shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Sophie Burrell のHRギター・カバー特集

2022-12-14 | Rock & Pops (80's)
 この前YouTubeでエディー・ヴァン・ヘイレンのライヴ映像を見ていた時のこと、右端の関連動画欄の中にひときわ異彩を放つ女性ギタリストの姿があった。彼女の名前は Sophie Burrell といって、「You Really Got Me」をギターでカバーしているらしいのだ。“またどこぞの女性ユーチューバーが再生回数を稼ぐためにスケベな格好でなんちゃってカバーしとるんかな...” という考えが一瞬頭をよぎったが、“それにしてもよりにもよってヴァン・ヘイレンを選ぶとは怖いモン知らずな女やな...” と興味を引かれ、とりあえず見てみることにした。
 最初の1:30ほどスポンサーへのヨイショが終わると(←これマジうざい...)彼女がおもむろにギターを弾き始めた。太ももむき出しで脚を組んでギターを抱え、リズムを取りながら気持ちよさそうにギターを弾いていくのだが、余裕綽々という感じでエディーの必殺フレーズをなぞっていく。うわぁ、これはガチやん!と感心し、「Ain't Talkin' 'Bout Love」「Panama」「Judgement Day」といった他のVHナンバーのカバーを立て続けに見てみたが、どれもこれも素晴らしいプレイの連続で、私はすっかりこの女性ギタリストが気に入ってしまった。
YOU REALLY GOT ME - VAN HALEN | Guitar Cover by Sophie Burrell

AIN'T TALKIN' 'BOUT LOVE - Van Halen | Guitar Cover by Sophie Burrell

PANAMA - Van Halen | Guitar Cover by Sophie Burrell

JUDGEMENT DAY - Van Halen | Eventide MicroPitch Delay

 ヴァン・ヘイレンのカバーを一通り堪能した後、“他にはどんな曲やってるんやろ?” と思って動画を見てみると、モトリーの「Kickstart My Heart」やポイズンの「Nothin' But A Good Time」、ガンズの「Sweet Child O' Mine」と、私の嗜好のスウィートスポットを直撃するような神選曲だ。私は大コーフンしながら次から次へと彼女の動画を見ていったが、そのどれもがオリジナル・アーティストへの愛情と敬意に満ちた見事なプレイで、動画の全編から “私はこの曲が大好きなんよ!!!” 感がビンビン伝わってくる。80'sロック好きにはたまらない名カバー連発だ。
KICKSTART MY HEART - Mötley Crüe | Guitar Cover by Sophie Burrell

NOTHIN' BUT A GOOD TIME - Poison | Guitar Cover by Sophie Burrell

SWEET CHILD O' MINE - Guns N' Roses Guitar Solo | Guitar World x Martin Guitar #NoLimitsChallenge

 しかし私が彼女を “只物ではないな...” と思った最大の理由は80'sハードロック・クラシックスに混じってピンク・フロイドのカバーを演っていたこと。“へぇ~、このネーチャン、フロイドも好きなんか...” と興味を引かれて早速見てみたところ、これがもう空恐ろしいほどの完コピでビックリ。大袈裟ではなく、まるでデビッド・ギルモアが憑依してるんちゃうかと思ってしまうくらい本物にそっくりなのだ。彼のエモーショナルなプレイを再現するのはハードロックの速弾きを真似るのとは又違った難しさがあると思うのだが、彼女はフレーズだけでなくギルモアの微妙な音色の彩や味わい、キメ細やかなニュアンスまでも見事に再現しているのだから驚くなという方が無理。この「Top 3 Pink Floyd Solos」という動画には彼女のピンク・フロイドへのリスペクトが凝縮されていて大いに感銘を受けた。特に「Shine On You Crazy Diamond」の情感溢れるソロは鳥肌モノだ。
Top 3 Pink Floyd Solos | Guitar Cover by Sophie Burrell

 ということで、今日はYouTubeで偶然見つけた凄腕女性ギタリストを取り上げたが、今回の一件で改めて “80年代ロックって名曲の宝庫やなぁ...” との思いを強くした。そういえばこの前たまたま「Best Hit USA」で最新のUSシングル・チャートを見る機会があったのだが、どれもこれも無味乾燥なゴミ曲ばっかりで呆れてしまった。今のアメリカ人ってホンマにこんな眠たい曲ばっかり聴いとるんかいな??? そんな退屈きわまりないコンテンポラリー・ヒット・チャートを見るにつけ、自分はホンマに音楽のエエ時代を体験できてラッキーやったなぁとほくそ笑んでいる今日この頃だ。

各国盤頂上決戦⑪「Asia」

2022-05-22 | Rock & Pops (80's)
 “各国盤頂上決戦”企画も何やかんやで11枚目に突入。今回は70年代末期の混迷に終止符を打ち、キャッチーな80'sミュージック黄金時代の幕開けを高らかに宣言した歴史的名盤「Asia」を取り上げたい。

①インド盤(GHS-1-2008-ED1 STERLING EDP MISFISM5 / GHS-1-2008-ED3 EDP MISFISM6)
 「Asia」の各国盤でまず最初に買ったのがこのインド盤だ。ちょうどインド盤のビートルズ関連LPで入手可能なものはほぼ手に入れ終えて、その独特の音作りが大いに気に入り、“他のアーティストのレコードもインド盤の音で聴いてみたいな...” と思って色々と探していた時に、eBayに$75で出ていたのを見つけて衝動買いした1枚だ。後で知ったことだがインド盤の「Asia」って結構レアで滅多に市場に出てこないらしいので、盤質の良いのを安く手に入れることが出来て(←相場は$200~250くらい)ラッキーだった。音の方は期待通りの素晴らしさで、“これは買って良かったぁ!” と笑いが止まらない高音質盤だ。特筆すべき違いはその音場の広さで、インド盤の特徴である倍音がよく出ているし、音圧も申し分ない。A①「Heat Of The Moment」の爽快感も格別だが、A②「Only Time Will Tell」やB③「Cutting It Fine」の繊細な音作りもさすがはインド!という感じだ。

②トルコ盤 (Time 131 A / Time 131 B)
 インド盤の大当たりに気を良くして買ったのがトルコ盤の「Asia」だ。€9.99という安値で買えてしめしめと思っていたのだが、実際に聴いてみると薄っぺらい音で、高音がきつくてトルコ盤の良さである中域の分厚さが全く感じられないし、更に悪いのは低音がめちゃくちゃショボくてカール・パーマーがコレ聴いたらブチギレるんちゃうかと思うほどダイナミズムに欠けているのだ。曲間の無音部分でブ~ンという電磁ノイズみたいなのが聞こえるのもマイナスポイント。各国盤の中でもトルコ盤は特に当たり外れが大きいが、これは残念ながら大ハズレ盤といっていいだろう。

③ペルー盤 (SE-8539-A / SE-8539-B)
 「Asia」の各国盤はインドとトルコで一段落していたのだが、去年の夏にB-SELSでペルーとイスラエルという新たなターゲットを教えてもらい、性懲りもなく買ったのがこのペルー盤「Asia」だ。大当たりのインドと大ハズレのトルコの後で“ペルーはどうやろ?” と好奇心マンマンで盤に針を落としたのだが、独自カットの「Asia」ペルー盤はめっちゃハイ上がりの音作りで、正直言ってちょっとやりすぎちゃうかと思えるくらい耳にきつい。そのせいで相対的に中低音が弱く、トルコほど酷くはないものの全体的なバランスとしてはイマイチで、起伏に乏しく音がのっぺりしている。まぁ$8という “持ってけドロボー”価格だったのが不幸中の幸いだった。

④イスラエル盤(GHS-1-2008-S8 85577A Q STERLING + SLM △ 1186 / GHS-1-2008-S6 + SLM △ 1186-X STERLING 85577 BQ)
 インド(○)、トルコ(×)、ペルー(×)、と1勝2敗(?)で迎えた「Asia」の各国盤蒐集だが、最後に買ったイスラエル盤($14.99)は起死回生の大当たり盤で大喜び(^o^)丿 さすがに音場の広がりではインド盤に一歩譲るが、音のエネルギー感という点では勝っており、USやUKの最初期プレス盤(←エイジアみたいなイギリスのバンドがゲフィンみたいなアメリカのレコード会社からアメリカ市場向けの音作りのレコードを出した場合、オリジナルはUK盤なのかUS盤なのか、どっちなんでしょうね?)と比べても遜色のない... いやひょっとすると凌いでいるんじゃないかと思えるくらいパワフルでダイナミックなサウンドが炸裂する。ジョン・ウェットン、スティーヴ・ハウ、カール・パーマー、ジェフ・ダウンズという手練れの名手たちが生み出す壮大な80'sポップ・ロックの一大絵巻をド迫力サウンドで楽しめて言うことナシの逸品だ。

