shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

NZ盤シングルで聴く炎のロックンロール特集

2017-10-29 | The Beatles
 NZ盤祭りの最終回はシングル盤特集だ。半年ほど前にNZ盤LPを集めようと心に決め、ディスコグラフィーのようなものがないかネットで調べてみたところ、「The Beatles Bible ~Not quite as popular as Jesus~」(←この副題好き!)というサイトを発見、プルダウン・メニューの Discographies をクリックしてみると何と世界41ヶ国(←ボリビア、コンゴ、コスタリカ、エクアドル、レバノンといった超マイナーな国の盤も載っててビックリ...)のビートルズ・レコードがカラーで紹介されているではないか!
 うわぁ~、コレはとても真似でけへんわ... と感心しながらNZ盤のページをチェックしてみたところ、LPだけでなく何とシングルやEPまで載っている。そこで興味本位にシングル盤のページを覗いてみたら、UKオリジナルで出ていない曲がいくつもシングルカットされているのだ。もちろん手当たり次第にシングルを切りまくっていた日本やアメリカほど多くはないが、それでも初期から中期の「ラバー・ソウル」あたりまではNZ独自のシングルが何枚か出ており、“一体どんな音がするんやろ?” と好奇心をくすぐられた。
 そこで “NZ盤の高音質パワーとシングル盤の45回転パワーの相乗効果で凄まじい音が聴けるのではないか?” と考えた私は早速eBayでチェック。するとラッキーなことにたまたま同一セラーが何枚もNZ盤シングルを出しており、1枚当たり$5.00ということもあって大漁落札。今日はそんな中から初期ビートルズ屈指のロックンロール・シングル4枚を取り上げよう。

① I Saw Her Standing There [NZP 3154] Jan.1964
ニュージーランドで「プリーズ・プリーズ・ミー」「フロム・ミー・トゥ・ユー」「シー・ラヴズ・ユー」「抱きしめたい」に続く5枚目のシングルとなったこのレコードは「ラヴ・ミー・ドゥ」がA面なのだが私にとっては断然こっちがメイン・サイドだ。音の方はコンプ感が弱く、もっとガンガンくるかと身構えていたのでちょっと肩透かしを食ったような感じ。個々の楽器の音の分離感も今一歩というところで、ハンドクラッピングなんか全体のサウンドの中に埋もれがちな印象を受けた。試しにUKゴールド・パーロフォン盤LPと比べてみるとその違いは歴然で、ハンドクラッピングがしっかりと自己主張して絶妙なアクセントになっているし、ズンズンと響いてくる低音の押し出し感といい、有無を言わせぬ強烈無比な音圧といい、まさに “神ってる” としか言いようのない素晴らしいサウンド。改めてUK 1stプレス盤の実力を思い知らされた。

② Roll Over Beethoven [NZP 3158] May.1964
 NZ6枚目のシングル「キャント・バイ・ミー・ラヴ」が発売された翌月にドドーッとまとめてリリースされたのが②③④だ。この②のA面「オール・マイ・ラヴィング」はUK盤EPで45回転の音を聴けるるので、私の狙いはB面「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」の貴重な45回転サウンド。高域寄りの音作りのためかイントロのギターは鋭利なナイフのように耳に突き刺さってくるし、まるで狐でも憑いているかのように(笑)シンバルを乱打するリンゴにもビックリ(>_<)  NZ盤は一般的に高音質で知られるが、少なくとも初期ビートルズのロックンロール・サウンドに関してはまだまだ試行錯誤と言う感じで、UKオリジナル盤のサウンドの方が私には合っていると感じた。

③ Twist And Shout [NZP 3160] May.1964
 ①②の2枚は私的にはイマイチだったがこの「ツイスト・アンド・シャウト」は期待にたがわぬ豪快なサウンドがスピーカーから飛び出してきて大喜び(^o^)丿 音作りのバランスがスウィート・スポットにピタッとハマッたような感じだ。まぁ①と同じアルバムに入っている曲なのになぜこんな風に違いが出るのか私にはサッパリ分からないが、ジョンのヤクザなヴォーカルといい、バリバリと響き渡るエッジの効いたギターといい、リンゴの豪放磊落なドラミングといい、この曲に関しては迫力十分で、UK金パロ盤や同じ45回転のUK EP盤にかなり近いサウンドが楽しめた。

