shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Hackney Diamonds / Rolling Stones

2023-10-28 | Rolling Stones / The Who
 ストーンズの新作「Hackney Diamonds」を買った。私が初めてリアルタイムの新作として聴いた彼らのアルバムは例の傑作ライヴ盤「Love You Live」で、その後も「Some Girls」から「Steel Wheels」まで(全く好きになれない「Undercover」を除いて)新作が出るたびに買って楽しんできたのだが、ベースのビル・ワイマンが脱退して以降の「Voodoo Lounge」と「Bridges To Babylon」はどこが良いのかさっぱりわからず、“やっぱりビル・ワイマンがおらんとアカンなぁ...” とレコードどころかCDすら買わずにスルーしてきた。更に追い打ちをかけるように2021年にチャーリー・ワッツが亡くなってしまい、“これでストーンズも終わりかな...” と思っていた。そんなところへ今回の新作発表である。
 そういうわけで、初めてこのニュースを知った時は “へぇ~、ストーンズが新作出すんか... 一体何年ぶりになるんやろ???” と少し冷めた目で見ていたというのが正直なところだったが、ゴミ溜めのような今の洋楽シーンの中で彼らが一体どんな作品を生み出すのだろうという一片の好奇心から、とりあえず 1stシングルの「Angry」をYouTubeで観てみることにした。YouTubeはしつこく出て来る広告が超ウザいという致命的欠陥があるが、少なくとも手軽に音楽を聴けるという点においては利用価値大だ。
The Rolling Stones' new album, "Hackney Diamonds"


 その「Angry」だが、イントロで炸裂するキースのギター・リフを聴いて私は思わず “おぉ、コレめっちゃエエやん!” と全身に電気が走るような衝撃を受けた。これこそ我々みんながよ~く知ってる、まごうことなきストーンズのサウンドである。今や絶滅危惧種とでも言うべきロックンロールそのものである。今のこの時代、リフ一発で周りの空気を自分たちの色に染め上げて聴き手をその世界に引き込んでしまうバンドなんて世界広しといえども AC/DC とストーンズぐらいだろう。ミックのヴォーカルもエネルギーが漲っていて好調そのもの。いやぁ... 今回のストーンズは凄い、いや、凄すぎる。かつて私を夢中にさせた “グルーヴィーなストーンズ” が帰ってきたのだ。
 ビデオクリップのコンセプトも実に面白いもので、いかにもアホそうなネーチャンがオープンカーの後部シートで曲に合わせてクネクネ踊りながらロスの街中をクルージングしていくという、いかにもストーンズらしいというか、その猥雑なイメージを具現化した映像で、道路わきの巨大看板に次々と映し出されるのが過去のストーンズの様々な演奏シーンという仕掛けなのだ。「女たち」の、USツアーの、そして “水兵さんPV” の(←チャーリー・ワッツが泡まみれになるヤツwww)懐かしい映像が次から次へと出てきて、私はもうテンション爆上がりだ。今にして思えば80'sってこういう “観てるだけで楽しい” プロモ・ビデオが多かった気がする。
The Rolling Stones - Angry (Official Music Video)


 「Angry」のビデオクリップがすっかり気に入った私はすぐに YouTubeで他の曲も試聴し、それらがこちらの予想の遥か上を行く素晴らしい出来だったこともあって、アマゾンでLPを即オーダー。CDではなく値段が倍もするLPを買うというのはそれだけ内容が気に入っている証拠である。
 届いたレコードは “Made In Czech Republic” というシールが貼ってあるEU盤で、音質もすこぶる良い。シールドされた新品LPを買うのはホンマに久しぶりなので、針飛びを恐れずに最初から大音量で聴けるのが嬉しい。今回このレコードを買うきっかけとなったA①「Angry」はアナログLPサウンドで聴くとその魅力が2倍3倍と引き立つコテコテのストーンズ・サウンドで、この曲と同様に印象的なギター・リフから始まる80’sストーンズの代表曲「Start Me Up」と比べてみても楽曲のレベル/クオリティーにおいて遥かに凌駕していると思うし、それより何よりあの曲から40年(!)も経っているというのに未だにこれほどのエネルギーを放っているというのは驚異的だ。
 このアルバム最大の話題はチャーリー・ワッツが生前最後にレコーディングした2曲に元メンバーのビル・ワイマンが参加していることだろう。「Live By The Sword」と「Mess It Up」がその2曲だが、ストーンズ鉄壁のリズム・セクションの復活が楽曲に唯一無二のグルーヴを与えており、聴いててめちゃくちゃ気持ちが良い。顎が落ちそうなその “ノリ” はまさに “これぞストーンズ!!!” と叫びたくなるような素晴らしさで、ストーンズ・ファン、いや、ロックンロール・ファンなら絶対に気に入ると思う。特に「Live By The Sword」は「Angry」に次ぐお気に入りのトラックだ。
THE ROLLING STONES - Live by the sword - HACKNEY DIAMONDS (2023)


