shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles Anthology 2 (Disc 1-Pt. 1)

2009-10-16 | The Beatles
 「アンソロジー Vol. 2」はVol. 1 の大ヒットを受け、満を持して登場した。時期的にはアルバム「ヘルプ」から「マジカル・ミステリー・ツアー」までと、中期の最も充実したスタジオ・ワークの時代なので面白味という点ではシリーズ3作の中でも一番だ。今日は Disc-1 の前半ということで、ちょうど “ポップ・アイドル” から “スタジオ・アーティスト” へと変貌を遂げるB4の急激な進化の過程がディスクに克明に刻まれていて非常に興味をそそられる。
 新曲第2弾の①以降は、いきなり名曲②「イエス・イット・イズ」のテイク2が登場、ジョンのガイド・ヴォーカルは実に気だるい感じで歌詞もムニャムニャしてるところがあるのだが、このようにテキトーに流していてもジョンの歌声(一抹の翳りを感じませんか?)には凡百のシンガーが束になっても敵わない吸引力があることを逆説的に証明してしまうという、ある意味凄いトラックだ。③「アイム・ダウン」はまだまだ発展途上のテイク1ながらポールのロックンロール魂が炸裂、自由奔放に吼えまくっている。「ヘイ・ブルドッグ」の伏線はここにあったんか...(笑)
 ④「ユーヴ・ガット・トゥ・ハイド・ユア・ラヴ・アウェイ」ではジョンの “ワン トゥ スリー、ワン トゥ スリー” というカウント(←コレがまたカッコエエのよね...)で始めたものの一旦演奏が中断し、その後グラスが割れる音がして、ジョンが “ポールがグラスを割っちゃって...” と早口言葉で即座に反応するところが面白く、その後すぐにテイク5が繋いであってその編集があまりにもスムーズなので、あたかもこれで1つのテイクであるかのように楽しめてしまう。リンゴが歌う未発表曲⑤「イフ・ユー・ガット・トラブル」は当時の他の楽曲のレベルを考えればまぁボツになってもしゃあないか、と思うような “可もなし不可もなし” 曲。同じ未発表曲でもポールが歌う⑥「ザット・ミーンズ・ア・ロット」は「ティケット・トゥ・ライド」を裏返しにしたような面白いナンバーで、サイケを意識したホリーズあたりが歌えばハマりそうだが、あまりビートルズらしくないからか、結局採用されなかった。個人的には結構好きなトラックだ(^.^) 
 大名曲⑦「イエスタデイ」のテイク1ではアタマの部分でポールがコード進行について少し喋ってからアコギ1本で淡々と歌う、ストリングス抜きのレア・ヴァージョン。2nd ヴァースで “There's a shadow hanging over me” と “I'm not half the man I used to be” の出てくる順番が逆(←意外と新鮮です)な以外はまだテイク1の段階なのにアレンジがほぼ完成しているところが凄い(゜o゜) ⑧「イッツ・オンリー・ラヴ」はテイク2で、世に出ている公式ヴァージョンよりもアップ・テンポで躍動感に溢れており、ジョンの声も生き生きしていて私はこっちの方が断然好きだ。⑨~⑫はTV番組 “ブラックプール・ナイト・アウト” の、そして⑬は例のシェア・スタジアム公演の中でコンサート・フィルムにも収められていなかったレアなライブ音源だが、中でも⑪「イエスタデイ」の曲紹介をするジョージが “それではリヴァプールからやってきたポール・マッカートニーさん、張り切ってどうぞ!(Opportunity knocks!)” とからかい、曲が終わると今度はジョンが “ありがとう、リンゴ。素晴らしかったよ!” だと...(笑) こういうユーモアのセンスもビートルズの大きな魅力なのだ。それにしてもこの頃はみんなホンマに仲良かったなぁ...(^.^)

The Beatles Yesterday - from the Anthology

The Beatles Anthology 1 (Disc 2)

2009-10-15 | The Beatles
 アンソロジー1・Disc-2 の前半は、 “安い席の方は手拍子を、貴賓席の方は宝石をジャラジャラ鳴らして下さい” というジョンの名MCで有名なロイヤル・コマンド・パフォーマンス①②③、イギリスのコメディ番組出演時のライブ④⑤、エド・サリヴァン・ショー出演時の⑨、 “アラウンド・ザ・ビートルズ” というTV特番の口パク用レコーディング⑬~⑯のようなライブ音源が中心だが、やはり一番興味を引かれるのは⑧⑩⑪⑫といったスタジオ・アウトテイクスの数々だ。
 ⑧「キャント・バイ・ミー・ラヴ」は完成ヴァージョンには無いコーラス・パートがあったり、ポールが “バンバンドゥビドゥビ~♪” とスキャットをブチかましたり(1分42秒あたり)と、実に面白い。⑩「ユー・キャント・ドゥー・ザット」は何と言ってもジョンのカウント “ア ワン トゥ スリー ファワ!!!” の “ファワ!!!” に込められた気合いが凄まじい。単なるガイド・ヴォーカルの音入れでありながらマジで歌っているのがわかる。これは強烈だ。⑪「アンド・アイ・ラヴ・ハー」は我々の知っている完成形とはかなり雰囲気の違うヘヴィーな初期ヴァージョンで、このあたりの違いを楽しめるのは「アンソロジー」ならではだ。⑫「ア・ハード・デイズ・ナイト」はまだジョージ・マーティンが弾く中間部のピアノのないテイク1で、ポールが歌詞を忘れたりエンディングで笑い声が聞こえたりとかなりラフなヴァージョンだが、曲の骨格はほぼ完成されている。
 後半も興味をそそるトラックが目白押しだ。「アイル・ビー・バック」は⑰3/4拍子ワルツ・ヴァージョンのテイク2(途中で終わってしまう...)と⑱4/4拍子・ヴァージョンのテイク3(コレはフェイド・アウトする)が連続収録されているが、いかに彼らが色々なアイデアを試しながら曲を完成させていったのかの一端が窺える。「ノー・リプライ」は元々ジョンがトミー・クイックリーという歌手のために書いた曲で、そのデモ・テイクが⑳とその数ヶ月後にレコーディングしたテイク2 (23)が収録されているが、これも「アイル・ビー・バック」みたいに連続収録してほしかったところ。どちらもかなりラフな演奏で、笑いながら歌ったりアドリブでツッコミを入れたりしているが、それでもグイグイ惹き込まれるグルーヴはビートルズならではだ。(21)「ミスター・ムーンライト」はすでにハンブルグ時代から演奏していた曲だが、間奏で公式ヴァージョンに入っているオルガンの代わりにジョージのひしゃげた感じのギター・ソロが聴けるのが面白い。
 そしてこのDisc-2 で私が最も好きなのが(24)(25)と連続収録された「エイト・デイズ・ア・ウイーク」で、 “ウ~♪” というコーラスで始まるイントロのアレンジが実に斬新で気持ちいい(^.^) この(24)「シークエンス」には他にも完成形とはかなり違う箇所が一杯あって実に面白い。コーラス・ハーモニーで終わるエンディングが新鮮なコンプリート・ヴァージョン(25)も含め、彼らの制作過程の一部が垣間見れてめっちゃ感動的だ。これを聴いた後で「フォー・セール」のマスター・ヴァージョンを聴くと面白さが倍増する。これこそまさに「アンソロジー」の一番オイシイ楽しみ方だと思う。

The Beatles--Eight Days a Week [Anthology Version]
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The Beatles Anthology 1 (Disc 1)

2009-10-14 | The Beatles
 ビートルズのアンソロジー・シリーズのアルバムは1995年から96年にかけて、CD2枚組(アナログLPは3枚組)でVol. 1~3 までの3回に分けて発売された。神聖なビートルズの舞台裏というかNG集を衆目の下に晒すような行為は許せんと憤る人たちも多かったが、本邦初公開の貴重な音源やそれまではブートレッグのプアーな音で聴くしかなかった膨大な量の音源が晴れてオフィシャルにリリースされるということで私は大喜びした。例えるならポールの「アンプラグド」のサブタイトルじゃないが “公式海賊盤” である。だからこの3部作を “作品” として聴いてもまったく意味がない。これはオリジナル・アルバムをかなり聴き込んだベテランのファンが最後に到達する桃源郷であり、マニアが貴重な資料集として時々取り出して聴くために存在する “超高音質ブートレッグ” みたいなものだと思っている。
 このVol. 1 にはデビュー前のめちゃくちゃ貴重な音源(クウォリーメン自主制作SP盤なんて凄いのがある!)から「フォー・セール」あたりまでの音源で構成されている。先日取り上げた新曲①以降は時系列に沿って並べられており、Disc-1 の前半ではインタビューを除けば58年のクウォリーメンのSP音源③④、60年にポールの自宅で録音されたリハーサル・テイク⑥⑦⑧、トニー・シェリダンのバック・バンド当時の録音⑩⑪⑫、デッカ・オーディション⑮⑯⑰⑱⑲、そしてアビー・ロード・スタジオでの初録音(21)(22)と、リンゴ加入以前のビートルズの変遷が分かるように編集されている。このあたりまではどちらかと言うと歴史的意義というか資料的価値のあるトラックであり、何度も繰り返し聴くようなものではないが、③④なんかSP盤特有のノイズの向こうからビート小僧(!)時代の彼らの熱気みたいなものが伝わってくるし、何よりも嬉しかったのは大好きなビートルズ版「ベッサメ」の新ヴァージョン発掘だった。この曲は以前特集した時にも書いたように音の悪い「スター・クラブ・ライブ」での “火の出るようなロックンロール・ヴァージョン” が最高と信じているのだが、ここに収録されているのはアビー・ロード・スタジオでの初レコーディング時のもので、演奏のノリの凄まじさでは「スター・クラブ・ライブ」に譲るものの、抜群に良い音で彼らの「ベッサメ」が聴けるのだ。これはもうラッキーラララである。
 Disc-1 の後半は62年9月に行われた2回のシングル用レコーディングから(23)(24)、イギリスのラジオやテレビに出演した時の音源(27)(28)、初の海外ツアーであるスカンジナビア・ツアー時のライブ音源(30)~(34)などが収められているが、私が一番気に入ったのが「ワン・アフター・909」の初期ヴァージョン(25)(26)であり、6年後のアルバム「レット・イット・ビー」収録の公式ヴァージョンよりもスロー・テンポで、荒削りながら泥臭いグルーヴを生み出すアーシーな歌と演奏がめちゃくちゃカッコエエのだ。特に興味深かったのは、フェイドインから始まりノッてきたところでポールがミスり(←自分のピックを持ってくるの忘れて弾きにくいらしい...)ジョンが “何やってんだよ!”と中断し、再開したものの今度はジョージがソロに入るタイミングを間違えてまたまた中断するという録音現場の生々しい空気を伝える(25)「シークエンス」とそのコンプリート・ヴァージョン(26)が続けて収められていた点だ。再開後のポールのベース・ラインの微妙な変化にもご注目(耳かな?)。私的にはコレがDisc-1 のハイライトだった。「ビートルズ・アンソロジー」... ファンにとってはまさにお宝音源満載のアルバム・シリーズだ(^o^)丿