④ Money [NZP 3161] May.1964
 この曲の入っている「ウィズ・ザ・ビートルズ」のUK 1stプレス盤は腰を抜かすようなラウド・カットで知られているが、このNZ盤シングル・ヴァージョンも音圧に関してはかなりのもので、初期ならではのパワフルなロックンロールが炸裂する。ただ、②と同様にやや高域が強めに入っているので私にはプリアンプのトレブルを1目盛り絞って聴くとちょうどいい感じ。同じNZ盤でも33回転LPの方はもっと中低域が分厚いサウンドだったので、ひょっとするとエンジニアがシングル盤向けにこういう音作りにしたのかもしれない。

 ということで当初の予想とは少々違った結果となったNZ盤シングル一気聴き。単体で聴けば決して悪くないサウンドなのだが、UK盤の音と比べてしまうとそちらに軍配を上げざるを得ないというのが正直な感想だ。アナログのサウンドってホンマに奥が深いですな。

【2017.12.7 追記】
 この後調子に乗って「Long Tall Sally」(NZP.3166)も手に入れたのだが、何だかヴェールをかぶせたような埃っぽいサウンドでガッカリ(ー_ー)!! 同タイトルのUK盤4曲入りEPと聴き比べてみたがその違いは歴然で、初期のNZ盤シングルは当たり外れが激しいということを改めて痛感した。

NZ盤 vs OZ盤②「Abbey Road」

2017-10-22 | The Beatles
 ニュージーランド盤 vs オーストラリア盤対決の第2弾は「アビー・ロード」だ。NZ盤は1st プレスと2nd プレス、OZ盤は2nd プレスと3rd プレスで計4枚を聴き比べてみた。

①ニュージーランド盤 [PCSM-7088]
 半年ほど前のことだが、「アビー・ロード」のNZ 1stプレス盤を落札した翌日にセラーからメールが届いた。盤質表記はNMだったのだが、梱包している時に新たな傷に気付いたとのことで、(1)「全額返金」、(2)「半額にディスカウント」、(3)「2ndプレス盤と併せて2枚送る」、の3つの選択肢のうちから選んでくれという。“何じゃいそれは... ”と思ったが、届いてから “傷いってるやんけ!!!” と揉めるよりは(←最近も2件ほどあって怒りの返品したった... ヨーロッパのセラーは目ぇ悪いんか???)よっぽどマシだ。該当箇所の写真をメールで送ってもらったところ、音には出そうだが針飛びはなさそうに見えたので、希少なNZ盤の1stプレスと2ndプレスの聴き比べをするのも一興と思い(3)を選択、結局 NZ$60(約4,800円)で「アビー・ロード」のNZ盤2枚を手に入れた。
 1stプレス盤はセンター・レーベルのリム部分の表記が“MADE IN NEW ZEALAND BY HIS MASTER'S VOICE (N.Z.) LIMITED”でB面に「ハー・マジェスティー」のクレジット無し。マト枝番は -2/-1 で裏ジャケットのフリップバック部分が黒色、盤の重さは160gだ。気になっていた傷は見た目はヤバそうだがラッキーなことにほとんど音に出ず、とりあえずは一安心(^.^)  私としては2ndプレス盤をタダで手に入れたようなものだ。
 音の方は “いかにも UKマザー” という感じのサウンドで、どっしりした中低域と伸びやかな高音域のバランスが実に気持ちイイ(^o^)丿 「カム・トゥゲザー」の生々しさはさすが NZ盤と言えるものだし、「サムシング」や「ヒア・カムズ・ザ・サン」の根底を支えるベースの動きも闊達そのもの。B面のメドレーも雄大な音楽の流れに身を委ねるような感じで、個々の音を聴こうとしてもいつの間にか音楽に聴き入ってしまうぐらい心地良いサウンドに仕上がっている。
 2ndプレス盤はセンター・レーベルのリム部分の表記が“MANUFACTURED IN NEW ZEALAND BY E.M.I. (N.Z.) LIMITED” と HIS MASTER'S VOICEからEMIに変わっており、B面に「ハー・マジェスティー」のクレジット有り。マト枝番は1stプレスと同じ -2/-1 で裏ジャケットの縁部分は白色、盤の重さは141gだ。1stプレスに比べると中低域は少しスリムになり、高音部が多少華やいで聞こえる。「アナログ・ミステリー・ツアー」に掲載されているのはこの2ndプレス盤だが、“高域の再現性に優れる” という説明はこのあたりのことを言っているのだろう。私的には1stプレス盤の音の方が好みだが、人によってはこっちの方が好き、と好みが分かれるかもしれない。

