが、フランス映画のワン・シーンを思わせるようなそのアンニュイなヴォーカルには確かに聞き覚えがあった。途中のボショボショボショ...という “語り” の部分が何を言ってるのかサッパリわからないため、まるでサウンドの一部に同化したように響き、それがかえってめちゃくちゃカッコイイのだ(^o^)丿 それがフランソワーズ1968年のヒット曲「さよならを教えて」(Comment Te Dire Adieu)だった。
 この曲、元々は第2次大戦時に “イギリス軍の恋人” と言われたヴェラ・リンが1954年に歌った “It Hurts To Say Goodbye” のカヴァーなのだが、それにあのセルジュ・ゲンスブールがフランス語詞をつけ、アンニュイな魅力横溢のフレンチ・ポップスとして再生したのがフランソワーズの「さよならを教えて」というワケだ。英米のロック/ポップスに慣れた私の耳には、そのどこか物憂げでけだるい感じが気持ち良く、 “こんなフレンチもエエよなぁ~(^o^)丿” とすっかり彼女の魅力にハマッてしまった。
 彼女のデビューは1962年、BMG 系の Vogue レーベルから「男の子女の子」という、郷ひろみの曲と間違えそうなタイトルの曲でデビュー、当時のフランス音楽シーンはイエイエ胎動期で、バックの演奏なんかシルヴィ・バルタンらの曲と似たような感じながら、彼女の憂いを含んだクールなヴォーカルは他のイエイエ・アイドルとは異質な雰囲気を醸し出していた。やがてイエイエ・ブームの終焉と時を同じくして1967年で Vogue レーベルを離れ、それ以降は年に1回アルバムを発表するだけというマイペースの活動になっていくのだが、そのサウンドもよりメランコリックで繊細なものになり、フォーキーな色合いを増していく。そんな “中期のフランソワーズ” を代表する1曲がこの「さよならを教えて」で、同時期の「もう森へなんか行かない」や「月の妖精」と並ぶフランソワーズ屈指の名唱だ。日本で一番聴かれているのも多分この頃の彼女だろう。私はフランス原盤EP、日本盤LP、日本盤シングル、日本盤CDと4種類持っている(笑)が、日本ではその後原盤権がEMIジャパンに移り、彼女の諸作がアホバカ CCCD になっているので要注意、堅気の音楽ファンにはエピックソニーから出た20曲入りベストCDが選曲・音質共にオススメだ。

Comment Te Dire Adieu
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トマト・ジュース 乾杯!! / リタ・パヴォーネ

2010-03-04 | European Pops
 今日はフレンチ・ポップスとは親戚みたいな関係(?)のイタリアン・ポップスでいこう。シャンソンやカンツォーネを源流とする独特のリズムとメロディー、英語とは一味違った雰囲気を醸し出すフランス語やイタリア語の歌声、そしてめちゃくちゃ可愛いジャケットと、そのすべてが新鮮に感じられた私は、シルヴィ・バルタン、フランス・ギャル、シェイラの “イエイエ3人娘” にミーナとジリオラ・チンクエッティというカンツォーネの歌姫2人を加えた5人の女性歌手をメイン・ターゲットに集めていったのだが、ビッグ・ネーム5人の音源収集が一段落すると次はそれ以外のシンガーも聴きたくなり、フィールドはどんどん狭く、対象はマイナーになっていった。英米ポップスでいうところの “ワン・ヒット・ワンダーズ” 探しの始まりだ。
 しかしこれは困難を極めた。英米のようにビルボードやキャッシュ・ボックス、ニュー・ミュージカル・エクスプレス、メロディ・メイカーといったヒットチャートのデータがあるワケじゃなし、ネットで調べようにもフランス語やイタリア語では何のこっちゃサッパリで、大げさでなく砂漠で針を探すようなものだった。そうなると頼りになるのはリアルタイムで60年代を体験してきた人の記憶だけである。そこで登場するのが毎度おなじみの 901 さんだ。もちろん40年以上も前のことなのであやふやな記憶なのだが、まったく何の知識もない私に調べるための様々なヒントを提供して下さった。ある時 “「トマトジュース何たら」っていう曲あったで。アレ誰やったかなぁ... 確か「にんじん娘」とか呼ばれとったなぁ...” 私はワラにもすがる思いで(←何でやねん!)ググりまくり、ついにその歌手と曲の名前を突きとめた。それがリタ・パヴォーネの1965年のヒット曲「トマト・ジュース 乾杯!!」で、原題は「Viva la pappa col pomodoro」という。
 60'sオールディーズをフル・コーラス聴けるサイト(←今はアクセス不可状態みたいだが...)で聴いてみたら、これがもう楽しいのなんの... ウキウキワクワクするようなメロディーに弾けるようなリズム、映画「第三の男」のテーマでお馴染みのアントン・カラスが奏でる軽快なチターに乗ってイタリア版ブレンダ・リーみたいなパワフルな歌声で開口一番 “ビィバ ラ パッ パッ パッ パッ、コル ポポポポポポ ポモドォーロ♪” とくるのだ。これで “オモロイなぁヽ(^o^)丿” と思わなければポップス・ファンではない。こんな楽しい歌、洋邦問わず最近ではちょっとお目にかかれないだろう。
 60年代にはこのように一緒に口ずさみたくなるような楽しさ一杯のヒット曲が巷に溢れていた。難解な音楽を好む人たちから見れば “ポポポポポポって...アホか...” の一言で片付けられそう(笑)な盤だが、 “音” を “楽” しむのが音楽の原点であるとするならば、このように聴いているだけで元気が出てくるようなノーテンキなハッピー・チューンの復権こそが、沈滞気味(というか壊滅寸前?)の今のミュージック・シーンに必要なのではないかと思う。それにしてもホンマにオモロイ曲やなぁ... もう1回聴こっと(^o^)丿

Rita Pavone "Viva la pappa col pomodoro"
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Irresistibilmente / Sylvie Vartan