The Beatles Anthology One after 909 (Flase Starts)...
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Real Love / The Beatles

2009-10-13 | The Beatles
 ビートルズのアンソロジー・プロジェクトで「フリー・アズ・ア・バード」に続く新曲(?)第2弾としてリリースされたのがこの「リアル・ラヴ」である。曲そのものは既に1988年の「イマジン・サウンドトラック」で世に出ていたこともあって?な部分もあったが、元になったテイクも違うし(「イマジン・サントラ」はテイク6なのに対しこちらはテイク1)、「フリー・アズ・ア・バード」の時と同様、リンゴのドラムが生み出すグルーヴがこの曲にまごうことなきザ・ビートルズの刻印をしっかりと刻み込む。間奏のジョージのギター・ソロも涙ちょちょぎれる素晴らしさだ。テープのピッチを上げ、キーも変えてある(←デモ・テープのテンポのヨレを隠すためという説あり)ようなのでジョンの声が少し甲高く聞こえる(「アクロス・ザ・ユニヴァース」の “バード・ヴァージョン” みたいな感じ)が、ビートルズ中期以降ジョンは自分の声を加工するのが好きだったので特に違和感はない。ポールがインタビューで “この曲は「フリー...」と違って既に歌詞も曲も完成していたので付け加える部分がなく、ビートルズというよりジョンのサイドメンみたいな感じだったので「フリー...」ほどは楽しめなかった、良い出来だとは思うけどね...” と言っていたが、確かに「フリー...」での見事な仕事ぶりを考えれば今回はあまり目立ってないし、アレンジもジェフ・リン色が濃いように思う。
 曲としては「フリー...」よりもポップな感じで私はこっちの方が好きだ。いかにもジョンらしい優しさ溢れる美しい旋律を持った曲で、雰囲気としては「イマジン」あたりに入っていてもすんなり聴けそうなのだが、実際は1979年に録音されたピアノによる弾き語りのホーム・レコーディング・テープが元になっているという。どちらかと言えばシングル向きというよりもむしろB面2曲目あたりにひっそりと収まっていそうな(←あかん、どーしてもアナログLP的な発想が抜けへん...)、ファンが目を細めて聴き入る隠れ名曲だと思う。
 そして今回もまたビデオ・クリップが感涙モノで、ジョンの白いピアノが上空へと昇っていく映像で始まるところがイントロにコワイくらいに合っててゾクゾクするし、ペパーズの衣装やMBE勲章、彼らの楽器、それにアルバムが天空高く昇っていく映像とそれを見上げる人々(←ルーフトップ・コンサートの時の映像を実に巧く使ってます!)のシーンでは “ビートルズが天に帰っていく” ようで、 “これで本当に最後の最後なんやなぁ...” という想いに感極まり、そこにかぶさるように流れてくるジョージ渾身のギター・ソロも相まって何度見ても目頭が熱くなる。更に、和気あいあいとした雰囲気で楽しそうにこの曲をレコーディングする3人の姿や、若かりし頃のB4の映像(←3分28秒のジョンの “あい~ん” 顔なんかもう最高!)が随所に挟まれていたりするのもファンには堪らない。超高速フラッシュバックを用いたエンディングの処理なんかもう鳥肌モノだ。個人的にはポールとジョージがハグするシーン(3分20秒のあたり)が見れたのが何よりも嬉しかった。

The Beatles - Real Love [HD]

Free As A Bird / The Beatles

2009-10-12 | The Beatles
 ビートルズのアンソロジー・プロジェクトは20世紀を締めくくる一大イベントだった。60年代にポピュラー・ミュージックの歴史を変えただけでなく、世界中の若者の思想や生活スタイルにまで大きな影響を与えた20世紀最高のロック・グループの音楽的な遺産をしっかりとした形で後世に遺そうという壮大なプロジェクトである。その当時の私は、90年代に入って以降のアメリカン・チャートのつまらなさに辟易して完全に洋楽ロック/ポップスとは絶縁状態にあったのだが、もちろんビートルズだけは別格で、アンソロジーの話を知った時はビックリするやら嬉しいやら(^o^)丿 ニュース・ステーションでの特集や大晦日の特番なんか大コーフンしながら見たものだった。
 このアンソロジー・プロジェクト、アルバムだけでなくドキュメンタリー・ビデオや大型本なども相次いでリリースされるなど大いに盛り上がったのだが、そんな中で一番の目玉は何といっても “ビートルズ25年ぶりの新曲” として話題騒然となった「フリー・アズ・ア・バード」だった。厳密にはジョンの未発表デモ・テープに3人が後から音を被せてモディファイしていったリメイク作品なので “新曲” という表現は看板に偽りありかもしれないが、イントロのリンゴのドラムの一打でそんな戯言は吹き飛んでしまう。これはまさしく我々が愛したビートルズのサウンドだ。ジョージのギターも鳥肌モノだし、ポールとジョージのコーラスは一瞬にしてあの時代へとトリップさせてくれる。何よりもジョンのベーシック・トラックにポールが付け加えたBメロが曲全体をビシッと引き締めているのが素晴らしい。まるで「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」や「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を想わせるようなレノン=マッカートニーの復活に涙ちょちょぎれる。ポール、相変わらずエエ仕事してるなぁ...(^.^) 
 インタビューの中で “ジョンが昼食か茶を飲みに行き席を外してると思うことにした” とリンゴが語っていたのが印象的だったが、それに輪をかけて感動したのがビデオ・クリップだ。自由に羽ばたく鳥の目線でビートルズゆかりの地を巡るこのビデオ、キャヴァーン・クラブ、ストロベリー・フィールズ、ペニー・レインの花売り娘、バースデーのケーキ、アップル・オフィスに入っていくジョージ、ア・デイ・イン・ザ・ライフに出てくる車の事故、ミスター・カイト、ピッギーズのブタの仮面、ペイパーバック・ライターの部屋でTV画面に映るビートルズの横で寛ぐジョン、ブルー・ミーニーズ、毛沢東の絵、ミステリー・ツアー・バス、シタールとインド象、ペパーズのドラム、マリア像(マザー・メアリー)、エリナー・リグビーの墓とマッケンジー神父、ポールの愛犬マーサ、丘の上の愚か者と曲がりくねった道、そしてアビー・ロードと、他にも数え上げればキリがないぐらいにビートルズ絡みの映像が盛り込まれており、それらが音楽と見事にマッチしていてファンなら涙なくしては見れない感動モノの作品に仕上がっている。
 プロデュースは「クラウド・ナイン」でジョージの復活に尽力し、トラベリング・ウィルベリーズでもジョージと共演した ELO のリーダージェフ・リン。 “自宅のレコード棚にはビートルズとバルトークのレコードしかない” といわれるほどのコアなビートルズ・ファンであるジェフはこの話をもらった時は天にも昇る気持ちだったろうが、「クラウド・ナイン」の時と同じように3人のビートルからビートリィなエッセンスを実に巧く引き出しており、この曲の成功に大いに貢献している。それはこの後ポールが「フレイミング・パイ」のプロデュースを依頼したことでも明らかだ。それにしてもジェフ・リンは世界一幸せなビートルマニアやなぁ... (≧▽≦)