②オーストラリア盤 [PCSO-7088]
 OZ盤はNZ盤に比べてプレス枚数が多いのでバカ売れした「アビー・ロード」なんか簡単に手に入るだろうとタカをくくっていたのだが、実際に探してみるとコレが中々市場に出てこない。色々調べてやっと見つけたのが MusicStack に出品されていた1枚で、“Apple(1969) Stunning very rare Australian pressed vinyl.” という説明を見て “やっと見つけたぁ!” と大喜び\(^o^)/  NZ$35(約2,800円)という安さもあって何も考えずに即ゲットした。
 しかし1週間ほどして届いた盤はジャケットはラミネート・コーティングしてない安っぽい作りだし、盤自体も薄くて軽い(118g)。慌ててマト枝番を確認すると -3/-2 ではないか! あちゃ~(>_<) コレはどう見ても1979年プレスの再発盤だ。慣れないOZ盤で確認を怠った私の完全なミス。まぁしゃあない。コレも各国盤蒐集の授業料だと思って潔く受け入れよう。音の方も盤同様に薄っぺらいもので、痩せ細った中低域にはガッカリだし、「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」のサビに入る直前に左chから聞こえるバリッというノイズにも唖然(゜o゜)  ハッキリ言ってこれはアカンやつですわ。教訓:私のようなアンチ再発盤コレクターでビートルズのOZ盤を狙っている人は必ずラミネート・ジャケットか確認しましょう!!!
 そういうワケで意地でも1stプレスが欲しくなった私は “ラミネート・ジャケットでマト枝番 -2/-1 のOZ盤「アビー・ロード」” に的を絞って網を張り、2ヶ月かかってeBayでようやくゲット。1stプレスはピンクがかった印刷エラーで有名な通称「ブラッド・ステイン・カヴァー」と呼ばれる超稀少盤で、私が手に入れたのは厳密に言うと2ndプレスということになるのだが(←それでも色合いが少し赤味がかってる...)、ほぼ同時期の69年プレスなので音質的に違いはないだろう。
 盤の重さは120gと思いのほか軽いのだが、音の方はというと “やっぱり60年代プレスは最高やなぁ...(^.^)” と思わず目じりが下がる豊潤なサウンド。私の重量盤信仰を木っ端微塵に打ち砕いた1枚だ。何はさておき冒頭の「カム・トゥゲザー」からベースの音が深い井戸の底から響いてくるような重低音で嬉しくなってしまうし、リンゴのドラミングの凄さもリアルに体感できる。特にシンバルの音が素晴らしく、リンゴめっちゃ気合い入っとるやん!とそのシャープな響きに耳が吸い付く。これはもう低音がどーとか高域がこーとかいう次元を遥かに超えた、再生芸術の鑑とでも言うべき見事な音作りだ。やっぱりアナログはカッティング・エンジニアの腕で決まるんやね。
 とにかく全編を通して上記のNZ盤をも凌ぐスーパーウルトラ高音質で、眼前に生々しい音楽が屹立し、ついつい時のたつのを忘れてしまうくらいビートルズの音楽に引き込まれていく。やはり再発盤との10年という差はとてつもなく大きいと感じた次第。因みにこれでOZステレオ盤はUSマザーの「ホワイト・アルバム」を除いて(←どんだけUS盤の音嫌いやねん!)完全制覇だ(^o^)丿