 ポール・マッカートニーが「Bite My Head Off」という曲にベースで参加しているのもビートルズ・ファンとしては重要なポイント。ネットの記事によると最初はバラッド曲で弾いてもらおうかという話だったところをプロデューサーのアンドリュー・ワットの “アルバム中で最もアグレッシブなロックトラックでポールに演奏してもらえたらどんなにクールだろう” という考えから「Bite My Head Off」に決まったというが、これを慧眼と言わずして何と言おう? それもヴォーカル/コーラスではなく、バンドの一員としてピック弾きでブンブン唸るベースを披露しているのが何とも嬉しいではないか。“ポールはまるで長年一緒にやってきた仲間のようにバンドに馴染んで本当に楽しそうだった。とてもしっくり来たよ。” とミックも大満足だったという。実際、ビートルズ・ファンの贔屓目を抜きにしても非常に出来の良いトラックに仕上がっていると思う。
The Rolling Stones — Bite My Head Off Feat. Paul McCartney (Lyric video)


 このアルバムにはポールの他にもスティーヴィー・ワンダーやエルトン・ジョン、レディー・ガガといったゲスト達が参加しているが、私に言わせれば主役はあくまでもストーンズであり、豪華なゲスト陣はそれに華を添えているに過ぎない。とにかくこれだけのクオリティーを持った楽曲を揃え、それらを熟練の技で唯一無二のストーンズ・サウンドに仕上げ、1枚のアルバムとしてまとめたところはさすがとしか言いようがない。
 プロデューサーのアンドリュー・ワットはキースに憧れてギターを始めたという生粋のストーンズ・フリークで、この新作のプロデュースを依頼された時は天にも昇る気持ちだったというが、ちょうどビートルズのアンソロジー・プロジェクトを任された時のジェフ・リンみたいなモンだろう。そんな彼の言葉を借りれば “ロイヤル・ストレート・フラッシュになる組み合わせを選び出した” のだそうだが、楽曲の配置が “ファン目線” というか、実に見事と言う他ない。「Let It Bleed」を思い起こさせるカントリー・ホンク「Dreamy Skies」や自らのルーツに向き合ったコテコテのブルース「Rolling Stone Blues」など、どこを切っても100%ピュア―なストーンズ節が心ゆくまで堪能できて、私としては大満足のアルバムなのだ。
The Rolling Stones - Dreamy Skies


 LPが全12曲収録なのに対し、日本盤のみのボーナス・トラック(←日本盤の割高感から目を逸らさせようという姑息なやり方が好かん...)として3年前にデジタル・ダウンロード方式のストリーミング・シングルとしてリリースされた「Living In A Ghost Town」が日本盤CDに収録されているのだが、私はこの曲が大好き。「Gimme Shelter」に「Harlem Shuffle」を振りかけてよくかきまぜ、レンジでチンしてレゲエ・フレイバーに仕上げました... みたいな曲想がコロナのロックダウンを歌った歌詞を引き立てていて実にエエ感じなのだ。このヒンヤリした涼感は一度ハマるとクセになる。一般的知名度は低いかもしれないが、これはストーンズにしか作れないような名曲名演だと思う。尚、デジタル・ダウンロード嫌いの私は遅れてリリースされたアナログ・シングルを入手して楽しんでいる。
The Rolling Stones - Living In A Ghost Town


