shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

インド盤「Van Halen」の衝撃 (≧▽≦)

2020-12-19 | Hard Rock
 私が洋楽を聴き始めた1970年代半ば、“ロック・ギターと言えば何はさておきクラプトン、ベック、ペイジの3大ギタリスト” という風潮が強かったが、クラプトンは「I Shot The Sheriff」で私の超苦手ジャンルであるレゲエを演っとるし(←まだ「Crossroads」も「Layla」も知らないド素人だった...)、ベックはこれまた私の大嫌いなフュージョンっぽいアルバムを出しとるしで、“こんなんのどこがロックやねん???” と悶々とした日々を過ごしていた。
 そんな時、突如彗星の如くシーンに現れたのがエディ・ヴァン・ヘイレンだった。ラジオで初めて彼らのデビュー・アルバムを聴いた時の衝撃は今でもハッキリと覚えているが、エディのめくるめくようなギター・ソロのアメアラレ攻撃に完膚なきまでにKOされ、その瞬間からエディこそが私にとってリアルタイムのギター・ヒーローになったのだ。
 だからヴォーカルがデヴィッド・リー・ロスなのかサミー・ヘイガーなのかというのは私には大した問題ではなくて(←まぁバンドの音楽性はかなり違うが...)、エディが縦横無尽にギターを弾き倒してくれさえすればもうそれだけで大満足だった。サミーが抜けたりエディが体調を崩したりで新作が出なくなって以降も彼らの昔のアルバムを聴いては “やっぱりエディのギターは別格やのぉ...(^.^)” とよがっていた。
 そんなエディがこの10月に急逝してしまった。当然ながら私は大きなショックを受け、昔のアルバムを取っ替え引っ替え聴きまくって在りし日のエディを偲んでいたのだが、そんな時ふと “エディのギターをインド盤のチューブ・カットで聴いてみたいなぁ...” という考えが頭をよぎった。ちょうど B-SELSで立て続けにインド盤を購入してSさんと二人で盛り上がっていた頃のことである。早速ネットで探してみたところ、eBayにデビュー・アルバムが1枚だけ出品されていたのだが、何とそれが$300を超えるボッタクリ価格(゜o゜)  確かに激レア盤には違いないが、ものには限度というものがある。
 というワケで “やっぱりアカンか...” と一旦は諦めかけたのだが、そんな時たまたま cd and lp というレコード通販サイトのことを思い出した。ちょうど3年ほど前にフランス盤「Les Beatles」を激安で手に入れた、あのサイトである。“まぁ多分無理やろうけど、ひょっとするとひょっとするかも...” という淡い期待を抱きながら “プレス国:India” でサイト内を検索すると、ラッキーなことに1枚だけ売りに出ていたのである。そのレコードと言うのがやはり例のデビュー・アルバムで、しかも値段を見ると€100... eBayセラーよりも遥かに安い。
 このサイトは他と比べてヨーロッパのセラーの割合が多いのだが、このインド盤もやはりハンガリーのセラーからの出品である。私は世界史に疎いのでインドとハンガリーのつながりはよくわからないのだが、インド盤を買うならインドよりもハンガリーのセラーからの方が盤質が良い場合が多いということは体験上知っている。盤質表記がVG+なら多分EXレベルの音が楽しめるだろうと考え、私は迷わず ORDER をクリックした。
 注文してからちょうど2週間してレコードが届いた。インド盤は当たり外れが大きく、当たった場合はオリジナル盤に勝るとも劣らない凄い音を聴かせてくれるが、ハズレた場合は “何じゃいこれは???” と盤をぶち割りたい衝動に駆られるくらいクソつまらん音を出すので実際に音を聴くまでは油断できない。
 で、€100で買ったこの「Van Halen」はどうだったかというと、これが最高に当たったのであるヽ(^o^)丿  盤質の見た目はVG+どころかVGぐらいの酷い汚れ方だったが、丁寧に水洗いをしてじっくり超音波クリーニングを施すと盤は別物のようにピッカピカになり、実際に針を落として確認するとサーフェス・ノイズの少ないEXレベルのコンディションへとグレードアップしたのだ。
 そんな極上盤質のインド盤で聴く「Van Halen」の音はもう凄いの一言! “当たり”のインド盤の一番の特徴である豊饒な倍音成分の効果はテキメンで、A②「Eruption」なんかもうこれまで聴いたことがないような万華鏡サウンドのギター・ソロがスピーカーから勢いよく飛び出してくる。音圧もかなり高くてUSオリジナル1stプレス盤に勝るとも劣らない爆裂ぶり。続いてA③「You Really Got Me」になだれ込むところなんかもう鳥肌モノの素晴らしさで、エディのギターもキレッキレのツヤッツヤ...(^.^) これだけでもう“買ってよかったぁ... (≧▽≦)” と大喜びだ。
 更にA④「Ain't Talkin' 'Bout Love」、A⑤「I'm The One」と、これだけカッコいいアッパー・チューンを立て続けに聴かせてくれるアルバムを私は他に知らない。スピード感溢れるリフがたまらないB②「Atomic Punk」といい、アコギからエレキに変わる瞬間から一気呵成に加速していくB⑤「Ice Cream Man」といい、バンドが一体となって疾走するこの高揚感は筆舌に尽くし難い。そんなロック史上屈指の大名盤をUS盤ともUK盤とも違う倍音たっぷりの独自サウンドで聴く者を魅了するインド盤で体験できる喜びはまさに priceless だ。