NZ盤 vs OZ盤①「Sgt. Pepper’s」

2017-10-14 | The Beatles
 私のようにビートルズの各国盤蒐集にハマっている状態は一般ピープルの目から見ればほとんどビョーキみたいなモンだと思うが、その症状(?)が進むと対象はどんどんマイナーな国のレコードになっていき、プレス国の違いによる音質の差に一喜一憂するようになる。そういうワケで色んな国の盤を取っ替え引っ替えしながら聴き比べ三昧で愉しんでいる毎日なのだが、中でも興味深かったのがニュージーランド盤 vs オーストラリア盤というオセアニア対決だ。隣国同士で、どちらもその筋では高音質と評価されており、しかもOZ盤の中にはNZ委託プレスのものもあるというややこしい状況の中で、一体どっちが音がエエねん?という疑問にぶち当たった私は手持ちの盤で比較検証してみることにした。検体(?)はたまたまNZ盤の1stプレスと2ndプレスの両方を所有している「サージェント・ペパーズ」で、OZ盤も含めたトリプルスレットマッチでいってみようと思う。

①ニュージーランド盤 [PCSM-7027]
 NZ盤の「サージェント・ペパーズ」の1stプレス盤であるブルー・パーロフォン・レーベルが中々市場に出てこずに悶々としていた時にeBayで見つけたのがNZ 2ndプレスにあたるこのイエロー・パーロフォン・レーベル盤だ。セラーの説明によるとこれは1969年のプレスで、アルバム「イエロー・サブマリン」用に作った黄パロ・レーベルの残り物を流用したということらしい。本音を言えば当然 1stプレス盤が欲しかったが、2ndプレス盤の音質に対する好奇心と“Heavy Vinyl”という謳い文句、更に$30という安さに釣られて買ってしまった。
 しかし届いたレコードは特に重くもないし盤の分厚さも他のレコードと変わらない。これのどこが “Heavy Vinyl” やねん!と思いながら盤に針を落とす。第一印象は “特に欠点の見つからない平均点の高い音” という感じで全然悪くはないのだけれど、逆に青パロ盤への好奇心が刺激されたのも事実で、“これはやっぱり1stプレスを聴いてみんわけにはいかんなぁ...” といういつもの展開になってしまった(笑)
 で、“似非重量盤” の2ndプレス購入から半年が経って、ようやく念願の1stプレス盤をゲット、NZ$50(約4,100円)なら私的にはお買い得価格だ。レコードが届いてまず最初にやったのは2ndプレス盤との比較。NZ盤の「ペパーズ」はゲイトフォールド(見開き)タイプではなくシングルジャケットなのだが、2ndプレスに比べてスパイン(背表紙)部分が太くて読みやすいし、ジャケット写真の発色も1stプレスの方がキレイだ。盤の重さは149gで 2ndプレス盤よりも3g重い... って何か肉屋にでもなったような気分。
 肝心の音の方は、さすがNZ盤と言っても過言ではないナチュラルなサウンドで、しっかりと腰の据わった中低域と伸びやかな高域のバランスが素晴らしい。2ndプレス盤と比べると薄~いヴェールを1枚剥いだような感じでベースがプリプリと一皮むけた様に聞こえて耳に心地良く、なるほどこれが1stと2ndの鮮度の違いかと納得。しかし単品で聴く分にはそれほど大きな差は無いので、見方を変えれば 2ndプレス盤のコスパが高いということになるのかもしれない。

