shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

虫歯のブルース / サザンオールスターズ

2010-09-27 | J-Rock/Pop
 歯が痛い(>_<) この週末、最初は歯がしみるなぁ...程度だったのがどんどん悪化していって、昨日から痛くて痛くてメシも食えず、仕方なしにお茶漬け、うどん、トロロ汁、ヨーグルト、プリンといった流動食で食いつないでいる。運悪く日曜と言うことで歯医者は休み。歯が痛いと音楽聴いてても集中できへんし、気を紛らわそうと大好きな任侠 DVD を見ても全然のめり込めずに5分で切り上げる始末。もう最悪である。近所の薬局で買ってきたケロリン(←オモロイ名前つけよるなぁ...)という鎮痛剤が効いて少しマシになったが、それでもいつものようにブログを更新する気力も体力もなく悶々としながら週末を過ごしていた。今日やっと歯医者に行って診てもらったら歯髄炎とのこと。患部に薬を塗ってもらってようやく痛みが取れ、何とか通常の生活に戻れそうだ。ということで、今日は私の今の状況にピッタリの「虫歯のブルース」(サザンオールスターズ)をご紹介。
 この曲は「インディアン狂想曲」とのメドレーでシングル「ホテル・パシフィック」のB面に入っていたのだが、B面として埋もれさせてしまうには勿体ないくらいの力作だ。まずは B.B.キングばりのコテコテのブルースに乗せて “歯から血ぃ出た... 歯から歯から血ぃ出た Baby♪” とひとしきり桑田節が炸裂した後、一転してテンポアップ、インディアンのような雄叫びをバックに桑田師匠のザラザラしたラフなヴォーカルが疾走する「インディアン狂想曲」へとなだれ込む。お約束のハンド・クラッピングが曲に更なるドライヴ感を与え、“ウゥ~ ランララ♪” というバックのコーラス・ハーモニーも効果抜群、ビートリィなメロディーが現れては消え、消えては現れる展開がたまらない(^o^)丿
 途中、突如乱入してくるハラボーの “虫歯のブルース?んなもなぁ ダメ!” から “な、な、何でぇ?”(桑田)、 “ほら、だからやめろって言ったでしょ!”(関口)という掛け合いを挟んで、ハラボーのキーボード連打にヒロシの爆裂ドラミングと、凄まじいまでのハイ・テンションな演奏が続く。先のハラボーの声をサンプリングして4分過ぎたあたりから畳み掛けるように “ダメ!ダメ!ダメ!ダメ!...” とサウンド・コラージュ的に挿入処理しているところなんかも天才桑田の面目躍如といったところだろう。
 それにしても「虫歯」をネタにこれだけの傑作を作れる人って、桑田師匠をおいて他にいないんじゃないだろうか?やっぱりこの人は日本音楽界の至宝やね。

FUN サザンオールスターズ?
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ゴールデン・ヒッツ / シーナ & ザ・ロケッツ

2010-09-23 | J-Rock/Pop
 今日はシーナ&ザ・ロケッツだ。この前ラモーンズの「アンソロジー」収録の「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ガールフレンド」という曲について “シーナ&ザ・ロケッツあたりが演ればぴったりハマりそう...” と書いたのだが、エエ機会やから久々にシナロケ聴いてみようと彼らのアルファ・レコーズ時代の作品をまとめたベスト CD 「ゴールデン・ヒッツ ~アルファ・イヤーズ~」を引っ張り出してきて “おぉ、懐かしいなぁ~” と思いながら聴いていると、何とこの曲を⑮「マイ・ボーイフレンド」と改題して実際にカヴァーしているではないか!あぁ恥ずかしい(>_<) “持ってるのに気付かない” というのも情けない話だが、せっかくなのでこのベスト盤を取り上げることにした。
 シーナ&ザ・ロケッツは私が高校生の頃結構ハマっていて、鮎川誠のラウドなギターが炸裂する小気味よいロックンロールとシーナのワイルドでキュートなハスキー・ヴォイスが絶妙にブレンドしたサウンドが大好きだった。きっかけは確か彼らの 2nd アルバム「真空パック」に入っていた①「ユー・メイ・ドリーム」。そう、シナロケと言えば何はさておき「ユー・メイ・ドリーム」なのだ。当時は何も分からずにただ “エエ曲やなぁ...(^.^)” と聴き狂っていたのだが、鮎川誠&細野晴臣コンビ作のキャッチーなメロディーに乗ったシーナのユニークなヴォーカルのバックでこれでもかと鳴り響くカスタネットのアメアラレ攻撃は今の耳で聴くと絵に描いたようなスペクター・サウンドだし、隠し味的に使われているテクノなアレンジやお約束のハンド・クラッピングも絶妙だ。特に後半部の “ユメ~、ユメ~、ユメ~♪” と畳み掛けるパートの吸引力はハンパではない。コレは日本を代表するガールズ・ロック・クラシックスの一つと言っていいだろう。
 彼らにはそのハードボイルドなイメージとは裏腹に、②「ベイビー・メイビー」、③「浮かびのピーチ・ガール」、⑭「キス・ミー・クイック」のようなポップな曲も多いが、その本質はやはりシンプル&ストレートなロックンロールにある。中でも私のお気に入りは有名なロックンロール・クラシックスをカヴァーしたナンバーの数々で、ヴァン・ヘイレンの(←私の世代はキンクスやのうてヴァン・ヘイレンなんよね~)⑦「ユー・リアリー・ガット・ミー」なんかまさに鮎川誠のロック魂が炸裂しまくるカッコ良いヴァージョンに仕上がっているし、ストーンズの(21)「サティスファクション」なんかもうハマりすぎていてコワイぐらいだ。CCRの⑩「オー・スージーQ」なんか初めて聴いた時は彼らのオリジナル曲だと勘違いして “カッコエエ曲書きよるなぁ...” と感心しながら(笑)聴いていたものだった。
 勘違いと言えばラストに入っている(22)「レモンティー」、クレジットには “作曲:鮎川誠” となっていたのでてっきり彼らのオリジナルだと信じ込んでいたのだが、後になってヤードバーズやエアロスミスの「トレイン・ケプト・ア・ローリン」を聴いた時は “あっ、コレ「レモンティー」やん!一体どーなってんねん???” と一瞬ワケが分からなくなったのを覚えている。まぁ著作権云々に関してそれだけ大らかな時代だったのだろうが、それにしてもこのドライヴ感溢れるリフのカッコ良さにはゾクゾクさせられるし、中間部のギター・ソロなんか鬼気迫るものがある。このアルバムの中でも一番好きなトラックだ。
 オリジナル曲では気だるいムード満点の⑨「レイジー・クレイジー・ブルース」やサックスを加えた分厚いサウンドをバックに毒を撒き散らすシーナのヴォーカルがカッコ良い⑪「ピンナップ・ベイビー・ブルース」、ポリスの「ロクサーヌ」みたいなイントロに度肝を抜かれる⑬「ラジオ・ジャンク」、ラモーンズを彷彿とさせる超高速ガレージ・ロックンロール⑰「クレイジ・クールキャット」あたりが気に入っている。
 「真空パック」、「チャンネル・グー」、「ピンナップ・ベイビー・ブルース」といった初期の傑作アルバム群はすべて現在廃盤で入手困難らしい。日本のロックにとって何とも嘆かわしい状況だが、ラッキーなことに30年前に買ったウチのオリジナルLPはまだ健在なので、早速この週末にでも自家製 CD 化するとしよう。