Free as a bird / The Beatles

Let It Be... Naked / The Beatles

2009-10-11 | The Beatles
 「レット・イット・ビー・ネイキッド」は色んな意味で賛否両論渦巻いたアルバムで、ひとつは音楽以前の問題としてのCCCD 論争、もう一つはスペクター版「レット・イット・ビー」との真贋論争だった。まぁCCCDはコースター代わりにするしか用途のないゴミなので、アホらしくて論争・糾弾するにも値しない。US盤かEU盤(CDとCCCDの2種類が出回ってるので要注意!)を買えばいいだけの話であり、ただでさえ売れなくなってきているCDにアホバカ・レコード会社自らの手でトドメを刺すような愚行にすぎない。問題はスペクター版と比較してどー違うのか、我々ファンの興味はその一点に尽きるだろう。
 前評判として “ネイキッド” 、つまり “裸のレット・イット・ビー” “ありのままのザ・ビートルズ” などという言葉が独り歩きし、私なんかスペクターが過剰な装飾を施す前の、あの幻のアルバム “ゲット・バック” をデジタル・リマスターしてリリースするものだとばかり思っていた。しかし届いた盤を聴いてみるとブートレッグで聴いてきたグリン・ジョンズ版「ゲット・バック」と明らかに違う。最初はワケが分からなかったが、少なくとも色々と編集してあるのは私の駄耳でもわかる。そこで私は様々な事前情報や先入観を捨て去り、1枚のビートルズのアルバムとして聴いてみることにした。
 まず何と言っても音がクリアだ。どの曲もそれこそ耳にタコができるぐらい聴き込んだものばかりだが、これまで聴いてきた中で一番クッキリ聞こえ、生々しい。少し離れた所で歌っていたビートルズがまるで眼前で歌っているかのような錯覚を覚えるトラックすらある。更に今まで聞こえなかった音まで聞こえるというのも嬉しい。どちらかというと「イエロー・サブマリン・ソングトラック」の感覚に近い、21世紀版リミックスという趣きの音で、例えるならニンニク卵黄のテレビCMに出てくる筋骨隆々のおじいさんみたいな感じなのだ。顔は老人なのに身体はムキムキというアレである。更にテクノロジーを駆使して違うテイクの良い所だけをくっつけて1つの曲を作ってあるトラックもあるらしい。だから発売当時には期待が大きかった分、 “偽物だ!” と糾弾する論調も多く見られた。まぁ確かにこれは “作り物” だが、実によくできた良い意味での “作り物” であり、私は基本的には楽しく聴いている。
 ①「ゲット・バック」はシングル・ヴァージョンのフェイド・イン風イントロではなく、いきなりアクセル全開といった感じのパワフルな演奏が楽しめる。エコーが取り除かれてクッキリしたヴォーカルとシャープでタイトなバンド・サウンドが一体となって実に気持のいいドライヴ感を生んでいる。ただ、エンディングをスパッと切り落とす編集には何度聴いても違和感を覚えてしまう。尻切れトンボとはまさにこのことだ。②「ディグ・ア・ポニー」は細部の音までクリアに聞こえるようになったのはいいが、曲のアタマのカウントやエンディングの会話がカットされていてイマイチ雰囲気が楽しめないのが難点。③「フォー・ユー・ブルー」はネイキッド効果テキメンのトラックで、スペクター版では全体的に何かフニャフニャした感じのサウンドだったものがこのネイキッド版では実にシャキッとしたロック・スピリット溢れる演奏に聞こえるのだ。私は絶対こっちの方がいい(^o^)丿
 スペクター版「レット・イット・ビー」の中でも特に問題となった④「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は甘ったるいストリングスもコーラスもすべて排除したヴァージョン(音源そのものもスペクター版とは違って映画のテイクを採用)で、過剰な装飾が取り除かれた分、シンプルな美しさを湛えるトラックになっており、これを聴けばポールの意図したサウンドがよく分かる。私はこっちの方が好きだ。⑤「トゥー・オブ・アス」はスペクター版と同じテイクながら音がクリアーになった分、より臨場感あふれる演奏が楽しめてエエのだが、またしてもアタマの “I dig a pigmy...” がカットされており、私なんかこれがないと「トゥー・オブ・アス」を聴いた気がしない。⑥「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」はハイテクを駆使してルーフトップで演奏された2つのヴァージョンの良い所だけを合体させたというメカゴジラ・ヴァージョン(笑)で、ピューリタン的なビートルズ信者が頭から湯気を立てて怒り出しそうな複雑な編集が施されている。確かに今まで聴いてきた同曲とはかなり印象が違う迫力満点な仕上がりで、私はあれこれ深く考えずに “新しいヴァージョン” として楽しんでいる。⑦「ワン・アフター・909」もヴォーカルが近くなり、迫力・臨場感・疾走感が軒並みアップとエエことだらけなのだが、唯一惜しいのがエンディングの“オ~ ダニィボ~イ♪” がカットされたこと。リミックスの音作りとしてはホンマにエエ仕事してると思うのだが、このアルバムにはこういう無神経な編集が多すぎるように思う。それともオーケストラやコーラスだけでは飽き足らずにスペクター的な痕跡をすべて消し去りたかったのだろうか?
 ⑧「ドント・レット・ミー・ダウン」はオリジナル・アルバム未収録だったもので、比較対象はシングル・ヴァージョンになるが、当然ながらこっちの方がパワフルで生々しく響く。特にヴォーカルの押し出し感が凄まじい。⑨「アイ・ミー・マイン」はオーケストラを排して大正解、こっちの方が断然ロックしていて気持ちいい(^.^) ⑩「アクロス・ザ・ユニヴァース」は数種類のヴァージョンが存在する悩ましいナンバーで、聴く人の好みによって意見が大きく分かれそうなぐらいそれぞれ特徴あるプロデュースが施されている。このアルバムではテープの回転速度を正常に戻し、オーケストラやコーラスを消してあって “これぞネイキッド!” と大喜びしたのもつかの間、3分10秒を過ぎたあたりから不自然なくらいに深~いリヴァーヴがかけられていてエンディングなんかもう気持ち悪いったらありゃしない!何というムゴイことを...(>_<) せっかくの名曲名演が台無しだ。⑪「レット・イット・ビー」は⑥と並ぶ複雑怪奇なヴァージョンで、どこをどうツギハギしてあるのかわからないぐらいメカゴジラしている。しかしこれもまた⑥同様大正解で、巷間言わているような “美しいバラッド” ではなく、“力強いゴスペル” として激しく胸を打つ。特にコーラスなんかゾクゾクするほどのリアリティーだし、ジョージのギター・ソロの音も大きくなっていて、これまでに聴いてきたどのテイクとも明らかに違う “21世紀ヴァージョン” になっている。
 アルバム「レット・イット・ビー」の時にも書いたが、結局どれが本物でどれが偽物だなんて言ってみても始まらない。要は人それぞれ、自分が好きなヴァージョンで楽しめばいいだけの話だし、たとえどんな風に加工されようとも歌い演奏しているのは他ならぬビートルズなのだ。出来が悪いワケがない。むしろこんなに色んなヴァージョンが楽しめて、しかもあーでもないこーでもないと議論できること自体、ファンとして何と恵まれているのだろうと思う。他のアーティストでは絶対にあり得ないことだ。やっぱりビートルズは凄いなぁ...

FOR YOU BLUE FROM LET IT BE NAKED (STEREO)

Rock 'n' Roll Music / The Beatles

2009-10-10 | The Beatles
 今日は仕事の関係で神戸へ行ってきた。 LP でも CD でも簡単にネットで手に入るようになってからというもの、以前のようにレコ屋を廻るということをしなくなってしまったが、せっかくこんな遠くまで来たんだからと、仕事を済ませたついでに三宮・元町周辺のお店をいくつか廻ることにした。
 神戸のレコ屋といえば何をおいてもまず元町の「ハックルベリー」である。ここはロック、ポップス、ジャズ、オールディーズ、フレンチ、ソウル、ブルース、サントラ、歌謡曲と実に幅広いジャンルを扱っており、それほど広いとは言えない店内に CD、LP、10インチ、シングル、DVD、音楽関係書籍etc が所狭しと並べられている。最近はネット・オークションの普及で中古CD・レコード屋は仕入れそのものが難しくなっており、どこのお店に行っても似たようなブツしか置いてなくて余計に足が遠のくという悪循環なのだが、このお店だけは一体どういうルートで仕入れしているのか、他の店に置いてないようなレア盤が結構多い。私の知る限り、大阪京都神戸のレコ屋の中で掘り出し物に出会う確率が最も高い店なのだ。
 今日のメイン・ターゲットはもちろんビートルズで、さすがにCDとDVDはほとんどが持ってる盤だったが(←いちいち値付けをチェックして自分が買った時の値段と比べてしまう己のセコさが情けない...)、日本盤がひしめくLP棚の中に「ロックンロール・ミュージック」のUKパーロフォン盤を見つけた時はシビレた。それも3,000円という良心的な値段だ。ネットで買ったら送料だけでもバカにならない。このアルバムがリリースされた1976年というのは私が1枚ずつオリジナル・アルバムを買い揃えた頃で、曲がかぶるということもあって、ポップな感じのジャケット・デザインに惹かれながらも(←見開きの内側はマリリン・モンローやコカ・コーラ、チーズバーガー、シボレー、ジューク・ボックスなどの50'sモノが描かれた勘違いジャケやけど...)ついついメンバーのソロ作etcを優先し、このアルバムの購入を後回しにしていた。80年代に入ってメディアがLPからCDへと移行するに及んで、私はこのアルバムを完全に買いそびれてしまった。数年前に eBay でUKパーロフォン盤にハマッて買いまくった時も、この盤だけはUS盤を筆頭にイスラエル盤、アルゼンチン盤、ペルー盤etc が市場に溢れているのに何故かUK盤だけは出てこずに(←MFPレーベルからバラ売りで再発された廉価盤はよく見たけど...)諦めていた盤だった。日本盤やUS盤のジャケットは特殊な紙を使ったミラー・ジャケット(?)で、見た目はキレイなのだが擦れると悲惨なくらいのリング・ウェアーで変わり果てた姿になってしまうのに対し、UK盤は通常仕様の美しいコーティング・ジャケット。それがこんな所で見つかるとは... こんな出張やったらいつでも喜んで行くでぇ~(^o^)丿
 このアルバムはタイトル通り、ビートルズの全213曲の中から彼らの原点ともいうべき熱いロックンロール・ナンバーが28曲選ばれている。A・B面はロックのスタンダード・ナンバーのカヴァー・ヴァージョンが中心で、オリジナル・アーティストを凌駕する荒削りでパワフルな歌と演奏が楽しめる。C・D面は中期から後期にかけてのハードでラウドなオリジナル曲がメインで、4面通して一気通聴することによってビートルズ・ロックの変遷が楽しめるような編集になっている。
 ビートルズという大きな存在は色々な楽しみ方を可能にしてくれる。美しいバラッドに酔いしれるもよし、サイケなサウンドでトリップ気分を味わうもよし、器楽アレンジの妙に感心するもよし... しかし、世界を変えたビートルズの音楽の根底に流れているのは炎のようなロックンロール・スピリットなのだということをこのアルバムが如実に示している。