2010-03-03 | European Pops
 私は本格的に音楽に目覚めた時からずっと洋楽を中心に聴いてきた。しかし外国の歌を聴く時に一番のネックになるのが言葉の壁である。ビートルズやカーペンターズで鍛えられたせいか英語の歌はまだすんなり心に入ってくるが、英語以外の歌は何を唄っているのかサッパリ分からない。だから大好きなギャルやバルタン、オーラの歌もタイトルの読み方どころかその区別さえつかない、まさにお手上げ状態だ。
 それに比べ、ヨーロッパの人たちには2~3ヶ国語を話せるバイリンガルやトリリンガルが珍しくない。当然私の大好きなフレンチ、イタリアンの歌姫たちも様々なバイリンガル録音を遺しており、 “フレンチ、イタリアン好き” でなおかつ “ちょっと変わったもの好き” の私はそういう盤を eBay で見つけてきてはガンガン買い漁ったものだった。フランス・ギャル「夢シャン」のドイツ語盤やイタリア語盤、チンクエッティ「雨」のスペイン語盤や「悲しき天使」のフランス語盤など、結構珍盤が多い。そういえばギャルがイタリア語で歌う「雨」もあったなぁ。同じシンガーが同じ曲を歌っても言語が変わるだけで雰囲気も微妙に違っていて結構楽しめるのだ。とまぁこのように大抵はシングル盤として単発でリリースされることが多いのだが、中にはLP1枚まるごと他国語盤という珍しいレコードもあった。それが今日ご紹介するシルヴィ・バルタンのイタリア語ヴァージョン集「イレジスティビルメンテ」である。
 このレコードは日本はおろか本国フランスでも出ておらず、1975年にイタリアのみでリリースされた稀少盤で、オークションにも滅多に出てこない。そもそもこの盤の存在自体あまり知られていないようだ。私はたまたまモーツァルトの交響曲をモチーフに書かれた「哀しみのシンフォニー(Caro Mozart)」という彼女のヒット曲をベスト盤CDで聴いてめちゃくちゃ気に入り、ぜひコレをオリジナル盤のアナログ・サウンドで聴いてみたい(←何やかんや言うても、ヴォーカルを一番自然な音で聴くにはアナログLPに限ると思います...)と思って彼女のディスコグラフィーを調べ、そこで初めてフランス・オリジ盤には入っていないことを知り、このイタリア盤に辿り着いたという次第。早速eBayで検索してみたが、そんなモノが出ているワケがない。しかしそんなことで怯んでいてはイエイエ・マニアの名がすたる。既にフランス・ギャル「Zozoi」のeBay Franceで味をしめていた私は今度は eBay Italia を検索してみた... あった... しかも49ユーロだ。コレってめっちゃオイシイやん... もらった!!! 結局誰も来ず、無競争でこの激レア盤を手に入れることが出来た。因みにさっきeBay Italia を覗いてみたら 150ユーロだった。何かめっちゃ得した気分だ(^.^)
 収録曲は全12曲、RCA Italia の若草色のレーベルが新鮮だ。フランス語もイタリア語も何を言うてんのか全然わからない点は同じだなのが、イタリア語で吹き込まれたA-①「あなたのとりこ」はやはりフランス語ヴァージョンが耳にこびりついているので、言葉の響きやリズムへの乗り方など何となく変な感じがしてしまう。オケも違うので余計に違和感を感じるのかもしれないが、珍盤好きの私としてはコレはコレで味があって面白い。A-③「ズン・ズン・ズン」はノリの良いマーチ調の曲で、1968年にイタリアでミーナとオーラの、フランスではダリダとシルヴィのヴァージョンがヒットした。それにしても凄い顔ぶれの競作である。この曲の旋律に歌い手を刺激するような何かが潜んでいるのだろうか?
 B-①「ブォナセーラ・ブォナセーラ」はイタリア語で “コンバンワ” という意味で、シルヴィの表現力豊かなヴォーカルとダイナミックなストリングス・アレンジが絶妙にマッチしてイタリア人顔負けのネアカなカンツォーネになっている。B-③「哀しみのシンフォニー」はモーツァルトの交響曲をアダプトして見事なポップスに仕立て上げた発想が素晴らしい。クラシックが苦手な私でもコレには唸ってしまった。シルヴィの憂いを帯びた歌声がこの旋律が持つ哀愁をこれ以上ないぐらいに引き出しており、ハッキリ言ってめちゃくちゃ気に入っている1曲だ(^o^)丿 尚、この曲は発表当時フランスを除く各国で発売されたということだが、何でやろ?フランス人はモーツァルト嫌いなんかな?
 他の曲も基本的にはイタリアンな明るいポップスになっており、B-②「ラ・ジオベントゥ」やB-⑤「クアンド・ソリディ・トゥ」なんか結構耳にこびりつく印象的なフレーズの波状攻撃が楽しいし、ドラマチックなA-④「ベイビー・カポネ」やシルヴィ版 “ハニー・パイ” みたいなA-⑤「デュ・ミヌティ・ディ・フェリチタ」なんかまさに変幻自在のヴォーカルで、彼女のシンガーとしての魅力が堪能できるトラックだ。このアルバムはいつものフレンチ・シルヴィではないが、70年代前半の彼女の歌い手としての充実ぶりがビンビン伝わってくる好盤だと思う。

シルヴィ・バルタン Irresistibilmente Italian


シルヴィ・バルタンのケッサク空耳


SYLVIE VARTAN-Caro Mozart(1971)
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Zozoi / フランス・ギャル