シーナ & ロケッツ = ユー・メイ・ドリーム


レモンティー/シーナ&ザ・ロケッツ


Pinup Baby Blues
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Punkles For Sale

2010-09-20 | Beatles Tribute
 9月に入って少年ナイフにラモーンズと、このブログもすっかりガレージ・ロック月間と化した感がある。特にこの1週間はラモーンズ三昧で、愛車の中でもガンガン鳴らしながらヘイホー・レッツゴー状態だ。ラモーンズというと十把一からげにして “パンク・ロック” に分類され、もうそれだけでネガティヴ・イメージを持たれて敬遠されてしまうかもしれないが、彼らは逆立てた髪に安全ピンというアホバカ・ファッションで客に唾を吐きかけたりするイメージ先行型の有象無象UKパンク・バンドとは激しく一線を画す正統派のロックンロール・バンドなのだ。確かに彼らのロンドン公演をきっかけにしてUKパンク・ムーヴメントが爆発したのは歴史的事実だが、当のラモーンズはあくまでも純粋に、贅肉を削ぎ落としたシンプルなロックンロールを追及していただけで、「エンド・オブ・ザ・センチュリー」という彼らのドキュメンタリー・フィルムによると、アナーキズムの象徴みたいなUKパンク・バンドと一緒くたにされてかなり迷惑していたらしい。
 彼らの音楽を聴き込めば聴き込むほど、2分前後で完結するその荒々しいロックンロール・サウンドの中に、かつて私を魅了した初期ビートルズと同質のものを感じる。 “N.Y.パンクの旗手” ラモーンズとビートルズって一見何の接点も無さそうだが実は大アリで、そもそもラモーンズというバンド名自体、ポール・マッカートニーがハンブルグ時代に使っていた “ポール・ラモーン” という芸名に因んで全員が“ラモーン”姓を名乗ったことから来ているし、リード・ヴォーカルのジョーイはジョン・レノンから多大な影響を受けたと公言している。お揃いのファッションにマッシュルーム・カットというのも初期ビートルズを意識しているのは一目瞭然だ。
 そんなラモーンズ・スタイルで珠玉のビートルズ・ナンバーを次々と高速化して楽しませてくれるのがドイツの “おバカ” バンド、ご存じパンクルズである。私は彼らの大ファンでこれまでも「パンク!」と「ピストル」という2枚のアルバムを取り上げてきたが、今日は後期のナンバーを中心に選曲された「パンクルズ・フォー・セール」でいってみたい。
 このバンドに関してはアレコレ分析するのではなく、 “ビートルズのあの曲をパンク・スタイルで演奏するとこんな風になるんか... めっちゃオモロイやん(^o^)丿” といった感じで何も考えずにその血湧き肉躍るロックンロールを楽しむというのが正しい聴き方なのだろう。パロディというのは基本的に “笑ってもらってナンボ” の世界なので、そういう意味でもこのアルバムは笑撃の傑作だと思う。
 まず目を引くのが「アビー・ロード」を模したジャケット。メンバーはもちろん、背後には何故か高くそびえるタワーを合成し、ご丁寧にLPの皺やリング・ウェアーまで再現、CDの裏ジャケの上下には何と Garrod & Lofthouse 社製のフリップバック仕様のラインまで印刷するという徹底したマニアックさに脱帽だ。
 このアルバムの一番の目玉は “アビー・ロードB面メドレー” をパンクロック・スタイルで再現した⑫~⑲だろう。コレって常識的には考えられない無謀な発想で、一歩間違うとムチャクチャな演奏になってしまうのがオチだが、いざ聴いてみるとコレが実に見事なパンク・パロディになっている。表面的にはおバカを装っているが、彼らがずば抜けた音楽センスと高度なテクニックを持っている何よりの証だろう。又、コレを聴くと改めてビートルズ・ナンバーの素晴らしさが再認識できるという効用もあるのではないだろうか。 「アビー・ロード」からの選曲では②「カム・トゥゲザー」や③「ヒア・カムズ・ザ・サン」、⑨「オクトパス・ガーデン」もノリノリだ。後期ビートルズのナンバーを初期ビートルズのシンプル&ストレートなロックンロール・スタイルで楽しめるのだからファンとしては堪えられない。
 正調ロックンロールであるオリジナル・ヴァージョンを更に高速回転させた①「バック・イン・ザ・USSR」や⑦「グラス・オニオン」なんか実に痛快だし、⑤「コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル」のドライヴ感溢れる演奏もめっちゃ斬新でカッコ良い。チップマンクスみたいな⑩「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」にはもう笑うしかないし、ゴスペル調の原曲をあろうことかレゲエのリズムを巧く使って換骨堕胎した⑪「レット・イット・ビー」も、心の広いビートルズ・ファンなら(笑)きっと楽しめると思う。やっぱりビートルズはロックンロールと相性抜群だし、何よりも彼らの “ビートルズ楽しいです感” がダイレクトに伝わってくるところが最高だ。
 とまぁこのように私は彼らの大ファンなのだが、2006年にこのアルバムをリリースして以降、彼らの動静が全く伝わってこないのが少々心配だ。まさか「アビー・ロード」をパロッたジャケットで⑲「ジ・エンド」でシメてるのは “これで最後” っていう意味とちゃうやろな(>_<) ビートルズの公式録音曲213にソロ・ワークスも含めれば、まだまだネタはあるだろうから、これからもラモーンズ・スタイルでビートルズの名曲の数々をどんどんパンク化していってほしいものだ。私はそんな彼らのニュー・アルバムを楽しみに待ちたいと思う。

The Punkles "The Punkles For Sale!" - Promo Video 2006


バンガロウ・ビル

Ramones Anthology (Pt. 2)