【追悼】エディ・ヴァン・ヘイレン

2020-10-09 | Hard Rock
 おととい仕事の合間にネットでも見ながらお茶でもしようと何気なくヤフーのトップ・ページを開くと「E・ヴァン・ヘイレン氏死去」という信じられないニュースが目に飛び込んできた。私は “えっ、何それ... 嘘やろ...” と一瞬ワケが分からなくなったが、何度見てもヤフー・ニュースのトップ・ページにハッキリとそう書いてある。私はお茶どころではなくなり、むさぼるようにその記事を読んだ。
 享年65歳って... まだまだ早過ぎるよ、エディ... (T_T)  確か舌がんから回復して元気になったと思っていたが、記事によるとその後に喉頭がんや肺がんを患っていたとのこと。う~ん、ショック... めっちゃショック(*_*)  70年代後半から80年代全般にリアルタイムで洋楽ロックを聴いてきた世代にとってはまさに “巨星墜つ” としか言いようのない悲報である。
 私が初めてヴァン・ヘイレンを聴いたのはちょうど高校1年の時で、ラジオから流れてきた彼らのデビュー・シングル「You Really Got Me」の衝撃と言ったらなかった。当時は私が大嫌いなビージーズ「Saturday Night Fever」の全盛期で、他にもアース・ウインド&ファイアーとかロッド・スチュワートのディスコ物とか、かったるい音楽が巷に溢れていて鬱陶しいったらなかった。そんなところへいきなり闇をつんざくようなエディのギターが唸る「You Really Got Me」が登場して退屈極まりないディスコ・ミュージックを蹴散らしたのだから、こんな痛快なことはないヽ(^o^)丿
 私はすぐにレコ屋に走って彼らのデビュー・アルバム「炎の導火線」を手に入れ、何度も何度もそれこそ擦り切れるくらい聴きまくった。今でこそライトハンド奏法がどーの、タッピングがこーのという専門用語も理解できるが、当時はただただ胸がすくほどカッコ良い彼らのハードロックに夢中だった。特に私が魅かれたのはエディのギターが生み出す圧倒的なドライヴ感で、理屈を超越したロックンロールの初期衝動がマグマのように押し寄せる快感がたまらなかった。
 他のギタリストがどんなに頑張ってもエディのギターの音色は出せないという話をどこかで読んだことがあるが、確かにあの クキャクキャキュイイイ~ン っていう音は唯一無比で、ハードロック好きなら “あの音” だけでメシ3杯は喰えそうだ。ヴァン・ヘイレンの音楽はデヴィッド・リー・ロス期であれサミー・ヘイガー期であれ基本的に全部好きだが、どれか1枚となればやはり衝撃のデビューアルバムに尽きるだろう。特にA②「Eruption」~A③「You Really Got Me」~A④「Ain't Talkin' 'Bout Love」へと続く流れは何度聴いても鳥肌モノ。どこを切っても空前のソロが飛び出してくるのだからたまらない。これ以上カッコ良いハードロックがあるというのなら教えを乞いたい。
Eddie Van Halen - Eruption
 
Van Halen - Van Halen - You Really Got Me

Van Halen - Aint Talkin' 'Bout Love


 音質に関して言うとUSオリジナル盤が良いのはもちろんだが、UK盤も負けず劣らず素晴らしい。ビニールの質が良いのか、エンジニアの腕が良いのか、とにかくUK盤のヴァン・ヘイレンは狙い目である。しかし初期ヴァン・ヘイレンに関して言うと、実はもっと凄いのがある... US盤のプロモ・シングルだ。
 まず「You Really Got Me」だが、何と同曲のMONO/STEREOのカップリングなのだ。オルトフォンのモノ・カートリッジで聴くヴァン・ヘイレンの凄さを何と表現しよう? 大袈裟ではなく、まさにリスニングルーム全体が地鳴り鳴動せんばかりのラウドな音の塊が怒涛のようにスピーカーから迸り出てくるのだ。雨が降って窓を閉め切っている時なんかにこのシングルをかけてアンプのヴォリュームをグイグイ上げていく時の快感は筆舌に尽くし難い。
 もう1枚は「Ain't Talkin' 'Bout Love」でこっちはステレオのみなのだが、45回転パワーの恩恵か、はたまた最初期プレスのプロモ盤効果なのか、LP盤の2~3割増しくらいの凄まじい音圧であの重いリフやらミラクル速弾きやらが炸裂するのだからたまらない(≧▽≦)
    

