shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「Magical Mystery Tour」の “グリーン・カヴァー”

2019-10-31 | The Beatles
 ビートルズの各国盤蒐集の楽しみの一つは “へぇ~、この国ではこんなレコードが出てたんか...” という意外な発見があることである。“ホース・カヴァー”や“エスキモー・カヴァー”といった垂涎盤を手に入れるのももちろん嬉しいが、あまり巷では噂に上らない “自分だけの珍盤” を見つけるのもこれまた楽しい。つい最近もちょっと珍しいレコードを手に入れたので、今日はそいつを取り上げようと思う。
 そのレコードというのは「Magical Mystery Tour」のイスラエル盤。先日 eBayでレコードのデータ収集をしていた時に偶然ジャケットが緑色がかった「マジカル」を発見し、“何じゃこりゃ?”と思って商品説明を見ると1967年にリリースされたイスラエル盤だという。リアルタイムでの「マジカル」は、基本的にヨーロッパ圏ではUKに倣ってEP2枚組で、アメリカを筆頭にカナダ、メキシコ、チリ、ペルー、ベネズエラといった南北アメリカ大陸ではキャピトルが編集したLPヴァージョンでリリースされたようだが、イスラエルではUS盤のフォーマットで出てたのか。
 イスラエル盤というと手持ちの盤は「Hey Jude」だけだが、これがめっちゃ埃っぽい音でガッカリのハズレ盤だったこともあって、私はイスラエル盤に対してあまり良い印象を持っていない。しかしこの緑がかったジャケットは中々魅力的だし、レーベルがイエロー・パーロフォンというのもマニア心をくすぐる。数千円程度で買えるのなら手に入れたいところだ。
 試しに eBayで“Magical Mystery Tour, Isreal” で検索してみたところ、緑ジャケ盤がドドーッと10枚くらい出てきてビックリ。しかも黄パロ以外にも薄い赤色のパーロフォンやらシルバー・パーロフォンやら色んなレーベルの「マジカル」があってワケがわからない。説明を読むと、どうやら黄パロが1stプレスで銀パロが2ndプレスということらしいが、問題なのは同じイエロー・パーロフォン・レーベルでもフロント・ジャケットのEMI(左上)とSTEREO(右上)のロゴが白色の盤と黒色の盤の2種類があるということ。値段を見ると下は$40から上は$170までピンきりだ。
 もっと詳しい情報を得ようと思って今度は Discogs で「マジカル」のイスラエル盤を検索したところ、白ロゴの方は1967年でfirst pressing、黒ロゴの方は1969年の銀パロの後の1971年なのに probably first pressing となっていて(しかもこっちにだけ heavy vinyl と書いてある...)説明に整合性を欠く。どちらも同じマト番で、ジャケットもラミネートされたフリップバック仕様(←銀パロはノン・ラミネート/ノン・フリップバック)とくれば、黒ロゴと白ロゴの両方とも銀パロよりも先に出ていたと考えるのが妥当だろう。私は最初に白ロゴ盤が出て、すぐにジャケットだけ黒ロゴに切り替わったのではないかとみているが果たしてどうか?
 そういうワケで、買うとしたら白ロゴでも黒ロゴでも黄パロならどっちでもエエから盤質の良さそうな方にしようと値段を比べてみたが、Discogsでは白ロゴ盤は出品されておらず黒ロゴ盤が最安値でも$80とお話しにならない。いくら何でもイスラエル盤に1万円近く出す気はサラサラない。一方 eBayでは白ロゴ盤が1枚だけ出ていて$59、黒ロゴ盤は5枚出ていて$39~$170と値段がバラバラだ。ラッキーなことに最安の$39盤がVG+コンディションでしかも送料も$9と安かったのでそいつに決定。万が一「Hey Jude」みたいに音がハズレでも5,000円なら “グリーン・カヴァー” のマジカル珍盤として楽しめばいい。
 送料が安いだけあって届くのに丸々1ヶ月かかったが、ジャケットも盤も無事で何より(^.^) 中東は色々と物騒なのでちょっと心配だったのだ。グリーンがかったジャケットは独特の味わいがあって、写真で見るよりも実物の方が遥かに魅力的。黄色一辺倒に慣れきった私の目にはめっちゃクールに映るのだ。うん、これは気に入った。
 盤を手に持った感触はズシリと重く、確かに heavy vinyl ではある。ただ、盤面はスリキズが多くて、実際に針を落としてみてもチリパチ音は結構あるわ、A②「Fool On The Hill」で針飛びするわで、思わず “針飛びする盤のどこがVG+やねん! ユダ公、ナメとんのか!” とブチギレたが、送り返すのも面倒くさいので、爪楊枝を駆使して何とか修復に成功(^o^)丿 ついでに盤面を中性洗剤で徹底的に洗浄して再びかけてみたところ、かなりノイズが低減され、何とか許せるレベルにまで音質が向上した。
 デッドワックスには何故かUS盤スクラントン・プレスの刻印入り。音の傾向としてはUS盤と同じく単純明快なドンシャリ型でメリハリのある元気なサウンドが楽しめるが、アンプのヴォリュームを上げていって大音量になるとさすがに高音がキツすぎて耳が痛くなるので要注意(笑) まぁこのあたりは同じイスラエル盤でも「Hey Jude」のヘタレ・サウンドとはエライ違いである。
 更に、ジャケットに “Playable Also As Mono” と書いてあったこともあって試しにカートリッジをモノラルに変えてみたところ、例の針飛び修復ヶ所のポップ音以外はほとんど気にならなくなったので、このレコードは主にモノラル盤として楽しむことになりそうだ。
 ということで、ネットで偶然見つけて手に入れたこの「マジカル」グリーン・カヴァー盤は針飛びも直したし(←あのユダヤ人セラーからは二度と買わへんけど...)、音もそれほど悪くないしで、盤に関しては一応満足。しかし何と言ってもこのレコード一番の魅力はそのユニークな緑色のジャケットにあり、私としては結構気に入っているので、5,000円なら良い買い物だったと思っている。