Asia - Heat Of The Moment (Video)

Pat Benatar特集③

2022-03-11 | Rock & Pops (80's)
パット・ベネター特集パート3は何かが吹っ切れたかのようにロックに回帰した1985年から最後のトップ20ヒットを放った1988年まで。

⑦Seven The Hard Way
 彼女の全アルバム中で私がベストと思うのは2ndの「Crimes Of Passion」とこの「Seven The Hard Way」だ。前作の「Tropico」は「We Belong」という名曲を含んではいたものの、アルバム全体の印象としてはヌル過ぎて、彼女にバリバリのロックンロールを求めてしまう私には退屈な内容だった。
 しかしこのアルバムからの先行シングルとしてリリースされたB③「Invincible」を聴いた時はその緊張感溢れるスリリングな歌いっぷりに “おぉ、めちゃくちゃロックしとるやん!” と大喜びで毎日毎日アホみたいに聴きまくった。表現力に深みを増して女性ヴォーカリストとしてさらに高い次元に到達したパットのヴォーカルと初期のハードロック・スタイルへの回帰によるアグレッシヴなバックの演奏の組み合わせは文字通りインヴィンシブル(無敵)と言えるもの。まさに “ロックンロール・クイーンの帰還” と言いたくなる1曲だ。
Pat Benatar - Invincible (Official Video)


 アルバムの発売と同時にシングル・カットされたのが、曲名を人前で口にするのも恥ずかしいA①「Sex As A Weapon」だ。最初にこのタイトルを聞いた時は我が耳を疑ったが、実際に曲を聴いてみるとその前に “Stop use the...” が付いており、要するに “性を武器として使っちゃダメ!” という至極真っ当な歌詞で一安心。私は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったマドンナへの痛烈な皮肉と受け取ったが、キャリアの初期にセクシー系シンガーとして売り出そうとしたレコード会社(←そういえば黒のレオタード姿で歌っとったなぁ...)への当てつけ説(笑)もあるようだ。曲の方は地味なAメロから一転してサビで大いに盛り上がり、そのまま一気に畳み掛ける展開がたまらんたまらん(≧▽≦)  要所要所でここぞとばかりに必殺のフレーズをキメまくるニールのギター・プレイも痛快そのものだ。
Pat Benatar - Sex As A Weapon


 私が考える名盤というのはシングル曲以外にもいわゆる “隠れ名曲” がいっぱい入っているアルバムのことだが、このアルバムは上記のシングル曲以外の曲のクオリティーも非常に高い。そんな中でも特に気に入っているのがB①「7 Rooms Of Gloom」で、ハードでありながらメロディアスにロックするという難題を軽くクリアしているところが凄い。彼女の疾走系チューンの中でも三指に入ると言っていいくらいスリリングなナンバーだ。一転してB②「Run Between The Raindrops」は文句なしに彼女のスロー・バラッドの最高傑作と言えるキラーチューンで、映画の印象的なシーンの BGM とかに使ったらピタリとハマりそうなくらい流麗なメロディーが心に響く名曲だ。
Pat Benatar - 7 rooms of gloom

Pat Benatar - Run Between The Raindrops - Video


⑧All Fired Up
 今回のパット熱再燃のきっかけとなった「All Fired Up」は1988年に出た彼女の8thアルバム「Wide Awake In Dreamland」からのファースト・シングルで、ラジオで初めて聴いて一目惚れならぬ一耳惚れするくらい気に入ったのだが、アルバムの方はこの曲以外パッとしなかった(←ダジャレじゃないです...)こともあって、アルバムの代わりにこの12インチ・シングルを買って何度も何度も繰り返し聴いていた。やっぱりパットにはこの曲のようにライヴで盛り上がる疾走系ナンバーが一番合っている。ロックンロールは小難しい理屈抜きに一にも二にも “ノリ” を楽しむ音楽だと信じる私の嗜好のスイートスポットを直撃するアッパー・チューンで、パワー全開で突っ走るパットの一人追っかけ二重唱が音楽を前へ前へと押し進めていくドライヴ感を生んでいる。30年以上経った今でも我がロック魂を激しく揺さぶる名曲名唱だ。
Pat Benatar - All Fired Up (Official Video)

Pat Benatar特集②

2022-03-09 | Rock & Pops (80's)
パット・ベネター特集パート2はある意味最も80'sらしい楽曲が並ぶ1982年から1984年まで。

④Get Nervous
 デビュー・アルバムで己のスタイルを確立し、全米№1獲得まで順風満帆できたパットの4thアルバム「Get Nervous」はよりポップな方向へと舵を切り、80'sらしくシンセを活用して表現の幅を広げようという試みの跡が随所に見られる。B④「Tell It To Her」のシンセなんかめっちゃフォリナーの「4」っぽくて思わず笑ってしまうが、一番成功しているトラックはアップテンポのA③「Anxiety」で、この曲の持つ疾走感に拍車をかけるようにシンセを隠し味的に使っているところが◎。この“隠し味”のサジ加減が絶妙なのだ。
 シングル・カットされたA①「Shadows Of The Night」も正統派のポップロックで、彼女の力強いヴォーカルがこの曲をより魅力あるものにしているし、緊張感漲るA⑤「The Victim」やブロンディーっぽいB①「Little Too Late」など、多彩な楽曲が並んでいて聴き応え十分なアルバムになっている。
Pat Benatar - Anxiety - live - best performance - HQ


⑤Live From Earth
 このレコードは彼女にとって初のライヴ・アルバムながらB面のラスト2曲はスタジオ新録という、ちょうどキッスの「Alive Ⅱ」みたいな変則的な作りになっている。ライヴの方がスタジオ録音よりも彼女の持ち味を活かせると思うので、どうせなら1枚丸ごとギンギンのロックンロール一気通貫のライヴ・アルバムを作ってほしかったというのが正直なところ。特にB③「Heartbreaker」なんかもう言葉を失うカッコ良さだ。
 スタジオ録音のB④「Love Is A Battlefield」は表現力に磨きのかかった彼女のクールなヴォーカルが冴えわたる名曲名演で、全米シングルチャートで5位という、彼女にとって「We Belong」と並ぶ最大のヒット曲になったのもうなずけるが、パットがバックダンサーを従えて踊る例のビデオクリップは今となっては陳腐というか失笑を禁じ得ない。てゆーか、ロッカーは基本的に踊ったらアカンと思うのだが、みなさんはどう思いますか?
Pat Benatar - Love Is A Battlefield (Official Music Video)


⑥Tropico
 スタジオ録音盤としては「Get Nervous」から2年ぶりとなるこの「Tropico」は彼女のキャリアの中で最もソフィスティケートされた作品で、このアルバムの第一印象は “ロックンロールはどこへ行ったんや???” という失望感だった。確かにシングル・カットされたA②「We Belong」とB①「Ooh Ooh Song」はすごく良い曲だと思うが、それ以外に印象に残るメロディーを持った曲が無いし、演奏の方もロック魂が感じられない平凡なポップスに堕してしまっているように思う。
 私がパットに求めるのは一にも二にも “ハードにロックする” こと。“シャウトせずに何のパット・ベネターか!” と信じてそれまで生きてきた私にとってはアルバム1枚通して聴くのはキツいので、いつも上記のシングル2曲をつまみ聴きしている。特に「We Belong」(←イントロに彼女のヴォーカルを被せたシングル・ヴァージョンのアレンジの方が数段上だが...)という曲はそんなロックンロール・ジャンキーの私ですら思わず平伏して頭を垂れて聴き入ってしまうほど洗練された作品に仕上がっており、音楽のジャンルやスタイルを超越した “名曲名演” として激しく胸を打つ。バックの合唱隊を向こうに回して圧倒的な存在感を見せつけるパットの女性ヴォーカリストとしての成熟を感じさせる屈指の名唱だと思う。
Pat Benatar - We Belong (Official Video)