2010-09-18 | Ramones
 この CD はディスク1が1976~1980年まで、ディスク2が1981~1995年までの音源で構成されているが、メロディーを重視しながら “シンプル&スピーディー” を絵に描いたようなアグレッシヴなサウンドで疾走するディスク1の70年代ラモーンズ(1st「ラモーンズの激情」から5th「エンド・オブ・ザ・センチュリー」まで)が私は特に好きだ。彼らの “スリーコードでいったれ” 攻撃は流行り廃りの激しいミュージック・シーンにおいて却って新鮮に映るし、不朽の輝きを放っているように思う。
 1st アルバム「ラモーンズの激情」からは何と言っても①「ブリッツクリーグ・バップ」がインパクト絶大で、いきなり爆裂ギターが響き渡るイントロを聴いただけでテンション上がりまくり。イケイケ・オラオラ系パンク・ロックでありながらキャッチーなところが素晴らしい。 “ヘイ・ホー、レッツ・ゴー” の掛け声がどう聴いても“アイ・オー!” にしか聞こえないのも面白い。それにしても「電撃バップ」っていう邦題付けた人、良いセンスしてまんなぁ...(^.^) 続く②「ビート・オン・ザ・ブラット」や③「ジュディ・イズ・ア・パンク」でも基本的には同じ路線のハイスピード・パンクが楽しめる。④「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」はシーナ&ザ・ロケッツあたりが演ればぴったりハマりそうなミディアム調のナンバーで、この①~④の4連発はかなり強烈だ。
 2nd アルバム「リーヴ・ホーム」からはポップな⑩「カリフォルニア・サン」が出色の出来。邦題の「パンク天国」も時代を感じさせて微笑ましい。スピード感溢れる⑧「ギミ・ギミ・ショック・トリートメント」やシンプルなフレーズの繰り返しが快感を呼ぶ⑫「スワロウ・マイ・プライド」なんかも結構エエ感じなのだが、ラモーンズらしさ全開の「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」(邦題の「好き好きスージー!!」には大爆笑!何ちゅーこっ恥ずかしいタイトル付けてんねん...)がベスト盤の選曲から漏れているのがちょっと残念...(>_<)
 3rd アルバム「ロケット・トゥ・ロシア」は良い意味での大衆性とパンクの持つロックな衝動が高い次元でバランスされた、初期3枚の集大成的な1枚だ。「ロックンロール・ハイスクール」の元ネタっぽいノリノリのロックンロール⑮「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」(←何かこういう感じの曲名多いよな...)、ラモーンズの魅力ここに極まれりと言いたくなるようなキャッチー&スピーディーなサビがたまらない⑰「ロッカウェイ・ビーチ」、思わずヘッドバンギングの衝動に駆られる筋金入りのパンキッシュな解釈が嬉しい⑳「サーフィン・バード」と、まさに名曲名演のつるべ打ちである(≧▽≦)
 彼らはバリバリのパンク・ロッカーのイメージとは裏腹に 1st アルバムでクリス・モンテスの「レッツ・ダンス」というオールディーズ・クラシックスを取り上げており、その音楽的な素地の幅広さに驚かされたものだが、この 3rd アルバムではボビー・フリーマンの名曲を見事に高速化した「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」がめちゃくちゃカッコ良い。シングル・カットもされたというのに何でそれがこのベスト盤に入ってへんのやろ???
 4th アルバム「ロード・トゥ・ルーイン」はパンク一辺倒だった初期3作からより音楽性の幅を広げ、サーチャーズの(26)「ニードルズ・アンド・ピンズ」のカヴァーなんかも演ったりして次作「エンド・オブ・ザ・センチュリー」への橋渡しとなる1枚だが、何と言っても私にラモーンズの素晴らしさを再認識させてくれた運命的なナンバー(23)「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」に尽きる。私にとってはこの1曲が入っているだけで名盤だ!
 ディスク2では何といっても痛快無比な疾走系ロックンロール⑤「サイコ・セラピー」が最高だ。圧倒的なスピード感で駆け抜けるこのテンションの高さはハンパではない。初期の傑作群に勝るとも劣らないノリがたまらない(23)「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」もめちゃくちゃカッコイイし、女性を巡るメンバー間の軋轢を赤裸々に歌った①「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」なんかも美メロ連発で結構気に入っているのだが、曲のクオリティーに関しては「エンド・オブ・ザ・センチュリー」以降、明らかに下降線をたどっているように思える。やはり私にとってのラモーンズはデビューから5作目までの、N.Y.パンクの旗手としてブイブイいわしていた頃の作品こそが最高なのだ。

The Ramones - Blitzkrieg Bop


Ramones - Sheena Is A Punk Rocker


Ramones - Rockaway Beach


Ramones - Surfin' Bird

Ramones Anthology (Pt. 1)

2010-09-15 | Ramones
 前回に引き続き今日もラモーンズである。彼らの 5th アルバム「エンド・オブ・ザ・センチュリー」は愛聴盤になったけれど、ちょうど 80's へと移り変わる端境期だったこともあり、それ以降アメリカン・チャートを本格的に追いかけ始めた私にとってシングル・ヒットとは全く縁のないラモーンズの存在はどんどん遠くなっていき、 “ラモーンズは「エンド・オブ・ザ・センチュリー」1枚で十分” という誤った認識で 80's、そして 90's を過ごしてしまった。
 やがて21世紀に入りネットオークションを始め、1枚数百円という “持ってけドロボー” 的な安値で CD が買えるようになって、確かスティーヴィー・レイ・ヴォーンだったかピンク・フロイドだったかの CD をヤフオクで落札した時のこと、2枚まで送料が変わらないということで同じセラーが出している CD の中から安くて良さそうなのをもう1枚、という軽い気持ちで落札したのがラモーンズのキャリア全般にわたって選曲されたこの2枚組ベスト「ラモーンズ・アンソロジー」、無競争で800円だった。
 届いた CD は全58曲入り、しかもシングル・ヒット曲が無いからアルバム「エンド・オブ・ザ・センチュリー」収録曲以外は1曲も知らないというお寒い状況だ。徹底したダウンストローク・リフ主体のストレートアヘッドなロックンロールというスタイルは気に入ったものの、肝心のサウンドはスカスカだったし、如何せんどれもこれも似たような曲に聞こえたのだ。結局その時は2~3回聴いただけで CD棚にしまい込んでしまい、ラモーンズのことはすっかり忘れてしまった。
 それから数年が経ち、私は少年ナイフにどっぷりハマって彼女らの CD を聴き漁っていくうちに 1st アルバム「バーニング・ファーム」のボートラでラモーンズのカヴァー「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」を耳にしてそのカッコ良さにシビレてしまった。イントロの取って付けたような “ワントゥスリフォッ!” はご愛嬌だが、実に洗練されたガールズ・ロックに仕上がっており、 “ラモーンズの CD にこんなエエ曲入ってたっけ?” と慌ててこのベスト CD を取り出して聴いてみるとコレがもうバリバリにカッコエエのである。他の曲も初めて聞いた時とは印象がガラリと違い、グイグイとこちらの心に食い込んでくる。今にして思えば以前聴いた時は小音量で内容チェック、みたいな身の入っていない聴き方をしていたのだろう。やはりロックンロールは大音量で聴かないとその真価は分からない、と大いに反省した次第。ということで、私は少年ナイフ経由でやっとラモーンズの真価の一端を垣間見れた気がした。
 この「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」は「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」と並ぶ私のフェイバリット・ラモーンズ・ナンバーで、ウキウキワクワクするような曲想、思わず一緒に口ずさんでしまいそうなキャッチーなメロディー、勝負所でここぞとばかりに飛来するハンド・クラッピングと、少年ナイフを始めとするラモーンズ・フォロワーたちがこぞって取り上げるのもよく分かる大名曲だ。又、ブルース・スプリングスティーン御大がボストンのライヴでファンのリクエストに応えて演ったヴァージョンを YouTube で見つけたのだが、“バババンバ ババババンバ~♪” と観客と一体となっての大合唱が異常なまでの盛り上がりを見せていてめっちゃ感動的だ。これはもう立派なロックンロール・クラシックスと言っていいだろう。
 頑なにシンプルな8ビート・パンクの美学を貫いたラモーンズはトップ40ヒットこそ生み出せなかったが、そういった “記録” よりも “記憶” に残るロックンロール・レジェンドとして、パンクの好き嫌いに関わらずロック・ファンにとっては必聴のバンドだと思う。 (つづく)