The Beatles Story: Japanese Radio Broadcast 1972-1973

2019-10-26 | The Beatles
 「The Beatles Story: Japanese Radio Broadcast 1972-1973」という13枚組CDのブートレッグを買った。これは1972年にBBCが13回にわたって放送した長編ラジオ・プログラムの日本放送ヴァージョンで、当時AMラジオで放送されたものをマニアがリール・テープに録音し、それを昨年LHが13枚組CDボックスとしてブート化したものだ。ビートルズのブートなら何でもかんでも聴きたいと思う私だが、13枚組とはいえ15,000円という強気の価格設定とAM放送のエアチェックということで音が悪いんちゃうかという考えから二の足を踏み、その時は買わずにスルーしていた。
 しかし10月の初め頃だったと思うが、いつものようにFUZのサイトで新作ブートをチェックしていた時に、オフィシャルの「Abbey Road」アニヴァーサリー盤リリースに便乗する形でリリースされた「Abbey Road: Originsl Japanese Reel-To-Reel」(「Abbey Road」の日本製オープンリールよりダイレクトにデジタル化したというCD。LHはホンマに金儲けが上手いわwww)と共に私の眼を捉えたのがこの「The Beatles Story: Japanese Radio Broadcast 1972-1973」で、そこには“今週末限りの特別価格!” “通常価格15,000円のところ、特別価格5,000円で特別限定販売致します” という “特別” 3連発(笑)の煽り文句が踊っていた。
 15,000円⇒5,000円ということは1万円引きである。67% OFFである。つまりプレスCD1枚当たり385円でBBCが作ったビートルズのアンソロジー番組が聴けてしまうというワケだ。前回リリース時はスルーしたものの、この13枚組CDの存在が気になっていた私にとってはまさに千載一遇のチャンス!!! これを逃す手はないということで私は即オーダーした。
 その週末にブツが届いたのは良いのだが、CD13枚を一気に聴くのはさすがにしんどいと考えた私はこのブートを車に積んで、毎日の通勤の行き帰りに聴くことにした。CMをすっ飛ばせば(←こんなもん最初からカットしとけよ...)CD1枚が大体52分前後の長さなので、ちょうど1日1枚のペースで聴けて非常に便利(^.^)  それにこういうAM放送の音はリスニングルームで巨大スピーカーと対峙して大音量で聴くよりはドライヴのBGMとして聞く方が遥かに合っている。
 心配していた音質は可もなし不可もなしという感じで自分が中学生時代にラジオにかじりついて聴いていたAM放送の音そのまんま(←当たり前か...)。お世辞にも良い音とは言えないが、ドキュメンタリー物として考えれば必要にして十分だ。それと、同時通訳が入っているということで本放送の英語のパートと後で追加された日本語ナレーションとの絡みぐあいがどうなっているのかが気になっていたのだが、聴いてみるとこれが実に良い按配のタイミングでナレーションが入ってくるので一安心。インフォには “アポロ11号の月面着陸や大阪万博などでも有名な通訳者による絶妙な語り” とあって “一体誰やろ???” と思っていたが、フタを開けてみれば何と鳥飼玖美子さんだった。そりゃー上手いわな。この人のラジオ番組をよく聞いていた私にはめっちゃ懐かしい声だった。
 内容的にはこれまで知らなかったような面白いエピソードがいっぱい聞けて大満足。とくにシリーズ前半の Vol.1~7あたりを聞いていて “ビートルズって凄まじいアイドルやったんやなぁ...” と改めて感じ入った次第。最近はオリジナル盤LPの音の聴き比べに没頭していたこともあって “世界中を席巻したビートルズ” というアイドルとしての側面をすっかり忘れていたので、他愛もないエピソードの数々がテンコ盛りなこの番組内容が私のミーハー心を刺激して実に新鮮だった。
 ただ、一つだけ呆れたのは(インフォにも書いてあったが)、Disc 5 “The World Surrenders(ビートルズ世界制覇)” のエド・サリバン・ショーのところで何とシェア・スタジアム公演の音源が流れたこと。鳥飼さんの “大成功を収めたエド・サリバン・ショーの模様です” というナレーションに続いていきなりシェア・スタジアム公演冒頭のエド・サリバンによるバンド紹介(例の “Honored by their country...”で始まるやつ...)と「Twist And Shout」が流れるという大チョンボ(>_<) LHのインフォによると、このパートは日本放送時にニッポン放送の制作スタッフによって独自に付け加えられたものだとのことだが(←いくら何でも天下のBBCがそんな初歩的なミスを犯すはずないわな...)、番組自体が素晴らしいだけにこのミスは本当に惜しいと思う。
 ちょうどUS盤「The Beatles' Story」のBBC版、みたいな感じで各メンバーや関係者へのインタビューを中心に、ビートルズ結成前から70年代ソロ初期までをカヴァーしたこの「The Beatles Story: Japanese Radio Broadcast 1972-1973」... ビートルズ初心者からマニアまで楽しめるこの優良ブートを半額以下で買えたのはホンマにラッキーだった。でも以前に定価で買った人は多分怒ってるやろうなぁ...