Pat Benatar特集①

2022-03-08 | Rock & Pops (80's)
 私は何の前触れもなく突然ある曲が頭の中で鳴り出して止まらなくなることがよくあるのだが(←ないですか?)、先週の土曜日にふとしたことからパット・ベネターの「All Fired Up」が脳内リフレインを始めた。ちょうどヒマだったのでオトシマエをつけようと手持ちのパットのレコードを片っ端から聴きまくったところ、すっかり気分は80'sへとトリップ。久々に聴くパット・ベネターのカッコ良さにすっかりやられてしまい、やっぱり80'sの曲はキャッチーでエエなぁ...などと感心しながら週末はずーっとパット・ベネター祭りで盛り上がった。早速このブログでも彼女を大特集... まずはデビュー・イヤーの1979年から全米を制覇した1981年まで。

①In The Heat Of The Night(CHE-1236)
 1979年、イギリスでは見かけ倒しのロンドン・パンクが、アメリカでは中身のない軽薄ディスコが流行っていて、真正ロックンロール好きの私はヴァン・ヘイレンやボストンを聴いて渇きを癒していたのだが、そんな中、彗星のように現れたのがパット・ベネターだった。“女性版ロバート・プラント” と言っても過言ではないハイトーンのシャウトをブチかます彼女に惚れ込んだ私は速攻でデビュー・アルバム「In The Heat Of The Night」を買いに洋盤屋へと走った。同じ系統の女性ヴォーカリストとしてはハートのアン・ウィルソンがいたが、声質の違いなのかパットのヴォーカルはキンキンこないので私はパットの方が好きだった。何はさておきA①「Heartbreaker」のアグレッシヴなサウンドをアンプのヴォリュームを上げて全身で受け止めるべし。泰平の眠りを覚ます衝撃のデビュー・アルバムだ。
Pat Benatar - Heartbreaker - live - best performance - HQ


②Crimes Of Passion(CHE-1275)
 パットの2ndアルバム「Crimes Of Passion」はリリースと同時にすごい勢いで売れまくり、全米アルバム・チャートでは5週連続で2位を記録、当時1位を独走していたジョンの「Double Fantasy」に阻まれて惜しくも1位獲得はならなかったものの、前作を超えるトリプル・ミリオンを記録する大ヒットとなった。その勢いを支えたのがシングル・カットされた「Hit Me With Your Best Shot」で、彼女の代表曲と言っても差し支えないこの曲が洋楽系ラジオ番組でガンガンかかっていたのを思い出す。他にも攻撃性むき出しのA⑤「Hell Is For Children」やダンナのニール・ジェラルドのギターが大活躍するB①「Little Paradise」B⑤「Out-A-Touch」など、ロック魂を煽るようなアッパーな曲が多く入っており、私のようなロックンロール中毒者にはたまらない1枚だ。そんな中で異彩を放っているのがケイト・ブッシュで有名なB③「Wuthering Heights」(嵐が丘)で、ニールのエモーショナルなギター・ソロが聴き所だ。
Pat Benatar - Hit Me With Your Best Shot (Live)


③Precious Time(CHR-1346)
 パットが前作で果たせなかった全米№1をついに獲得した記念すべきレコードが3rdアルバムの「Precious Time」だ。内容の方は1stと2ndアルバムで確立したスタイルを踏襲したハードでポップなアメリカン・ロックで、その手堅い作りが功を奏したと言えそうだ。とにかくあの小さな身体のどこにそんなパワーが潜んでいるのか不思議に思えるぐらいよく通るハイノートは痛快そのもので、ニールのギターも絶好調。ライヴ映像を見ればわかるようにこの人は曲に合わせて様々なスタイルで弾けるギターの名手なのだが、やはり小気味よいロックンロールがこの人には一番よく似合う。シングル「Fire And Ice」で聴けるように、必要最小限の短いフレーズで言いたいことを言いきってしまうところが凄いと思う。Bラスにビートルズの「Helter Skelter」のカヴァーが収録されているのもポイント高しで、パットの歌い方といい、バックの演奏といい、オリジナルへのリスペクトが強く感じられる名カヴァーだと思う。
Helter Skelter (Bonus track)

各国盤頂上決戦④「Thriller」

2021-08-01 | Rock & Pops (80's)
 数ある各国盤の中でも私が大好きなインド、ウルグアイ、トルコ(←しかし凄い組み合わせやなぁ...)の3国共通で出ているアルバムなんてビートルズとそのソロ関連を除けばゼップが少々あるぐらいで、クイーンですら前回取り上げた「The Game」しかない。この3国が揃ってるレコードって他に何かなかったかなぁ... と思いながらレコード棚を探してみると、ラッキーなことに1枚だけあった。そう、“史上最も売れたアルバム” としてギネスに認定されているマイケル・ジャクソンの「Thriller」である。
 私はこのアルバムが大好きで、それこそレコードが擦り切れるほど聴きまくった思い出深い1枚なのだが、1番の魅力は何と言っても曲のクオリティが抜群に高いこと。アルバムから次々とシングルを切っていってそれらがすべて大ヒットし、気が付けばオリジナル・アルバム自体がベスト・アルバムと化してしまうという80年代のトレンドの先鞭を付けた金字塔と言える大名盤だ。ということで三つ巴聴き比べ第4弾はマイケルの「Thriller」でいきます。

①インド盤
 70年代から80年代にかけてのインド盤といえばチューブ・カッティングが主流だったので、“あの「Thriller」を真空管の温かみのある音で聴いたらどんな感じなんやろ???” という好奇心でワクワクドキドキだったのだが、実際にこのレコードを手に入れてデッドワックスに刻まれたマトを見てみると、手持ちのUS盤と全く同じ字体で肩透かしを食らった感じ。違いは末尾の枝番だけで、US盤が -AB/-G なのに対しインド盤は -F/-G だった。
 スピーカーから飛び出してきた音は実にシャープで、さすがはUS盤、それもCo-Pproduced 表記のない最初期盤と同じマトだけのことはあるなぁと感心させられたのをよく覚えている。念のため今回改めて2枚を聴き比べてみたが違いはほとんど感じられず。つまり安価なインド盤(送料込みで$32だった...)でUSオリジナル1stプレスと同等のキレ味抜群なサウンドが楽しめるということで、コスパで言えばインド盤が№1だろう。

②ウルグアイ盤
 インド盤と並んでチューブ・カッティング率の高いのがウルグアイ盤だ。去年の秋にウルグアイ盤を買い始めた時すぐに目を付けたのがこの「Thriller」で、ビートルズのレコードと一緒にまとめ買いしたので送料はタダも同然。さすがに上記のインド盤の倍近い$45という値付けだったが$3まけてもらって$42でゲットした。
 インド盤の教訓から盤が届いてイの一番にマトを確認すると、嬉しいことに今回は独自カットだ。期待に胸を膨らませながらレコードに針を落としたところ、スピーカーから出てきたのはこちらの予想を遥かに超える艶めかしいサウンドで、これぞまさしくチューブ・カットの音!と大喜び(^o^)丿  US盤やインド盤に比べて倍音がよく出ており、音の広がり感が実に気持ち良いのだ。特に違いが出るのがA③「The Girl Is Mine」で、ポールの声が実にリアルで生々しい。チューブ・カッティングによる倍音増強効果はB①「Beat It」にも如実に表れており、縦横無尽に疾走するエディのソロなんかもうゾクゾクさせられる。私がこれまで聴いてきた中で最強の「Thriller」は間違いなくこのウルグアイ盤だ。

③トルコ盤
 ホワーっと広がるステレオフォニックな音場が実に気持ち良いウルグアイ盤と対照的に、ゴリゴリの質実剛健な音を聴かせるのがこれまた独自マトのトルコ盤「Thriller」だ。ヴォーカルの音像定位が中央寄りでバックの演奏も左右に広がらず、かなりモノラルに近い感じのユニークな音作りがされているが、その分音のエネルギーが中心部に凝縮されてドスーンとくる感じが面白い。どちらが好きかと聞かれればウルグアイ盤に軍配を上げてしまうが、これはこれでアリだと思う。
 ただ、一つ残念だったのはA④「Thriller」後半部のヴィンセント・プライスによる語りの一部分が何故か欠けていることで、“And grizzy ghouls from every tomb are closing in to seal your doom. And though you fight to stay alive...”の “your doom” が欠落しており、ほんの数秒かもしれないが聴いていてめっちゃ違和感があるのだ。針飛びでもなさそうやし、マスターテープ不良か何かだと思うが、そんな欠陥をそのまま放置してしまうところが各国盤らしいというか何というか... それもこれもひっくるめての神秘の国トルコ(笑)なのだろう。

