shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

南アフリカ盤で聴く「エボニー&アイボリー」

2019-04-29 | Paul McCartney
 いつも思うのだが、私の悪い癖はすぐに調子に乗ることである。前回取り上げたアイルランド盤の「アイルランドに平和を」ですっかり調子に乗った私は他に何か面白そうなレコードはないかなぁ... と小一時間ほど考え、はたと思いついたのが「エボニー&アイボリー」の南アフリカ盤である。ポールがピアノの鍵盤に引っ掛けて黒人と白人の人種差別の問題を歌ったこの曲を、よりにもよってアパルトヘイト(人種隔離)政策で悪名高い南アフリカの盤で聴いてやろうという実に歪んだ発想である。
 このシングルは南アでは当然ながら放送禁止になったらしくどれだけ売れたのかは分からないが、eBayには1枚も出ていない。Discogs で探してみると2枚だけ出品されており、VG+ の方はシングル盤1枚に610ZAR(≒5,000円!!!)というアホみたいに高い送料だったので迷うことなく $4の VG盤をチョイス、送料込みで 1,200円なら御の字だ。尚、ネットの情報によるとこのシングルは何故かラウドカット盤だとのことなので、爆音好きの私としては非常に楽しみだった。
 届いた盤を早速ターンテーブルに乗せ、一体どんな凄い音が鳴り出すのかと身構えていると、いきなり物凄い音でイントロが炸裂! うわぁ、こいつは確かに凄いわ... と感心していると、ヴォーカルが始まると同時にバックの演奏が少し控え目になり、???という感じ。これって以前に聴いたブラジル盤「ラム」と同じパターンやん! つまりヴォーカルに合わせて音量を調節してるだけで、こんなものは真正ラウドカットではない。
 しかも悪いことに南ア盤に特有の弱点である高音域が伸びないせいで “チキチキチー♪” というハイハット・シンバルの音がヴォーカルの陰にに隠れてしまってほとんど聞こえない。念のため UK盤シングルと聴き比べてみたところ、完璧なバランスで鳴る UK盤に比べ、南ア盤の方は音圧は相対的に高いものの音のバランスがややイビツでとてもじゃないが高音質とは言い難い。湯浅氏の言葉を借りればこれこそまさに “ガサツな音” という感じであり、私に言わせればただの “なんちゃってラウドカット” である。
 ということで南アフリカ盤の「エボニー&アイボリー」は話のネタとしては確かに面白い音だが、決して良い音ではないというのが私の正直な感想だ。手持ちの南ア盤はこれで3枚目だが、どいつもこいつも音質イマイチでパッとしない。どうやら私と南ア盤の相性は最悪なようだ。

アイルランド盤で聴く「アイルランドに平和を」

2019-04-27 | Paul McCartney
 ジョンの「ロックンロール」のアイルランド盤を手に入れた話は前回書いた通りだが、あのレコードがとても良い音で鳴ったこともあって、それ以来アイルランド盤も購入対象へと昇格した。しかしアイルランド盤ってプレス枚数が少ないのか、滅多なことでは市場に出てこない。こうなったらこちらからターゲットを絞ってこちらから積極的に探すしかない。ということで、“アイルランド盤ねぇ... 次は何を狙ったろかな...”と考えていてふと思いついたのがポール&ウイングスのシングル「アイルランドに平和を」だった。
 丸腰のアイルランド市民に向けてイギリス軍が発砲し13人が亡くなったという「血の日曜日事件」に激怒したポールがイギリスを激しく非難した歌詞のせいでBBCでは放送禁止になったという曰く付きのシングルだが、アイルランドでは当然の如く1位になったと聞く。もちろんUKオリジナル・シングルは持っているが、やはりこれはアイルランド盤で聴いてみたい。
 早速ネットで検索してみたところ、ラッキーなことに Discogsに1枚だけ出品されているのを発見。£18とシングル盤にしてはかなりのお値段だったが、この盤は popsikeで調べてみても過去数年間で1枚しか出てきてないほどレアなので、この機会を逃してなるものかと即決。シングルのため送料が安くてすんだおかげでこの貴重盤を約3,000円で手に入れることができた。
 届いた盤をUK盤と比較してみたところ、レコード№やマトリクス№は同じだがレーベル面の “Mfd in UK”のところが“Mfd in R. of I.” になっているのがアイルランド盤の証しだし、字体や緑色の濃淡も違っている。
 肝心の音の方だが、マトが同じせいもあって音質に大きな違いは感じられなかったものの、私の耳にはアイルランド盤の方が少しだけ音圧が高いように聞こえた。一番分かりやすかったのは打楽器系のバン!バン!と叩く音で、特に後半部の一番盛り上がるパートでアイルランド盤の方がより激しく叩いているなと感じられたのだが、これはひょっとするとこのレコードをカッティングしたアイルランド人エンジニアの怒りの感情がこもっているのかもしれない。コレクターの方はもし見つけられたらぜひゲットして自分の耳で確かめてみて下さいな。