【ネタバレ注意】映画「イエスタデイ」を観に行ってきた

2019-10-19 | The Beatles
 こないだの3連休の最終日に映画「イエスタデイ」を観に行ってきた。残念なことに私の住んでいる奈良では1ヶ月以上も遅れての公開なので、待ちきれずに大阪難波まで出かけて行ったのだ。しかも14日はたまたまTOHOシネマズデイということで1,200円で観れてラッキー(^.^)  パンフレット(880円です)もシングル盤の棚にピッタリのEPサイズで、ご丁寧にリング・ウェアが印刷されたカバー付きというマニアックな作りが嬉しい。観終わった印象は “観に行ってホンマによかったぁ(^o^)丿” と大満足の映画だった。(ココからはネタバレになるので、ビートルズ・ファンの方はこの映画を観た後で読まれた方がいいと思います...)
映画『イエスタデイ』予告


 この映画は “もしも自分以外に誰もビートルズを知らない世界になってしまったら...” というパラレル・ワールドを描いたラヴ・コメディーで、ウィットに富んだユーモアのセンス溢れる作品に仕上がっている。軽快なテンポでストーリーが展開していくのでダレることもない。
 例えば “誰もビートルズを知らない” という世界を描写するのに、ジャックが「イエスタデイ」を歌った時の周りの反応が “ビートルズって何? 虫か? 車か?” というのもヒネリが効いているし、彼が出すアルバムのタイトルを考える戦略会議で「SGT ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を “単語が多すぎ”、「アビー・ロード」を “普通の道路と対向車” というふうに一刀両断に切って捨てるところも笑わせてくれる。
 キャスティングも実に見事で、どの役者さんもキャラが立っており、それぞれの役柄にピッタリの人選だ。中でもエリー役のリリー・ジェームズがめちゃくちゃキュートで観ている方としては思わず感情移入してしまうし、ジャック役のヒメーシュ・パテルも絶妙な表情変化(顔芸?)で喜怒哀楽を上手く表現していた。それと、ジャックの友人のロッキー(←おバカなローディー役の人ね)が実にエエ味を出していて、要所要所で笑わせてくれたのもよかった。
 ただ、この映画の中でよく分からなかった点が2つある。1つはこの平行世界ではビートルズだけでなくコカコーラやシガレット、ハリーポッターまでもが存在しなかったことになっているのだが、これらには何か共通点があるのだろうか? そしてもう一つ、この映画にはジャック以外にもビートルズの記憶を失っていない人間が2人登場するのだが、あのオッチャンとオバチャンは一体何者なんだろう? う~ん、気になる...
『イエスタデイ』特別映像(A Look Inside)


 それと、この映画に本人役で登場するエド・シーランだが、恥ずかしながらYouTubeで予告編を観るまで彼のことは名前すら知らなかった。まさにエド・シーラン?知らんなぁ... 状態。私が知っているエドさんといえば、エド・サリバンとエド山口くらいである。冗談はさておき、脚本家との対談映像を見ていて何となく “この人有名なんかな?” と思ってググってみてビックリ。コンサート・ツアーの動員数でU2が持っていた記録を破ったって... マジっすか? モスクワへ向かう飛行機の中でロッキーがエドに “ラップはやめた方が...” って言った時に周りの観客がめっちゃウケていたのだが、私には何が面白いのかよく分からなかった(>_<) 
映画『イエスタデイ』特別映像<いじられるエド・シーラン>


 この映画を単なる “ビートルズの歌がふんだんに出てくるファンタジーなラブコメ” ではなく私にとって忘れられない特別なものにしているのは、予告編にはなかった(←というか意図的にトレイラー映像に入れなかったのだろうし、映画のクレジットでも伏せてあった...)ジョン・レノンのそっくりさん(←Robert Carlyleで検索してみて下さい...)が登場するシーンだ。
   