The Beatles - Long Tall Sally

Hey Jude / The Beatles

2009-10-09 | The Beatles
 ビートルズのアルバムは、1987年の初CD化の際に世界基準としてすべてUKオリジナル・アルバムのフォーマットに統一され、アナログLPでそれまで公式盤として売られていた日本盤やUSキャピトル盤は店頭から姿を消すことになった。私はラッキーなことに入門時からビートルズのアルバムはイギリス盤のフォーマットをベースに聴いてきたのでLPからCDへの移行にまったく違和感はなっかったが、唯一残念だったのが、長年にわたって愛聴してきたこの「ヘイ・ジュード」がカタログから消えてしまうことだった。
 このアルバムはポールが正式にビートルズ脱退を表明して1st ソロ・アルバム「マッカートニー」をリリース(4月)し、ビートルズのスワン・ソング・アルバム「レット・イット・ビー」(5月)が出された1970年の2月にアラン・クラインの指示によりキャピトル・レコードからリリースされたアメリカ編集盤で、当初はアメリカ、カナダ、そして日本のみで発売されていた。ビートルズ周辺のキナ臭い動きが活発に報じられていた時期だけあって、新曲も入っていないこのアルバムは全米2位まで上昇し、何と400万枚近くを売り上げたという。さすがは金の亡者アラン・クライン、アブクゼニの稼ぎ方は天下一品だ。
 ジャケットに写るのはアスコットにあるジョンの屋敷をバックにした4人で、これはちょうど彼らの最後のフォト・セッションで撮影されたものだ。4人の頭上のちょうど窓に当たる部分に4人の別の写真が組み込んであるところなんか凝ってて大好きだ。尚、このアルバムは上記のような理由からUSキャピトル盤がオリジナルなのだが、ハイ上がりで低音域が痩せ気味なUS盤ではなく、音のバランスが良いUK盤で聴きたい。1st プレスは英パーロフォンが国外輸出専用にプレスしたもの(CPCS-106)で、黒パーロフォン・レーベルに銀文字でEMIの1ボックス・ロゴが目印なのだが、これがもう恐ろしいくらいの鬼レア・アイテムでほとんど市場で見かけることはない。このエクスポート・イシューの2nd プレスはダーク・グリーン・アップル・レーベルで、レーベル面の2つのミス・スペリング(「Paper Back Writer」と「Revolutions」)が目印なのだが、これも軽く百ポンドを超えるプレミア価格。オークションでよく見かけるのは1973年にプレスされたライト・グリーン・アップル・レーベルの3rd プレス盤だが、安物買いの銭失いになりたくないのでどうしても二の足を踏んでしまう。因みにこのアルバムがイギリス国内向けに発売された(PCS-7184)のは何と1979年で、レーベルはEMIの2ボックス・ロゴになっている。これら4種類のUK盤にUS盤も併せて聴き比べとかできたらきっと楽しいやろうなぁ...
 このアルバムの収録曲はA面が①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」、②「アイ・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター」、③「ペイパーバック・ライター」、④「レイン」、⑤「レディ・マドンナ」、⑥「レヴォリューション」の6曲、B面は①「ヘイ・ジュード」、②「オールド・ブラウン・シュー」、③「ドント・レット・ミー・ダウン」、④「ザ・バラッド・オブ・ジョン・アンド・ヨーコ」の4曲。これは 64、66、68、69年のシングルAB面曲を何の脈絡もなくただ並べただけの、コンセプトも統一性も何もない選曲で、最初この曲目を見て “何じゃコレは?” と訝しく思ったものだった。後でわかったことだが、それまでアメリカではモノラルでしか聴けなかったA③④⑤⑥B①がフル・ステレオ・ヴァージョンで聴けるというのがキャピトルのウリで、A①②はキャピトルのアルバムには未収録だったシングル(赤ジャケの「ア・ハード・デイズ・ナイト」USサントラ盤はユナイテッド・アーティスツから出ていた...)ということらしい。とにかくアメリカ人以外には実に不可解な選曲だ(笑)。
 しかしビートルズ・ド素人だった私はそんな裏事情など知るわけもなく、 “ビートルズ最大のヒット曲「ヘイ・ジュード」をフィーチャーしたアルバム” として聴きまくった。すでにA①②③は耳にタコが出来るほど聴いていたが、それ以外は私にとっては初めて聴くいわば“新曲”だったし、「パスト・マスターズ」などまだ存在していなかったあの時代にあっては、何よりもこの盤でしか聴けない貴重な音源だったからだ。A①②は「ア・ハード・デイズ・ナイト」、A③④は「赤盤」や「リヴォルヴァー」の流れの中で聴く方がしっくりくるので、このアルバムに関してはいつも A⑤⑥→B①②③④という流れで聴くことが多かった。オリジナル・フォーマットのLPにこの盤を加えれば「ペパーズ」以降の主要な音源はすべて揃うことになるので、私の中ではこのアルバムは時系列で言うと “「ホワイト・アルバム」と「レット・イット・ビー」の間に位置する準オリジナル・アルバム” 的な位置づけだ。確かに「パスト・マスターズ」や「モノ・マスターズ」の方が収録曲も多くて合理的なのは分かるが、あの無味乾燥なジャケットでは聴く喜びも半減してしまう。やっぱり音楽はジャケットの魅力も含めてナンボ、だと思うのだが...(>_<) そういう意味でもこの「ヘイ・ジュード」は、ジャケットを見ただけで「レヴォリューション」を歌うジョンや「ヘイ・ジュード」を歌うポールの声が聞こえてくるような、私にとって思い出深い1枚なのだ。

ポールとジョージのシュビドゥワ・コーラスが好きです↓
The Beatles - Revolution

les Beatles dans leurs 14 plus grands succes

2009-10-08 | The Beatles
 早いもので 9.09 のビートルズ・リマスター盤発売から1ヶ月が過ぎようとしている。9月半ばにほんの思いつきで始めた “一人ビートルズ・マラソン” も早いもので20枚を超えた。当初は先のこともあまり深く考えず、とりあえずオリジナル・アルバム13枚いっとくか... ぐらいの軽い気持ちで始めたのだが、明日なき暴走とはよく言ったもので、ミイラ取りがミイラになってしまい、最近は寝ても覚めてもビートルズという状態が続いている。で、10月に入っても連日ビートルズ・ネタをぶちかまし、とうとう調子に乗って禁断のブートレッグ・ワールドに突入してしまった。
 そもそも音楽界広しと言えどもビートルズほど様々な角度から掘り下げ甲斐のあるアーティストはいない。UKオリジナル盤に拘る人(音の生々しさはピカイチ!)、60年代の帯付き日本盤を集める人(帯なんかに大金を払う人の気持ちがワカラン...)、ブートレッグの底無し沼にハマっていく人(この気持ちはめっちゃ分かります!)etc、様々なパターンが考えられる。このように様々な楽しみ方があるビートルズだが、もう一つの切り口として、各国盤というのがある。
 ビートルズほどの大物になると各国盤の種類もハンパではなく、UK盤の収録曲を改編したUSキャピトル盤や日本の東芝オデオン盤のように身近な存在の盤以外にも様々な国独自のジャケット・選曲で発売されており、私もジャケットに颯爽と踊るポルトガル語の面白さにつられてブラジル盤の「ア・ハード・デイズ・ハイト」を買ったことがある。そう、各国盤はレア・ジャケットが狙い目なのだ。有名なところではシェル石油のド派手な貝殻マークがご本尊のビートルズよりも目立っているオランダ盤「ヘルプ」の “シェル・カヴァー” を始め、エスキモーみたいな恰好をした4人がキュートなデンマーク盤「ホッテスト・ヒッツ」の “エスキモー・カヴァー” 、サイケ調のデザインがエエ感じのドイツ・レコード・クラブ・イシューの“バルーン・カヴァー” etc、魅力的なジャケットの盤が目白押しなのだが、中でも私が最も魅かれたのが緑の中で乗馬を楽しむビートルズの姿をフィーチャーしたフランス盤「les Beatles dans leurs 14 plus grands succes」、通称 “ホース・カヴァー” と呼ばれる逸品だ。
 私にこの盤の存在を教えて下さったのは音聴き会G3の 901 師匠で、“ビッグ・ピンク(←数年前に閉店した大阪ナンバの名店)で安かったんで買うたんやけど、ええジャケットやねぇ...」と言ってこの盤のレプリカCD(もちろんブートです) を見せて下さったのだ。そんな盤の存在すらまったく知らなかった私は、一目見てその緑の中でひときわ映えるリンゴのシャツの赤とポールのシャツのオレンジという抜群の色使い、そしてそんなポートレイトを囲む薄茶色と緑が織りなす抜群のコントラストにすっかり参ってしまった。早速ネットで調べてみると値段の方も超一流で、ブルー・オデオン・レーベルで大体 $400 ~ $500 、激レア・オレンジ・レーベルに至っては $800 を超えるという狂気の世界...(゜o゜)、あわよくばと思った私はいっぺんにテンションが下がってしまった(>_<) 
 それから約1ヶ月経ち、この盤のことをほとんど諦めかけていた時、たまたま eBay に$50 スタートのリザーヴ価格付きで出品され、どうせ無理やろうと $300 入れてみたら何とリザーヴを満たしてしまい、落札! “$300 でホンマのホンマに取れたんか?” と私は我が目を疑ったが、ウイニング・ビダー欄には私のIDが燦然と輝いていた(笑) ちょうど金パロの3回分割払いが済んだ矢先の “ホース・カヴァー” ゲットで、私は再びラマダン生活を余儀なくされたが、心はルンルン気分だった(^.^)
 数日後、届いたアルバムのジャケットを見て私はますますこのアルバムが好きになった。やっぱりオリジナルLPにはレプリカCDでは味わえない風格がある。もうジャケットを見ているだけで幸せな気分になれてしまうのだ。普通の人が絵画や美術品を購入することを考えれば(←私がそんなモン買うわきゃないが...) $300 も十分アリだと思う。
 何だか話がジャケットだけで終わりそうだが、ところがどっこい、この盤には私が予想だにしなかったもの凄いメリットがあった。一応曲目を書いておくと、A面が①「フロム・ミー・トゥ・ユー」、②「プリーズ・プリーズ・ミー」、③「シー・ラヴズ・ユー」、④「ツイスト・アンド・シャウト」、⑤「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」、⑥「アイ・ウォナ・ホールド・ユア・ハンド」、⑦「オール・マイ・ラヴィング」、B面が①「ロール・オーヴァー・ベートーベン」、②「キャント・バイ・ミー・ラヴ」、③「ア・ハード・デイズ・ナイト」、④「アイ・フィール・ファイン」、⑤「シーズ・ア・ウーマン」、⑥「エイト・デイズ・ア・ウイーク」、⑦「ロックンロール・ミュージック」の全14曲。アルバム・タイトルがワケわからんので翻訳サイトで英語に直すと「The Beatles in their 14 greater successes」と出た。何と分かり易い...(笑)... 要するに当時のヒット・シングル曲を集めたベスト盤的な選曲だ。ということは、それまで「パスト・マスターズ」の優等生的なステレオ・サウンドでしか聴けなかったオリジナル・アルバム未収録のヒット曲群A①③⑥B④⑤がド迫力のモノラル・サウンドで聴けるということなのだ(^o^)丿 これってめっちゃオイシすぎる~ (≧▽≦)

The Beatles come to town - RARE 1963 (color)
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Five Nights In A Judo Arena / The Beatles