ジョンの「ロックンロール」各国盤バトルロイヤル

2019-04-21 | John Lennon
 ビートルズの各国盤蒐集という魔界にハマってかれこれ3年になるが、今回は初登場のアイルランド盤である。きっかけは各国盤蒐集のターゲットをビートルズのソロにまで広げたことで、とりあえず各メンバーのソロ作品で自分が一番気に入っているレコードに的を絞って収集を開始。ジョンでは何と言ってもヨーコ臭のない「ロックンロール」が一番好きなので、Discogsでどこの国のを買おうかと色々物色していた時に偶然目にしたのがアイルランド盤というわけだ。しかもこれがアップル・レーベルではなく何とシルバー・パーロフォン・レーベルなんである。値段を見ると NM盤にもかかわらず €12というお買い得価格で、送料込みでも2,500円程度だ。私は迷わず ORDER をクリックした。
 届いた盤は A面のマト枝番が UK盤と同じ -1U だったがB面は -3U ということでこちらの面は手持ちの UK盤とは違っている。つまり枝番 -1U/ -3Uというレアな組み合わせの盤なのだ。聴いてみたところ、-1Uの A面はめちゃくちゃ良い音で、例えるなら音の細部まで見えるような感じ。UK 1stプレス盤とも聴き比べてみたが、アイルランド盤の絶妙なステレオ感は UK盤をも凌駕していた。
 しかし -3UマトのB面はというと、音がやや硬くて -1U マトの A面とは微妙に違う感じ。両面 -1U マトのアイルランド盤があったら最強やろなぁ... などと無い物ねだりな妄想をしながら、ものはついでと「ロックンロール」の US盤と NZ盤を引っ張り出してきて聴き比べてみた。
 まず US盤だが、実に骨太で芯のあるサウンドで、そのゴツゴツした質感はまさにラフなロックンロールにピッタリだ。アイルランド盤とはまた違った意味での “良い音” で、ちょうど「レッド・ゼッペリンⅡ」の UK盤と US盤の音の違いに感じが似ている。60年代に多いエコーまみれの US盤はゴミ以下だが、70年代(←特に前~中盤のビートルズ・ソロとゼップ)の US盤に関してはイケイケのロックなサウンドが聴けるので要チェックだ。
 続いてかけたのが NZ盤で、私としては UK、US、アイルランドと四つ巴の戦いを期待していたのだが、スピーカーから出てきた音はめちゃくちゃショボくてガッカリ。音圧は低いし、音像もこじんまりしていて脆弱。これは断じてロックンロールの音ではない。この盤が届いた時は埃やカビでノイズが酷かったので木工用ボンドでクリーニングしたのだが、クリーニング後のチェックではノイズの有無に神経を集中したせいか、プアーな音質に気付かなかったようだ。とにかくこの NZ盤は論ずるに値しない軟弱サウンド盤だった。
 NZ盤が予想外の惨敗だったので、“ほんなら OZ盤はどうなんやろ?” と考えた私はすぐに Discogsで盤質の良さそうなのを見つけて即オーダー、15オーストラリア・ドル(約1,200円)で送料込みでも2,500円弱という安値で買えてラッキーだ。届いた盤を聴いてみたところ、NZ盤とは異次元の素晴らしい音だったので喜び勇んで B-SELSに持ち込み、Sさんにも聴いていただいたのだが、“バスドラの音が強烈で、ほとんどハードロックのサウンドになってますねぇ... いやぁビックリしました...” と驚かれたご様子。“これだけドラムの音が大きいのにヴォーカルがそれに負けてないところが凄いですよね。ブラスが鳴り響くところなんかもまるでジミー・ペイジの歪ませたギターに近い音で鳴ってますし... ほら、「カスタード・パイ」のイントロのあの感じですよ、コレ。” と感心しきりで、二人してジョンの大ロックンロール大会を満喫した。
 ということで私なりの「ロックンロール」音質格付けは アイルランド盤A面1U = OZ盤(10点)> US盤(9.8点)> UK盤 1U/1U(9.5点)> アイルランド盤B面3U(9.2点)>>>>> NZ盤(5点) となった。こうなってくると、“アイルランド盤が良かったからデンマーク盤やスウェーデン盤といった北欧勢もエエんちゃうやろか?” とか “「ロックンロール」以外のレコードも OZ盤で集めたろか...” とかいう風に好奇心が疼いてたまらない。これやから各国盤蒐集はやめられまへんわ...(^.^)