The Ramones-I Wanna Be Sedated lyrics  《↓24 hours ago じゃなくて to go ですね》


Shonen Knife-I Wanna be Sedated


Bruce Springsteen & The E-Street Band - I Wanna Be Sedated (Ramones Cover) - Boston

End Of The Century / Ramones

2010-09-13 | Ramones
 私の音楽の聴き方は典型的な芋づる式である。ひょんなキッカケから予想もしなかった方向へとマイブームが広がっていく。前回少年ナイフによるラモーンズへのトリビュート・ソングを取り上げた時に久々にラモーンズのCDを引っ張り出してきて聴いてみるとコレが結構エエ感じだったので、折角だからガールズ祭りはちょっとお休みして今日はラモーンズでいってみよう。
 そもそも私は決して熱心なラモーンズ・ファンというわけではなかった。彼らがシーンにデビューしたのは1970年代半ば、私はまだ洋楽を聴き始めたばかりでビートルズ関係の音源を追いかけるのが最優先だったし、彼らに関しては “N.Y.のパンクロック・バンド” という程度の認識しかなく、実際に音を聞いたかどうかすら記憶にないというのが正直なところだった。
 それから何年か経ったある日のこと、ラジオからウキウキワクワクするような楽しいロックンロールが流れてきた。 “誰やコレ、めっちゃエエやん!” と思って聴いていると、それはラモーンズの「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」とのことだった。 “ラモーンズって、あのパンク・ロックのラモーンズかいな?” と私は我が耳を疑うと同時に、彼らに対する自分の先入観を木っ端微塵に打ち砕かれた気がした。当時の私はポリスやプリテンダーズといったちょっとクセのあるブリティッシュ・ロックを中心に聴いていたので、彼らのケレン味のないストレートなアメリカン・ロックンロールは実に新鮮に耳に響いた。
 運良くアルバム全曲をエアチェックした私はそのテープを聴きまくった。そのアルバムこそが彼らのオリジナル・アルバムとしては5枚目にあたる「エンド・オブ・ザ・センチュリー」だった。このアルバムはあのフィル・スペクターがプロデュースしておりラモーンズとしては異色作の部類に入るだろうが、だからこそと言うべきか、それまでの彼らのアルバムとは比較にならないぐらい分厚い音でラモーンズのラウドなロックンロールが楽しめて、彼らのアルバムの中では最も愛聴している1枚なのだ。
 後年入手したフィル・スペクターの伝記「甦る伝説」にはこのアルバムのレコーディング・セッションの事が詳しく、そして生々しく書かれていたが、何よりも印象に残っているのはフィルがバンドのメンバーとの初対面で言い放った言葉 “自分達だけでまずまずのアルバムを作りたいか、それとも僕と一緒に偉大なアルバムを作りたいか?” だった。さすがは傍若無人にして唯我独尊な “オレ様” フィル・スペクターである。そして実際にレコーディングが始まるとジョンの「ロックンロール」セッションの時と同じようにトラブル続出のグダグダ状態で、ある時なんか激怒したフィルがベースのディー・ディー・ラモーンの頭に銃口を向けたという。ホンマに危ないオッサンだ。
 しかしたとえピストルを振り回そうが、完成までにめっちゃ時間と予算がかかろうが、出来上がった作品は素晴らしいものだった。まずは何と言っても冒頭を飾る①「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」が素晴らしい。ドンドン ドドドン!と響き渡るドラム(←私なんかこのイントロを聴いただけでもうテンション上がりまくり!)といい、強烈なグルーヴを生み出すサックスといい、コレはまさに80年代に蘇ったウォール・オブ・サウンドだ。バリバリのパンク・ロックを期待していたファンには物足りないかもしれないが、パンクに何の思い入れもないただのポップ/ロック・ファンである私にとっては最高のラモーンズ・ナンバーなのだ。
 ⑩「ロックンロール・ハイスクール」もめちゃくちゃカッコ良い。コレは同名映画のタイトル・チューンとして出ていたものをスペクター・プロデュースの下で再レコーディングしたヴァージョンで、ラモーンズお得意の種も仕掛けもないストレートアヘッドな疾走系ロックンロールが楽しめるところが◎。軽快なエド・ステイシアム・ヴァージョンと重厚なスペクター・ヴァージョン(←ドラムのサウンドが圧巻!)の聴き比べも面白いと思う。
 ④「チャイニーズ・ロック」や⑧「アイ・キャント・メイク・イット・オン・タイム」、⑨「ディス・エイント・ハヴァナ」もラモーンズのパンク・スピリットとスペクターのウォール・オブ・サウンドの邂逅が生み出した名演で、キャッチーでありながら切っ先鋭いハードエッジなサウンドはこのコラボレーションの大いなる成果だろう。
 スペクターが無理強いしたらしいロネッツのカヴァー⑦「ベイビー、アイ・ラヴ・ユー」はさすがにちょっとキツイ(>_<) 確かにリード・ヴォーカルのジョーイ・ラモーンの歌声は男性版ロニー・スペクターと言えなくもない(←そもそもスペクターはバンドではなくジョーイのソロを作りたかったようで、 “新しいバディー・ホリーにしてやる” と言って誘ったらしい...)が、いかにも歌いにくそうに聞こえるし、スペクターの悪い癖である甘ったるいストリングス・アレンジもこのアルバムに全然合っていない。こんな変てこなトラックを 1st シングルに指定してくるスペクターの厚顔無恥ぶりも大したモノだが、アメリカでは大コケしたもののイギリスではチャート8位まで上がったというからさすがはスペクター・マニアの国と言わざるを得ない。
 1st から 4th アルバムまで、徹底したスリーコード・パンク・ロックを武器に突っ走ってきたラモーンズがフィル・スペクターという劇薬(?)の力を借りて作り上げたこのアルバムは、一見水と油のようなN.Y.パンクとウォール・オブ・サウンドがぶつかり合い、そして見事に溶け合って生まれた、アメリカン・ロックンロール史における重要な1枚だと思う。

Rock and Roll Radio - Ramones


Rock 'N' Roll High School The Ramones


Ramones, Baby I love you!