TOTO Ⅳ

2021-03-17 | Rock & Pops (80's)
 「TOTOⅠ」の翌年にリリースされた彼らの2ndアルバム「Hydra」はプロコル・ハルムとスティーリー・ダンを足して2で割ったようなすかしたサウンドで、1st っぽいメリハリの効いた音を期待していた私は肩透かしを食らいガッカリ(*_*)  コレ!と言えるキャッチーなアッパー・チューンが無くてアルバム全体が単調に聞こえるのだ。例えるならセナもプロストもマンセルもピケもいない80年代後半のF1を見ているような感じ... といえば分かりやすいかも。
 その2年後にリリースされた3rdアルバム「Turn Back」は「Hydra」のヨーロッパ・プログレ路線から方向転換してスティーヴ・ルカサーのギンギンのギターを大きくフィーチャーしたアメリカン・ハード全振りの内容だったが、いかんせん収録曲のクオリティーが低くてキャッチーさに欠ける曲が多かったのでまたまたガッカリ(*_*) そんな中で1曲だけ断トツに素晴らしかったのがシングル・カットされた「Goodbye Elenore」だ。縦横無尽に暴れまくるジェフ・ポーカロのドラミングがこの曲の疾走感に拍車をかけ、ボビー・キンボールのハイ・トーンが炸裂、ノリの権化と化したスティーヴ・ルカサーの波打つギターと、まさに非の打ちどころのないアメリカン・ロックに仕上がっている。TOTOの「Turn Back」に関してはこの愛聴曲「Goodbye Elenore」と、例の案山子の落書きのような脱力系 “へのへのもへじ” ジャケット(笑)しか頭に浮かんでこない。
 さすがに2作連続でハズレ(←あくまでも私見ですが...)だったこともあってTOTOもうアカンのかな... と思い始めていた矢先にリリースされたのが、全米だけでトリプル・ミリオンを達成し、彼らにとって最大のヒット・アルバムとなった「TOTO Ⅳ」だ。1stシングルのA①「Rosana」がポールの「Ebony And Ivory」やヒューマンリーグの「Don't You Want Me」と全米1位を争っている(←5週連続2位で結局1位にはなれんかったけど...)のを見て “おぉ、TOTO復活したやん...” と感心したものだが、驚いたのはその半年後に3rdシングル「Africa」が予想外の(←失礼!)全米1位を記録したこと。80年代のアルバムはマイケルの「Thriller」やデフレパの「Hysteria」など、2ndシングルや3rdシングルの大ヒットによってアルバムが長期間売れ続け、総売り上げ枚数が飛躍的に伸びる傾向が強かったのだが、この「TOTO Ⅳ」もリリースから半年たってチャートを下降していたのが「Africa」のシングル・チャート1位で再び息を吹き返し、凄まじい勢いで売れ出したのを覚えている。
 それにしてもこの「Africa」という曲、“メロディー良し・演奏良し・アレンジ良しと三拍子揃ったキラー・チューンの鑑のような曲である。ジェフ・ポーカロが刻む軽やかなサンバのリズムに乗ったゆったりとしたメロディーが美しい前半部分が徐々に盛り上がっていき、サビに入って一気にたたみかけるところが大好きで、“I bless the rains down in Africa♪” のリフレインは何度聴いても感動的(≧▽≦) 雄大なアフリカの大草原のイメージを音楽で完璧に表現しているところが何よりも凄い。それまでのTOTOにはなかったタイプの楽曲だが、TOTO史上、いや80's洋楽史上屈指の名曲と言っていいと思う。
TOTO Africa アフリカ / 歌詞


 このアルバムは「TOTOⅠ」同様名曲の宝庫だが、私的には1stシングルになった「Rosana」(←モロにMTVを意識した軽薄なPVのイメージが染み付いてしまった...)よりもB面冒頭に置かれたB①「Afraid Of Love」とB②「Lovers In The Night」のハード・ポップ連続コンボが一番のお気に入り。B①はヴァン・ヘイレンが後に「Top Of The World」でパクったカッコ良いギター・リフが生み出すハードなドライヴ感がたまらないし、間髪を入れずに始まるB②ではまるでエイジアの1stアルバムを聴いているかのようなスリリングな緊張感を味わえる。
TOTO - Afraid of Love / Lovers in the Night ( 1982 )


 この「TOTO IV」は超の付く愛聴盤なのでUS盤とUK盤の両方を持っていたが、つい最近かなり珍しいインド盤を入手。ジャケットの赤色がちょっとくすんだ感じがカッコイイ。3枚ともマトが違うので聴き比べてみたところ、TML刻印入りのUS盤が中域のスピード感に優れ高域のヌケが良いのに対し、UK盤は中低域が分厚く音の重心が低い印象。特にドラムの一発一発の重みが凄まじい。インド盤はハイ上がりのキレッキレのサウンドがスピーカーからドバーッと迸り出てきて、まるでバリバリのハードロックを聴いているようだ。とにかく三者三様という感じで甲乙付け難い、実に面白い聴き比べだった。しかしこんなことしとったらますます各国盤聴き比べの深みにハマっていきそうでちょっとヤバいかも...

【おまけ】
 TOTOをYouTubeで検索していて関連動画の中に面白いのを見つけた。TOTOの演奏をバックに幼い少女が信じられないような超絶ドラミングを披露しているのだ。素晴らしい音楽はこのようにして次の世代へと引き継がれていくのだなぁと改めて感じ入った。まだあどけなさの残るその表情からは想像できないようなワイルドでダイナミックな彼女のプレイは圧巻だ。
TOTO『Goodbye Elenore』叩いてみました。

The Living Years / Mike And The Mechanics

2016-04-11 | Rock & Pops (80's)
 ヒット・チャートを賑わせるポップ・ソングの多くはポール・マッカートニーが言うところの Silly Love Songs であり、恋愛を始めとする他愛もない日常のアレコレを題材にした “流行歌” に過ぎないのだが、そんな中で聴く者の心の奥底に響く深~い歌詞を持った曲に出会うことが時々ある。私が聴く音楽の大半は洋楽だが、そういった名曲の数々は言葉の壁を越えて私の心に突き刺さるのだ。
 この「ザ・リヴィング・イヤーズ」という曲はジェネシスのマイク・ラザフォードがサイド・プロジェクトとして結成したマイク&ザ・メカニックスの2ndアルバムからのシングルで、1989年3月に全米1位に輝いた大ヒット曲だ。この曲を初めて聴いた時は “心に沁みるエエ歌詞やなぁ...” とひたすら感動していたのだが、まさかそれから27年経って自分がその想いを実際に経験することになろうとは夢にも思わなかった。
 あのバート・バカラックが絶賛したというその歌詞に描かれた “I wasn't there that morning when my father passed away... I didn't get to tell him all the things I had to say.” や “I just wish I could have told him in the living years.” といった心情は痛いくらいに良く分かるし、リード・ヴォーカルのポール・キャラックが “It's too late when we die to admit we don't see eye to eye.” とソウルフルに歌うパートなんかもう涙なしには聴けない。そんな説得力抜群のヴォーカルに絶妙なタイミングで絡んでくる壮大なコーラスも実に印象的で、温かみを感じさせるサウンド・プロダクションと相まってこの曲の名曲度アップに一役買っている。そこにはたかがポップ・ソングと侮れない素晴らしい音楽が屹立しており、音楽とは人類が生み出した最高の文化だと改めて実感させてくれるのだ。
マイク & ザ・メカニックス グラミー賞 1990 リヴィング・イヤーズ


 今はちょっと音楽を楽しめる気分じゃないので、気持ちの整理がつくまでしばらくブログの更新をお休みします。

東京レコ屋巡り弾丸ツアー (Pt. 1)