②オーストラリア盤 [PCSO-7027]
 BANNER STEREOのデザインは「プリーズ・プリーズ・ミー」のイメージが強いので、OZ盤とは言え「サージェント・ペパーズ」との組み合わせは実に新鮮だ。ジャケットはNZ盤とは違ってUK盤と同じゲイトフォールド・タイプで、例のサイケなインナー・スリーヴ(←以前ヤフオクで5,000円で売ってたのを見て笑ってしまった...)もちゃーんと付いている。重さはNZ 2ndプレス盤と同じ146gだ。
 このOZ盤はNZ盤同様にマトがUK盤と同じ機械印字で枝番も同じ -1/-1 ということもあってかUK盤に非常に近い音がする。音の鮮度・生々しさという点ではUK盤に一歩譲るものの、目隠しテストをすればその違いはほとんど分からないのではないか。「ペパーズ」のUK 1stプレス盤はかなりの高値が付いているので “UKオリジナル” に拘らなければかなりお買い得な1枚と言えそうだ。
 肝心のNZ 1stプレス盤との比較だが、例えば「ルーシー・イン・ザ・スカイ」におけるベース音の響きで言うと(←ホンマにベース好きやな...)、弦がキリリと引き締まって聞こえるウェルバランスなNZ盤に対し、ベースの弦が一回り太く感じられてそっちに意識が行ってしまうのがOZ盤。料理に例えると、最後の仕上げとして丁寧に味を調えてあるNZ盤に対し、UKマスターという“素材”の味をストレートに出す音作りなのがOZ盤、とでも言えばいいのか。まぁ普通に聴く分にはどちらも甲乙つけ難い高音質であることは間違いないし、曖昧な結論で申し訳ないが、あとは聴く人の好み次第だろう。それにしてもサイケな万華鏡サウンドの「ペパーズ」3枚連続聴き比べって結構キツイもんがありますな... さっきから頭の中がお花畑状態ですわ...(*_*)

NZ盤で聴く初期ビートルズ

2017-10-07 | The Beatles
 これまでUK盤を皮切りにデンマーク盤、インド盤、ドイツ盤、オーストラリア盤と、良い音でビートルズを聴きたい一心で色んな国のレコードを買ってきた。その大半は十分傾聴に値する各国独自の音作りがなされており、UKオリジナル盤との聴き比べやら何やらで大いに楽しませてもらったが、上記の国々に続いて私が目を付けたのがガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」でも高く評価されていたニュージーランド盤だ。
 以前に行ったアルバム「ヘイ・ジュード」の各国盤聴き比べにおいてもUKオリジナル盤に勝るとも劣らない音を聴かせたNZ盤は私にとってまさに “ビートルズの高音質盤最後の秘境” と言っても過言ではなく、一体どんな音が聴けるのかワクワクドキドキさせてくれる存在だ。私のターゲットはもちろん60年代にプレスされた初回盤で、「アナログ・ミステリー・ツアー」で “一音一音の細部まで手に取るようにわかる、ニュアンスに満ちた繊細な音” といって絶賛されていた70年代や80年代プレスのNZシルバー・パーロフォン盤はパス。“繊細な音” が聴きたければそれこそハイレゾでも聴いてればいいと思うし、ビートルズの熱いロックンロールは60年代の 1stプレス盤をヴィンテージ・オーディオ装置で聴くのがベストと固く信じている私にとって、70年代以降にリリースされた有象無象の再発盤なんぞ無用の長物だ。
 NZ盤1stプレスのセンター・レーベルは「プリーズ・プリーズ・ミー」から「ア・ハード・デイズ・ナイト」までがブラック・パーロフォン(黒パロ)で、「ビートルズ・フォー・セール」から「サージェント・ペパーズ」までがブルー・パーロフォン(青パロ)、そして「ホワイト・アルバム」以降がアップルになっているのだが、いざネットオークションでNZ盤をチェックしてみても、人口が少ないせいでプレス枚数が少ないからか、どのレコードも中々市場に出てこない。特に、状態の良い黒パロ盤を探すのは至難の業なのだが、最近ラッキーなことに「プリーズ・プリーズ・ミー」と「ア・ハード・デイズ・ナイト」の2枚を手に入れることが出来たので、今日はその2枚を取り上げよう。