2010-03-02 | European Pops
 春のフレンチ祭り(←何か食パンみたい...笑)、今日はフランス・ギャルの登場だ。901 さんに聴かせていただいた「夢みるシャンソン人形」の中に私を魅了する昭和歌謡と同質の哀愁を感じ、「娘たちにかまわないで」や「アイドルばかり聞かないで」、「涙のシャンソン日記」etc、ギャルのキュートな歌声とゲンスブール・メロディーが醸し出すザ・ワン・アンド・オンリーな世界にすっかりハマッてしまった私は彼女のイエイエ・アイドル時代のヒット曲が集中するフィリップス時代(1963-1968)のEP盤を1枚また1枚と集めていった。当時のフランス音楽界はLPでもシングルでもなく、4曲入りEP盤が中心だったし、何よりもチャーミングなEP盤のジャケット(何故かシングル盤は2色刷りの味気ないジャケットばかり...)にすっかり魅了されてしまったからだ。結局、フィリップス時代の音源はほぼ制覇し、ある時は天真爛漫な、またある時はクールでジャジーなギャルの歌声を楽しんでいた。
 そんなある時、ネットのギャル・サイトで気になる記事を発見; “ギャルにはフィリップスを離れた後に「Zozoi」というサバービアなフレンチ・ブラジリアン・グルーヴ・ナンバーがあって、それはLPにも入ってないしもちろんCD化もされていないマニア垂涎の激レア・シングル盤” とのこと。 “サバービアなギャル” やと??? 何じゃいそれは? 当時の私は “サバービア” という言葉に弱かった。弱いと言っても別に大好きで目がないという意味ではなく、ワケがわからんけど何となくカッコ良さそうで、ヤフオクでよく見かける “オルガンバー” や “クボタタケシ” 同様、そーいった言葉を添えるだけで後光が差してくるように感じてしまう必殺のキーワードだった。今にして思えば情けない話だが、とにかく興味をひかれた私が eBay で検索してみると、たま~に出品されはするものの、ビッドが殺到して落札価格がハンパではない(>_<) いくら何でもシングル盤1枚に$100も出せへんよ(>_<) 今なら YouTube から DL して MP3 変換し、CD に焼くという悪知恵も浮かぶが(笑)、当時の私は MP3 って言われても RX-7 みたいな車の型番と勘違いするぐらいの知識しかなかったので(←ホンマです。今でも MP4 とか FLV とか、何のこっちゃよぉ分かりません...)、何とかならんか考えを巡らせた結果、通常の eBay ではなくフランス人しか見ない eBay fr. で網を張って辛抱強く獲物を待つことにした。その甲斐あって、ついにこの「Zozoi」を39ユーロでゲット、少々値は張ったが流通価格の半値以下だ。英語のめっちゃ怪しいフランス人とメールで苦闘した価値は十分あったというものだ。
 送られてきた盤は La Compagnie というよく分からないフランスのレーベルから1970年にリリースされたもので、何とブラジル録音だ。 “サバービアなギャル” ってどんなんやろ?と思いながらターンテーブルに乗せると、いきなりラテン・モード全開のイントロが爆裂!サンバのノリでガンガン飛ばすグルーヴィーなパーカッションに華麗なる高速ピアノが絡みつき、妖しげな男声コーラスが “ケスクセェ~♪” (←私にはどうしても “ケツ臭ぇ” に聞こえてしまうのだが...笑)と執拗に繰り返す。うわぁ~、コレは確かに凄いわヽ(^o^)丿 更にホーン群まで乱入してブラジリアン・サンバのうねる様なグルーヴが炸裂する中、ギャルがキュートなウィスパー・ヴォイスでスキャットをばっちりキメるという、まさに必殺のキラー・チューンだ。特にエンディング近くになって笑い転げるギャルがめちゃくちゃ可愛い(≧▽≦) “オルガンバー・サバービア系” の中には何でこんなんがエエねん?と首をかしげたくなるような過大評価盤もあるが、コレは正真正銘の大アタリ。私に “フランス・ギャルはゲンスブールのイエイエだけやない!” と痛感させてくれた、 “フロアDJのマスト・アイテム” の看板に偽りなしの名曲名演なのだ。

FRANCE GALL / ZOZOI

天使のらくがき / ダニエル・ビダル

2010-03-01 | European Pops
 私をフレンチ・ポップス狂いにしたのはG3仲間の 901 さんと plinco さんである。お二人ともちょうど私よりも一世代上の方なので、60年代をリアルタイムで経験されている。だから私のような “音楽は60年代が最高!” (←ただしジャズは50’sが最高で60’sは最低やけど...)と信ずる人間にとっては教わることが非常に多い。オールディーズにせよ、昭和歌謡にせよ、テケテケのエレキ・インストにせよ、私がまだガキだった頃にラジオでヒット曲を聴き、テレビで見、レコードを買っておられたのだ。後追い体験派の私としてはお二人との会話から得るところは計り知れない。
 5年ほど前、音聴き会に 901 さんが持参されたフランス・ギャルのEP盤を聴いて私が大コーフンしているのを見て、
 plinco さん:そんなにギャルが気に入ってんやったら他のフレンチ/イタリアン・ポップスもイケるんちゃうか?
 私:他にどんな歌手いてますのん?
 plincoさん:ダニエル・ビダルとか、ウィルマ・ゴイクとか...
 私:え?聞いたことない名前ですわ。ワシ横文字苦手ですねん。もう一回言うて下さい、メモりますんで...
 plincoさん:ダ ニ エ ル ・ ビ ダ ル... ウ ィ ル マ ・ ゴ イ ク...
 901さん:おぉ~ 懐かしいなぁ... おったおった(笑) チンクエッティーもエエでぇ~
 私:チンケッテイ?...ですか?
 plincoさん:ちゃうちゃう、ジリオラ・チンクエッティーや。
 901さん:shiotch7さん、すぐにハマるから来月あたりワシらよりも詳しゅーなってるんちゃうか...(笑)
とまぁ大体こんな会話で盛り上がったのだが、901さんの予言された通り、私はその日の晩からネットを利用して徹底的にフレンチ/イタリアン・ポップスを研究し、ヤフオク、アマゾン、eBay その他のネット・オークションやオンライン通販を駆使して彼女らの LP 、 EP 、 CD を集め始めた。ギャル、バルタン、シェイラ、ミーナ、オーラといった大物は順調にいったが、それ以外のややマイナーなシンガーは困難を極めた。まず本国フランスでLPが出ていない、日本盤のシングルは状態の悪いのがたまにヤフオクに出てくるぐらいで希少なLPになるとビッドが殺到して落札価格が高騰、もちろんCD化なんて夢のまた夢、という厳しい状況だった。そんな苦労を経て音源を入手した一人が今日取り上げるダニエル・ビダルである。
 彼女はブロンド・ヘアーにライト・ブルーの大きな瞳という、まるでフランス人形のような容姿のロリータ・アイドルだ。1969年デビューと言うからイエイエ・ブームは完全に終わっていたのだが、日本では結構人気があったという。最初アマゾンで検索した時、すぐに1枚出てきてラッキー!と思ったのだが、カスタマー・レビューがやたらと低い。読んでみると、オリジナル音源ではない再録音盤をそれと知らずに買わされて怒り心頭の恨み節が並んでいたのだ。あ~危なかった(>_<) そんなモン、ハッキリ言うて詐欺盤やん!今ではマトモなCDが出ているが、当時はそのナンジャラホイ盤1枚しかなく、結局 “キング・セルダム・シリーズ” という値段の安かった日本盤LPを買った。A面がダニエル・ビダルでB面がチンクエッティという、お買い得なのか中途半端なのかよくワケのわからないLPだ。全6曲中、「オー・シャンゼリゼ」や「ピノキオ」といった聴いてるだけでこっ恥ずかしくなるような楽曲の中で、めちゃくちゃ気に入ったのが彼女のデビュー曲「Aime ceux qui t’aiment(邦題:天使のらくがき)」である。
 まず何と言っても曲そのものが良い。まるで東欧かロシア民謡のようなマイナー調のメロディーが心の琴線を震わせる。絵に描いたような哀愁舞い散る名曲だ。それをダニエル・ビダルのキュートでありながらも声量たっぷりの歌声で聴けるのだ(≧▽≦) これはもう必殺のキラー・チューンと言えるだろう。この曲がヒットしたのは1969年、ビートルズが解散に向かう一方でニューロックが台頭し、ミュージック・シーンが混迷を極めていた時期である。そんな中、この曲が一服の清涼剤のような存在となり、 “うた” を愛する音楽ファンに熱烈に支持されたというのも頷ける話だ。尚、彼女は60'sのアイドル歌手がよくやったようにカタコト日本語ヴァージョンも吹き込んでいて、 “あたしは お茶目な いたずら天使~♪” と舌っ足らずな日本語で歌っている。遅れてきたフレンチ・アイドルが訥々と歌うこのヴァージョン、その筋系の音楽を愛するご貴兄に超オススメだ(^.^) 