 エリーに愛を打ち明けられずに悩んでいたジャックが例のオッチャンとオバチャンから住所を教えてもらって会いに行った相手が何と海辺で独り暮らしをしているジョン・レノン!!! えっ、ビートルズは存在しなかったんじゃ???と一瞬ワケが分からなくなったが、よくよく考えてみればこれはパラレル・ワールド。つまりビートルズとしてのジョン・レノンは存在しなくても、人間ジョン・レノンは存在しているという設定なのだろう。
 そしていよいよこの映画は最高のシーンを迎える。平凡だが幸せな人生を送ってきたジョン(←“I just said very happy... that means successful.” はいかにもジョンが言いそうな言葉だし、人生を振り返って “It turned out just... FAB.” と敢えてFABという単語を使った台詞も素晴らしい!)が悩めるジャックに語りかけるのだ... “彼女を取り戻せ... はっきりと愛を伝えるんだ。” と。何という説得力! ビートルズになっていなくても “愛こそはすべて” な人生を送るジョン・レノンからの最高の “恋のアドバイス” である。
 二人が腰かけているボートの右下部分にもご注目! 画面では上下逆さまになっていて判りづらいが、よくよく見ると I-m-a-g-i-n-e... 何と船の名は Imagine号だ! う~ん、芸が細かい。ひょっとするとこれは “ジョンが生きていると想像してごらん...” というダニー・ボイル監督から視聴者に向けてのメッセージなのかもしれない。
 迷いが吹っ切れてスッキリしたジャックに年齢を聞かれて“78歳だ。”と答えたジョンに “Fantastic! You made it to 78!”(素晴らしい! よくぞ78歳まで!)と感極まるジャック... ここで私は不覚にも涙腺が決壊してしまった。そう、この平行世界ではジョンはまだ幸せな老人として静かに余生を過ごしているのだ。ビートルズにならなかったジョンの身にはあの忌まわしい事件は起こらなかったのだ。ジョンが生きている... もうそれだけで十分ではないか!
 そしてこのビートルズ・ファンなら涙なくして観れないシーンの締めのセリフがジョンの “精神科に行った方がいいぞ。” というのがこれまた最高にクール。いやぁ、参りました。ダニー・ボイル監督(あるいは脚本家のアイデア?)はジョン・レノンという人をホンマによくわかってらっしゃる!
 私はもうこのシーンだけで胸が一杯になって、この後に続くウェンブリー・スタジアムでの告白からジャックとエリーのオブラディ・オブラダ・ハッピーエンド、そしてエンド・ロールで鳴り響く本物ビートルズの「Hey Jude」まで、とても幸せな気持ちで観ることができた。とにかく予想だにしなかったジョン・レノン登場で私的には100点満点の映画になった。いやぁ、映画って本当にいいもんですね~(^.^)
Yesterday: John Lennon scene HD


【おまけ】上記John Lennon scene での2人の会話です。
 John: Hello. Can I help?
 Jack: I don't know... you're John?
 John: That's right.
 Jack: From Liverpool?
 John: That's right.
 Jack: It's an honor to meet you.
-----------------------------------------------
 Jack: John?
 John: Yeah?
 Jack: Have you had a happy life?
 John: Very.
 Jack: But not successful.
 John: I just said very happy. That means successful. Did a job I enjoyed day after day. Sailed the world. Fought for things I believed in, and won a couple of times. Found a woman I loved. Fought hard to keep her too. Lived my life with her.
 Jack: Fought hard for her?
 John: There were complica... Sorry, what was your name?
 Jack: Jack.
 John: There were complications, young Jack. Loss and gain. Prejudice and pride. But it all turned out just... fab. How's your love life?
 Jack: Bad. I let her slip away.
 John: Try to get her back. You want a good life? It's not complicated. Tell the girl you love that you love her. And tell the truth to everyone whenever you can.
 Jack: Can I give you a hug?
 John: What?
 Jack: It's so good to see you. How old are you?
 John: Seventy-eight.
 Jack: Fantastic! You made it to seventy-eight.
 John: You're a very strange man. But go ahead.
 John: You need serious psychiatric help.
 Jack: Not anymore.

Abbey Road Anniversary Super Deluxe Edition②

2019-10-17 | The Beatles
 アビー・ロード・セッション時のアウトテイクスを集めたのがCD2とCD3の「Abbey Road Sessions」。色々手を加える前のアーリー・テイクを聴くことによって、ビートルズが如何にしてスタジオでマジックを生み出していったのかの一端を覗き見ることができるので、私的には今回のアニバーサリー・エディションの目玉と言ってもいいディスクだ。
 まずCD2の方で気に入ったのが④「The Ballad Of John And Yoko」(Take 7)。この曲はジョンとポールの2人だけで録音したことで知られているが、アタマの部分でドラムのポールに向かってジョンが “テンポを上げようぜ、リンゴ!” と呼びかけ、ポールが笑いながらギター担当のジョンに“OK, ジョージ!” と茶目っ気たっぷりに答えるというアット・ホームな雰囲気が実にエエ感じ。演奏の方はリハーサルらしいラフな仕上がりだが、ノリノリのジョンのヴォーカルとシンプルな構成でありながら強烈なグルーヴを生み出すギターとドラムの一体感が実に気持ちイイ(^o^)丿
The Ballad Of John And Yoko (Take 7)


 ⑧「You Never Give Me Your Money」(Take 36)も実に面白い。声色を変えて “Alright, okay, you win, I'm in love with you~♪” とお気に入りのペギー・リーのヒット曲の歌詞を口ずさみ(←この声って“Listen To What The Man Said” のアタマの喋りと同じやね...)、“You never give me your coffee~♪” とふざけながらも “さぁ、もう一丁やろうぜ、みんな!” と他の3人を鼓舞して真夜中の2時半に36回目のテイクを始めようとするポールの声を聞いていると、彼がこの時期いかに音楽的にノッていたかがよくわかる。
 ⑨「Her Majesty」(Take 1-3)も興味深い。ブートでこの曲のエンディングを初めて聴いた時もビックリしたが、今回のオフィシャル盤ではテイク1から3までの一気通貫、しかもテイク2では “Her Majesty's...♪” ときて咳払い3連発(笑)である。楽聖ポールは咳払いすら音楽的に響くから不思議なものだ。それにしてもポールのアコギってホンマに上手いなぁ...
You Never Give Me Your Money (Take 36)