①Please Please Me [PMCM-1202]
 実はこの8月に大腸内視鏡検査を受けたのだが、腸を空っぽにするために1.5リットルも下剤を飲まされるという生き地獄を味わい、ボロ雑巾のようになって帰宅した私を待っていたのが “ほしい物リストのアイテム1点が出品されています” という Discogs からのメール。開いてみると何と入手困難なNZ黒パロ盤「プリーズ・プリーズ・ミー」がNZ$39(約3,200円)という信じられないような安値で出ているではないか! まさに地獄から天国とはこのことで、テンションが一気にMAXまで急上昇(笑) 垂涎盤入手の高揚感でポリープなんか消し飛んでしまうのがレコード・コレクターという人種なのだ。
 しかし一体何でこんなに安いんや??? と思ってよくよく見ると、盤質がVGでジャケットがGとなっている。Gはさすがにちょっとキツイかもしれんなぁと思ったが、これまで何度も買っている旧知のセラーだったのでダメ元で写真をメールで送ってもらったところ、ジャケットの方はかなりくたびれてはいるが十分許容範囲内。問題なのはレコード本体の方で、A②を縦断するように走る傷が白っぽく光っている。あまり出てこない盤なので出来ればこのチャンスを逃したくはないが、かと言ってあの不気味に白く光る傷が気になって中々購入に踏み切れない。
 困った私はコレクター仲間に画像を添付したメールを送って意見を伺ったところ、「光の加減で何とも言えんけど、確かにちょっとヤバそうな傷やね。でもその値段やったら稀少盤の filler(埋め草)として取りあえず買っとくというのもアリかも...」というアドバイスをもらい、迷いが吹っ切れた私は即買いを決めた。
 届いた盤を恐る恐るかけてみたところ、確かにA②ではポツッポツッと周期的にノイズが入るがそれほど酷くはなかったし、それ以外ではA①前とA⑦前の無音部分でボン!という大き目のノイズが入るぐらいで曲に被っていないので私的には全然OKだ。音の傾向としてはコンプ感が弱めで、UK盤で言うと金パロの凶暴性(笑)を少し緩和してバランスを整えたような感じ。黄パロの低域をスッキリさせたようなサウンドと言ってもいいかもしれない。これが3,200円だなんてめっちゃ得した気分だ。

②A Hard Day's Night [PMCM-1230]
 この「ハード・デイズ・ナイト」のNZ盤、他国盤とは違ってジャケットのタイトルロゴが赤色ではなく白抜きになっているのが新鮮に映るのだが、何より面白かったのがスパイン(背表紙)部分のタイトル表記が A HARD NIGHT'S DAY になっていたこと。ネイティヴでもこんなアホなミスをするんやね...(^.^)


 音の方も個性的で、音圧がそれほど高くないせいもあってかガツン!とくるサウンドではUK盤に一歩譲るが、バックの演奏がやや引っ込み気味な分だけ天才シンガー、ジョン・レノンの歌声が際立って聞こえるので、ヴォーカル・グループとしてのビートルズの魅力を味わいたいのならこのNZ盤が良いかもしれない。「アナログ・ミステリー・ツアー」には “倍音全開でコーラスを切なく聴かせる、いわばジョンのボーカルの「女心」にスポットを当てた音で、ビートルズをぴんからトリオ的に捉えたNZ盤の視点は当然評価されてしかるべき” と書いてあり、最初は何を言いたいのかサッパリ分からなかったが、実際に聴いてみて著者の言わんとする所がようやく理解できた。私はビートルズの若さ溢れるエネルギーの爆発を全身で浴びたい時にはUK盤を、歌手ジョン・レノンの天賦の才を思う存分に堪能したい時にはNZ盤を聴くようにしている。
 このレコード、盤質表記はVGだったが “Have played both sides and although there're lots of light marks, low level crackle, plays really well.” という説明に嘘偽りはなく、ウチのシステムではEX+レベルの良い音で鳴ってくれたので大満足。これでNZ$60(約5,000円)なら安い買い物だ。こういう掘り出し物があるからビートルズの各国盤蒐集はやめられませんわ...(^o^)丿