ストーンズは終わった... と思っていたところへ “まだまだワシらは転がり続けるで!” と言わんばかりに凄いアルバムを作り上げたミック、キース、ロンの3人。私にとっては80年代以降の彼らのアルバムでは断トツで№1の出来だし、60年代後半から70年代の名作群と比べても遜色ない素晴らしいアルバムだと思う。2023年度の私的 “レコード・オブ・ザ・イヤー” はストーンズで決まり!だ。

「With The Beatles」デンマークの金パロ盤

2023-10-22 | The Beatles

 またしても「With The Beatles」を買ってしまった。今年だけでも、オーストラリアのラウドカット盤、UKデッカ・プレス盤、UKパイ・プレス盤、そして少し前にB-SELSで買ったアルゼンチン盤に続く5枚目である。何でまた同じレコードばかり買うのか???と不思議に思われそうだが、今回の買い物には揺るぎない大義名分があるのだ。
 これまで何度も書いてきたように私はビートルズを轟音・爆音で聴くことが無上の喜びであり、特に「With The Beatles」に関しては “究極のラウドカット盤” を探すことがライフワークになっている。もちろん理論上はUK 1stプレスのスタンパー両面1G盤が最強だと考えられるが、私が持っているのは片面1G盤なので、どうしても各国盤まで手を広げざるを得なくなってくる。
 このレコードは Discogsに載っているだけでも世界中で500種類以上ものヴァージョンが存在するらしいが、私はそれらの中から1963年にリリースされたUKマザー1Nスタンパー使用のモノラル・ラウドカット盤をすべて手に入れてやろうと心に決めて1枚また1枚と買い集めてきたのだが、最後に残った最難関盤がデンマークのゴールド・パーロフォン盤だった。
 デンマークの「With The Beatles」に関しては各国盤を集めだした頃に買ったラウドカット盤を既に持っていて以前このブログでも取り上げたことがあるが、百戦錬磨のB-SELSのSさんをして “UKの「With The Beatles」にゴールド・パーロフォンがあったらこんな感じで鳴るんじゃないでしょうか。” と言わしめたほど凄い音がする1枚だ。そのレコードはUK金パロと同じクラシックなデザインのパーロフォン・レーベルなのだが、惜しむらくは金ではなく銀文字が使用されている2ndプレス盤であり、その上位には同デザインで金文字の1stプレス盤が存在するというワケだ。
 私は “銀” であれほど凄い音がするんやからそれよりも更にプレス時期が早い “金” やったらもっと生々しい音がするんちゃうかという好奇心に抗えず、“いつかきっとデンマークの金パロを手に入れたるぞ!” と心に決めて eBay でず~っと網を張っていた。
 それから待つこと3年、ついにデイニッシュ金パロがデンマークのセラーから出品された。€200からのスタートで、私は最低でも €300ぐらいは出さなアカンのかなぁとそれなりの出費を覚悟していたが、結局誰も来ずに無風で落札... デンマーク盤の音の凄さって世間であんまり知られていないのかもしれないが、私としては大ラッキーだった。
 支払いを済ませてから発送まで1週間もかかったこともあってレコードが届くまではやきもきさせられたが、3週間経ってからやっとのことで届いたレコード盤をドキドキしながら取り出して目視チェックしたところ、盤はピッカピカで傷は皆無。スピンドル・マークも見当たらないのでほとんど聴かれてないような感じだ。
 これはひょっとすると大当たりちゃうか... とはやる心を抑えてしっかりとクリーニングを施してターンテーブルに乗せ、ワクワクドキドキしながら盤に針を落とすと、ほぼ無音状態の中からA①「It Won't Be Long」がスピーカーから勢いよく飛び出してきた。盤質がほぼM(ミント)という奇跡的なコンディションから生み出されるこの生々しいサウンドを何と表現しよう? A②「All I've Got To Do」、A③「All My Loving」もチリパチ音皆無の超クリアーな音で -1Nのラウドカット・サウンドが楽しめるのだから嬉しくってしようがない\(^o^)/ A⑥「Till There Was You」も力強く美しい音で再生されるし、A⑦「Please Mister Postman」も全く歪まずに完璧な音で鳴っている。B面も同じくらい良かったらエエなぁ... と思いながら盤をひっくり返して針を落とすと、こちらもA面に勝るとも劣らないパーフェクト・コンディションで、再生の難しいB①「Roll Over Beethoven」もこれまで聴いてきたどの盤よりも見事なバランスで朗々と鳴る。
 結局B⑦「Money」までスクラッチレス、ノイズレスの完璧な「With The Beatles」ラウドカットが聴けて大満足。聴き終えた後、ちょうど「Please Please Me」の両面1G盤を初めて聴いた時のような、言葉では表現できない圧倒的な充実感に満たされた。いやぁ~、これは最高のラウドカットやなぁ... と喜んでいたら、その翌日に何と B-SELS の「日記」コラムにこのデンマーク金パロ盤が登場しててビックリ(゜o゜)  地球の裏側で60年前にリリースされた稀少盤が2枚もほぼ同時期にこの奈良にやってくるなんて、ものすごい偶然やなぁ... と妙に感心してしまった。
 少し前に自分はあと何枚「With The Beatles」を買うことになるのか... みたいなことをここに書いたが、今度こそこれで一段落となるのか、あるいは舌の根も乾かんうちに前言撤回して又次の盤を買ってしまうのか、自分でもよくわからないが(←何となく後者になりそうな予感)、このデンマーク金パロ盤が我が家の「With The Beatles」の王座に就いたことだけは間違いない。“究極のラウドカット探し” というライフワークを達成できた満足感、ついに本懐を遂げた喜びをここにしっかりと記しておきたいと思う。