Her Majesty (Takes 1-3)


 ⑪「Here Comes The Sun」(Take 9)はCD2の中でも超お気に入りのトラックだ。自動車事故で入院中のジョンを除く3人によるラフな演奏で、まだ“Sun, sun, sun, here it comes♪” のブリッジ・パートも未完成だし、ハーモニウムやハンド・クラッピングもオーヴァーダブされていないシンプルなサウンドだが、だからこそと言うべきか、さすがはビートルズと唸ってしまうようなライヴ感溢れるカッコイイ演奏が楽しめる。まだ音を重ねる前の “すっぴん” 状態のサウンドなのでポールの野心的なベースが浮き彫りになっており、演奏のドライヴ感に拍車をかけているところが◎。ビートルズのライヴ・バンドとしての一体感がビンビン伝わってくる快演だ。
Here Comes The Sun (Take 9)


 CD3の方では何と言っても⑨「The Long One」(Trial Edit & Mix – 30 July 1969)が聴き所。例のB面の大メドレーはラフ・ミックスの段階では「Mean Mr. Mustard」と「Polythene Pam」の間に「Her Majesty」が入っていたのだが、テープを聞いたポールがその流れを気に入らず、「Her Majesty」をカットさせて(←これは慧眼!)最終ミックスを作らせた(←つまり「Her Majesty」のアタマの部分のジャーン!は「Mean Mr. Mustard」のエンディング部分というワケ)のだ。今回の「The Long One」は「Her Majesty」がカットされる前の状態を復元したもので、しかもそれをオフィシャルの高音質で聴けるというのが実に嬉しい。
 ポールがバッドフィンガーに提供した③「Come And Get It」(Studio Demo)はポールによる一人多重録音デモ・ヴァージョンが「Anthology 3」に収録されていたが、ヴォーカルに微妙なエコーがかかっていて “エエ曲やのに勿体ないなぁ...” と残念に思っていた。しかし今回の2019アニヴァーサリー・ヴァージョンはそれとは違うスッキリしたミックスで、私的には断然こちらの方が好き。それにしてもスタジオ・デモ(←しかもテイク1!!!)とは思えないこの完成度の高さには本当に驚かされる。そのまま「Red Rose Speedway」あたりに入っていても全く違和感を感じないレベルの名曲名演だと思うが、こんなのをたった一人でササッと作ってしまう(←1時間もかからんかったらしい...)ポールの天賦の才は凄いとしか言いようがない。
Come And Get It (Studio Demo)


 個人的に残念だったのはラスト2曲が “ストリングス・オンリー” だったこと。私は基本的に単細胞なロックンロール人間なので、ストリングスだけ聞かされても “へぇ~、そんなアレンジなんや...” と感心することはあっても決して感動することはない。どうせなら歌のない歌謡曲みたいなストリングス・インストよりも、何でもいいからビートルズの4人による演奏を入れてほしかったと思ってるのは私だけなのかな?

Abbey Road Anniversary Super Deluxe Edition①

2019-10-16 | The Beatles
 先月末に「Abbey Road」の50周年記念盤が発売されてからというもの、このブログもすっかりアビー・ロード祭り状態だが、アナログ盤の方は自分なりに一応の決着がついたので、今回はCDとブルーレイ・オーディオがセットになったスーパーデラックス・エディションの感想を書いておこう。
 まずは CD1の本編リミックス盤。聴いた第一印象としては音圧が上がって各楽器の音がクリアーになっており、やっぱりこうきたか... という感じ。特にヘッドフォンで聴いた時なんかはその生々しさに驚かされたりオリジナルに入っていなかった音がリミックスされているのに気付いてニヤリとさせられたり...(^.^)  “このリミックスはアリやな...” とか、“コレはイマイチかな... ” といった風に曲によって出来不出来の差を感じるが、全体的には大体予想した通りのサウンドになっていた。
 今回のリミックスはかなり現代的なサウンドに仕上がっているのでオリジナルの音に拘る人は抵抗感があるかもしれないが、前回のUKオリジナル盤との聴き比べの時にも書いたように、あくまでもこれはオリジナル音源の “リマスター” ではなく “リミックス” なのだから、オリジナルとの優劣を云々するのではなく、「イエサブ・ソングトラック」や「レリビー・ネイキッド」のように全くの別物として広~い心で楽しむのが正解だろう。とは言え、私の場合「ペパーズ」や「ホワイト」のリミックス盤と同様に “一応持ってはいるけどターンテーブルに乗る機会が圧倒的に多いのはやっぱりUKオリジナル盤” ということになりそうだが...
The Beatles - Here Comes The Sun (2019 Mix)