天使のらくがき/ダニエル・ビダル Aime Ceux Qui T'aiment/Daniele Vidal

L'integrale des singles de 1962 a 1969 / Sheila

2010-02-28 | European Pops
 60年代のフレンチ・ポップスの中で、アメリカン・ポップスのカヴァーを中心としたフランス版ロックンロールのサウンドを総称してイエイエと言う。そんな明るく楽しいイエイエの代表的なシンガーといえばシェイラである。もちろんイエイエ3人娘の残りの2人、シルヴィ・バルタンもフランス・ギャルもイエイエなのだが、とにかく底抜けに楽しいナンバーで難しいことを考えずにとにかく踊ってしまうにはシェイラの、特に初期の楽曲がピッタリだ。
 イエイエ・ガールズの中でギャルやシルヴィが徐々にアーティストとしての自我に目覚めていったのに対し、シェイラはあくまでもオーソドックスなイエイエ・フォーマットに拘った。いや、本人よりも彼女の制作サイドの意向によるものかもしれない。彼女の芸名にもなったトミー・ロウの「シェイラ」(Sheila)を始め、エヴァリー・ブラザーズの「夢を見るだけ」(Pendant les vacances)やマンフレッド・マンの「ドゥー・ワ・ディディ」(Vous les copains)、レノン=マッカートニーの「ハロー・リトル・ガール」(Hello petit fille...日本盤シングルには「こんにちわマドモアゼル」という副題が付いていた)や「愛なき世界」(Je n’ai pas change)、クリフ・リチャードの「いつも青空」(Toujours des beaux jours)、シーカーズの「アイル・ネヴァー・ファインド・アナザー・ユー」(Je n’en veux pas d’autre que toi)といった英米のポップスを持ち前の明るいキャラで次から次へとイエイエ化(←それにしても抜群の選曲センスですね!)していく一方で、そういったポップスのリズムを巧く取り入れたオリジナル・イエイエ曲もドンドン歌っていった。特にイエイエの魅力全開のウキウキワクワク・ソング「口笛で恋しよう」(Le sifflet des copains)は60年代フレンチ・ポップスを代表する名曲名演だと思う。やがてイエイエ・ブームが去って彼女もイメチェンを余儀なくされ、70'sディスコ・クイーンへと華麗なる変身を遂げることになるのだが、私はひたすら明るく楽しいイエイエを歌い続けた60年代のシェイラが大好きだ。
 私の場合、フレンチ/イタリアン・ポップスにハマッてすぐに彼女のベスト盤CDをゲットしたのだが、そこから先が大変だった。ギャルやバルタンとは違い、日本盤CDがほとんど出ていないのだ。唯一出ていた盤も“現在お取り扱いできません”... 要するに廃盤である。ネット上にも情報はほとんどない。私は仕方なくフランスのファン・サイトにアクセスしてディスコグラフィーをコピー、eBay でフランスからオリジナル盤LPを直接買うという荒技に出た。幸いなことに60年代のシェイラを狙ってる人間はそんなにいなかったらしく(←当たり前やん!)ほぼ無競争で落札を繰り返し、LPフォーマットで出ている曲はすべて聴くことが出来た。当時はシルヴィやギャルのオリジ盤もガンガンいってたので、仏和辞典片手に意味不明なフランス語のメールと格闘する毎日だった(笑)
 それから何年か経ち、ちょうど去年の今頃だったが、ネットで偶然この24枚組ボックス・セットを見つけた。60年代にリリースされた彼女の4曲入りEP 盤23枚すべてを紙ジャケで再現したものにシングル全曲のインストを1枚にまとめたカラオケCDをセットにした全24枚のこのCD ボックス、オリジ盤LPに漏れている曲もあるし、何よりも可愛らしいEPジャケットが一気にすべて揃うと思うと居ても経ってもいられない。アマゾン・ジャパンでは18,000円強、HMVのマルチバイでも13,000円を超えてしまう。私は世界中の通販サイトで値段を調べ上げ、ついにこれは!というのを見つけた。アマゾン・フランスで新品が何と54ユーロだったのだ。早速翻訳サイトを頼りに恐る恐るクリックしていき、ついに購入に成功した。定価より1万円以上も安く買えて大満足だヽ(^o^)丿
 ただ、コレはあくまでも私のような熱狂的なシェイラ・ファン向けのコレクターズ・アイテム。以前取り上げたベスト盤も選曲が中途半端なモノだったので、レコード会社にはぜひとも堅気の音楽ファンのために真っ当なベスト盤を出してほしいものだと思う。