再会の湖 / 尾崎奈々

2023-10-15 | 昭和歌謡・シングル盤
 私はこれまで主にネット・オークションでレコードを買ってきたが、首尾よく落札できた時の喜びよりも失敗した時の悔しさの方が遥かに強く記憶に残っている。真っ向勝負でアウトビッドされたのならまだ “やっぱり金持ちには勝てへんな...” と諦めもつくのだが、締切り間際にネット回線がダウンしたりクリックしてもパソコンが反応しなかったりとかで獲れたはずの盤をスナイプ出来ずに獲り損ねた時は悔しくて悔しくて夜も眠れず、その盤を手に入れるまで延々と引きずることになってしまう。これって締切り直前のスナイプをやめて早めに入札しておけば済む話なのだが、ライバルを出し抜いて1円でも安く買おうという貧乏根性がどうしても抜けきれず、それが仇になってしまうのだ。
 今回取り上げる尾崎奈々の「再会の湖」もそんな大失態の末にようやく手に入れた1枚で、オークションでいつも通り締切り5秒前に入札ボタンをクリックしたところ、何故か “オークションにアクセスできませんでした” という表示が出てビックリし、大慌てで再入札したものの、時すでに遅しで “このオークションは終了しています” という無慈悲な表示が出るばかり...(>_<) F1では雨でコンディションが難しい時の予選で、とりあえず保険のために出しておくタイムを “バンカー” というのだが、何故もっと早く “バンカー” 入札しておかなかったのだろうと悔やんでも悔やみきれなかったし、その時は予算的に余裕をかましていたこともあって悔しさも倍増。それから2週間くらいはこの “逃がした魚” のことで凹みまくって仕事も手につかなかったほどだ。
 その一件から約3ヶ月ほど経ったある日、登録しておいたヤフーから “オークションに出品されました” という通知が来て私の心に火が付いた。リベンジの機会到来である。今回は絶対に負けは許されない。私は前回の反省を基に締切り7分前に渾身の入札をして何とか無事落札。落札額は前回逃がした時のほぼ半額で、届いた盤もピッカピカのNM盤だったので、まぁ結果オーライというところだが、3ヶ月間のストレスを考えると “あーしんどかった...” という思いしか残らない。
 前置きがめちゃくちゃ長くなってしまったが、私はこの「再会の湖」という曲が大好き♡  レコードがリリースされた1971年というのはちょうどベンチャーズ歌謡が猛威を振るっていた時期だったが、北欧エレキを基調としたアッパーな曲調はまさに絵に描いたような “スプートニクス歌謡” とでも呼ぶべきもので、この手のサウンドが三度のメシよりも好きな私は哀愁舞い散るエレキの音色に涙ちょちょぎれるのだ。この曲における北欧インスト的な要素は大瀧詠一の「さらばシベリア鉄道」なんかにも影響を与えているように思えるのだが、それはまた別の話。
 私がこの曲に魅かれるもう一つのポイントはジョニー・グリフィンの名演で知られるスタンダードの名曲「Hush-A-Bye」の美旋律をパク... いや、アダプトしているところで、特にAメロの “湖に投げかけた あなたへの口づけ 恋人になれた あの日が懐かしい~♪” のパートなんかもうそっくり。作曲した井上忠夫はブルーコメッツに入る前はジャズ喫茶で演奏していたらしいので、おそらくスタンダード・ソングにも造詣が深かったのだろう。“パクリ云々” に関する私の考えはこれまで何度もこのブログに書いてきたが、優れた曲を元にしてまた別の優れた曲を作ることは誇るべき才能だと思うし、そのようにして素晴らしい楽曲がどんどん増えていくことは音楽ファンとして大歓迎だ。
 歌っている尾崎奈々は松竹の清純派女優で1968年にテイチクからシングルを2枚出しているが、この「再会の湖」は1971年にワーナー・ブラザーズのリプリーズ・レコードからリリースしたもの。やや音程が不安定になるところはあるものの、曲の良さと絶妙な器楽アレンジの相乗効果で私にとっては超の付く愛聴曲になっているし、スナイプを失敗して忸怩たる思いの末にようやく手に入れたこともあって愛着もひとしおだ。
 それにしてもこんな名曲名演が次から次へと生み出されていた1960年代の終わりから1970年代の初めにかけての数年間って日本の音楽史上でも “神ってる”(←短命だったなこの言葉...)レベルの黄金期だったように思う。昭和という素晴らしい時代を生きることができてホンマにラッキーだ...(^.^)
尾崎奈々/再会の湖