Ramones Forever / 少年ナイフ

2010-09-09 | Ramones
 1ヶ月以上にわたって私を悩ませていたパソコン問題にやっと決着が付いた。腐れ外道のパソコン・メーカー、ゲートウェイは私が修理に出したパソコンを勝手に処分し、代替品と称して全く別機種の “メーカー再生パソコン” を送り返してきたのだが、何とそれが3日で壊れるというお粗末さ(笑) メーカーの言い分は “無いものは仕方がない”、 “同等のスペックのパソコンを渡したのだから文句を言われる筋合いはない” という、木で鼻をくくったような横柄かつ傲慢な対応で、これには温厚なケーズデンキの担当者もブチ切れ。 “おたくの会社はそれでよく客商売してはりますな!”(←よぉ言うた!!!)と怒鳴りつけ、かなり強硬な姿勢で迫った結果、最終的にメーカー側が折れて渋々 “全額返金” となったらしい。ケーズデンキよ、よぉ頑張ってくれた(^o^)丿 これからは電化製品全部おたくで買うからね。それと、最後の最後まで往生際の悪かったゲートウェイ(日本エイサー)はこの世から消えてなくなれ!!!!!
 ということでいつまでも暫定旧型 XP のコマ送り動画や長~い砂時計に付き合っていられないので、返金してもらいに行ったその場でニュー・パソコンを買うことに... 鬼畜な海外メーカーにはもうこりごりなので今度は絶対に国産メーカーだ。まずソニーと東芝(←アフター・サービスはダントツに良いらしい...)はキーボードが特殊な形状で打ちにくそうだったのでパス。NECは在庫が私には不要なブルーレイ対応の高価な機種だけだったのでコレもパス。結局消去法で富士通 Lifenote シリーズの AH550/5A に決定。価格.com の最安値よりも更に値引いてくれはったので、ゲートウェイVistaの返金額に3,000円上乗せしただけで最新のウインドウズ7が手に入った計算だ。愛車とお揃いのクリムゾン・レッドもカッコ良くて気に入っているし、縦横比 16:9 のワイドスクリーン画面に馴染めない(←TVもPCも 4:3 が見やすくてエエのになぁ...)ことを除けば文句ナシの高性能マシンだ。とりあえずは災い転じて福となす、ということでようやく一件落着である。

 とまぁこのように悶々とした日々を過ごしながらも音楽生活面では相変わらず “ガールズ・ロック祭り” を継続中で、今週は大好きな “少年ナイフ・ウイーク” になっている。彼女らの曲は基本的に全部好きだが、私が持っている200曲近いナイフ・ナンバーの中で最も好きな1曲はと問われれば、私は迷うことなく2007年リリースのアルバム「fun ! fun ! fun !」に収められた④「ラモーンズ・フォーエヴァー」を挙げる。
 この曲はタイトルが示すようにパンク・ロックの開祖とも言うべきラモーンズに捧げられたナンバーなのだが、私はこれほど愛情とリスペクトに溢れたトリビュート・ソングを他に知らない。お約束の “ワントゥスリフォッ!” というカウントで始まり、ラモーンズ直系のラウドでパンキッシュなサウンドが炸裂、そして何よりも私の胸を打つのがラモーンズへの憧れをストレートに表現したその歌詞である。全編英語で歌われているが、日本語の大意は大体こんな感じだ;

  ある日ラジオで聞いた素敵なミュージック
  何て楽しく、驚くべき発見
  次の日早速アルバムを買って聞いてみた
  そして自分も始めたパンクロックバンド
  N.Y.の彼らみたいにクールになりたかったから
  皮ジャン 破れたジーンズ
  マッシュルームヘアーカット...

  ラモーンズ フォーエヴァー、ミュージック フォーエヴァー
  ラモーンズ フォーエヴァー、パンクロック フォーエヴァー

  何年もパンクロックバンドを続け
  ついに彼らのオープニング・アクトに指名された
  まるで夢のよう 憧れのスターと同じステージへ
  それは彼らの最後の日本ツアーだった

  私は決して忘れない...
  ラモーンズ最高!

 私はこの歌詞がたまらなく好きなのだが、下に貼り付けた YouTube 動画がこれまた素晴らしい出来で、テンポよく切り替わる画像が疾走感溢れる曲調とバッチリ合っており、何度見ても心にグッとくる。夭折したラモーンズのメンバー達もきっと天国で喜んでいることだろう。
 少年ナイフの歌詞はすべて自分達の感じたことを素直に表現したものである。小賢しいことを考えずにそれをシンプルななロックンロールに乗せるから、聴き手の心にストレートに届き、共感を呼ぶ。このスタイルを30年間も貫き通してきた頑固一徹少年ナイフの音楽はもはやイデオロギーの次元で語られるべきものである。信ずる音楽への深い愛情、そして大好きな音楽を演る喜びがダイレクトに伝わってくる少年ナイフの存在こそがロックンロール・バンドの真にあるべき姿なのではないかと思える今日この頃だ。