Sheila Le sifflet des copains


SHEILA " JE N ' EN VEUX PAS D'AUTRE QUE TOI "

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アイドルを探せ / シルヴィ・バルタン

2010-02-27 | European Pops
 シルヴィ・バルタンといえば何はさておき「アイドルを探せ」である。これほど歌手と曲想、そしてタイトルのイメージがピッタリ重なり合う例も珍しい。フランス語の原題は「La Plus Belle Pour Aller Danser」といい、翻訳サイトで英訳してみると “Most Beautiful To Go To Dance” となる。日本語なら “踊りに行くのに一番の美人” という意味だ。まさにブロンドのショート・ヘアーが美しいシルヴィにピッタリの曲ではないか。これは1964年のフランス映画「Cherchez L’Idole(邦題:アイドルを探せ)」の主題歌(←シルヴィも出演して歌ってます)で、彼女が世界的にブレイクするきっかけになった1曲だ。日本でもこの曲やレナウン娘のCMが大ウケして人気爆発、来日時の清楚でキュートな振る舞いも相まって “可愛い妖精” として文字通りアイドル的存在だったらしい。
 シルヴィのヴァージョンがまさに決定版!という感じなので、この曲のカヴァーはそれほど多くはない。60年代はカヴァー・ポップスの全盛期ということもあって、ザ・ピーナッツや弘田三枝子、中尾ミエ、珍しいところではザ・スパイダースなんかもインスト物として取り上げていたし、70年代以降でも辺見マリや安西マリア、浅田美代子なんかも歌っていたが、やはりシルヴィのヴァージョンが突出しているように思う。今日はそんな中で、ちょっと変わったユニークな「アイドルを探せ」も含めて愛聴ヴァージョンをご紹介;

①シルヴィ・バルタン(オリジナル)
 60年代シルヴィ鑑賞なら YouTube が一番。見たこともないレアな映像が知らないうちにアップされていることがあるので気が抜けない(←すぐに消されちゃうけど...)。下に貼り付けたのは映画の中で彼女が歌うシーンで、日本語字幕付きなのが嬉しい(^o^)丿
Sylvie Vartan: cherchez l' idole in the movie " Cherchez l'idle" with Japanese subtitle.


【おまけ】めっちゃ可愛い!!! 萌えます...↓
シルヴィ・バルタン わんさか娘


②亀井信夫とザ・スペイスメン
 エレキ・インスト物ではこの亀井信夫とザ・スペイスメンのヴァージョンが面白い。これの入った「勝ち抜きエレキ合戦」というオムニバス盤には他にもレアな音源が入っていてお得なのだが、この痛いジャケットだけは何とかならんかったんか...(>_<)
亀井信夫とザ・スペイスメン


③岡崎友紀
 私的には J-Pops で五指に入ると確信する大名盤「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」(岡崎友紀)に入っていたカヴァー・ヴァージョン。プロデューサー加藤和彦の見事なサウンド・プロダクションにより、フィル・スペクター顔負けのエコー処理がなされ、夢見心地のサウンドに仕上がっている。ウォール・オブ・サウンドは永遠に不滅なのだ。
アイドルを探せ / YUKI OKAZAKI


④レ・モーヴェ・ギャルソンヌ
 少年ナイフのイエイエ版みたいなガールズ・ガレージ・ロック・バンドがこのレ・モーヴェ・ギャルソンヌ。チャーミングなイエイエ・ソングがけれん味のないストレートなロックンロールに生まれ変わっている。特に1分10秒からハイスピードに転調して疾走するところなんかめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 
アイドルを探せ


⑤シルヴィ・バルタン(セルフ・カヴァー)
 90年代に入り、自らの過去のヒット曲をアコースティック・サウンドをバックにセルフ・カヴァーしたヴァージョンがコレ。①とこの⑤の間には30年の歳月が横たわり、若さから円熟へと向かう一人の女性シンガーの変貌をハッキリと聴きとることが出来る。年代物のワインのような円やかな味わいがたまらない女性ヴォーカルの逸品だ。
Sylvie Vartan - La Plus Belle Pour Aller Danser (1995)
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Tendres Annees 60 / Marie Laforet