Hush-A-Bye – Johnny Griffin

【超絶アクション】ジョン・ウィック:チャプター4【大興奮】

2023-10-06 | TV, 映画, サントラ etc
 「ジョン・ウィック:チャプター4」を観に行ってきた。ちょうど日本公開日が9/22(金)だったので、早く観たいけれど人間嫌いの私は(←映画館で他人が横におるのがすごく嫌...)土日明けの25(月)のレイト・ショーで鑑賞。あれからもう10日以上経つが、未だに興奮冷めやらずといった感じで、USアマゾンで取り寄せたブルーレイ(←9/25の晩に帰ってすぐ注文してからたったの1週間で届いたのにはビックリ...)をほぼ毎晩繰り返し観ているし、車の中ではブルーレイから抽出した音声をエンドレスで聴きまくっていて(→銃撃音がハンパないので信号待ちで停まった時とか、さすがにちょっと恥ずかしい...)、気分はすっかりキアヌ・リーブスだ。というワケで今日は「ジョン・ウィック4」の感想・考察を書いていこうと思う。
 この映画は3時間近い長編で、しかもアクション・シークエンスが質・量共にハンパない。とにかくこれでもかとばかりに次から次へと凄まじい戦闘シーンが連続して出て来るので、普通の神経をした人なら感覚が麻痺してしまうかもしれない。因みにジョン・ウィック・シリーズの死者数を数えた動画がYouTubeにアップされているのだが、それによると「1」が84人、「2」が118人、「3」が84人、そしてこの「4」は過去最多の178人というのだからこれはもう凄いとしか言いようがない。又、IMAXで見たおかげで凄まじい銃撃音や爆音をリアルに体感することができて大満足。これから観ようという人には IMAXで観ることを強くオススメしたい。
 このジョン・ウィック・シリーズの原点である「1」はいわゆるひとつの “ナメてた相手が実は殺人マシンでした...”型映画の王道を行く作品だったが、その続編である「2」「3」ではその “殺し屋ワールド” をどんどん拡張していく方向に舵を切ってマンネリ化を防ぎ、敵がどんどんスケールアップしていく中で懸賞金目当ての殺し屋たちに命を狙われながらも一撃必殺で返り討ちにしていくという痛快な展開が超胸熱! 「3」のエンディングを見た私は、ジョンがここからどうやって主席連合(←世界有数の犯罪組織が結びついて出来上がった巨大な闇組織)にリベンジし、どのように決着を付けるのかワクワクしながら新作の「4」を待っていた。
 主席連合に対するジョンの復讐劇は「3」で彼の指と指輪を奪った首長(主席連合のトップ)へのお礼参り(!)からスタート。首長役がアラブ人らしいミステリアスな雰囲気を上手く出してた前回の俳優さんとは違っていたのが残念だったが、絵に描いたような “眉間に一発” で仕留めて観る者のワクワク感を煽っていくところはさすがという感じ。どうせなら「3」に出てたあのクソ生意気な裁定人の女にもリベンジしてほしかったところだが、そんなことしてたら3時間を超えてしまうか...(笑)