Ramones Forever - Shonen Knife

ゴールデン☆ベスト ~ユニバーサル・ヒッツ~ / 少年ナイフ

2010-09-07 | J-Rock/Pop
 「Happy Hour」で楽しさ溢れる少年ナイフ・ワールドに魅せられた私は、いつも通りベスト盤を買ってからオリジナル・アルバムへと進もうと、「ミレニアム・エディション」という CD を購入した。彼女らの主要曲をほぼ網羅し、名曲「デイドリーム・ビリーバー」のナイフ流カヴァーまで収録した選曲は申し分なかったし、全曲英語詞ヴァージョンということで少年ナイフの音楽を洋楽ロック感覚で楽しめるのは新鮮な体験だったが、あのオモロイ日本語詞がケレン味のないストレートなロックンロールに乗っかる様が大好きな私には今ひとつ物足りなかった。そんなこちらの気持ちを見透かしたかのように2006年にリリースされた2枚組ベストがこの「ゴールデン☆ベスト ~ユニバーサル・ヒッツ~」である。
 ディスク1は “ベスト・トラック” ということで、90年代にユニバーサル・ビクターからリリースされた5枚のアルバム「レッツ・ナイフ」(①~⑥)、「ロック・アニマルズ」(⑦~⑩)、「ブランド・ニュー・ナイフ」(⑪~⑬)、「ハッピー・アワー」(⑭~⑯)、「ストロベリー・サウンド」(⑰~⑳)から選曲されている。この5枚の中で私が「ハッピー・アワー」と並んで好きなのが92年に出た「レッツ・ナイフ」で、楽曲自体のレベルもこの2枚が突出していると思う。
 そもそもこの「レッツ・ナイフ」というアルバムは80年代にインディーズ・レーベルからリリースした3枚のアルバムの中から出来の良い曲を選りすぐって再レコーディングしたものに新曲を加えた内容で、インディーズ時代にはスカスカだったサウンドが実にソリッドでマッシヴな音に生まれ変わっている。この辺りは賛否両論あるのだろうが、私は分厚い音でギンギンに迫る新録ヴァージョンの方が好きだ。特に “水金地火木土天海冥~♪” と上昇下降を繰り返しながら痛快無比な少年ナイフ・ワールドが楽しめる①「ロケットにのって」と “Bang bang bang, Twist Barbie~♪” のフレーズが脳内ループを起こす彼女らの代表曲②「ツイスト・バービー」が大好きだ。
 一方、ディスク2は “レア・トラック” という構成になっていて、ミニ・アルバムや外盤、コンピ盤への参加曲にリイシュー・ボーナストラックと、オリジナル・アルバムに未収録の貴重な音源が満載だ。これらの曲を全部揃えようとすると CD を何枚も買わなければならないことを考えると、このディスク2だけでも十分元が取れると思う。
 個々の曲では、私が少年ナイフを知るきっかけとなったカーペンターズのカヴァー⑥「トップ・オブ・ザ・ワールド」がインパクト絶大で、その日本語英語的な発音も含め、あくまでも自然体で音楽を演る楽しさが伝わってくるようなキュートなヴァージョンに仕上がっている。私はこの曲からナイフに入門できてラッキーだったと思う。
 ランナウェイズのカヴァー⑧「チェリー・ボム」は 3rd アルバム「プリティ・リトル・バカ・ガイ」のリイシュー日本盤にひっそりと収められていたボーナストラックで、廃盤のため入手困難だったものがココで聴けて大ラッキー(^o^)丿 荒削りながらも勢いだけで押し切ってしまうところが少年ナイフの真骨頂だ。私としてはガールズ・ロックの聖典のようなこの曲を彼女らが取り上げてくれただけで嬉しい。
 キンクス65年のヒット曲のカヴァー⑤「ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・デイ」も原曲のメロディーを巧く活かしてレイ・デイヴィスもビックリの疾走感溢れるソリッドなロックンロールに仕上げている。こんな隠れ名曲を見つけ出してきて自分達の色に染め上げてカヴァーするというのも立派な才能だろう。ビートルズ、ポール&ウイングス、ジョン・レノン、カーペンターズ、キンクス、ランナウェイズ、ラモーンズ、モンキーズ、ビーチ・ボーイズ、マーサ&ザ・ヴァンデラス... 彼女達がカヴァーしてきたアーティストをこのように並べてみると、ホンマにエエ趣味してるなぁと思う。
 オリジナル曲では⑩「イッツ・ア・ニュー・ファインド」が良い出来だ。ウキウキワクワクするようなポジティヴな歌詞、否が応でも耳に残る “It's a new find, it's a new find, it's a new find...♪” のリフレイン、シンプルそのもののギター・リフと、少年ナイフの魅力を凝縮したようなナンバーだ。キャッチーなギター・リフが生み出す軽快なグルーヴがたまらないナイフ流クリスマス・ソング①「スペース・クリスマス」やストーンズの「アズ・ティアーズ・ゴーバイ」を裏返しにしたような⑪「ミステリアス・ドラッグ・ストア」、タイトルを聞いただけで音が聞こえてきそうな⑫「飲茶楼でめちゃうまかろう」など、 “ウルトラ・エキセントリック・スーパーカルト・パンクポップバンド” 少年ナイフらしさ全開のナンバーが並んでいる。そういう意味ではベンチャーズのパロディ②「ミルキー・ウェイ」は異色とも言えるインスト・ナンバーで、彼女達の芸の幅広さに驚かされてしまう。
 大阪が生んだ日本が誇るガールズ・ロック・バンド、少年ナイフのソリッドなロックンロールはシンプルだが聴く者の心を捉えて離さないサムシングがある。そんな彼女らのポップでハジけたナンデモロックの真髄が楽しめるこのベスト・アルバムは、ロックがまだまだ捨てたモンでないことを教えてくれる痛快無比な1枚だ。

Shonen Knife Top of the World MJ090116


Shonen Knife-Twist Barbie


Shonen Knife (少年ナイフ) - Cherry Bomb (The Runaways Cover)

Happy Hour / 少年ナイフ

2010-09-05 | J-Rock/Pop
 ガールズ・ロックの場合、リード・ヴォーカルが女性であればバックが男であれ女であれ出てくる音は変わらない。だから前回のサディスティック・ミカ・バンドやジューシィ・フルーツ、リンドバーグのように女性ヴォーカルの周りを男性陣が固めている男女混成バンドも含めて日々楽しんでいるのだが、女性のみのバンドとなると極めて少ない。最初のうちは物珍しさも手伝って注目を集めても、肝心の中身が伴っていなければすぐに淘汰され、人々の記憶から消え去ってしまうからだ。そういう意味では以前ここでも取り上げたレズ・ゼッペリンなんか今が正念場だろう。実際、海外のガールズ・バンドで今でもよく聴くのはバングルズを筆頭にランナウェイズとゴーゴーズぐらいだが、日本のガールズ・バンドでは少年ナイフが断トツに好きだ。
 彼女らのキャリアはかなり長く、1981年結成83年デビューというから約30年近くの間日本と海外を股にかけ、ロックンロール一筋で頑張ってきたことになる。彼女らはまず海外でブレイクし、日本に逆輸入される形で92年に国内メジャー・デビューしたらしいが、私が実際に彼女らの音楽を耳にしたのはそのずっと後のことだった。
 私は好きなアーティストのカヴァー盤やトリビュート盤が大好きで、「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」というカーペンターズへのトリビュート CD を買ってきて聴いていた時のこと、あの名曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」が実にユニークな解釈でハッピーなロックンロール・ナンバーと化していた。一発で気に入った私が慌てて演奏者を確認すると、そこには “少年ナイフ” と書いてある。私はそのバンド名だけは知っていたものの、 “少年” というぐらいだからてっきり若い男の子のバンドだと思っていたのでビックリ(゜o゜) ネットで調べてみると女性3人のロックンロール・バンドだった。彼女らの「トップ・オブ・ザ・ワールド」がすっかり気に入った私はアマゾンや YouTube を駆使して他の曲も試聴しまくり、とりあえず気に入った曲の入った CD を買うことにしたのだが、それがこの「ハッピー・アワー」だった。
 まずは何と言っても⑤「すしバーソング」、コレに尽きる。彼女らの一番の魅力は楽しさ溢れる食べ物ネタ満載の歌詞と鼻歌感覚で口ずさめそうなロックンロールの合わせ技だと思うのだが、この⑤こそその究極とも言えるキラー・チューンだろう。 “ハマチ イカ エビ タコ マグロ 貝柱~♪” とスシネタを連発し、ジューシィ・フルーツを思わせるバック・コーラスが添い寝して “最後にあつあつグリーン・ティー~♪” でシメるまで、わずか1分48秒の中に少年ナイフ・ワールドの楽しさが凝縮されている。
 食べ物ネタ・ソングでは⑦「バナナ・チップス」も素晴らしい。エディー・コクランの「カモン・エヴリバディー」みたいなリフに乗って “バナナ・チップス~♪” を連呼するというシンプルな楽曲ながら、タイトでグルーヴィーなリズムにお約束のハンド・クラッピング、そしてキュートなヘタウマ・ヴォーカルが絶妙な味わいを醸し出しており、聞き終わった後には脳内リピート必至、知らず知らずのうちに “バナナ・チップス~♪” と口ずさんでしまいそうな楽しいナンバーだ。尚、このアルバムには両曲の英語ヴァージョン⑮⑯も入っていて日本語版との聴き比べも一興だろう。
 このアルバムには他にも食べ物ネタ曲が満載で、男性にはとても思いつかないような歌詞が楽しい③「クッキー・デイ」に④「ホット・チョコレート」、デヴィッド・ボウイの「チャイナ・ガール」みたいなイントロに続いて炸裂するヘヴィーなギターに大爆笑の⑩「ギョーザ」と、もうやりたい放題だ(笑) 彼女らの曲は日本語ヴァージョンと英語ヴァージョンの2種類存在する場合が多いのだが、ユーモア感覚溢れる歌詞の面白さをダイレクトに楽しむにはやはり日本語ヴァージョンを中心に収録した日本盤に限ると思う。
 食べ物ネタ以外では②「コンニチハ」が抜群にカッコイイ(≧▽≦) ポップでキッチュなナイフもいいが、ラモーンズを彷彿とさせるアグレッシヴでパンキッシュなロックンロール・サウンド全開のナイフも大好きだ。“Konnichiwa konnichiwa, welcome to our show... let's have a good time tonight... it's a show time... we came from Osaka, Japan!!!” って、ライヴでこれ以上のオープニング・ナンバーは考えられない。オーディエンス総立ちで盛り上がりまくる様が目に浮かぶようだ。
 その後私はすっかりナイフ・ファンになって CD もかなり買ったが、楽曲の充実度、ポップさとガレージ性のバランス、そして奈良美智によるジャケット・デザインの愛らしさをも含め、このアルバムこそが彼女らの最高傑作だと思う。