2009-10-07 | The Beatles
 ビートルズがコンサート・ツアーをしていた頃のライブ音源は先日取り上げた公式ライブ盤「アット・ハリウッド・ボウル」を始め、ブートCD・LP、そしてDVD をも含めると膨大な数に上る。内容的にはやはりオフィシャル・レコーディングという音質面のメリットや、かっちりまとまった演奏などの点から「アット・ハリウッド・ボウル」がダントツに素晴しいと思うし、映像的に言えばヘリの空撮から始まりハイ・テンションなジョンのエルボー・グリグリ・オルガン・プレイ(笑)で終わるシェア・スタジアム・ライブがインパクト絶大だ。しかし私がこれまで耳にタコができるぐらい聴きまくり、メンバーの一挙一頭足まで覚えてしまうぐらい何度も何度も繰り返し見まくったのは、他でもない日本公演の、それも 6/30 のヴァージョン(ダーク・スーツの方)なのだ。確かにコンサート・ツアー中止直前ということもあってか演奏にイマイチ覇気が感じられないし、マイク・スタンドのセッティングもグダグダで歌の途中に振動のせいでマイクが横を向いていったりとか劣悪な条件下のライブだったが、それらをすべて差し引いても私にとっては忘れ難いステージだ。それもこれも1978年に「ザ・ビートルズ日本公演、今世紀最初で最後、たった一度の再放送!」と銘打って日本テレビで放送された時に、テレビの前に正座し、30分間ブラウン管を食い入る様に見続けて脳裏に焼きつけた映像の衝撃が強烈だったからだ。“コレが伝説の日本公演か...” 今の耳で比較すれば確かに 7/1 ヴァージョンの方が演奏はしっかりしているが(6/30はギターのチューニングを半音下げていたのでフヤケて聞こえるらしい...)、当時の私にそんなことが分かるワケがなく、とにかくめっちゃ感激した。そしてそんな6/30日本公演の模様を収めたブートレッグLPがこの「ファイヴ・ナイツ・イン・ア・ジュードー・アリーナ」であり、ジャケットの作りがめっちゃ稚拙(白いジャケットに紙貼ってるだけ、なんてサイテーなものも多かった...)な当時のブートレッグLPの中で、昨日取り上げた「スウィート・アップル・トラックス」やこのアルバムは堂々たるカラー・ジャケットの逸品で、音質も抜群だった。
 ①「ロックンロール・ミュージック」はまずこのチューニング音から始まらなければ雰囲気が出ない。そして “ジャジャジャジャ♪” と、いきなりジョンがギターをかきならしてスタートするところがカッコイイ!音を聴いているだけで、ガニ股でちょっと首を傾けながら歌うジョンの姿が目に浮かぶ。②「シーズ・ア・ウーマン」で早くもポールのマイクが反乱を起こす(笑) メンバーの中でも足でリズムを取りながら歌うポールは特に動きが激しいので余計にマイクが動いてしまうのだ。それにしてもこの曲、何度聴いてもカッコエエわ(^.^) ③「イフ・アイ・ニーディッド・サムワン」ではジョージのヴォーカルがやや不安定だがそれに負けず劣らずマイク・スタンドも不安定...(>_<) 一度気になりだすと目はマイク・スタンドにばかり向いてしまう(笑) 次の④「デイ・トリッパー」の曲紹介でマイクと格闘しながらもおどけてみせるジョン。彼の軽快なリズム・ギターといい、ポールとジョージの息の合ったバック・コーラスといい、めっちゃエエ感じだ。間を開けずに始まる⑤「ベイビーズ・イン・ブラック」は1本のマイクに向かうジョンとポールのギターが左右対称のV字になっていて、この二人のツー・ショットが見事にキマッてて美しい。間奏部分でポールがベースとワルツを踊るかのような動きをするところが好きだ。ジョージの初々しい MC で始まる⑥「アイ・フィール・ファイン」でも一番の聴き所はジョンの声にポールとジョージのコーラスが絡んでいくところ... これはもうたまらない(≧▽≦)
 コンサートは早くも後半戦に突入、これまたジョージの舌っ足らずな MC で始まる⑦「イエスタデイ」はこの MC がないと違和感を感じてしまうほど聴き狂ったものだ。もちろん弦楽四重奏をバックにしたスタジオ録音の「イエスタデイ」も素晴らしいが、ここで聴ける “ジョンのリズム・ギターをバックに歌われるロッカ・バラッド” ヴァージョンが大好きだ(^o^)丿 ⑧「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」の曲紹介でポールが “リンゴ!” と叫ぶと嬌声が上がり曲がスタート、一心不乱にドラムを叩き続けるリンゴをバックにしたジョンとポールのツー・ショットに胸キュンだ。ジョンの “コレ、シングルやったっけ?よぉワカランねんけど...” というお気楽 MC で始まる⑨「ノーウェア・マン」、3声のコーラス・ハーモニーをビシッとキメるビートルズがカッコイイ!ラスト2曲でスパートをかけるポールが “ここ日本でのニュー・シングル” と紹介して始まる⑩「ペイパーバック・ライター」、マイク・スタンドもグラグラしまくりで明らかにムカッとした動作でマイクをつかんで直す(数えてみたら1曲中に7回も!)ポールにハラハラしてしまう。考えてみれば音楽に関係のないしょーもない事なのだが、もう気になって気になって仕方がない。最後はポールがいつものように時計を指さしながらお別れの MC をして⑪「アイム・ダウン」へとなだれ込む。歌も演奏もヒート・アップ、ポールは何と10回もマイクをつかんで直しながら(←平均して13秒に1回!)この激しいロックンロールを歌い切った。いやはや何と言うか、とにかくメデタシメデタシだ。
 本当にアッという間の30分だが、私にとっては見どころ聴きどころ満載で思い入れの強いライブなのだ。欲を言えば 7/1 のステージの映像のキレイなやつ(アンソロジーでちょっとだけ見れてめっちゃ嬉しかった...)をぜひ オフィシャルDVDで出してほしいなぁ。ひょっとすると来日50周年とかいうて7年後に出るんかな?

The Beatles - Paperback Writer (Live In Japan)
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Sweet Apple Trax / The Beatles

2009-10-06 | The Beatles
 大好きなアーティストのデモ・テイクやアウトテイクを聴いてみたいと思うのはファンなら当然のことだろう。ましてやそれがビートルズのようなレジェンド・クラスになると、その珠玉の名曲たちがどのようにして生まれ、形を変えていき、完成をみたのか、又、どこでどんな魔法がかけられたのか知りたくなるのが人情というものだ。そしてそんなファンの渇望を満たしてくれたのが例のアンソロジー・プロジェクトで、NG集を公式発売するかのような行為に対して賛否両論はあったものの、ファンとしては垂涎モノの音源が一杯聴けてめちゃくちゃ嬉しかった。少なくとも私は他のバンドのつまらない新譜を聴くぐらいなら、ビートルズのアウトテイクスを聴く方がずっと楽しい。
 今でこそネットが発達してそういった音源にも接しやすくなったが、アンソロジー以前の70年代~80年代にはブートレッグ、いわゆる海賊盤に頼る他なかった。しかし海賊というだけあって神出鬼没、変幻自在にファンの弱味を突いてくる。同内容のモノをジャケットを変えて出すとか、内容とは違うタイトルをデッチ上げて希少盤を作るとかは朝メシ前で、海賊たちに対抗するには正確な情報収集が不可欠だった。私は雑誌のブート特集記事やブート広告をコピーしてノートに整理し(笑)、内容や音質評価の高いものを中心に買っていった。ビートルズの全キャリアを通して最も膨大な量のアウトテイクが生み出されたのは世に言う “ゲット・バック・セッション” で、この時期の音源を元にして作られたブートは数知れないが、そんな中でも特に大当たりだったのがこの「スウィート・アップル・トラックス」である。
 このアルバムは海賊盤には珍しいカラージャケットに抜群の音質、そして何よりも2枚組見開きジャケット(!)で90分オーバーという凄いヴォリュームに圧倒された。中身は1969年1月2日~9日のトゥイッケンナム・フィルム・スタジオでのリハーサルを収めたアウトテイク集で、ビートルズが試行錯誤を重ねながら音楽を創造していく現場の空気をものの見事に捉えている。
 A面では①「トゥー・オブ・アス」が映画の前半で聴けるアップ・テンポのロックンロール・アレンジ・ヴァージョンなのが嬉しい。完成形であるアコースティック・ヴァージョンよりも遙かにドライヴ感に溢れ、何よりもロックしている。フィル・スペクターはあのアルバムで彼なりにエエ仕事をしたとは思うが、彼の犯した唯一にして最大のミスはビートルズはロック・バンドなんだということを失念していたことだろう。⑤の「ノー・パキスタンズ」は「ゲット・バック」の原型で、イギリス国内に大挙押し寄せてきたパキスタン人労働者達が人々の仕事を奪い失業率が上がっているとして彼らの強制送還を目論んだイギリス政府を痛烈に皮肉った歌。 “自分たちが元居た場所へ帰れ” とはこれまた強烈な歌詞だが、ポールのヴォーカルのハジケっぷりはそれに輪をかけて凄まじい。超ハイ・テンションで吼えまくっているのだ。間髪を入れず⑥「ゲット・バック」へとなだれ込むタイミングもめっちゃカッコ良く、今度はジョンがノリノリで、勢い余って出だしを間違えるところなんか生々しくってゾクゾクしてしまう(≧▽≦)
 B面はまだまだ未完成な曲の断片集といった感じで、研究資料としては面白いが通常リスニングにはあまり向かない。C面は何と言っても①「レット・イット・ビー」にトドメを刺す。ポールが “C, G, A, F...♪” と、コード進行を始めとする曲の構成をメンバーに説明しながらこの曲を練り上げていく様子が見事に音溝に刻まれており、フェイクを入れたメロディーを色々試してみたり、様々な試行錯誤を重ねたりしながらコーラス・パートを発展させていくところなんか、めちゃくちゃ面白い。ビートルズ・マジックの一端を垣間見れる必聴のトラックだ。③「グッド・ロッキン・トゥナイト」は後にポールがアルバム「アンプラグド」で取り上げる爽快なロックンロール・ナンバーだが、ここではジョンがメイン・ヴォーカルでそこにポールが絡んでいくという涙ちょちょぎれる展開がたまらない。
 D面は③「バック・トゥ・コモンウェルス」ではエルヴィスそっくりに歌うポールがとにかく面白い。ホンマに細かいとこまでよぉ特徴捉えてるなぁ...(^.^) 途中ジョンの合いの手にポールが吹き出すなど、実に和気あいあいとしたエエ雰囲気が伝わってきて嬉しくなってしまう。④「ホワイト・パワー / プロムナード」は実にカッコ良いブルース・ロックで、彼らがこの “クリームごっこ” を心底楽しんでいるのが分かる。この高揚感を維持したまま⑤「ハイ・ホ・シルヴァー」へと突入、「ヤケティ・ヤック」をも交えながらストレートアヘッドなロックンロールを聴かせてくれる。このノリはもう最高だ。続くは何とロック・スピリット溢れる⑥「フォー・ユー・ブルー」で、スペクター・ヴァージョンも大好きだが、コレを聴いてしまうとその差は歴然。やっぱりビートルズは最高のロック・バンドなのだ。ラスト曲は再び⑦「レット・イット・ビー」で、C-①に比べ、かなりまとまってきたなぁ、という感じがする。ポールが “Whisper the words of wisdom...♪” のパートを “Read the Record Mirror...♪” と替え歌にしている、いわゆるひとつの “レコード・ミラー・ヴァージョン” がコレだ。リンゴは相変わらずエエ仕事しとるし、ジョンのカウンター・メロディーにも唸ってしまう。
 こうやって聴いてくると、寒々しい空気の中でダラダラと続けられ、口論の絶えなかったイメージがあるトゥイッケンナム・セッションにもビートルズがグループとして素晴らしい煌きを見せる瞬間がいくつもあったことが分かる。やっぱりブートはやめられまへんな(^o^)丿