2014-05-24 | Rock & Pops (80's)
 今日は朝からセブンイレブンまで武道館チケットの払い戻しに行ってきた。今回の中止に絡む払い戻しのトラブルをいくつか耳にしていたので、事前に店に電話して確認済み... 悪名高いやらずボッタクリ手数料(システム利用料・発券手数料・特別販売利用料)も全額返金されて一安心だ。帰りの車の中で “ホンマやったら今頃は日焼け止め塗って長居に向かってるはずやのになぁ...” などとついつい考えてしまう。
 まぁ国立2日目が吹っ飛んだ時点でこうなりそうな嫌な予感はしていたのだが、いざ中止になってみるとやっぱり大ショック(>_<)  “日本公演すべて中止” の公式発表が出た火曜の朝、私はちょうど仕事の真っ最中で、たまたま非番だったT君がヤフー・ニュースで武道館中止を知りK氏に相談... “あんなに楽しみにしてはったのに、僕こんな残酷なこと、とてもよう言いませんわ... 代わりに教えてあげてください...” ということでK氏がパソコンにかじりついてる私の背後に忍び寄り、“もう聞かはりましたか? ポールのニュース...” と囁く。その瞬間、私は全身の力が抜け “やっぱり中止になったん?” と返すのが精一杯。“明日はどうしやはるんですか?” とK氏。今更有休を取り消して仕事する気にはなれず、キャンセル不可の団参券も勿体ないので、“とりあえず行ってくるわ...” と私。職場の仲間たちがまるで腫れ物にでも触るように気を遣ってくれるのが却って申し訳ない。
 ということでこの水曜日、東京へ行ってきた。本来なら “大コーフンの武道館日帰りツアー” になるところだったが、一転して “傷心レコ屋巡りツアー” に。ポール・ファンの涙雨なのか朝から天気も荒れ模様だったし、意気消沈していて遠出する気分ではなかったが、家にじっとしていると余計に落ち込んでしまいそうだったので気分転換のつもりで行ってみることにした。
 当日は昼過ぎに新宿に到着。雨に煙る武道館を見に行こうかとも思ったが、気持ちが凹みそうなのでやめた。前日夕方にネットにアップされていた武道館前の物販(←キョードー必死やな...)に行列を作るファンの写真がまるでお通夜の記帳に並んでるような暗~い雰囲気やったし、私としてはもう過去は振り返らずに前だけを向いていきたいからだ。それにせっかく東京まで来た(←12年ぶり!)のだから楽しまなければ!
 久々の新宿駅はまるで迷路のようで、本当は西口に出たかったが地上に上がると東口だった。まぁ雨も降ってることやし、予定を変更して駅東に展開するディスクユニオンから攻めることにした。まず最初に入ったのが前々から行ってみたかった昭和歌謡館だ。一歩足を踏み入れるとそこはまさに別世界で、壁には昭和歌謡のカルト系激レア・シングルのオリジナル盤が一面に飾ってあり、みながわさんがブログで紹介しておられたザ・キューピッツの激レア・シングル「バザズ天国」も41,000円の正札が付けられて誇らしげにあたりをヘイゲイしている。“こんなん関西には売ってへんなぁ...” と思いながらその横を見ると梅木マリの「銀座のバカンス」が何と13万円だ。シングル盤のくせに武道館チケットより高いというのが凄い。結局ここでは何も買わなかったが、レコードやCD以外にも懐かしいブロマイドや書籍類も豊富に揃っており、昭和歌謡マニアにとってはたまらないお店だと思う。
 5FのHM館には目ぼしいブツが無かったので、相変わらず雨が降り続く中を新宿本館へと向かう。目指すは5Fの中古ロック・コーナーだ。店内に入るといきなり “ポール再来日記念!ポール・マッカートニー2014来日公演チケットご提示で関連作中古/輸入品が10% OFF!!” の張り紙が目に飛び込んできた。今となっては実に皮肉なキャンペーンである。ビートルズ関連はすべて持っている盤ばかりだったので入り口横の新入荷コーナーを覗くと、Out Of Print で入手困難なDCC盤が数枚、金色の背表紙を見せながら並んでいるではないか! DCC盤というのは DCC Compact Classics社がリリースした高音質CDのことで、アマゾン・マーケットプレイスでは5桁の価格で取り引きされていて中々手が出なかったのだが、私が探していたカーズの「ハートビート・シティ」とエイジアの1stアルバムのDCC盤が共に2,800円という良心的な値付けで出ていたのだ。これはラッキーや(^o^)丿 家を出る時は “雨降ってるし、イマイチ気分乗らへんなー(>_<)” と思っていたが、DCCの廃盤2枚ゲットで俄然ヤル気が出てきた。さぁ、この調子で西入りだ!  (つづく)
Cars "You Might Think" Director Approved Version

19 Asia Heat Of The Moment
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スリラー / ペトラ・ヘイデン

2011-06-23 | Rock & Pops (80's)
 先日、時間つぶしにレココレ(←正式名称は「レコード・コレクターズ」という、コアなマニア向けの洋楽ロック雑誌)でも見よかと本屋に入ったところ、最新号は何とキャンディーズの大特集!!! 歌謡曲のアイドルがレココレの表紙を飾るなど、私の知る限りでは今までになかったのではないか。しかも詳細なディスコグラフィーからレア音源・別ヴァージョン・別ミックスの紹介まで、いかにもレココレらしいマニアックな切り口で50ページにもわたる物凄いヴォリュームの特集が組まれており、その中身の濃さに大コーフン(^o^)丿 いつもは大量に売れ残っているレココレが発売4日後でもう1冊しか残っておらず、その最後の1冊を慌ててレジへ持っていった。帰ってネットで調べたらアマゾン他で売り切れ続出(←ファンの方はあるうちにゲットしましょう!)というからビックリ(゜o゜) 改めてロック・ファンの間でのキャンディーズ人気の凄まじさを思い知らされた感じがする今日この頃、みなさん、いかがお過ごしですか(笑)
 さて、ここからが本題である。未知のアーティストの音楽性を知るにはスタンダード・ナンバーのような有名曲のカヴァー・ヴァージョンを聴くのが一番分かりやすい。「ザ・フー・セル・アウト」のスピンオフ的展開でその存在を知ったペトラ・ヘイデン、ザ・フーのカヴァー盤がすっかり気に入った私は他の音源も聴こうと色々 YouTube で検索してみたところ、ビーチ・ボーイズの「ゴッド・オンリー・ノウズ」、ジャーニーの「ドント・ストップ・ビリーヴィン」、トム・ウエイツの「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」といったロック・ポップス系から「ムーン・リヴァー」や「星に願いを」といったスタンダード・ナンバーに至るまで、私の期待通りに色んなカヴァーをやっていて、そのどれもが絶妙な脱力ぐあいで実にカンファタブル。女性アカペラ・コーラス隊(ザ・セルアウツという名前らしい...笑)とのコンビネーションもバッチリだ。そんな彼女の作品の中で私が一番気に入ったのがマイケル・ジャクソン「スリラー」のアカペラ・カヴァーである。今は “ザ・フー祭り” の真っ最中なのだが、マイコーの命日も近いので今日はペトラの「スリラー」をご紹介。
 私が調べた限りでは残念なことにこの音源は CD 化されておらず、ネットでフリー・ダウンロードするしかないようだ。マイケル・ジャクソンの曲は彼のオリジナルの完成度が圧倒的に高いので中々秀逸なカヴァー・ヴァージョンに出会えないのだが、このペトラのヴァージョンはアカペラということで実に新鮮な印象を与えてくれる。それでいて基本的なアレンジは原曲に忠実なので “変なことやっとるなぁ...” という違和感は全く感じられない。何よりも、ボビー・マクファーリンのような器楽的唱法を取り入れ、彼女一人で幾重にもヴォーカルをダビングしたワンマン・アカペラで原曲の持つスプーキーな雰囲気を巧く表現しているのが凄い。私的にはマイケル・ジャクソン・カヴァーの最上位に位置するヴァージョンだ。

Petra Haden


【おまけ その1】YouTube で偶然見つけて大爆笑! 2008年のスーパーボウルの時に作られた飲料水CMで、ナオミ・キャンベルとトカゲが一緒にスリラーを躍るというおバカな発想がめっちゃ好き(^o^)丿
Thrillicious 2008 SoBe Life Water Super Bowl (PubAD).wmv