 NYコンチネンタル・ホテルの爆破やウィンストンのコンシェルジュだったシャロンの射殺というショッキングな展開で敵役のグラモン公爵の冷血ぶりを描いた後、舞台は前半の山場というべき「大阪編」へと移る。そこでは大阪コンチネンタル(→「初志貫徹」のネオンサインや夜桜のライトアップにワロタ...)の支配人シマヅ役の真田広之がめっちゃ存在感があって、何度観ても惚れ惚れする。特にジョンの “メイワクカケテ スマナイ” に対する “Friendship means little when it's convenient.(困った時こそ大事なのが友情だ)” には痺れたし、ホテルに乗り込んできた敵を迎え撃つ時に “お客様のご到着だ。おもてなしの準備を。” と部下に指示するところや、敵と対峙して緊張感が極限まで高まる中、“撃て!”と叫ぶ姿も超カッコ良かった。又、ガードがスモウレスラーで武器が刀・弓矢・手裏剣と、いかにも “外国人が考えそうな日本” 的要素が満載なのも面白かった。
John Wick 4 – Friendship means little when it's convenient

John Wick 4 - High Table invades Osaka Continental 

 シマヅの娘アキラ役の女優さん(リナ・サワヤマ)もキレッキレの動きで見応え十分! 銃だけでなく弓矢やナイフを駆使して自分よりも遥かに体格で勝る敵を仕留めていく様は痛快そのもので(←彼女のスタントダブルを演じた伊澤彩織さんのアクションも凄かった...)、特に必死で逃げようとする大男に馬乗りになって背中をナイフでメッタ刺しにするシーンは鬼気迫るものがあった。この人凄いなぁ... と感心して後で調べてみたら、本業は何とイギリスで活躍するシンガー・ソングライターで、メタリカのチャリティー・トリビュート・アルバムに参加して「Enter Sandman」をカバーしているというのだからビックリ(゜o゜)  これが女優初挑戦ということを頭に入れてもう一度あの凄まじいアクション・シーンを見ると驚倒すること間違いなしだ。
John Wick 3: Osaka Hotel Scene 2


 盲目の腕利き殺し屋ケイン役のドニー・イェンの演技も光っていた。ドンパチのさなかにまるで他人事のように涼しい顔でラーメンをすすっているシーンには大いに笑えたが、雇い主から “仕事しろ!” と言われて面倒くさそうに超絶テクニックで敵を仕留めていくところ(←緊張感溢れる戦闘シーンでの “ピンポン”センサーにはクソワロタ...)はさすがの一言。ドニーはスター・ウォーズ・スピンオフ映画の最高傑作「ローグ・ワン」でも “フォースを信じる盲目の戦士” を演じて強烈なインパクトを残したが、今回の「ジョン・ウィック4」でもMVP級と言ってもいいくらいの大活躍だ。因みにこの “盲目” というコンセプトは映画「座頭市」へのオマージュだろう。
Caine Osaka Fight Scene