ノー・パキスタンズ
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The Beatles Live ! at the Star-Club 1962

2009-10-05 | The Beatles
 昨日ご紹介した「ザ・ビートルズ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」がリリースされた1977年には、ほぼ同時期にもう1枚ビートルズのライブ盤が発売された。それが今日取り上げる「ライブ!アット・ザ・スター・クラブ・イン・ハンブルグ・ジャーマニー 1962」である。「ハリウッド・ボウル・ライブ」が全盛期のビートルズ・コンサートの様子を収めた64・65年のライブで他のビートルズ盤と同じように東芝から出たのに対し、「スター・クラブ・ライブ」の方はビートルズがレコード・デビュー直後の1962年12月に行ったハンブルグ公演の模様を家庭用テープ・レコーダーで録音したもので、契約の関係からか、ビクターから発売された。そういうことなので録音状態はイマイチ良くないのだが、音質的なハンデを補って余りある若さや勢いというものが十分に伝わってきて圧倒されるのだ。それほどこの盤にはデビュー直後のビートルズの躍動感溢れる演奏が詰まっている。ビートルズの 1st と 2nd アルバムがほとんど一発録りに近いスタジオ・ライブ形式で録音されたのは有名な話だが、その原点はまさにこのような下積み時代のステージにあったことがよく分かる熱いライブなのだ。
 このアルバムはアナログ2枚組でウエイターに歌わせた2曲を除く全24曲中、ビートルズとして後に公式録音する曲が10曲で、残りは古い曲のカヴァーが大半を占めている。A面は①「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」でスタート、アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」のヴァージョンに迫る勢いで飛ばす4人がカッコイイ!!! ②「ロール・オーヴァー・ベートーベン」ではイントロでジョージが一瞬ミスるものの、気にせず一気に弾き切り、後は破綻もなくどんどん加速していく。チャン・ロメロのカヴァー③「ヒッピー・ヒッピー・シェイク」はスウィンギング・ブルージーンズの1年先を行くカヴァーで、ポールがノリノリで歌っている。チャック・ベリーの④「スウィート・リトル・シックスティーン」はジョンのヴォーカルがグイグイ演奏を引っ張り、実にドライヴ感溢れるプレイが楽しめる。後にジョンのソロ・アルバム「ロックンロール」でも再演されるナンバーだが、私はこちらのヴァージョンのノリの方が断然好きだ。カール・パーキンスの⑤「レンド・ミー・ユア・コム」をかヴァーしてるのはよく分かるが、ファッツ・ウォーラーの⑥「ユア・フィーツ・トゥー・ビッグ」を取り上げているのにはビックリ(゜o゜) 彼らの懐の深さが垣間見れる選曲だ。
 B面はおなじみの①「ツイスト・アンド・シャウト」、②「ミスター・ムーンライト」と続くのだが、どちらもアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」や「フォー・セール」のヴァージョンよりもアップテンポの演奏が楽しめる。①なんか息もつかせぬ圧倒的な名唱だし、②もテンポが違うだけでこれほど印象が変わるのかと思うぐらい颯爽とした演奏だ。コレ、超オススメです(^.^) ここからはポールのスタンダード・ナンバー・コーナーで、アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」収録の③「ア・テイスト・オブ・ハニー」と映画「レット・イット・ビー」でこの曲を朗朗と歌うポールが印象的だった④「ベサメ・ムーチョ」の2連発。特にこの「ベサメ」はスローなラテンの名曲を思いっ切りテンポを上げて火の出るようなロックンロールとして処理したのが大正解で、数ある「ベサメ」の中でも私が一番好きなヴァージョンだ。バディ・ホリーのカヴァー⑤「レミニシング」はジョージのヴォーカルが弱いせいか印象が薄い。まぁ先の「ベッサメ・ムーチョ」とポールの絶叫ナンバー⑥「カンザス・シティ」に挟まれてるからしゃあないか。⑥のアレンジは「フォー・セール」に繋がるハードボイルドなものだ。ホンマ、たまらんわぁ(≧▽≦)
 C面アタマの①「エイント・ナッシング・シェイキン」はエディー・フォンテーンのカヴァーで、日本ではイマイチ知名度は低いかもしれないが、私の大好きなノリノリのロックンロール。こんな曲をさりげなくレパートリーに入れるビートルズって改めて凄いと思う。②「トゥ・ノウ・ハー・イズ・トゥ・ラヴ・ハー」はあのフィル・スペクターがテディ・ベアーズ名義で出した名曲だが、私としてはもうひとつビートルズに合ってないような気がする。何となく窮屈そうに歌っているように聞こえるのだが...(>_<) それに比べてチャック・ベリーのカヴァー③「リトル・クイニー」での水を得た魚のような活き活きしたプレイのカッコ良さ!!! ジョージのギター・ソロが圧巻だ。ポールが歌うマレーネ・デートリッヒ映画の挿入歌④「フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン」は②と同様、ちょっと場違いな感じがする。彼らのオリジナル曲⑤「アスク・ミー・ホワイ」はこの後アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」に入ることになるが、ここでも素晴らしいコーラス・ハーモニーを聴かせてくれる。
 D面は有名曲のカヴァーを連発、ファッツ・ドミノの①「レッド・セイルズ・イン・ザ・サンセット」、カール・パーキンスの②「エヴリバディーズ・トライング・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」と③「マッチボックス」(←リンゴではなくジョンが歌ってる渋いヴァージョン!)、チャック・ベリーの④「トーキン・バウト・ユー」、ジョー・サウス&ビリー・ランドの⑤「シミー・シェイク」、リトル・リチャードの⑥「ロング・トール・サリー」と、もう大ロックンロール大会である。特に⑥は後の公式ヴァージョンに匹敵する凄まじさで、彼らのロックンロール・スピリットが大爆発だ。ラストの曲は一転して⑦「アイ・リメンバー・ユー」というチェット・ベイカーやチャーリー・パーカーの名演で知られるスタンダード・ナンバーで、ポールの呑気なヴォーカルとジョンののどかなハーモニカがほのぼのとした空気を運んでくる。さっきまでの大騒ぎはどーなったん?と言いたくなるぐらいの変わり身の早さはさすがビートルズだ(笑)
 このアルバムが発売された1977年というのは奇しくもイギリスでパンク・ロックが大ブレイクした年なのだが、ここに刻まれたビートルズの野性味溢れるサウンドはパンク・バンドもブッ飛ぶカッコ良さで、ラウドにロックしながらも高い音楽性を感じさせるのが凡百のバンドとの決定的な違いだろう。このアルバムはプアーな音質をものともせずに聴く者をグイグイ惹きつける魔力を持った、ビートルズのライブ・バンドとしての実力を知らしめる痛快な1枚だ。

Sweet Little Sixteen/ The Beatles Live At The Star Club

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The Beatles At The Hollywood Bowl