【おまけ その2】iPads vs iPhones という、いかにも今の時代を感じさせるパロディ動画。ツイッターは大嫌いだが、パロディ・ネタとしては面白い。歌詞にIT用語が一杯出てきてワケわからんとこ多いけど、“Don’t go above the 140 letters max (140文字以上は打てないぜ)にはワロタ (^.^)
TWEET IT - iPads vs iPhones (Michael Jackson "Beat It" spoof)


【おまけ その3】フィリピンの刑務所で受刑者たちが踊っているのはご存じ“スリラー”と 1995 MTVビデオ・ミュージック・アウォードの時の “デンジャラス” ダンス。何かめっちゃ楽しそうな刑務所やな(笑)
CPDRC Philippines -Michael Jackson Thriller - NOV 2009

Dancing Inmates are "Dangerous"

Let It Be / Ferry Aid

2011-02-15 | Rock & Pops (80's)
 先週、いつものようにヤフー・ニュースを見ていると、いきなりゲイリー・ムーアの訃報が目に飛び込んできた。何でも睡眠中に心臓発作で亡くなったということらしいが、まだ58歳という若さである。私は彼の熱いギターが大好きだったのでめちゃくちゃショックだった。
 そこでこのブログでも彼を追悼しようと思い、以前取り上げた超愛聴盤「アフター・ザ・ウォー」以外でどのレコードがエエかなぁと考えていた時にふと頭に浮かんだのがこのフェリー・エイドによる「レット・イット・ビー」だった。確かに彼の傑作と言えば真っ先に名前が挙がるのは多分「ワイルド・フロンティア」あたりだろうし、シン・リジィ時代の「ブラック・ローズ」という選択肢もあるだろう。しかしハードロックという狭いジャンルを超越して彼のギターの素晴らしさを万人に伝えるには、この「レット・イット・ビー」における入魂のソロをおいて他にないと思う。
 これは1987年3月に188名もの犠牲者を出したフェリー沈没事故の遺族への義援金集めを目的としたチャリティー・シングルで、イギリスの有名な大衆紙 The Sun がスポンサーとなって、総勢80組のミュージシャンが参加したプロジェクトである。当時はバンド・エイドに始まり、USAフォー・アフリカ、ノーザン・ライツにサン・シティと、オールスター・チャリティーが一種のブームみたいになっていたのだが、コレは事故のわずか1週間後にレコーディングされたというから凄い。プロデュースは金太郎飴のような軽薄ダンス・ミュージックをタレ流して当時のUK音楽界を牛耳っていたストック・エイトキン&ウォーターマンだが、さすがに天下のビートルズ・ナンバーだけあって、いつもの SAW 臭さはない。
 私が持っているのはカナダ盤の12インチ・シングルで、裏面に載っている参加ミュージシャンをチェックしてみると、知ってる名前はわずか13組しかない(>_<)  そんな中でも圧倒的な存在感で私に強烈なインパクトを与えたのがケイト・ブッシュとゲイリー・ムーアの2人だった。ケイトの歌声がスルスルと滑り込んでくる瞬間なんてもう鳥肌モノで、彼女の登場によって場の空気感が一変したように感じられるのだ。さすがはスーパースター中のスーパースター、まぁ他の一発屋さん達とは格が違うということだろう。格が違うと言えば、出だしのポールの歌声はビートルズのマスターテープからヴォーカル部分だけを流用したものだ。
 で、肝心のゲイリー・ムーアだが、まず1回目は1分47秒に登場、しっかりと “泣き” を入れた後、マーク・ノップラーへとバトンタッチ、2人で交互にソロを取るという形になっている。2回目の登場は2分13秒からで、マークの落ち着いた渋~いソロの後だけに余計に彼のエモーショナルなプレイが引き立つという按配だ。このあたり、聴けば聴くほど実に見事な対比の妙なのだが、それにしても “ワシにはコレしかないんや!” と言わんばかりに全身全霊を込め、聴く者の魂を激しく揺さぶるようなチョーキングが爆裂するこのギター・ソロはまさに圧巻の一言だ。3回目の登場は4分20秒あたりからで、聖歌隊も顔負けのゴスペル大会と化したコーラスを向こうに回し、エッジの効いたギター・サウンドで “俺はここにいるぞっ!” とばかりにしっかりと自己主張している。私見だが、彼の参加が無かったら、このレコードはパンチに欠けるというか、もっと味気ないものになっていただろう。ゲイリー・ムーア一世一代の名演だ。
 泣きのチョーキング一発に命をかけた熱血ギタリスト、ゲイリー・ムーア。彼のプレイを聴いていると、音楽がただの音符の羅列ではなく、プレイヤーが楽器を通して心の声を表現しているのだということを痛感させられる。我々はまた一人偉大なるミュージシャンを失ってしまった。素晴らしい音楽をありがとう! R.I.P. Gary Moore.

ferry aid - let it be
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1999 / Prince

2010-06-28 | Rock & Pops (80's)
 今日も空耳つながりということでプリンスだ。彼も空耳アワーの常連アーティストで、1989年のヒット曲「バットダンス」の一節 “Don't stop dancin'” がどこをどう聞いても “農協牛乳!” に聞こえるのだ。番組ゲストのセイン・カミュも “農協牛乳にしか聞こえへん...” と言っていたが、みなさんはどうですか?下に貼り付けといたのでよかったら聴いてみて下さいな。まぁコレに限らず空耳アワーを知ってからは “何かネタあらへんかな~(^.^)” などとアホなことばかり考えてしまい、マトモに洋楽を聴けない身体になってしまった(笑)
 話をプリンスに戻そう。私は1980年代には毎週のようにラジオでアメリカン・トップ40を聴いてチャートを追いかけており、エイティーズ・ポップス百花繚乱の時代をリアルタイムで体験していた。当時はまだビルボード誌を信頼していたので “全米№1” という言葉にはめっぽう弱く、1位になった曲には№1ソングとしての風格が感じられ(笑)、それ相応の敬意をもって聴いていた。
 ただ、個人的な嗜好は別にしても、全米№1になった曲の中に “何でコレが№1やねん?” と思わざるを得ない曲がいくつかあったのも否めない事実。正直言うとプリンスのファルセット・ヴォイス全開の「キッス」もそんな1枚だった。そもそも彼が全米で大ブレイクした「ホエン・ダヴズ・クライ」だって悪くはないけど、スプリングスティーンの「ダンシング・イン・ザ・ダーク」を抑えて5週連続№1になるほどの曲とも思えないし、同曲を含むアルバム「パープル・レイン」が24週も1位を独走したのも正直 ??? だった。
 当時のプリンスは同じ黒人ビッグ・アーティストということでマイケル・ジャクソンのライバルとしてメディアから高く評価されていたが、私はどうしてもあの変態的な(?)サウンドに馴染めず、いわゆるひとつの “ミネアポリス・サウンド” が分らなかった。“エンターテイナー・マイケル vs 孤高の天才・プリンス” という図式は、ジャズに例えるなら “分かりやすいベイシー vs 難解なエリントン” といった感じか。いつの時代も “天才” と呼ばれる人達の音楽は難しい(+_+)
 ということで私は決して彼の良い聴き手ではないのだが、かといって “プリンス嫌い” というワケでもない。何といっても80年代を代表する名曲「マニック・マンデー」(バングルズ)は彼の作品だし、「パープル・レイン」の次に出て200万枚しか(笑)売れなかった「アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ」からの 1st シングル「ラズベリー・ベレー」なんかは結構好きでよく聴いたものだった。
 しかし私が一番好きなのは何と言っても「パープル・レイン」で全米大ブレイクする直前の1982年にリリースされたアルバム「1999」だ。このアルバムはまだ奇天烈なミネアポリス・サウンドに染まっておらず、ストレートアヘッドなファンク・ナンバーが目白押しでめっちゃカッコエエのよね。しかもその中で前衛性と大衆性を高い次元で見事にバランスさせているのだからもう言うことナシだ。
 中でも断トツに気に入っているのが 1st シングルになったタイトル曲①「1999」で、プリンス入魂のポップでネチこいファンクネスが炸裂、アメリカで車に乗せてもらってハイウェイを飛ばしている時にラジオからこの曲が流れてきた時はゾクゾクした。②「リトル・レッド・コルヴェット」はファンク・エッセンスを薄めてポップな味付けを濃くしたのが功を奏してプリンスにとって初のトップ10ヒットになった曲。チープな打ち込み音が耳に残る③「デリリアス」もプリンス流疾走系ポップ・ファンクで、連続トップ10入りを記録、この①②③と続くシングル3連発のダンサブルな流れが聴く者に強烈なインパクトを残す。
 ④「レッツ・プリテンド・ウィーアー・マリード」はリズム・マシンの無機質なサウンドとシンセのチープな音の洪水の中を自由に泳ぎ回るプリンスに耳が釘付けになるし、⑥「オートマチック」では単純なメロディーの繰り返しがやがて大きなうねりとなって聴く者の快感を呼ぶ。一時期のトーキング・ヘッズみたいなサウンドから入って次第にプリンスの真っ黒な世界に引きずり込んでいき、気がつきゃアヘアへ状態(笑)な⑨「レディー・キャブ・ドライバー」なんかもう、ポップでファンキーで猥雑でちょっぴりアヴァンギャルドなプリンス・ワールドが堪能できるのだからたまらない(≧▽≦)
 世間では “プリンスといえば「パープル・レイン」で決まり” みたいな風潮があるが、チャート成績や売り上げ云々は別にして、最もポップなプリンスが楽しめるのがこの「1999」なのだ。プリンスってちょっと苦手、という私のようなポップス・ファンはこの辺から聴き始めるのが良いと思う。