【追記】今回の各国盤対決で惨敗した NZ盤さん、どーしたものかと考えた挙句モノラル再生専用盤として(←さすがにオルトフォンのモノ針でかけたらごっつい音で鳴りよったわ...笑)華麗に転身させました。モノラルのド迫力サウンドで聴くジョンの「ロックンロール」... これはたまりませんで(^o^)丿

「Ringo」US盤 vs UK盤

2019-04-14 | George・Ringo
 去年の12月に B-SELSでポールのソロ・アルバムの US盤を大人買いした話はこのブログにも書いた通りだが、思っていた以上に音が良かったこともあって、それ以降はジョン、ジョージ、リンゴのも安くて盤質の良い US盤を見つけたら逃さず買うようにしてきた。US盤は海外からネットで直に買うと送料だけで3,000円近く取られるので日本国内のお店で探すに限るのだが、2年ほど前に大阪や京都のレコ屋を廻ってみたところほぼ壊滅状態だったので、今となってはわざわざ電車に乗って県外にまで足を延ばす気には全くなれない。つまり私が行くレコ屋といえば地元の B-SELS一択なのだ。
 そういうわけで私は B-SELSに行くたびにソロのコーナーの US盤をチェックしているのだが、先日「リンゴ」の US盤で盤質 EX+という掘り出し物を見つけた。リンゴの US盤は「ブラスト・フロム・ユア・パスト」しか持っていないので、これはコレクション充実のチャンスである。私はいつものように試聴させて下さいとお願いし、Sさんと一緒に聴き始めた。
 US盤はプレス工場によって微妙に音質が違うが、この盤はジャクソンビル・プレスで(←デッドワックスにあるアルファベットの Oみたいな刻印が目印)、以前ここで「ウイングス・オーバー・アメリカ」の US盤2種を聴き比べた時と同じく音圧はやや低め。音がフワーッと広がる感じでとても華やかだが、押さえるところはきっちり押さえてある感じがする。比較試聴した UK盤の「リンゴ」はカチッとしたソリッドな音で US盤よりもロックな音がするのだが、そもそもリンゴの歌というのは基本的にポップスなので US盤でも十分に楽しめるし、特に“パーティー気分でお気楽に楽しみましょう” というこのアルバムのコンセプトには合っているように思う。
 曲別に言うと、例えば A④「サンシャイン・ライフ・フォー・ミー」のようなカントリー色の濃い曲は US盤の方が雰囲気を上手く表現しており、さすが本場の音作りは手馴れているなぁという印象だ。一方、B③「シックス・オクロック」はどう考えても “イギリスの朝” という雰囲気の曲であり、UK盤の音作りがピッタリだ。又、B④「デビル・ウーマン」のドラム・ソロなんかは UKと USの特徴が如実に出ており、“押し出し感の UK” vs “派手さの US” という構図が実に面白い。私自身に関して言えば基本的に UKの音が好きなこともあって UK盤に軍配を上げたいが、US盤も捨てがたい魅力を持っている。
 それにしてもこのアルバムってさすがは元ビートルたちがこぞって参加しているだけあって絵に描いたような名曲名演のオンパレードで、ホンマによく作り込まれてるなぁ... と感心してしまう。特にジョージとの共作 A③「フォトグラフ」とポールが参加したジョニー・バーネットのカヴァー A⑤「ユア・シックスティーン」は絶品で、全米№1も納得のキラー・チューンであると再認識させられた。
 そういえばこのレコードを買った時に Sさんが “リンゴのレコードを一緒に聴いてあれやこれや言い合える人って中々いないですよ。まぁリンゴで UK盤と US盤の聴き比べやってる所なんか日本中探してもそんなにないでしょうけど...(笑)” とおっしゃっていたが、全く同感だ。好みの似通った音楽友達と一緒にレコードを聴いて語らい合うほど楽しいことは他にないのである。