2009-07-02 | European Pops
 私は仕事をしている時以外は家にいようが車に乗っていようが四六時中音楽を聴いており、殆ど音楽漬けと言っていいような生活を送っているが、その一方で映画の知識は非常に乏しい。もちろん映画が嫌いというわけではなく、ただ単に集中力が2時間もたない(笑)だけなのだが、見ていて頭を使うような難しい映画は基本的に苦手である。そんな私だから仲間内で映画の話題になると、タイトルといい俳優の名前といい知らないことだらけで全くついていけない(>_<) 音楽好きの人はほぼ例外なく映画にも詳しいので、いつもつんぼ桟敷に置かれてペニーレーンでバーボン状態になるし、ましてやそれが昔のヨーロッパ映画ときた日にゃあもうハラホロヒレハレ~(笑)になってしまう。
 初めてマリー・ラフォレの名前を耳にしたのは数年前のこと、G3で私がフランス・ギャルやシルヴィ・バルタンに熱を上げていると、901さんやplincoさんが “60年代のフレンチ・ポップスやったらマリー・ラフォレなんか気に入るんとちゃう?アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」に出てた女優さんやけど、映画「赤と青のブルース」のタイトル曲とかエエよ。” と薦めて下さったのだ。「赤と青のブルース」?知らんなぁ... 「太陽がいっぱい」?聞いたことあるようなないようなタイトルやなぁ... アラン・ドロン?... 名前はイヤッちゅーほど聞いて知ってるけど実際に映画を見たことないしなぁ... とか思いながらネット検索して試聴してみると、これがもうめちゃくちゃカッコ良い!いわゆるひとつのジャジーなサウンドをバックに歌う粋なフレンチ・ポップスで、いっぺんに気に入ってしまった。早速ヤフオクでこの曲の入っている「Tendres Annees 60」という安価なベスト盤を発見、何とボブ・ディランの「風に吹かれて」やアニマルズの「朝日のあたる家」なんかのカヴァーも入っている。これは大ラッキーだ(^o^)丿 
 フレンチ・ポップスを聴く上で何が鬱陶しいと言ってフランス語ほど鬱陶しいものはない(←フレンチ・ポップスからフランス語を取ったらフレンチ・ポップスちゃうやん!)。音楽ジャンキーにとって曲のタイトルが全く読めないのはかなり不便なことで、とにかく意味も発音も全く分からないのでどの曲がどれだったかが全然覚えられないのだ。だから常日頃はバカにしている邦題が付いていたりすると地獄で仏に会ったような気持ちになるのだが、残念ながらこのCDは輸入盤なのでそれも諦めるしかない。
 届いたCDでまず聴いたのが彼女を知るきっかけとなった①「赤と青のブルース(セントロペ・ブルース)」だ。素人っぽさ全開の囁きヴォーカルが逆に抗しがたい魅力を発散し、全編を通して効果的に使われているヴィブラフォンの涼しげな音色と律儀にリズムを刻むギターのザクザク音が耳に残る名曲名演だ。フォンタナから出たシングル①のB面にあたる②「タンブルウィード」で聴けるフランス・ギャルそっくりの歌声にビックリ(゜o゜) 他の曲ではそんなことないのに、 “タンブルウィード、タンブルウィード~♪” のリフレイン・パートなんかギャルが歌ってると言われても信じてしまいそうなくらいにそっくりだ。それにしても①が2分19秒で②が1分42秒と、シングルAB面併せて4分というのもコスト・パフォーマンス高いなぁ...
 ③「Tu Fais Semblant」はフランソワーズ・アルディ路線の実にシックなフレンチ・ポップスで、ラフォレのイメージにピッタリの曲。女優さんの余技とはとても思えない雰囲気抜群のヴォーカルが素晴らしい!⑤「メリー・アン」ではアニー・フィリップの「片道切符と入場券」を彷彿とさせるたどたどしく儚いヴォーカルがたまらない。
 ⑥「風に吹かれて」ではそれまでとは違った歌い方というか、1語1語をかなりしっかりと歌っており、説得力が格段にアップしている。この人は曲によってかなり歌い方を変えているようで⑦「朝日のあたる家」では「悲しき天使」と「ドナ・ドナ」を足して2で割ったようなロシア民謡ちっくな演奏をバックに哀愁舞い散るヴォーカルを披露する。凄いなぁと感心していると次の⑧「L'amour en fleurs」は再びアニー・フィリップ路線に逆戻り。⑨「Qu'est-ce qui fait pleurer les filles?」では癒し系ヴォーカルで聴く者を優しく包み込み、⑩「Ils s'en vont sur un nuage」ではシャンタル・ゴヤのようなアンニュイな歌声を聴かせてくれる。ビートルズの「夢の人」を想わせるフォーキーな⑭「Viens sur la montagne」ではシェイラの影響が見え隠れ。いやはや何とも器用なシンガーだ。
 このマリー・ラフォレという人は他にもサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」とか「コンドルは飛んでいく」なんかの名カヴァーもあるので、フレンチ・ポップスの底無し沼にハマりたい方は是非どーぞ!!!

Saint Tropez Blues, par Marie Laforet St et Jacques Higelin


怪しい映像発見!右端のマトリョーシカ人形がウルトラマンに出てきた宇宙人にそっくりやなぁ... などと思って見ていると、さりげなくゲンスブールが出てたりします(笑)
Marie Laforet - Ivan, Boris & Moi