2009-10-04 | The Beatles
 私が音楽を本格的に聴き始めた頃は今みたいに情報も多くはなかったし、好きなアーティストも限られていたので、来る日も来る日もほとんどビートルズばかり聴いていた。だからある程度彼らのオリジナル・アルバムやソロ作品を聴き込んでくると今度はそれだけでは飽き足らず、まるで酸欠状態の金魚のように口をパクパクさせて何かしらビートルズ絡みの新しい音源を求めるようになる。しかし定期的に新譜を出してくれる他の現役アーティストとは違い、既に解散してしまったグループなのでせいぜい既出の音源を使い回した企画盤ぐらいしか望めそうにない。そんな折、たまたま雑誌の特集記事で見つけたブートレッグ(←今では “コレクターズCD” なんていうシャレた名前がついてるけど、要するに海賊盤やね...)に興味を持ち、干天の慈雨とばかりに私はその禁断の世界へと足を踏み入れていった。
 当時のブートは64~66年のライブ音源とゲット・バック・セッションのアウトテイクスが主流で、ビートルズ中毒だった私はたまたま大阪でブートを扱うお店を3軒ほど見つけたこともあって、雑誌の解説を見ながら音質が良さそうなものを中心にガンガン買いまくっていった。今から考えればとんでもない中学生だが(笑)、ロンドン、パリ、ワシントン、トーキョーといった様々な都市でのライブ演奏を聴いて悦に入っていた。そんな状況下で1977年に本家 EMI から出されたビートルズ唯一の公式ライブ盤がこの「ザ・ビートルズ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」だった。
 このアルバムがリリースされた背景には、解散してもなお衰えることのないビートルズ人気や上記のようなブートレッグ市場の活況(そういえば「赤盤」「青盤」のリリースもブート対策だったらしい...)を鑑みたキャピトル・レコードが、64、65年の2度にわたってライブ盤発売目的で録音されたテープ(その時は様々な理由により結局却下されたが...)をレコード化しようと考え、ジョージ・マーティンに編集を依頼した、ということらしい。その結果、マーティンとジェフ・エメリックによって3トラックからマルチ・トラックにトランスファーされ、リミックス、イコライザー処理etc を施されて、2本のテープからベスト・トラックを選び出して1枚のアルバムにまとめ上げられたのが本作なのだ。
 このアルバムは全13曲中、⑥⑦⑧⑪⑫⑬の6曲が64年の演奏から、①②③④⑤⑨⑩の7曲が65年の演奏から取られている。レコードに針を落とすとまず聞こえてくるのが会場を埋め尽くしたファンの嵐のような嬌声であり、“And now, here they are, the Beatles!” というMCから①「ツイスト・アンド・シャウト」がスタート、当然ながらブートで聴いてきた演奏よりも音質面で格段に優れているし、レコーディングされているとあってさすがに気合いの入った演奏だ。“叫び倒し曲” だからだろうが、ワン・コーラスのみ、わずか1分20秒ほどの演奏で、歌・演奏・コーラスと、どれをとっても文句なしの出来だ。間髪を入れずに始まるのが②「シーズ・ア・ウーマン」で、確か日本公演でも「ロックンロール・ミュージック」に続く2曲目として演奏されていたのを思い出す。上手くは言えないのだが、この “前曲との間に間隔を開けずにいきなりイントロに突入して一気に突っ走る” パターンがこの曲に更なる勢いを与えているように思う。③「ディジー・ミス・リジー」ではジョンのダイナミックな歌声が堪能できて大満足、①に続くハードな曲だがこの日のジョンは絶好調のようで、自由奔放に叫びまくっている。続く MC ではポールが “Can you hear me?” とオーディエンスを煽り、④「ティケット・トゥ・ライド」へ。ジョンとポールのヴォーカルの絡み具合がたまらない。曲紹介なしでいきなりポールが歌い出す⑤「キャント・バイ・ミー・ラヴ」、会場の熱気も凄まじいが、レコードを聴いてるこっちも大コーフンだ(≧▽≦)
 ここから64年のステージへと移るのだが、違和感は微塵も感じられない。初々しいジョージの MC から始まる⑥「シングス・ウィー・セッド・トゥデイ」、途中サビに突入する前にポールが “イェー!” と叫ぶと会場のボルテージも一気に上昇、大盛り上がりのまま⑦「ロール・オーヴァー・ベートーベン」のイントロが響き渡る。生硬なジョージのヴォーカルが楽しめるナンバーだが、後半部でポールがハーモニーをつけるところなんかもう最高だ(^o^)丿 B面1曲目はポールの一言“Singing a song called BOYS, Ringo!!!” から⑧「ボーイズ」でスタート、リンゴもここぞとばかりに溌剌としたヴォーカルを聞かせ、間奏のギター・ソロ前に“All right, George!” と叫ぶなど、もうノリノリだ。
 再び65年のステージから2曲映画の主題歌が並ぶ。まずはジョンのおどけたMC “It’s the title song from the film, ooh la la la...♪ It’s called A HARD DAY’S NIGHT!”→ キャァー と高まる歓声 → ジャーン!、という流れが鳥肌モノの⑨「ア・ハード・デイズ・ナイト」。いつも思うのだがこの “ジャーン!” の入り方のタイミングが絶妙でホンマにカッコエエんよね(^.^) 続いてやはりジョンのMCから始まる⑩「ヘルプ」、2分を過ぎたあたりから少し息を切らせながらも最後まで全開で駆け抜けるジョンのヴォーカルがとにかく素晴らしい。
 ここからは64年に戻ってラスト3曲、まずは⑪「オール・マイ・ラヴィング」で、ポールのMC に続いて one, two, three, four, five というカウントが微かに聞こえ、“クロージョラァ~イズ♪” と歌い出すポール。そんなポールに寄り添うようにちょっと鼻にかかった声コーラスをつけるジョージ... これはもうたまりませんわ(≧▽≦) 続く⑫「シー・ラヴズ・ユー」ではジョンのMCから one, two というカウントを経て “シ ラッジュー ヤー ヤー ヤー♪” とくる。もう大ヒット曲のアメアラレ攻撃だ。そしてコンサートはいよいよフィナーレを迎えるのだが、最後の曲紹介はポールのお仕事だ。 “Well, this next song will have to be our last one for this evening, yes, oh, yes!... You know, sorry, but..eh...so we like to thank everybody here tonight for coming along, thank you very much, thank you. Thank you very much and, and we all, and we all hope that you've enjoyed the show. Did you enjoy the show?” といつものように腕時計を指さしながら喋るポールの姿が目に浮かぶ。ブーンというベースの響きから⑬「ロング・トール・サリー」へとなだれ込む4人...会場の熱狂ぶりも最高潮で、えっ?もう終わりなん?と思うほどアッと言う間の33分36秒だ。
 このレコードに封じ込められたエネルギーの塊は言葉では言い表せないほど凄まじい。頭で考える前に身体が反応してしまうような、いわゆるプリミティヴなロックの衝動に満ち溢れている。ビートルズが空前絶後の熱狂を巻き起こしていたあの時代の空気を真空パックしたようなこのアルバムは我が青春の大切な1枚であり、この熱いロックンロール魂こそがビートルズの原点なのだ。そしてそんなビートルズと出会えただけで私の人生は幸せだ。
 最後に一言、これだけ素晴らしい内容のライブ盤を未CD化のまま放置というのはもう犯罪に等しい暴挙だと思う。私はUKパーロフォン盤LPをCD-Rに落として楽しんでいるが、アナログ環境のない多くのビートルズ・ファンのためにも、急げCD化!!!

The Beatles-A Hard day's Night/All My Loving (Hollywood Bowl)


Past Masters Vol. 2 / The Beatles

2009-10-03 | The Beatles
 昨日のVol. 1に続き、今日は「パスト・マスターズ」のVol. 2である。アルバムで言えばちょうど65年末の「ラバー・ソウル」から70年の「レット・イット・ビー」までの間にリリースされたもののオリジナル・アルバムには収録されなかった全15曲がヴァージョン違い(⑨⑬⑭)も含め、すべて収められている。
 ①「デイ・トリッパー」は②「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」と両A面扱いでリリースされたシングルで、何とアルバム「ラバー・ソウル」と同日発売という大盤振る舞いだ。それにしても①のイントロのソリッドなギター・リフには唸るなぁ...(^.^) 曲自体は持ち上げるだけ持ち上げておいてオトシマエを付けないような不思議な旋律で出来ているのだが、とにかくこの曲は唯一無比なギター・リフの波状攻撃がすべてだろう。それに対し、②の方はポールが作った曲にジョンがミドルのパートを書きくわえて完成させたという、数少ない “レノン=マッカートニー” 作品で、その個性が絶妙に溶け合って見事な一体感を生み出しているところが感動的だ。アメリカではこちらをA面にしたというのも頷ける大傑作だと思う。③「ペイパーバック・ライター」は私の超愛聴曲で、それまでになかった発想の歌詞といい、激しくロックを感じさせる強靭なサウンドといい、耳に残る不思議なコーラスといい、もう言うことなしだ。特にポールのベースは凄いの一言に尽きると思う。ブライアン・ウィルソンがこの曲に触発されて「グッド・ヴァイヴレイション」を書いたという話を聞いたことがあるが、何となく分かる気がする。そういえば日本公演初日(6/30)のステージでこの曲を歌っている時、マイク・スタンドがグラグラ揺れてポールがムッとしながら何度も手でマイクの向きを直してたっけ。ジョンの④「レイン」はアルバム「リヴォルヴァー」のサイケな内容を濃縮還元したようなめちゃくちゃカッコ良い曲で、ジョンのドラッグ体験がスベッただの、テープの逆回転がコロンだだのと云々されるが、何よりも聴くべきはリンゴの驚異のドラミングであり、ポールの自由自在に動き回るベース・ラインだ。ヴォーカル、演奏、ブッ飛んだ曲想... そのすべてが圧倒的に素晴らしい、エポックメイキングなナンバーだと思う。それにしてもこんな③④みたいな大傑作をアルバムに入れずに単なるシングルでポンと出して涼しい顔のビートルズってホンマに凄いグループやわ(≧▽≦)
 ⑤「レディ・マドンナ」はエルヴィスと化したポールが歌う古き良き時代のロックンロール風ナンバーで、イントロから大活躍のブギウギ風ピアノ、暴れ回るサックス、そしてユニークな響きを添えるバック・コーラスと、細部にわたるまで綿密に練り上げられたアレンジはまさにプロの技。それでいて出来上がったものはそういったワザをそれとは感じさせない完全無欠な3分間ポップスだ。これはポール・マッカートニーという音楽家の懐の深さをまざまざと見せつける1曲だと思う。⑥「ジ・インナー・ライト」はインド音楽としてはよく出来てるのかもしれないが、シタール曲を聴きたければラヴィ・シャンカールを聴けばいいのであって、ビートルズでこんなのを聴きたいとは思わない。
 ⑦「ヘイ・ジュード」はビートルズのシングルの中で最も売れた(そして最も長い)曲で、9週連続全米№1も当然の傑作。この曲の持つ “さぁ、みんなで歌おうぜ!” といった感じの一種共同体的な雰囲気が1968年という時代の空気と化学反応を起こして大ヒットに拍車をかけたのだろう。フェイド・アウト寸前でベースがノッソリと動き出すところが好きだ。⑧「レヴォリューション」は「ホワイト・アルバム」に入っていた「レヴォリューション1」のスロー&アコースティックなアレンジがシングル向きではないとの理由から、一般大衆ウケするようにテンポを上げ、ラウドでノイジーなエレクトリック・サウンドでコーティングされたもの。より深いのはアルバム・ヴァージョンだろうが、ノリノリ・ロックンロール命の私はこっちのド派手なヴァージョンが大好きだ。シングル⑨「ゲット・バック」はジョージ・マーティンのミックスで、ベースになる演奏はアルバムに収録されたスペクター・ヴァージョンと同じアビー・ロード・スタジオでのテイク(1/27録音)が採用されている。演奏に関しては前にも書いた通り、力感漲る素晴らしいロックンロールで、その躍動感はビートルズが第1級のライブ・バンドであったことを示している。⑩「ドント・レット・ミー・ダウン」は「ディグ・ア・ポニー」の親戚みたいなナンバーで、曲としてはやや弱いものの、ジョンのヴォーカルとビリー・プレストンのキーボードで聴かせてしまうチカラワザはさすがという他ない。
 ⑪「ザ・バラッド・オブ・ジョン・アンド・ヨーコ」は当時険悪な仲だったといわれるジョンとポールの二人だけでレコーディングしたというからビックリだ。それにしても何とまあノリの良い曲だろう。メロディーも演奏も実にシンプル&キャッチーで、リンゴが叩いていたら遙かに完成度は上がっただろうが、逆にポールのバラケたドラミングが “ササッと書いてチャチャッとレコーディングしました感” を醸し出しており、これはこれでめっちゃエエ感じなのだ。そのあたりのジョンとポールのセンスはまさに天才的だと思う。ジョージの⑫「オールド・ブラウン・シュー」は可もなく不可もない平凡な曲に聞こえる。だからいくらジョージが選曲したとはいえ、後期ベスト盤である「青盤」に入ってたのにはビックリした。これを入れるんやったら他に入れるべき曲が一杯あるのにと、「赤盤」の選曲及び曲配置が絶妙だっただけに、「青盤」の選曲には不信感を抱いたものだった。
 ⑬「アクロス・ザ・ユニヴァース」は例のバード・ヴァージョンで、オリジナル・アルバムに入っていたスペクター・ヴァージョンとの比較が一興だ。原曲が素晴らしいだけに判断は難しく甲乙付け難いが、鳥の鳴き声はともかく、甲高いコーラスは余計だと思う。前にも書いたが、この曲に関してはスペクターの正規ヴァージョンの方が好きだ。しかし続く⑭「レット・イット・ビー」は同じ音源を加工(?)しているにも関わらず、圧倒的にこのジョージ・マーティン・プロデュースのシングル・ヴァージョンの方がいい。聴き比べてみれば明らかだが、スペクターの方はまったく “ロックの音” がしていない。さすがはビートルズを知り尽くしたマーティンというべきだろう。⑮「ユー・ノウ・マイ・ネーム」を初めて聴いたのは日本盤シングル「レット・イット・ビー」のB面としてで、まだビートルズ・ド素人だった私はA面とのあまりの落差に “コレは一体何なん???” と呆気にとられてしまった。当時は持ってるレコードの数も少なく、ワケが分からんなりに何度も繰り返し聴いていたら、いつの間にか “悪ふざけ” というか “お遊び” 的なこの曲がすっかり気に入ってしまった。例えるならクセになる珍味みたいなものだ(笑)。歌詞はと言えば「私の名前知ってるでしょ。だったら電話番号も調べられますよ~♪」の繰り返しで、演奏も古き良く時代のダンス・バンドが酔っ払ってドンチャン騒ぎをしているかのような面白さ。何度も聴いているうちにきっと私のように中毒症状をきたすだろう。ユーモアに溢れたビートルズの最後っ屁、一度広~い心で聴いてみてくださいな(^o^)丿