 次はブルーレイ・オーディオ・ディスク。本編CDとどれくらい音質差があるのか確かめようと興味津々だったのだが、ここで大問題が発生。1年前に「White Album」のブルーレイ・オーディオをマッキン+アルテックのオーディオ・システムで聴くためにパソコンにインストールした 4Videosoftブルーレイプレーヤーというソフトが30日間の無料お試し期間を過ぎてしまっていて、今回の「Abbey Road」を再生できないのだ。もちろんリビングのブルーレイ・プレイヤーで難なく聞けることは聞けるのだが、テレビのスピーカーで聴いてもCDとの音質差など分かるはずがない。う~ん、これは困った(>_<)
 私はPCオーディオに金をかける気はサラサラないので(←ディスク3枚しか持ってないし...)有料版にアップグレードするという選択肢は無く、しつこく有料版を進めてくる4Videosoftプレーヤーにブチギレて(笑)即刻削除。代わりになるようなフリーソフトをネットで調べてみたところ、Leawo Blu-ray Player というのが一番わかりやすそうだったので早速ダウンロード。性能も使いやすさも 4Videosoftプレーヤーには多少劣る感じだが、ブルーレイ・オーディオなんてどうせ滅多に聴かないだろうからこれで十分だ。音出ししてみた感想としてはCD1の音を更に磨き上げたような感じで、その情報量の多さはさすがブルーレイ・オーディオといったところ。
 ただ、このブルーレイ・オーディオというメディアも以前買ったUSBハイレゾと同様に私にとっては “高音質なのはわかるけど何故かあまり魅かれない音” なので(←いちいちPCやら何やらのセッティングするのも面倒くさいし...)、これも「ペパーズ」や「ホワイト」のブルーレイ・ディスクと共にCD棚で埃をかぶることになりそうだ。やっぱり私にはアナログ・レコードが一番合ってますわ。  (つづく)

「Abbey Road」UK初期プレス盤 vs 2019リミックス盤

2019-10-12 | The Beatles
 「Abbey Road」の50thアニヴァーサリー盤が届いた翌日、私は早速新旧2枚の「Abbey Road」を携えてB-SELSにSさんを訪ねた。

 Sさん:今日は何を聴きましょうか。
 私:そりゃあもう「Abbey Road」しかないでしょう。
 Sさん:でも前回で手持ちの盤は全部聴き終わったんじゃ...
 私:実はあの日、家に帰ってからネットで探して偶然スタンパーの若いUK盤見つけましてん。
 Sさん:いやぁ、実はshiotchさんのことやから絶対に手に入れやはるとは思ってたんですが、まさかこんなに早く...
 私:ハハハ... “ことやから” って何ですの(笑) そんなに分かりやすい性格してますかね? まぁとにかく聴いてみて下さい。

①UKオリジナル1stプレス盤(141g)
 Sさん:おぉ、これは素晴らしい! ギターの伸びが全然違いますね。
 私:シンバルの伸びも凄いでしょ。シューン、シューンと湯気を上げて立ち昇っていくようなこの感じ。
 Sさん:ベースもバックでブンブン唸ってて、さすがはUK1桁盤ですね。これやったらOZ盤に負けてませんね。
 私:3桁盤とは迫力が違います。
 Sさん:盤質もビックリするほどエエですね。いくらスタンパーが若くても盤質が悪かったら意味ないですもんね。
 私:いやぁ、ホンマにラッキーでしたわ。セラーがEXって言ってても、正直、全然信用してへんかったし。届くまでは疑心暗鬼でしてん。
 Sさん:A③「Maxwell's Silver Hammer」のベースがエエ音してますね。ベースが太いです。
 私:前に聴いたスタンパー3桁盤とはえらい違いでしょ。
 Sさん:UK盤の底力を見せつけられた感じですね。「Abbey Road」ってめちゃくちゃ売れただけにスタンパー1桁盤って中々出てこないんですよ。
 私:A⑤「Octopus's Garden」のドラムの生々しさったらないですね。ホンマに凄いですわ、これ。
 Sさん:A⑥「I Want You」も完璧ですよ。こんなUK盤が聴きたかったんです!
 私:B①「Here Comes The Sun」のギターの音が瑞々しいですね。
 Sさん:ジョージのヴォーカルも細かいニュアンスまで聴き取れます。いやぁ、凄いサウンドですねぇ。
 私:B④「Sun King」の虫の音も気持ち悪いくらいリアルですよ。まるで秋の夜に縁側で涼みながら聴いてるみたいな感じです。
 Sさん:音の広がりが凄いですね。
 私:いやぁ、これこそまさに究極の「Abbey Road」ですわ。B⑩「The End」のドラム・ソロもめっちゃダイナミックです。
 Sさん:ドラムとベースのリズム・セクションがしっかりしてるからどこを切ってもノリがハンパないですね。
 私:前回のスタンパー3桁盤の汚名(?)を晴らす逆転サヨナラ満塁ホームランって感じですかね。そもそもここでのSさんとのやり取りがなければ買ってなかった盤ですから、感謝感謝です。それじゃあ次は昨日届いたばかりのニュー・リミックス盤を聴いてみましょう。