モノラルのブラジル盤で聴く「McCartney」

2019-04-07 | Paul McCartney
 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズ最終回はポールのファースト・ソロ・アルバム「マッカートニー」だ。本来ならこの盤は昨年末に手に入れていたはずなのだが、最初にオーダーしたドイツのセラーから “ドイチェ・ポストが送料を240%値上げした(←まぁドイツから日本までLP 1枚でだいたい €6というこれまでの料金が安すぎたのかもしれんけど、それにしてもいきなり240%とはえげつないわなぁ…)のでこれ以上商売が続けられない” とのことでキャンセルされ、別のイタリアのセラーから再度買う羽目になったため(←値段の方は €30で、送料込みで約6,000円だった...)、結局盤を手にするまで約2ヶ月もかかってしまったが、いざ針を落としてみると凄まじい轟音盤で、これなら十二分に待った甲斐があったというものだ。
 A①「ラヴリー・リンダ」ではとにかくポールのヴォーカルが近くて、まるで目の前で歌ってくれているかのような錯覚に陥ってしまう。A②「ザット・ウッド・ビー・サムシング」は何と言ってもシンバル一閃のビシーッという引き締まった音ががめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 これはたまらんですわ。 A③「ヴァレンタイン・デイ」ではギターとドラムスがくんずほぐれつしながら濃厚なグルーヴを生み出していく様にゾクゾクさせられる。
 A④「エヴリナイト」もA①同様にヴォーカルが生々しいし、まるでアコギの本数が増えたかのような分厚いサウンドが気持ち良い。A⑤「ホット・アズ・サン」のタイトルにある sun はこの盤で聴くと間違いなく熱帯の太陽ではないか、と思えるぐらい音の温度(?)が高い演奏だ。A⑥「ジャンク」は静かな曲だがポールの太いベースがボーンと響き渡って演奏に一本筋が通る感じ。A⑦「マン・ウィー・ワズ・ロンリー」は “But now we're fine all the while...♪”(でも今では僕達が寂しい時なんてない)という歌詞そのもののポールの幸福感がダイレクトに伝わってきて、良い音で聴くと曲の表情まで変わるなぁ... と実感させられた。
 B①「ウー・ユー」は “これぞまさしくラウドカット!” と快哉を叫びたくなるぐらいガンガン迫ってくる演奏で、ポールのヴォーカルも元気一杯だ。B②「ママ・ミス・アメリカ」はいきなりイントロのドラムスからエンジン全開で、まるでコージー・パウエルが叩いているかのような爆裂ドラミングが快感(≧▽≦)  曲の後半部なんてもう血沸き肉躍るハードロックそのもので、マイケル・シェンカーが乗り移ったかのような鬼気迫るギター・ソロに思わずのけぞってしまう。良いか悪いかは別にして(←私はめちゃくちゃ気に入ったが...)こんな「マッカートニー」は後にも先にもブラジル・モノ盤だけだ。
 B③「テディ・ボーイ」とB④「シンガロング・ジャンク」はさすがに一息つけるが、B⑤「メイビー・アイム・アメイズド」がこれまた強烈! 何よりもまず通常盤とはポールの声の張りが違うし、ギター・ソロもまるで「天国への階段」を弾く時のジミー・ペイジ御大みたいな感じで説得力がハンパない。これはもうすべてのポール・ファンに聴いてほしい痛快無比な「メイビー・アイム・アメイズド」だ。ポールがテレビで見た狩猟の雰囲気を音楽で表現しようとしたとされるB⑥「クリーン・アクロア」はラウドカット効果でプリミティヴなパワーが大幅にアップ、ポリリズミックなドラミングやポールの生々しい息遣いなどのダイナミックなサウンド展開が面白く、それまであまり真剣に聴いたことがなかったこの曲に思わず耳が吸い付いてしまうほど引き込まれてしまった。やっぱりラウドカットはエエですな(^.^)
 ということで、長々と続けてきた「ブラジル盤のモノラルで聴く~」シリーズもこれにて終了。今回の「マッカートニー」の満足度はもちろん100点満点で、前回の「レット・イット・ビー」に続く “神棚盤” となったのだが、それもこれも元を辿ればほんの思いつきで買った「ラム」のブラジル盤がすべての始まり。それまでは各国盤の蒐集対象としてはブラジルのブの字も頭になかったことを考えると、レコードとの出会いってホンマに不思議な偶然というか縁みたいなもんがあるんやなぁと考えさせられた。