L'integrale Sixties / Annie Philippe

2009-05-29 | European Pops
 今、私は第2次イエイエ・ブームの真っ最中である。5年ぐらい前にフランス・ギャルを初めて聴いて感動し、そこから様々なイエイエ・シンガーを聴き漁っていったのが第1次。イエイエの持つ底抜けの楽しさに目覚めた私がギャルのシングル、アルバムをほぼ聴きつくし、次は誰をいったろかとイエイエ・シンガーについて色々調べてみたところ、アニー・フィリップがフランス・ギャルを頂点とする “ロリータ派” の一人としてシャンタル・ゴヤと並んで紹介されており、フランス・ギャルが好きならこの二人もきっと気に入るはずと書かれてあったのだ。フレンチやイタリアン・ポップスはギャルやバルタンのような超有名シンガー以外は中々試聴できるサイトがなく、ネットの文字情報だけを頼りに音を聴かずに一か八か勝負するいわゆる “見ずテン買い” を余儀なくされたCDも少なくないが、そんな中で予想を超える素晴らしさだったのがこのアニー・フィリップのベスト盤2枚組CD「コンプリート・シックスティーズ」である。
 当時のフレンチ・ポップス界は4曲入りEPを中心に動いていたようで、彼女に限らずオリジナルLPなんてレア中のレアという状況、しかも楽曲の漏れ落ちも多くなるということで、このCDでは彼女の12枚出たEPを年代順にコンプリート収録するという画期的な方法でのリイシューとなっている。同じ音源をたらい回しに切り売りしながら初出音源を小出しにしていく日本のレコード会社にも、このようにファンの視点に立った潔い発想をぜひ学んでほしい。
 彼女はポール・モーリアに見出され、64年にルルの「ヒー・ドント・ウォント・ユア・ラヴ・エニモア」のフレンチ・カヴァー①「何と言われても」でデビュー。確かに少し鼻にかかったような声質といい、舌っ足らずな歌い方といい、フランス・ギャルを少しアク抜き(?)したような感じである。しかしプレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」のカヴァー②「川辺のバラ」のようなバラッドではギャルっぽさはあまり感じられない。デイヴ・ベイビー・コーデッツみたいなハッピー・オルガンが大活躍する④「歌って踊って」は心がウキウキ弾むようなナンバーで初期の傑作だと思う。スプリームズのカヴァー⑤「ベイビー・ラヴ」はハンド・クラッピングに至るまでオリジナルに忠実されているのが嬉しい。フランス・ギャル色が濃厚なアイドル系ポップス⑥「落第しちゃった」やシャンタル・ゴヤあたりが歌いそうなメランコリックなバラッド⑦「サン=トロペでさようなら」に対し、⑧「明日まで待てない」や⑨「悲しい気持ち」ではアニーらしさ溢れるパンチの効いたヴォーカルが炸裂!徐々にオリジナリティーが確立されつつあるのが分かる。⑪「兵隊さんの太鼓」はこれぞイエイエ!といいたくなるようなナンセンスな擬音語 “ヤンバンババダバ ダバダンバン♪” の繰り返しが楽しい(^o^)丿 彼女再大のヒット曲⑬「片道切符と乗車券」は哀愁舞い散るハーモニカとアニーの一人二重唱が印象的だ。
 レーベルをフィリップスに移籍してすぐの大ヒット⑰「わたしの友達」は名曲の殿堂入りを推挙したくなるような涙ちょちょぎれるキラー・チューン。このしっとり感、たまりません(≧▽≦)  古き良きデキシーランド・ジャズっぽい伴奏が楽しい⑱「勝手におしゃべり」でも彼女の力強いヴォーカルが冴え渡る。これ大好き(^.^) イントロのリズム・ギターが快感の⑲「誰がため、何のため」は哀愁のメロディーが耳に焼き付いて離れない名曲。アニーはこの頃が楽曲的に一番充実していたように思う。⑳「チャカブン」はギャグとしか思えないようなオモロイ曲で、ひたすら“ブン チャカブン チャカブン チャカチャカチャカブン♪” とチャントする。何なん、これ?(笑) めっちゃカッコ良いファズ・ギターのイントロから始まる(21)「モードな毎日」は “これぞ60's!” と叫びたくなるキッチュなサウンドの波状攻撃が圧巻で、(26)「タクシー急いで」と共にフレンチ・ポップス・ファンだけでなくネオアコ・ファンにも強烈にアピールしそうなナンバーだ。
 ディスク2ではママス&パパスのカヴァーで爽快感溢れる①「どこへでも行くがいいわ」、ストリングス・アレンジでよりポップな味付けに成功した②「タクシー急いで」(シングル・ヴァージョン)、絵に描いたようなイエイエ・バラッドの傑作③「哀しみのマネキン」を最後に楽曲のパワー・ダウンが顕著になる。67年と言えばまさに「サージェント・ペパーズ」の時代... やがてイエイエの衰退とともにアニーも表舞台から姿を消してしまった。思えば世界のミュージック・シーンが物凄いスピードで変化し、混沌の中からニュー・ロックが生まれつつあった時、フランスだけいつまでもノーテンキにイエイエを踊っているわけにもいかなくなったのだろう。

Annie Philippe - Le mannequin

Sessions Acoustiques / Sylvie Vartan

2009-05-28 | European Pops
 全盛期の歌なり演奏なりを何十年もたってから再演したものにはどちらかというとトホホな、いわゆる “やめときゃあよかったのにねぇ盤” が多い。特に女性ヴォーカルの世界では瑞々しさや勢いに溢れた若い頃の歌声に勝るものはなく、過去の “最も輝いていた自分” と同じ土俵でまともに勝負して勝てる可能性は極端に低い。そんな “再演物” の中で例外的な素晴らしさ、それも圧倒的な素晴らしさを誇る超愛聴盤がシルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ~フレンチ・アコースティック」(94年)である。
 私がよく聴くシルヴィはアルバムで言うと「哀しみのシンフォニー」入りのイタリア盤「イレジスティビルメンテ(←読み方これであってるのかな?)」(75年)ぐらいまでで、それ以降の “ケバい化粧で踊り狂うダンシング・ディーヴァ” キャラ、いわゆるフレンチ・ディスコ・クイーンとしての彼女には全く興味を持てなかった。ディスコ云々の音楽スタイルは抜きにしても、楽曲のクオリティーがそれまでのものとは比べ物にならないくらいダウンしており、私は「シルヴィは60年代から70年代初めまででエエわ」とタカをくくっていた。そんな折、偶然ネットでこのCDの存在を知り、 “50才になったシルヴィが往年のヒット曲をアコースティック・ヴァージョンで聴かせる” という企画に興味を引かれたのと選曲の良さ、それに中古で1,200円という安さに釣られてあまり期待せずに購入した。
 届いたCDの①「悲しき慕情」を聴いて私は驚いた。こういうのを円熟味というのだろう、それまで自分が歩んできた波瀾万丈の人生を振り返るかのように、実にゆったりと歌うシルヴィ。ニール・セダカが歌い、カーペンターズもカヴァーしたオールディーズ・クラシックスが品格滴り落ちるスタンダード・ソングに変身していた。ひょっとするとコレは掘り出し物かも?と色めき立って②「おセンチな17才」を聴く。ヨーロピアン・デルタ・ブルース(笑)といっていいようなネチこいアコギの伴奏とアンニュイな雰囲気を振りまくシルヴィのヴォーカルが絶妙な調和を見せ、30年前のオリジナルを芸術的に、圧倒的に、超越的に凌駕している。ビーチ・ボーイズ屈指の名曲をカヴァーした③「スループ・ジョンB」は曲の髄を見事に引き出したアレンジが素晴らしく、シルヴィとバック・コーラスの軽妙なコール&レスポンスに目が眩む。シルヴィのというよりイエイエの代表的名曲④「アイドルを探せ」は格調高いギターのイントロに???と思っているといきなり耳に馴染んだあのメロディーをシルヴィが一語一語じっくりと歌詞をかみしめながら歌い綴っていく。これがもう鳥肌モノで、聴き手を優しく包み込むようなストリングスも心の琴線をビンビン刺激する。カスケーズの⑤「悲しき雨音」でもレイドバックした雰囲気にフランス語がバッチリ合っていて、実にオシャレなヨーロピアン・ポップスになっている。
 YMOの「タイトゥン・アップ」みたいなハイテク・ベースが耳に残る⑧「愛とあわれみ」、シルヴィが力強いヴォーカルを聴かせるブルージーなロック⑨「裏切らないワ」、ブルーグラスの薫りを撒き散らしながら軽快に飛ばす⑩「オー・プリティ・ウーマン」、ゴージャスなフレンチ・ポップ⑪「太陽に向かって」と、様々なタイプの曲をこなす懐の深さを見せつけるシルヴィは貫録十分だ。
 ノリノリのアコギ・カッティングに被さるようなシルヴィの語りにゾクゾクするイントロから一気呵成に駆け抜ける⑫「カミン・ホーム・ベイビー」はベン・タッカーも泣いて喜ぶカッコよさ!故郷ブルガリアに対する想いを綴った彼女のパーソナル・ソング⑬「思い出のマリッツァ」では郷愁を誘うアコーディオンの音色が効果抜群だが、何と言っても万感胸に迫るような切々としたヴォーカルが圧巻だ。唯一のライブ録音⑮「テンダー・イヤーズ」は6万人の観衆を前にしてアカペラで歌ったもので、彼女がこのアルバムを作るきっかけとなった感動的なナンバーだ。
 これは当時流行りのアンプラグド・ライブとは激しく一線を画すもので、私は彼女のヴォーカリストとしての器の大きさを改めて実感させられた。キャッチーでポップなイエイエ・クラシックスを粋なスタンダード・ソングへと昇華させたこのアルバム、静かな夜に独りゆったりと聴きたい1枚だ。