SHONEN KNIFE Konnichiwa! Tribute 2


すしバーソング


Shonen Knife - Banana chips

The Best! Menu / サディスティック・ミカ・バンド

2010-09-03 | J-Rock/Pop
 B'zやエルヴィスといった男性ヴォーカル一辺倒だった8月の反動か、先週あたりから女性ヴォーカル、特にマイラバを始めとする日本のガールズ・ロック/ポップスをよく聴いている。元々大好きなジャンルだけにネタには不自由しないので、マイラバのような癒し系ポップスからバリバリのロックンロールまでガンガン聴きまくっている。
 私が “日本のガールズ・ロック” と聞いて真っ先に頭に浮かぶのはサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにお願い」である。この曲こそがまさにガールズ・ロックの原点であると同時に未だに超えられていない最高峰だと思っている。実際のところミカ・バンドの全作品中に占めるミカのリード・ヴォーカル率は思った以上に低いし、そもそも女性はミカ1人なので彼らはガールズ・ロック・バンドとは呼べないのだが、何と言ってもこの1曲のインパクトが絶大なので、 “ガールズ・ロック祭り” にミカ・バンドは欠かせない。
 私のミカ・バンドとの出会いは中学生の時で、ラジオから流れてきた「タイムマシンにお願い」を聞いて圧倒され、すぐにアルバム「黒船」を購入。この辺りの経緯は「黒船」の時に書いたと思うのでここでは省くが、とにかく「黒船」がめちゃくちゃ気に入った私はミカ・バンドの2枚目は何を買おうかと考えた。1970年代後半の話だからもちろん今のように手軽にネットでディスコグラフィを調べたり試聴したりすることは出来ない。そこで思いついたのがベスト・アルバムである。まずはベスト盤を買って気に入った曲を探し、次にそれが入ったオリジナル・アルバムへと進んでいけばいいと考えた私は、早速この「The Best! Menu」を買ってきた。
 このアルバムは13曲入りで、オリジナル・アルバム収録曲としては、1st アルバム「加藤和彦とサディスティック・ミカ・バンド」からA②「怪傑シルヴァー・チャイルド」、A③「空の果てに腰かけて」の2曲、2nd アルバム「黒船」からA④「タイムマシンにおねがい」、A⑥「四季頌歌」、B②「颱風歌」、B⑤「さようなら」の4曲、3rd アルバム「Hot! Menu」からB③「ヘーイごきげんはいかが」、B④「ファンキーMAHJANG」の2曲、4th アルバム「Mika Band Live in London」からB⑥「塀までひとっとび」の計9曲、それにシングルのみで発売されていたA①「サイクリング・ブギ」とA⑤「ハイ・ベイビー」、未発表ナンバーだったA⑦「お花見ブギ」、そしてバンドがロンドンへ飛び立つ直前に神田共立講堂で開かれた日本でのラスト・ライヴの未発表テープからB①「マダマダ産婆」が選ばれている。
 この LP は前期ミカ・バンドの曲が並ぶA面の方が好きで、私はいつもそちらばかり聴いていた。正直言って後期の3rd アルバム「Hot! Menu」は器楽志向が強すぎて、テクニック的に上手いのは十分わかるのだが持ち味のカラフルなポップさが後退しており、そのフュージョンっぽいサウンドにはイマイチ馴染めない。私にとって、感心はしても感動はしないタイプの音楽だ。ミカ・バンドはやっぱり 1st と 2nd に限ると思っている。
 個々の曲について言えば、“史上最強のガールズ・ロック” な A④「タイムマシンにおねがい」は別格として、まずアルバム冒頭を飾る A①「サイクリング・ブギ」がごっつうエエ感じ。風を切って走るサイクリングの心地良さをサウンド化したような軽やかなノリが絶品で、飄々としたトノバンのヴォーカルに絡む洒脱なコーラス・ワークも見事なグルーヴを生み出している。因みにこの曲ってダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「スモーキン・ブギ」の元ネタになってるような気がするので興味のある方は1度 YouTube で聞き比べてみて下さいな。
 A②「怪傑シルヴァー・チャイルド」は和製クリームみたいなヘヴィー・サウンドにビックリ(゜o゜)  様々な音楽的要素をごった煮風に詰め込んだこの何でもアリの精神がいい。 A⑦「お花見ブギ」はアクの強いヘタウマ・ヴォーカルで毒を撒き散らすミカの独壇場。 “なんと!お花見ブギウギ~♪” で炸裂するミカ節のケタ外れのパワーは圧巻だ。B面では曲・演奏・アレンジと全ての面で最高のミカ・バンド・ミュージックが展開される B②「颱風歌」と、熱気溢れるロンドン・ライヴの様子が伝わってくる B⑥「塀までひとっとび」(英題は「Suki Suki Suki」)が気に入っている。特にこの B⑥はオリジナルのスタジオ録音ヴァージョンとは違って歌詞の一部が英語で歌われており、そこがもうめちゃくちゃカッコイイのだ。
 結局この「The Best! Menu」という LP は CD 化されることはなく、その代わりに数曲を追加した「20 Songs to 21st Century」というベスト CD がリリースされた。ベスト盤として考えれば7曲も多い CD の方がお買い得に決まっているが、バンドの系譜を図解したような無味乾燥なジャケットはあまり好きではないし、アルバム・タイトルも芸が無い。3rd アルバム「Hot! Menu」をもじった洒落たタイトル・センスも含め、私にとってミカ・バンドのベスト盤といえばやっぱりこのアルバムなのだ。