モノラルのブラジル盤で聴く「Let It Be」

2019-04-02 | The Beatles
 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズも今日で4回目。モノラルの「レット・イット・ビー」といえば、UKでリリースされたオープンリール・テープを CD化したブートレッグを持っているが、あれはステレオ・ミックスをモノに落としただけの、ちょうどプリアンプの MONOスイッチをオンにした時のような古式ゆかしい音で、“まぁこういうのもアリっちゃアリかな...” というレベルだったが、ブラジル盤のモノラルはどうなのだろう???と、興味津々でネット検索を始めた。
 まず eBayだが、VG+盤が1枚だけ出ていて送料込みで $150... う~ん、さすがにコレはちょっと高すぎる...(>_<) ならばと Discogsでこのレコードを探すと7枚出品されていたが、どいつもこいつも盤質 G+やら VG-のガチャ盤ばかりで全く食指が動かない。そんな中で1枚だけ、盤質 VGで €50というブツがあり、送料も €20と良心的だ。説明を見ると “This copy is very good, with some risks. On my machine only presented a few clicks on the side A. Side B has very few hiss.”(盤質はまぁまぁエエけど、ちょっとリスクはあるヨ。ウチのシステムでは A面チリパチ音が少しだけあるけど B面はヒスノイズほとんど無しネ。)とのこと。60年代のモノラル盤で a few clicksなら上等なのだが、やはり risksという言葉がどうしても引っ掛かる。
 こういう場合、私には “買わない” という選択肢は存在しないので、リスクを取って €50盤で勝負するか、安全策を取って $120盤に行くか、の2つしかない。さて、どうするか... 私はそのレコードに対して自分で決めた限度額を超える場合は決して買わない主義なので、必然的に答えは一つ... つまりリスクに賭けろ!である。私は腹を決めて €50盤を即決購入した。
 届いた盤はジャケットのちょうどジョンの枠の左隅に“Marcelo Sanches”(←「マルセロ・サンチェス」ってなんかサッカーのブラジル代表みたいな名前やな...) と前所有者の名前が青のボールペンでハッキリと書いてある。センター・レーベルにもデカデカと書かれてあるが、達筆なので全然違和感がない(笑)
 肝心の音の方だが、これまで手に入れた3枚のブラジル・モノ盤とは激しく一線を画す爆音盤でビックリ(゜o゜)  まずA①の「トゥー・オブ・アス」だが、“「トゥー・オブ・アス」ってこんなに元気な曲やったっけ???” と疑いたくなるほど元気一杯のサウンドがスピーカーから飛び出してくる。特にリンゴのドラムの一打一打がめちゃくちゃ力強く、シンバルは乱舞するが如し。アコギのストロークもパワフルそのもので、1曲目から度肝を抜かれた。A②「ディグ・ア・ポニー」も気怠さが吹き飛ぶような快演で、ここでも絶好調なリンゴがビシバシとショットをキメまくる。ジョンの歌声もガンガン前に出てきて超気持ち良い(^o^)丿 これまで “ビートルズの全アルバム中一番生気に欠ける” と思っていたあの「レット・イット・ビー」がロックンロール・アルバムとして目の前にすっくと屹立しているのだ。グリン・ジョンズがコレを聴いたら何と言うだろう?