The Beatles - You Know My Name (Look up the Number)

Past Masters Vol. 1 / The Beatles

2009-10-02 | The Beatles
 今から約30年ほど前に「レアリティーズ」というビートルズのLPがリリースされたことがあった。オリジナル・アルバムに未収録なシングルのB面曲ばかりを集めたいわゆるひとつの企画盤で、当時は日本盤LP以外にもシングル盤やUS編集盤でほぼすべての音源を持ってはいたものの、例の「アクロス・ザ・ユニヴァース」のバード・ヴァージョンというエサにまんまと引っ掛かり(笑)、喜び勇んで買ったアルバムだった。あの大名曲の別ヴァージョンと言うだけでもワクワクドキドキだったし、ジミー・ペイジがこのヴァージョンを愛聴しているという話がまことしやかに伝わってきたりして、ファンとしては買わずにいられなかった。
 そしてその8年後、今度はビートルズの全オリジナル・アルバムがジョージ・マーティンのリマスターで初CD化されたのに伴い、アルバムに入っていない未CD化音源がまとめられ、前期と後期に分けてアルバム2枚に分散収録されたのだ。それがこの「パスト・マスターズ」というワケで、このVol. 1 には62年から65年までの全18曲が収められており、「レアリティーズ」から後期の作品をカットして、代わりにアルバムに入っていなかったシングルA面曲を加えたものになっていた。黒地に白文字というジャケットだったこともあり仲間内では “黒盤” と呼ばれていたが、このアルバムの登場により「レアリティーズ」はその存在意義を完全に失い、歴史的使命を終えたのだった。
 この “黒盤” の目玉はリンゴがドラムを叩いた①「ラヴ・ミー・ドゥ」のシングル・ヴァージョンで、赤いパーロフォン・レーベル(赤パロ?)が眩しいこの曲のシングル盤のファースト・プレスは200ポンドを超えるプレミアが付く激レア盤なのだが、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイトが叩いたアルバム・ヴァージョンと実際に聴き比べてみてもこの曲自体が持っているモッサリ感のせいか、あまり違いが分からない(>_<)
 いきなり “ダダラァ~ダダ ドゥンドゥンダァ~♪” という強烈な出だしで始まる②「フロム・ミー・トゥ・ユー」は初期の彼らのトレードマークの一つだったハーモニカを大きくフィーチャーした曲で、シンプルでキャッチーなメロディーを巧く活かした歌と演奏だ。そのシングル②のB面だったのが③「サンキュー・ガール」で、やはりハーモニカが鳴り響くイントロからシンプルでキャッチーなメロディーまで、シャレでも何でもなく②を裏返しにしたような曲想なのだが、これはこれで聴かせてしまうところがビートルズのビートルズたる由縁だろう。しかし③が終わって④「シー・ラヴズ・ユー」の “ドドドドドッ!” というリンゴのドラムがなだれ込んでくると、空気が一変するのがわかる。有名な“ヤー ヤー ヤー♪” も “フゥゥゥ~♪” も、この曲の1音1音がいきなり沸点に達するというか、とにかく熱いのだ。初めて聴いた時の衝撃は名曲揃いのビートルズ曲の中でも群を抜いていた。私はこの曲こそが初期ビートルズの最高傑作だと信じている。プリミティヴなロック衝動を喚起しまくる2分21秒だ。
 ⑤「アイル・ゲット・ユー」はハーモニカにハンド・クラッピング、三声のコーラス・ハーモニーと、初期ビートルズの武器を大量投下した佳曲。⑥「アイ・ウォナ・ホールド・ユア・ハンド」は全米制覇を成し遂げた記念すべき1曲で、「シー・ラヴズ・ユー」が初期ビートルズの最高傑作ならこの曲は初期ビートルズそのものだ。お約束のハンド・クラッピングの使い方としてははこの曲が白眉だろう。⑦「ディス・ボーイ」は初期ビートルズの隠れ名曲の一つで、コーラス・グループとしての彼らの魅力が楽しめるロッカ・バラッド。それにしても私の持っているシングル盤の邦題が「こいつ」なのにはワロタ(^.^) こんなマヌケなタイトル考えたん、どいつや?というワケではないだろうが、これに続く⑧と⑨はそれぞれ「抱きしめたい」と「シー・ラヴズ・ユー」のドイツ語ヴァージョンだ。どちらも異国の言葉で歌わされて汲々としているというか、ヴォーカルが不完全燃焼なのが一聴瞭然だ。
 ⑩「ロング・トール・サリー」のインパクトは強烈だ。初めて聴いたのは音楽雑誌 “ミュージック・ライフ” のラジオCMで、いきなり “アノラ テェエン メェリィ~♪” とポールのシャウトが炸裂(≧▽≦)、ガツン!とくる衝撃とはこのことだ。あとはもうひたすらポールがロックしまくる怒涛の展開で、オリジナルのリトル・リチャード・ヴァージョンとタイマンを張れる凄まじさだ。⑪「アイ・コール・ユア・ネーム」は「ア・ハード・デイズ・ナイト」に入っていた「ユー・キャント・ドゥー・ザット」っぽい曲想を持ったカッコ良いナンバーで、これなんか初期ビートルズ曲の中で過小評価されている1曲の最右翼だと思う。この時期ノリにノッていたジョンの充実ぶりが伝わってくるようだ。キレキレのギター・ソロのバックのリズムが面白い。
 ビートルズが歌い演奏するカヴァー・ヴァージョンがオリジナルを軽く超えてしまうのはいつものことだが、ラリー・ウイリアムスの⑫「スロー・ダウン」、⑯「バッド・ボーイ」はジョン・レノンという天才ロック・ヴォーカリストの凄さが身に染みて分かる強烈なカヴァーになっており、リンゴによるカール・パーキンスのカヴァー⑬「マッチボックス」と共に、ビートルズの “カヴァー不敗伝説” の一翼を担っている。
 ⑭「アイ・フィール・ファイン」はフィードバックを使ったイントロのインパクトが絶大で、軽快なリフから4人が一体となって一気呵成に突っ走る爽快感もたまらない。エンディングで聞こえるジョンのハミングがこれまたエエ味を出している。⑮「シーズ・ア・ウーマン」はハリウッド・ボウル・ライブや日本公演の2曲目で演奏されていた、リズム&ブルースのポール流解釈といえるハードボイルドなナンバーで、イマイチぎこちなさが残るスタジオ・テイクよりもワクワクするようなドライヴ感が楽しめるライブ・テイクの方が断然好きだ。ポールの闊達なベース・ラインにも注目だ。⑰「イエス・イット・イズ」は⑦「ディス・ボーイ」の深化・発展形といえる渋~いバラッドで、特にジョン、ポール、ジョージがハモる三声コーラスが絶品だ。⑱「アイム・ダウン」はポールが「ロング・トール・サリー」みたいな曲を書いてやろう!と狙って書いたとしか思えないバリバリのロックンロールで、日本公演でも演奏されていたが、この曲は何と言ってもシェア・スタジアムでのライブ・ヴァージョンに尽きるだろう。異常なぐらいのハイ・テンションでノリノリのジョンが肘でオルガンをグリグリ弾きまくっていた姿が目に浮かぶ。こうやって色々聴いてくると本当に思い出は尽きない。我が人生は常にビートルズと共にあったんだと改めて認識させられた初期の傑作拾遺集だ。

The Beatles--I'm Down (live at Shea Stadium) HQ