CM 農協牛乳


1999-1999

Smooth Criminal / Michael Jackson

2010-06-25 | Rock & Pops (80's)
 最近私は空耳にハマッている。空耳というのは洋楽の歌詞の中から日本語のように聞こえるフレーズを探す一種の言葉遊びのことで、昔からラジオの洋楽番組でもこの手のコーナーはいくつか存在していた。私が好きだったのは学生時代に聴いていた日本版 “アメリカン・トップ40” (湯川れい子のやってたヤツ)の “ジョーク・ボックス” というコーナーで、毎週リスナーが投稿する傑作空耳ネタが楽しみだった。特にエアア・サプライの“寝ぼけるな~♪”(I’ll Never Get Enough Of You)やポリスの “保険金見つけた~♪”(Message In A Bottle)は今でも忘れられない。
 だから空耳自体は別に新しくも何ともないのだが、私が今ハマッているのはタモリ倶楽部の “空耳アワー” なのだ。タモリの “空耳アワー” が他と一味も二味も違うのは、その日本語フレーズのシチュエーションに合わせて日本語の空耳字幕入り再現VTRを制作するところで、登場する役者さんの表情や演技がめちゃくちゃ面白く、 “空耳ネタ+ヴィジュアル面” の複合ワザで大いに笑わせてくれるのだ。
 私にこの “空耳アワー” を教えて下さったのが G3 でいつもお世話になっている plinco さんで、何年か前に “空耳アワード2001名作100連発” を録画したVHSテープをお借りしたのだが、コレがもう抱腹絶倒の面白さ(^o^)丿 すっかり空耳ファンになった私はこのブログでもジプシー・キングスの “あんたがた ほれ見ぃやぁ 車ないかぁ こりゃまずいよ~♪” やデフ・レパードの “海女下痢で 海に出れねぇ 今朝も下痢で~♪” 、メタリカの “バケツリレー 水よこせ~♪” などを率先して紹介してきた。
 しかし整理の苦手な私はせっかくダビングしたテープをどこかへやってしまい、先月 plinco さんにもう一度貸して下さいとお願いしたところ、今度はVHS に加えてDVD 2枚(空耳アワード2007~2009)も併せて貸して下さったのだ。やはり持つべきものは同じ趣味を持つ友人である。ということでこの1ヶ月ほど、私は第2次空耳ブームに突入し、来る日も来る日も怪しげな空耳ソング(?)を聴いて大笑いしていた。
 この番組には “空耳貢献アーティスト” というのがあって、先のジプキンやメタリカに加え、クイーンやガンズ、サッチモにアース・ウインド & ファイアなど、空耳に多数採用されているアーティスト達のことを指すのだが、我らがマイケル・ジャクソンも筋金入りの “空耳貢献アーティスト”。特に何度聴いても大笑いなのが「スムーズ・クリミナル」の “パン、茶、宿直!” だ。何を隠そう私を空耳狂いにした VTR がコレで、カメラが引いていってマイコーの “宿直!” が炸裂する所が最高に面白い(^o^)丿 同曲の別の空耳 “朝からちょっと運動 表参道 赤信号” も笑撃のケッサクだ。両方とも下に貼り付けときましたので、削除される前にとくとご覧あれ。
 ということでほとんど空耳の話ばかりになってしまったが、明日は忘れもしないマイコーの一周忌。多分色んなサイトやブログに彼を偲ぶ記事が溢れかえるのだろうが、私は湿っぽいのは苦手な性質なので、敢えて大笑いしながら彼の音楽に浸ろうと思う。
 「スムーズ・クリミナル」は空耳に関係なく(笑)マイコー曲の中でも三指に入るフェイヴァリット・ナンバーで、映画「ムーンウォーカー」の中でこの曲の振り付けを初めて見た時はあまりのカッコ良さに言葉を失ったほどだった。特に身体を45°前方に傾ける “アンチ・グラヴィティ” のシーンは衝撃的で、そのカラクリ(←靴に仕掛けがあってステージのフックに引っかけて前傾するらしいのだが、それにしても物凄い背筋力だ...)が分かるまでは “一体どーなってるんやろ?” と不思議でたまらなかった。
 この CD マキシ・シングルには①「エクステンディッド・ダンス・ミックス」、②「ダンス・ミックス・レディオ・エディット」、③「アニー・ミックス」、④「ダブ・ヴァージョン」、⑤「アカペラ」の5つのリミックスが収められているが、私が特に好きなのが②と③だ。ダンス・リミックスとかロング・ヴァージョンの類は大抵ロクなものが無いが、この②はオリジナル・ヴァージョンを凌ぐ出来だと思うし、 “茶” や “宿直” が乱舞する③やヴォーカルがクッキリ聞こえてネタ探しにピッタリの⑤なんかは空耳ファン御用達だろう。
 そういえばウチのオカンもマイコーの大ファンで、この曲が一番好きだと言っていた。何でも “Are you OK, are you OK?” が “早よ起き~、早よポッキー♪” に聞こえるらしく、 “コレって早よ起きてポッキーくれってゆうとるんか?” と聞かれた時は大笑いしてしまった。まさか自分の母親までもが筋金入りのソラミミストやったとは... ホンマに血は争えませんな(≧▽≦)

パン、茶、宿直!


朝からちょっと運動 表参道 赤信号


マイケル ジャクソン SMOOTH CRIMINAL
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Couldn't Stand The Weather / Stevie Ray Vaughan