②2019リミックス盤(197g)
 Sさん:楽しみですね。豪華本目当てでスーパー・デラックス・エディションを買ったんですが、本当はアナログで一度聴いておきたかったんです。
 私:ご希望に添えてよかったです(笑) どうですか、この音?
 Sさん:リミックスで色んな音が入ってますね。ベースの音もギターの音もさっき聴いたオリジナル盤とは違います。ドラムの音はあまり好きになれません。音の強さが一定すぎるというか、もっと強弱が欲しかったです。何て言うか、音のレベルがもうちょっとここで上がってほしいというところで止まってる感じ。さっきのUK最初期盤の太いベースを聴くと余計にそう思っちゃいます。
 私:実はそれを狙ってこの2枚を持ってきたんですよ。性格悪いでしょ?(笑) A③「Maxwell's Silver Hammer」のハンマーの音なんて全然ちゃいますしね。
 Sさん:そうそう、さっき聴いたハンマー音の方が遥かに本物っぽかったです。
 私:A⑤「Octopus's Garden」なんかも別物に聞こえますね。それが良いか悪いかは別にして。
 Sさん:A⑥「I Want You」のギター・アルペジオの音も明らかに違います。
 私:ホワイト・ノイズの再現は難しいですね。あの混然一体感はやっぱり無理なんかな...
 Sさん:でも私はこれを聴いて逆にホッとしたというのが正直なところです。もしオリジナルを超えるような音やったらどうしようかと思ってましてん。
 私:なるほど、確かにそうですね。ニュー・リミックスが簡単にオリジナルの音を超えるようではオリジナル盤蒐集なんてアホらしくてやってられませんもんね。
 Sさん:でも曲がシンプルなB②「Because」は中々エエですね。
 私:ただ、B④「Sun King」の虫の音が作りモノっぽいのがちょっと...
 Sさん:そうそう、それ今言おうと思ってたんです(笑)
 私:デジタル処理するとそうなっちゃうんでしょうね。やっぱりオリジナル盤の方が音が自然でエエですわ。
 Sさん: 全く同感です。まぁこれはこれで面白いですけど。
 私:ですよね。B⑩「The End」でギター・ソロの定位をメンバー毎にそれぞれ変えているのには笑えました。
 Sさん:芸が細かい!
 私:でも今回のように新しいリミックス盤が出て、それをあーでもないこーでもないと言いながらこうやってワイワイ楽しめるだけでシアワセやと思いますよ、ビートルズ・ファンは。他のアーティストではちょっと考えられませんもんね。
 Sさん:はい、めっちゃシアワセです(笑)
 私:来年に控える「Let It Be」も凄いことになりそうでワクワクしますね(^.^)

「Abbey Road」の “1H” 盤ゲット\(^o^)/

2019-10-09 | The Beatles
 前回の「Abbey Road」聴き比べではOZブラッド・ステイン・カヴァー盤が文句なしの№1で、肝心のUK盤は Left AppleカヴァーにもかかわらずOZ盤はおろかノルウェー盤やNZ盤の後塵を拝するという有様。ただ、その時思ったのはUKマザーでプレス枚数の思い切り少ない豪州/北欧盤の超初期プレスとUKのスタンパー3桁盤を比べるのはフェアじゃないのではないかということ。例えるなら、新品エンジンの車と数レース走った後の中古エンジンの車でレースをするようなもの。そういうワケで、その日は “どっかにUK「Abbey Road」のスタンパー1桁盤売ってへんかなぁ...” と思いながら帰途に就いた。
 家に帰ってひとっ風呂浴び、気分をリフレッシュさせてからいつものようにパソコンを立ち上げてレコード検索を開始。しかしいくら探してみても「Abbey Road」の1G盤など出てこない。まぁ当然と言えば当然か。そこで試しに「Abbey Road / スタンパー」でググってみたところ、そのほとんどが3桁の盤で、たまに片面1桁の盤があっても裏面がマザー5でスタンパー3桁とか、そういう中途半端な盤ばかりだ。その時ふと “1Gに限定せずに 1Rや1Aなど、もうちょっと検索の幅を広げてみたらどうやろ?” と思い立った。Sさんも仰っていたが、2桁のブツでもかなりレアなのだ。両面1Gに拘っていてはいつ手に入るか分かったものではない。スタンパー1桁の盤が手に入れば御の字と考えるべきだろう。
 と言うわけで、1G ⇒1R⇒1A⇒1M⇒1O⇒1Pと順に検索していったところ(←他にすることないんか...)、ラッキーなことに“1H” 盤が1枚ヒット。やったー!と小躍りしながら商品説明を見ると、A面 1H / B面 2GL で盤質はNMとのこと。B面の2桁もGL、つまり12番目ということだからほとんど1桁みたいなモンである。何よりも手持ちの3桁盤(3MPG/5APM)とは雲泥の差だ。コレはいただき!とばかりに速攻でオファーしたところ、すんなりOKが出てその場で交渉成立。時計を見ると夜中の3時半で、“スタンパー1桁のUK盤が欲しいなぁ...” と言ってB-SELSを出てからまだ7時間しか経っていなかった。
 それから8日後、ちょうど3連休の最終日で家でゴロゴロしていた私の元にレコードが届いた。盤もジャケットも説明通りピッカピカだし、もちろんマザー/スタンパーも説明通りの 1H/2GLだ。私は一体どんな音がするのだろうとワクワクドキドキしながらレコードに針を落とした。
 スピーカーから出てきたのは実に自然な、それでいてスケールの大きい雄大なサウンドで、音質を云々するのがアホらしくなるくらいの豊饒な音世界がリスニングルームに現れた。大袈裟ではなく、「Abbey Road」の豊かな音楽性をこれほど見事に表現するレコードを私は他に知らない。盤は無傷だが音溝に入り込んだ細かいゴミが少しチリチリいっていたのでいつものようにコニシのボンドでクリーニングしたところ、ほぼノイズレスでの「Abbey Road」再生が可能になり大喜び(^o^)丿 それにしても同じマトなのにスタンパー1桁と3桁でこれほどの違いが出るとは思わなんだ。やっぱりアナログ・オーディオは奥が深い。とにかくこれは現チャンピオンのOZ盤に勝るとも劣らない素晴らしい音質だ。これは是非ともSさんにも聴いてもらわねばと思い、届いたばかりの2019ニュー・リミックスLPと一緒にB-SELSに持ち込んだ。果たしてSさんはどんな反応を示されるだろうか... (つづく)