 ロック界はかけがえのないギター・ヒーローを失ってしまった。彼のファンとして今はただ、満面の笑みで信じられないようなソロを弾きまくっていたエディの姿を思い浮かべながら彼の冥福を祈りたいと思う。RIP Eddie... ひょっとするとあの世でマイケルと再会して楽しそうに「Beat It」で必殺のソロを弾いているかもしれない。
Michael Jackson & Eddie Van Halen - Beat It Live (1984)

A Twisted Christmas / Twisted Sister

2012-12-23 | Hard Rock
 クリスマスにはクリスマス・ソングを取り上げるのが音楽ブログのお約束である(←ホンマかいな?)。基本的にヒネリの効いたカヴァーが大好きな私はこれまでもその時々の気分で “ビートルズ風クリスマス” や “ラモーンズ風クリスマス” といったアルバムを取り上げてきたので、今年はヘドバンにピッタリのメタルなクリスマス・アルバムでいってみよう。
 トゥイステッド・シスターといえばハードロック好きでなくても MTV 世代の80's洋楽ファンなら “懐かしい~(≧▽≦)” と思い出す人も少なくないと思うが、そのノーテンキなまでの明るくキャッチーなメロディーは鼻歌で歌えそうな親しみやすさで、 “重厚なヘビメタ” というよりはむしろ “元気が出るロックンロール” と言った方がいいかも。ともすれば、ケバケバしいメイク(←ダンプカーに轢かれた南斗紅鶴拳のユダみたい...)とド派手な衣装のインパクトが強烈な超個性派ヴォーカリスト、ディー・スナイダーが髪を振り乱して大暴れ... というキワモノ的なイメージが先行しがちなバンドだが、見た目とは裏腹にサウンド面ではアメリカン・ハードロックの王道を行く正統派で、何よりも曲が良いのが彼らの強みだろう。例えるなら “ニューヨーク・ドールズっぽい雰囲気でスレイドみたいな大騒ぎ系ロックンロールをブチかますバンド” といった感じか。
 そんな彼らの代表曲と言えば1984年のスマッシュ・ヒット「ウィアー・ノット・ゴナ・テイク・イット」にトドメを刺す。この曲は何と言ってもプロモ・ビデオが最高で、父親が息子に説教するシーンがメチャクチャ面白い。ちょっと書き出してみると...
 All right Mister, what do you think you're doing? オマエ、自分が何をやっていると思ってるんだ?
 You call this a room? This is a pigsty!     これが部屋と呼べるのか? ブタ小屋だ!
 I want you to straighten up this area now! 今すぐこの場所を片付けろ!
 You are a disgusting slub!         オマエはクソ野郎だ!
 Stand up straight, tuck in that shirt     まっすぐ立て、シャツを入れろ
 Adjust that belt buckle, tie those shoes!  ベルトを締めて、靴の紐を結べ!
 Twisted Sister? What is THAT?       トゥイステッドシスター? 何だこりゃ?
 Wipe that smile off your face        ヘラヘラ笑うのをやめろ
 Do you understand?            分かってるのか!
 What is that?               何なんだ?
 A twisted siter pin on your uniform! その制服につけてるトゥイステッド・シスター・ピンは!
 What kind of a man are you?        オマエは一体どういう人間なんだ?
 You're worthless and weak          オマエは役立たずの腰抜けだ
 You're doing nothin', you're nothin'      オマエは何もせず、ただのろくでなしで
 You sit in here all day             ここに一日中座って
 and play that sick repulsive electric twanger. その胸クソ悪いエレキギターを弾いてるんだ
 I carried an M-16              俺が手にしていたのはM-16銃だったが
 and you, you carry that, that, that guitar!オマエときたら、ギターばかり弾いてるじゃないか!
 Who are you? Where do you come from?   オマエは誰だ? どこから来たんだ?
 Are you listening to me?           聞いているのか?
 What do you want to do with your life?    オマエは人生で一体何がしたいんだ?
 I wanna rock!                 ロックだ!
とまぁこういうやり取りなのだが、このベタなコントみたいなシーンはホンマに何回見てもオモロイわ(^.^)  曲の方もクワイエット・ライオットのスレイド・カヴァー「カモン・フィール・ザ・ノイズ」を想わせるイントロのドラムから一気に突っ走るノリノリのロックンロールで、思わず一緒に大合唱したくなるサビの盛り上がりは最高だ。
We're Not Gonna Take It [Extended Version]