タイムマシーンにお願い♪


サイクリング・ブギ


お花見ブギ

evergreen / My Little Lover

2010-09-01 | J-Rock/Pop
 修理に出していたパソコンがやっと戻ってきた。やっとこれで快適にネットが見れるとホッとしながら梱包を解いてみてビックリ... 全然違うパソコンが入っているではないか!同封されていた修理報告書を見ると “ケーブル不良及びモジュール動作不良による本体不具合を確認し、交換部品がないため NV53A-H32へ製品交換致しました” とのこと。確かメーカーには販売した製品の部品に対して8年間の保存責任があったはず... 何で1年半前に出た新製品の部品が無いねん?しかも持ち主に無断で製品交換って一体どーゆーこっちゃ?その製品交換というのも新品にではなく “メーカー認定再生修理パソコン” という中古のパソコンで、それも word も何も入ってない廉価版にである。それで “修理完了しました” とは呆れてモノも言えない。1ヶ月も待たした結果がコレかよ... 客をナメとんのか!ゲートウェイっていくら海外のメーカーとはいえ、ここまで酷いとは思わなんだ。早速仲介のケーズデンキに電話して怒鳴りまくり、メーカーに圧をかけて誠意ある対応をさせるようクンロクを入れといた。とりあえずこの問題が解決するまではそのパソコンをお使い下さいとのことだが、起動するたびに gateway の文字が画面に出てきて怒りが沸々と湧いてくる。しかもその再生パソコン、何と3日で壊れてしまった(笑) こんな糞メーカーの製品はもう二度と使いたくない(>_<)

 ということでこの数日間は非常に不愉快な日々を過ごしたのだが、そんなグルーミーな気分を和らげてくれたのが他でもないマイ・リトル・ラヴァー akko の癒し系ヴォーカルだった。私が持っている彼らのアルバムは全部で4枚。オフィシャルなベスト盤「シングルス」、裏ベストとでも言うべき「セルフ・コレクション」、シングルB面まで網羅した台湾盤「単曲集」といった編集盤が3枚と、1st アルバム「evergreen」なのだが、特にこの「evergreen」はオリジナル・アルバムでありながら収録曲のクオリティーが抜群に高く、アルバム自体が “もう1枚のベスト盤” みたいな感じなのだ。
 収録されているシングル3曲のうち、⑤「Hello, Again ~昔からある場所~」に関しては以前「シングルス」を取り上げた時にこの曲への思いのたけをぶちまけたので詳細は省くが、とにかくビートルズが好きな人なら必ず気に入りそうな邦楽史上屈指の大名曲とだけ言っておきたい。他の2曲もキャッチーな旋律のアメアラレ攻撃が圧巻で、生硬な akko のヴォーカルが楽しめるデビュー曲⑨「Man & Woman」は後の活躍を予感させるようなマイラバ的ポップ・アレンジが随所に聴けるし、 2nd シングル③「白いカイト」は “危うさ” を内包した舌っ足らずな彼女の歌声と郷愁を誘う懐かしいメロディーが絶妙にマッチしていて言うことナシ!この3曲は友人のマイラバ・ファン O ちゃんの超お気に入りらしいが、私もこの3曲こそがマイラバの原点だと思う。
 このアルバムはシングル曲以外にもメロディアスなナンバーが目白押しで、日本のジェフ・リンと化した小林武史の鋭いポップ・センスに脱帽だ。①「マジック・タイム」はウキウキするようなサウンドに乗って akko の浮遊感に満ちたヴォーカルが乱舞する魅力的なナンバーで、 “チクタク チクタク チクタク...♪” というフレーズが実に効果的に挿入されている。アルバム冒頭を飾るに相応しい1曲だろう。②「Free」も「帰ってほしいの」や「ABC」といった初期ジャクソン5のヒット曲に通じる楽しさに溢れたポップ・チューンで、この①②③と続く流れはまさにマイラバ流ポップス玉手箱状態だ。微妙な危うさを持った akko の歌声が引き立つアレンジのセンスが見事な⑥「My Painting」、聴けば聴くほど味が出る静謐なバラッド⑦「暮れゆく街で」、ベース主導のファンキーなノリがエエ感じの⑧「Delicacy」と、このアルバムは実に多様な楽曲群の集合体でありながら不思議な統一感を醸し出しており、しかもそれら1曲1曲が極限まで磨き込まれているところが凄い。
 このような珠玉の名曲揃いの中でも私がとりわけ気に入っているのが④「めぐり逢う世界」と⑩「evergreen」だ。④はイントロを聴いただけで名曲の予感がするナンバーで、サビから一気にたたみかける展開は快感の一言!こんな名曲を惜しげもなくシングルB面にしてしまうのだから、当時のマイラバの充実ぶりが分かろうというものだ。⑩は何よりもまず眼前に広がる大草原をイメージさせる壮大な曲想に圧倒される。それが緻密に計算され尽くしたアレンジによってアルバムのラストを締めくくるに相応しいナンバーに仕上がっているのだ。特にブラスやコーラスの絡ませ方は職人芸と言ってもいいくらいの見事なもので、まさに天才プロデューサーの名に恥じない素晴らしい仕事だと思う。
 J-Pops 界の鬼才小林武史が個性の塊のような akko のヴォーカルを得て、洋楽ポップスと昭和歌謡のオイシイところを巧くブレンドさせて作り上げたこの「evergreen」というアルバムは “心に響くメロディーの宝庫” と言っていいくらいの大傑作で、当時 J-Pops を聴き始めたばかりの私にとっては実に衝撃的な内容だった。ひょっとすると90年代邦楽アルバムの最高峰と言ってもいいかもしれない。洋楽であれ邦楽であれ、ジャズであれロックであれポップスであれ、音楽とは突き詰めれば曲の良し悪しこそがすべてなんである。あれから何百回聴いたか分からないが、リリースから15年経った今聴いても全く古さを感じさせない素晴らしさ... まさにタイトル通りのエヴァーグリーンな1枚なのだ。

MY LITTLE LOVER "白いカイト" Video Clip


My Little Lover めぐり逢う世界


MY LITTLE LOVER evergreen