 「大阪編」でもう一つ印象に残っているのが、シマヅがジョンをホテルから逃がす時に言った “ひとつ頼みがある... できるだけ多く殺していってくれ” というセリフで、これには思わず大爆笑(^.^)  とにかくこの映画には作り手側の遊び心が満載で、それはセリフであったり、さりげない動作であったりと、手を変え品を変えながら観る者を笑わしにくるのだ。ド派手なアクションだけでなく、そういったユーモアのセンスにもこのシリーズの人気の秘密が隠されているのだろう。それと、本物とは全然似てない梅田駅(←どうしても「ニッポンウイスキー 飛沫」の看板に目が行ってまう...)や地下鉄車内の描写(←プラスチック製のピカピカな座席はどう見てもアメリカの地下鉄やん...)にも笑ってしまった。
John Wick 4: Osaka scene 4


 この映画は全編アクション/戦闘シーンの塊みたいなモンだが、アクション・シークエンスの面白さで言うと、ラスボスのグラモン公爵との決戦が行われた「パリ編」が断トツに素晴らしい。222段の“階段落ち”(←キアヌが自分からガンガン回転して落ちにいってるところはもうギャグそのもの... たまたま後ろで観てたおかんが “ネイマールみたいや!” って大笑いしとった...)や、敵に対して焼夷弾を撃ちまくるシーン(←まるで人間松明やん!)を上から俯瞰するカメラワークなど、よくもまぁこれだけ色んなアイデアが浮かんでくるものだと感心してしまうが、私的に一番衝撃的だったのが凱旋門前の周回道路で走ってくる車を避けながら殺し屋軍団と闘う大乱闘シーンで、まるでゲームの世界のような現実離れした戦闘シーンの連続(→防弾背広強力すぎwww)は文句なしにアクション映画史上最高レベルの面白さと言っていいと思う。いやぁ、コレはホンマに凄いですわ ... (≧▽≦)
John Wick 4 - Arc De Triomphe scene

Overhead Gun Fight

John Wick falls down the stairs


 そんなこんなで最後の決斗を終えて朝日が昇る中、階段に倒れ込むジョンの姿から場面が切り替わって、ニューヨークの墓地でウィンストンとバワリー・キングがジョンの墓の前に佇むシーンが映し出され、ウィンストンが “ダスビダーニャ、マイ・サン(さらば、わが息子よ)” と呟いて去っていくのだが、不死身のジョンがあの程度で本当に死んでしまったとは考えにくい。これはあくまでも “ババヤガ(殺し屋)としてのジョン” の死を示唆しているのであって、ジョン自身はどこか人里離れた山奥で亡き妻の思い出と共に静かに引退生活を送っているのではないか... と思えてならない。
The Death Of John Wick


 この映画は一旦エンドロールが終わった後、花束を持って娘に会いにいこうとするケインにナイフを持ったアキラが忍び寄るシーンが映し出されてで終わる。これはシマヅを殺したケインが “報い”、すなわち “コンセクエンス” を受けるということを暗示しているのだろう。アクション・シークエンスのテンコ盛りでお腹一杯にさせた後、最後の最後で “すべての行いには報いがある” というこのシリーズのテーマをぶっ込んでくるあたりにもチャド監督のセンスの良さがうかがえるというものだ。
John Wick Chapter 4 end credits scene


 とまぁこのようにこの「John Wick 4」は100点満点をあげたいくらい気に入っているが、唯一不満なのは日本版トレイラー(予告編)のせいで最後の結末がネタバレしてしまったこと。ジョンがむくっと起き上がって “報いだ!” と叫んでグラモン公爵を射殺するどんでん返しのシーンを予告編に入れるアホがどこにおんねん!とポニー・キャニオンに文句の一つも言いたくなってくるが、映画自体はシリーズ最高傑作であると同時にアクション映画史上に燦然と輝く金字塔と言っても過言ではない。私としては早くも「チャプター 5」が見たくなってきた...