2010-04-27 | Rock & Pops (80's)
 ロック・ファンはギターのサウンドが大好きだ。私もその例に漏れずエディー・ヴァン・ヘイレンやブライアン・メイ etc、お気に入りのギタリストが何人かいるが、そんな中でも “ギター職人” というか、 “ギター馬鹿一代” の称号が最も相応しいギタリストが SRV ことスティーヴィー・レイ・ヴォーンだ。
 テキサスのローカル・バンドでくすぶっていた彼の名を一躍有名にしたのは1983年、デヴィッド・ボウイのアルバム「レッツ・ダンス」への参加だった。特にタイトル曲で聴けるホットなソロが絶品だったが、私はてっきりベテランのブルース・ギタリストが弾いているのだと思い込み、当時無名だった彼に注目することもなくスルーしてしまった。
 そんな私が初めて彼の事を意識したのは翌1984年、「ベスト・ヒット・USA」で小林克也さんがこの 2nd アルバム「クドゥント・スタンド・ザ・ウェザー」から⑥「コールド・ショット」を紹介された時だった。 MTV を意識したベタなストーリー展開のビデオも面白かったが、何よりも私が魅かれたのは絶妙なグルーヴを生み出すギター・カッティングのカッコ良さで、顎が落ちそうなシャッフル・ビートに乗って淡々と渋いヴォーカルを聴かせるスティーヴィー・レイにすっかり参ってしまった。特に2分14秒あたりからの魂に語りかけてくるような説得力溢れるソロは圧巻で、私はその翌日急いでタワレコへと走ったのだった。
 このアルバムには全8曲が収められており、冒頭の①「スカットル・バッティン」からいきなり火の出るようなロックンロールが炸裂、これがもうめちゃくちゃカッコエエんよね(^o^)丿 これだけ野太い音でスピード感溢れる縦横無尽なプレイが出来るギタリストって他には誰も思いつかない。ガッツ溢れるソロに言葉を失うアルバム・タイトル曲②「クドゥント・スタンド・ザ・ウェザー」、ギターもヴォーカルも渋さがタマラン③「ザ・シングズ・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」、ジミヘンの鬼気迫るカヴァー④「ヴードゥー・チャイル」と、あっという間にA面が終わってしまう。
 B面は私が SRV にハマるきっかけとなったシャッフルの逸品⑤「コールド・ショット」でスタート。中間部のソロで、弾いて弾いて弾きまくる、弾き倒すと言ってもいいくらいの入魂のプレイは何度聴いても圧倒されてしまう。ジミー・リードのスロー・ブルース⑥「ティン・パン・アレイ」では甘~い音色でこれでもかと続くブルージーなフレーズの連続技が鳥肌モノで、彼のブルースへの深い造詣と愛情がヒシヒシと伝わってくる名曲名演になっている。⑤と同様にシャッフル・ビートを巧く使ったブルース・ロック⑦「ハニー・ビー」はまさに安心の SRV 印と言う感じで文句ナシ。リズムに切り込んでいくタイム感覚が絶品やねぇ(≧▽≦) ラストの⑧「スタングズ・スワング」は何と4ビート・ジャズなインストだ(゜o゜) チャーリー・クリスチャンを想わせるようなライト・タッチ奏法であくまでもジャジーにスイングするあたり、彼の懐の深さを物語っている。途中のギターとサックスの掛け合いもお見事という他ない。
 ロックンロールからブルース、シャッフル、そしてジャズまで、彼のギター奏法の様々なヴァリエーションが楽しめ、どこを切ってもホットなソロが飛び出してくるこのアルバム、ギターを弾くために生まれてきた男、 SRV の全作品中でも最も愛聴している1枚だ。

Stevie Ray Vaughan - Cold Shot


Stevie Ray Vaughan - Scuttle Buttin'


Tin Pan Alley (AKA Roughest Place In Town)

Cry Like A Rainstorm / Linda Ronstadt

2010-02-22 | Rock & Pops (80's)
 80年代のリンロンは82年の「ゲット・クローサー」以降、突然の路線変更でネルソン・リドル・オーケストラをフィーチャーした例の “スタンダード・アルバム3部作” を作って我々をビックリさせたが、その後もドリー・パートンやエミルー・ハリスらと組んでコテコテのカントリー・アルバム「ザ・トリオ」を作ったり、自らのルーツとも言えるメキシコ音楽(←父親がメキシコ系で母親がドイツ系という珍しい血筋の持ち主です)に取り組んだ「ソングス・オブ・マイ・ファーザー」を作ったりと、まさに “我が道を行く” 的な活動をしていた。しかし70年代後半の怒涛のような活躍が忘れられない私は、昨日取り上げたシングル「サムホェア・アウト・ゼア」の大ヒットで一時的に渇きを癒せたものの、やはりポップ/ロックなリンロンのフル・アルバムが聴きたくてウズウズしていた。
 そんなこちらの気持ちを見透かしたかのようにリンロンが久々にポップ・フィールドに戻ってきたのが1989年のこと、それがこの「クライ・ライク・ア・レインストーム、ハウル・ライク・ザ・ウインド」で、何と7年ぶりのポップ・アルバムである。これでコーフンするなという方がおかしい。しかし私には一つだけ気になることがあった。アルバムからのリード・シングルとしてカットされ、ヒットチャートを急上昇中だった⑤「ドント・ノウ・マッチ」で彼女のデュエット相手を務めたアーロン・ネヴィルである。ハッキリ言ってこのオッサンのナヨナヨした声は私には絶対に無理(>_<) ヨーデル・ヴォイスだか何だか知らないが、あんなキモイ声、よぉ出るわ(笑) 昨日のジェームズ・イングラム君はリンロンの引き立て役として実にエエ仕事をしていたが、このアーロン・ネヴィルの声はちょっとねぇ... まぁ、これはあくまでも私の好き嫌いレベルの問題やけど。ひょっとすると、ちょうどマイルスが自分の繊細なトランペット・プレイを際立たせるために敢えてゴツゴツしたサウンドのコルトレーンを起用したように、リンロンも自分の艶やかなヴォーカルとのコントラストを考えてこのヨーデル・オヤジを起用したのかもしれない。とにかく突き詰めればヴォーカルとは声を楽しむ音楽なので、その声が嫌いではどうしようもない。
 そんなネガティヴな要素がありながらも私がこのアルバムを取り上げたのはひとえにその選曲の素晴らしさにある。まずは何と言っても④「アイ・ニード・ユー」だ。イギリス人シンガーソングライター、ポール・キャラックの知る人ぞ知る名曲で、1982年に全米37位まで上がった小ヒットなのだが、必殺の歌詞、必殺のメロディー、必殺のテンポと、どこをどう聴いても名曲だけが持つ風格のようなものが備わっている。ラッキーなことにたまたまFMエアチェックしたテープに入っていたものをダビングして擦り切れるほど聴いて “自分だけの名曲” として秘匿していたのだが、そんな隠れ名曲を探し出してきて必殺のヴォーカルで聴かせてしまうリンロンにはもう参りましたと言う他ない。これでアーロン・ネヴィルとのデュエットやなかったら完璧やったのにねぇ...(>_<)
 カーラ・ボノフの⑦「トラブル・アゲイン」もめちゃくちゃ嬉しい。高校時代に聴きまくった懐かしのこの曲をリンロンの豊潤な歌声で聴ける幸せを何と表現しよう!カーラのヴァージョンが淡い色調のパステル・カラーとすれば、リンロンのヴァージョンは艶やかな極彩色といった感じか。この伸びやかな歌声は、まさしく直球勝負と言っていいゴージャスなヴォーカルだ。原作者カーラもエエ味出していて大好きなのだが、リンロンが一声発すると曲が生き生きと躍動し始めるところが凄い。それにしてもこの「トラブル・アゲイン」、ホンマにエエ曲やなぁ... (≧▽≦)
 私的には上の2曲が飛びぬけて好きなのだが、それ以外にも聴き所が一杯ある。まず、⑥「アディオス」1曲のみに特別参加しているブライアン・ウィルソンのバック・コーラスに涙ちょちょぎれる。例の “ウゥ~♪” 一発で曲に深みが加わるのだからこの人はやっぱり凄い。リンロンのヴォーカルも艶々していて言うことナシだ。ポール・キャラックのもう1曲、アップテンポの⑨「ソー・ライト・ソー・ロング」ではゴスペル・コーラス隊を相手に素晴らしいコール&レスポンスを聴かせるリンロンがカッコイイ(^o^)丿 ゴスペル・コーラスと言えばもう1曲、アルバム・タイトル曲の②「クライ・ライク・ア・レインストーム」におけるスケールの大きな歌唱も聞き逃せない。貫録と言うか、余裕と言うか、まるで大排気量のアメ車でストレスなくグイグイ加速していくような圧倒的なヴォーカルだ。シングル・カットされてヒットした⑤「ドント・ノウ・マッチ」(2位)や③「オール・マイ・ライフ」(11位)だって、曲自体は非常に良く出来たバラッドなので、アーロン・ネヴィルの声が大丈夫な人なら十分楽しめると思う。
 このアルバムで聴けるのは、ポップス以外の音楽ジャンルへの挑戦を通して身に付けた豊かな感情表現力や圧倒的な説得力を携え、ヴォーカリストとして一回りも二回りも大きくなって戻ってきたリンロンの歌声である。そういう意味で、70年代後半のアルバムのような派手さはないが、リンロンの成熟したヴォーカルをじっくり聴きこむのに最適な渋い1枚だと思う。

アイ・ニード・ユー


トラブル・アゲイン
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