 A③「アクロス・ザ・ユニバース」はA①②に比べるとおとなしめだが、やはり音は分厚い。続くA④「アイ・ミー・マイン」のイントロはまさに “空間をつんざく” という感じで響き渡り、思わずのけぞってしまうほど。ジョージのヴォーカルは驚くほどエネルギッシュだし、ジョン・ボーナムばりのドラミングを聴かせてくれるリンゴにもビックリだ。これって別ミックスちゃうんか???と思わせるぐらい曲の表情が違うのが面白い。A⑤「ディグ・イット」のジョンはノリノリだし、A⑥「レット・イット・ビー」のジョージのギター・ソロも一曲入魂!という感じ。リンゴの鬼気迫るドラミングも圧巻で、こんなエゲツない「レット・イット・ビー」は初めてだ。A⑦「マギー・メイ」ではラウドなアコギのストロークが生み出す大きなノリがめっちゃ気持ち良くて、“もっともっと聴きたい!” という衝動に駆られてしまう。
 B①「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」でもリンゴの勢いは止まらずで、ポールの怒涛のベースと相まってこの曲のハードな側面を強調している。まさに“リンゴ・スターは漢でござる!” と言いたくなるような快演だ。続くB②「ワン・アフター909」でもポールが言うところの“A Great Little Rock'n Roll Band” が生み出す痛快無比なロックンロールに思わず身体が揺れてしまう。
 B③「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」はモノラル化したせいでフィル・スペクターが施したオーケストラやバック・コーラスといった過剰な装飾が奥に引っ込み、その分ポールのヴォーカルが前に出てきて私的には絶妙なバランスに聞こえる。う~ん、これはたまりませんわ(≧▽≦)  大袈裟ではなく私が今まで聴いてきた中でベストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」かもしれない。
 B④「フォー・ユー・ブルー」はジョージの作品中最も過小評価されていると思う1曲で私の超愛聴曲なのだが、リンゴのドラミングが生み出すグルーヴが圧巻で、ジョージのヴォーカルも水を得た魚のように活き活きと響く。B⑤「ゲット・バック」もノリの権化と化したビートルズとビリー・プレストンが一体となってパワー全開で突っ走る爽快感がたまらない。全曲聴き終えての感想だが、こんな溌剌とした「レット・イット・ビー」は他では聴いたことがない。
 ということで、ブラジル盤(BTL 1013)のモノラル・サウンドで聴く「レット・イット・ビー」は素晴らしいの一言で、満足度は文句なしの100点満点だ(^o^)丿 正調ビートルズ・ファンからは邪道と言われるかもしれないが、ひょっとすると UKオリジナルのボックス・セットに入っていた -2U/-2Uの1stプレス盤より好きかもしれない、今年に入って早くも2枚目の “神棚盤” だ。