SYLVIE VARTAN LA PLUS BELLE POUR ALLER DANSER ROUMANIE

Ukuyeye / Mareva

2009-05-27 | European Pops
 連日のイエイエ・ネタである。実は901さんの発見には続きがあって、Chick Habit が一段落すると、
「それともう一つ、フランス・ギャルのカヴァーも見つけてん!さっきの Chick Habit の原題入れて検索してみて」
「laisse tomber les filles ですね、ハイ、出ました。どれですか?」
「これや、この Mareva っていうの、めっちゃ妖しいねん!」
ということで再びみんなでYouTube 鑑賞。痴的な薫りをプンプンさせたお下げ髪の女の子が、椅子に座って本を読んだり電話をしたりで彼女に見向きもしない男の子の周りをまるで動物園の猛獣のようにウロウロしながら彼にチョッカイかけまくる(←これ、ホンマに笑えます!)という、いかにも60's風の安っぽい作りがたまらないおバカなビデオだ。
 「マレーヴァか... こんなイエイエ・アイドルおったんやなぁ。知らんかったわ...(>_<)」と思いながらアマゾンで調べると、何と2007年発売の新譜、つまり現役バリバリのフレンチ・ポップ・シンガーが60's風にギャルをカヴァーしていたのだった。全曲試聴可能だったので聴いてみると、これがもうシェイラあたりに通じるイエイエの王道サウンドのアメアラレ、しかも “1点在庫あり。ご注文はお早めに!” とある。私はこの言葉にめっちゃ弱い。早速その場でオーダーしたら、901さんもplincoさんも「もう買うたん?速攻やなぁ!」と大笑いしておられた。
 2日経ってCDが届いた。ジャケットにアップで写った彼女は、あのバカっぽさ全開のビデオとは別人のようなエキゾチックな雰囲気を湛えた超美人である。それもそのはずで、タヒチ出身で14才からモデルの仕事を始めたという彼女は98年にミス・タヒチ、99年にはミス・フランスに選ばれ、その後はファッション界と芸能界を股にかけ、最近はハリウッド映画にも出演しているというとんでもない経歴の持ち主なのだ。更に音楽好きな彼女は数年前から歌のレッスンを受け、ついに完成したのがこの「ウクイエイエ」である。
 「ウクイエイエ」というタイトルは、彼女が生まれ育ったタヒチで幼い頃から耳にしていた楽器ウクレレと、彼女が大好きというイエイエを組み合わせた造語である。とは言っても全曲ウクレレでイエイエを演っているのではなく、ウクレレがフィーチャーされているのは②⑥⑦⑧⑬⑭のみで、それ以外の楽曲ではイエイエの60's的な楽しさはそのままに、80'sっぽいチープなエレクトロ・ポップ・サウンドで巧くコーティングし、 “ヌーベル・イエイエ” とでも言うべき彼女独自のスタイルを聴かせてくれる。
 このCDを知るきっかけとなったフランス・ギャルのカヴァー⑤「娘たちにかまわないで」はチープなエレクトリック感がクセになるキラー・チューンで、エイプリル・マーチと共に脳内ループが止まらない(≧▽≦) ジャクリーヌ・タイエブのカヴァー①「午前7時」と⑫「暴走160キロ」では共にバリバリのガレージ・サウンドが楽しめる。特に①はデビッド・ボウイの「イッツ・ノー・ゲーム」を想わせるカッコよさだ。シェールを、というよりむしろナンシー・シナトラをカヴァーしたシェイラの歌声をイミテイトした感じの②「バン・バン」は正調イエイエ・ファン必聴の逸品だし、フランソワーズ・アルディのカヴァー④「愛の時間」なんかもうアンニュイな雰囲気バツグンで涙ちょちょぎれる。軽快なウクレレと口笛の相性が絶品の⑥「セ・ボン」は関口和之と竹中直人の「口笛とウクレレ」を彷彿とさせる心地良さだし、ニノ・フェレのキャッチーでゴキゲンなカヴァー⑨「レ・コルニション」なんかクラブやカフェーで絶対に大ウケしそうなサバービアな仕上がりだ。⑦「プークワ・パ・モワ」はイエイエ・テクノ・ポップと言ってもいくらいヒップなサウンドにウキウキ・ワクワクしてしまうし、その60's風リミックス⑭なんかピコピコ電子音を抑えたレトロなサウンドがこれまたエエ味出していて、シェイラの未発表テイクだと言われたら信じてしまうかもしれないくらい60'sしており、レコード盤のサーフェス・ノイズを被せる芸の細かさというか、マニアックな拘りも嬉しい。
 そういうわけでこの「ウクイエイエ」、すっかりそのカルトな魅力にハマッてしまい、現在ヘヴィー・ローテーションになっている。こういう楽しい出会いがあるから音楽はやめられない。901さん、いつも面白いネタを提供して下さってホンマに感謝してますっ!!!

03 - Mareva - Laisse tomber les filles


MAREVA GALANTER/ Pourquoi Pas Moi
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