「Abbey Road」各国盤バトルロイヤル③ ~UKマザー頂上対決~

2019-10-03 | The Beatles
「Abbey Road」の最終回もすべてUKマザー盤で、前回の北欧編に負けず劣らずの高音質対決になりました。

⑦オーストラリア盤(2/1, 119g)
 Sさん:これもマト-2/-1 のUKマザーですね。
 私:はい、最初期プレスといわれるブラッド・ステイン・カヴァーのヤツです。
 Sさん:これはまた力強い音ですねぇ... さすが最初期プレスだけのことはありますね。
 私:めっちゃエエでしょ? 音がすごく立体的なんですよね。特にバスドラが強烈なんです。
 Sさん:感動的ですね。とてもダイナミックです。A④「Oh Darling!」のベースが凄いですね。
 私:そうなんです。ベースの下の方の音までよう出てますよね。
 Sさん:ピアノの音もかなり高い音まで出てますね。他の盤ではここまで出てなかったと思います。
 私:音のコントラストがハッキリしてますよね。A⑤「Octopus's Garden」でドラムに耳がいく盤なんて他に思いつきません。
 Sさん:ギター・ソロの音色もすごく良いです。ノルウェー盤の独自の音とUK盤の王道をいく音の両方の良いところを取って、しかもこれだけ力強い。DK盤も含めて、これまで聴いてきた高音質盤の更に上をいってるなぁと思います。
 私:プレスが若くて盤質が良くて、そこにOZ独自の何かが加わってこれだけの音になってるんでしょうね。いやぁ、やっぱりアナログは奥が深いです。B①「Here Comes The Sun」も絶品ですね。
 Sさん:B②「Because」も素晴らしい。これ、最強の「Because」じゃないですか?
 私:まさに圧巻のメドレーですよ。最後のB⑩「The End」なんて、ドラムは近いしギターの音は飛び出してくるしで圧倒されます。
 Sさん:(ハァ~とため息をついて)凄いですね、コレは。元のマザー自体が良かったんでしょうけど、ビニールの材質とかも良いんでしょうね。

⑧ニュージーランド盤(2/1, 160g)
 Sさん:こいつもメリハリありますね。
 私: いやぁ~、オセアニアは2枚ともめっちゃレベル高いですよ。演奏がタイトです。
 Sさん:音的にはUKですけど、迫力ありますね。
 私:UKマザーの「Abbey Road」にハズレ無しですね。
 Sさん:もちろんA面も良いんですが、B面の方がもっと良いですね。音がよく伸びてます。
 私:B②「Because」なんか効果テキメンですね。B④「Sun King」もそう。
 Sさん:B面の方が音の層が厚いような気がします。
 私:特に高音がよく伸びているのでサラウンド効果というか、何か包み込まれるような感じですね。音に温かみがあります。
 Sさん:そうそう、その温かみのある音の個性がB面の曲とマッチしてるんでしょうね。素晴らしいレコードやと思います。

⑨UK盤(2/1, 143g)
 私:う~ん、これはもう耳になじんだUK盤の音そのものですね(笑) 残念ながらスタンパーは3桁(3MPG/5APM)ですけど。
 Sさん:十分良い音ですよ。
 私: 初版と言われる Left Apple でも3桁ですからね。いかに爆発的に売れたかがよく分かります。私が見たことあるのは3桁の盤ばかりなんですけど、「Abbey Road」のスタンパー1桁盤って今までに見やはったことあります?
 Sさん:記憶にないですね。
 私:お店に2桁の盤がありますけど、あれでもかなりレアでしょうね。
 Sさん:UK盤のA②「Something」のドラムはいつ聴いても凄いですね。A④「Oh Darling!」の切れ味もさすがです。
 私:まさに王道の音ですね。
 Sさん:でもA⑤「Octopus's Garden」のギター・ソロの音の伸びはNZ盤の方が良かったように思います。
 私:UK盤の名誉のためにもスタンパー1桁の盤を聴いてみたくなってきますね。滅多に市場には出てこないでしょうけど...
 Sさん:頑張ってください(笑)
 私:さっき聴いたOZ盤やNZ盤と比べて他に違いはというと...
 Sさん:NZ盤に比べると、UK盤は全体的にイマイチ音の伸びが足りないように思いますね。
 私:確かに、あの温かく包み込むような感じはないですね。
 Sさん:それと、音の迫力ではOZ盤が頭一つ抜けてますね。
 私:私もそう思います。これまで聴いた中ではOZ盤が文句なしの№1でしょう。審査員特別賞はノルウェー盤とNZ盤にあげたいですね。
 Sさん:同感です。
 私:いつかUKのスタンパー1桁盤を聴いてみたいですわ。