 彼らはその後ヒット曲に恵まれず1987年に解散してしまうのだが、21世紀に入って再結成し2006年にリリースしたのがこのクリスマス・アルバムで、タイトルもズバリ「トゥイステッド・クリスマス」ときたもんだ。これは1988年にボブ・リヴァースが出したクリスマス・パロディー・アルバムのタイトルをそのままパクッたもので、アルバム・タイトルだけでなく “有名なクリスマス・ソングを○○風アレンジで” というコンセプトもそっくりだ。
 全10曲の中で私が一番気に入っているのが②「オー・カム・オール・ヤ・フェイスフル」で、何とメロディーからリフ、そしてギター・ソロに至るまで上の「ウィアー・ノット・ゴナ・テイク・イット」そのまんま(゜o゜)  80's洋楽ファンならこの “ほとんど替え歌状態” アレンジのセルフ・パロディーにニヤリとさせられること間違いなしだ。彼らの最大の魅力は大合唱したくなるようなサビのコーラスの掛け合いにあると思うので、そういう意味でも合唱系クリスマス・ソングとは相性が良いのだろう。
 そしトゥイステッド・シスターで忘れてならないのがプロモ・ビデオだ。今回登場するのは “父と子” ではなくて “新婚カップル” なのだが、この二人のやり取りがもうめちゃくちゃ笑えるのだ。
 Merry first christmas, dear         2人で迎える初めてのクリスマスね
 Oh! Coaster...              あっ、それはコースターに...
 A gift! How thoughtful of you!       プレゼント? まぁ、何て優しい人なの!
 Tuck in your shirt, dear          シャツはちゃんと入れてね
 Fix your tie               ネクタイも直して、と
 A Twisted Christmas?           トゥイステッド・クリスマス?
 You call this a present?          これがプレゼントだって言うの?
 What is that?               何なの、これ?
 Well, wipe that smile off your face    ヘラヘラ笑うのやめてちょうだい!
 Who are you?             あなたは何なの?
 Where do you come from?       どこから来たのよ?
 Are you listening to me?        ちゃんと聞いてる?
 What kind of a man are you anyway?  一体何て人なの?
もうお気付きのように、女性のセリフは「We're Not Gonna Take It」ビデオに出てくる父親のセリフの見事なパロディーになっており、私なんか本編の曲よりもこのシーン目当てで YouTube を見てしまうほどだ。こういうユーモアのセンス、ホンマに好っきゃわぁ...(^.^) 
Twisted Sister - "Oh Come All Ye Faithful"


 この②以外にも、“Ho ho ho, let's go!” という掛け声で一気に盛り上がるラモーンズ風①「ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」、サンタさんやトナカイさんもヘッドバンギングしそうな③「ホワイト・クリスマス」、 AC/DC の「プロブレム・チャイルド」そっくりなリフの波状攻撃が快感を呼ぶ⑤「シルヴァー・ベルズ」(←続編ビデオも笑えます...)、ジューダス・プリーストばりのヘヴィーなリフがメロディーと絶妙なマッチングを見せる⑥「ママがサンタにキッスした」、シン・リジィみたいなノリでガンガン突っ走るストレートアヘッドなロックンロール⑦「レット・イット・スノー、レット・イット・スノー、レット・イット・スノー」と、ハードロック好きにはたまらない内容になっている。メル・トーメやナット・キング・コールが聞いたら腰を抜かしそうな80'sメタル版⑨「ザ・クリスマス・ソング」にも大爆笑(^o^)丿  誰もが知っているクリスマス・ソングの数々が見事なメタル・アレンジを施されてノリノリのロック・ナンバーとして転生し、“トゥイステッド・シスターの曲” に昇華されているところが凄いのだ。それにしてもこのバンド、20年経っても芸風全然変わってへんなぁ...(^.^)

Twisted Sister - White Christmas

Twisted Sister - I Saw Mommy Kissing Santa Claus

Twisted Sister - Silver Bells
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Live At River Plate / AC/DC

2012-12-18 | Hard Rock
 私は新譜情報にめちゃくちゃ疎いので、好きなアーティストのアルバムが出ているのを全く知らずにネットで偶然見つけて “うわー、こんなん出てたんや...(゜o゜)” とビックリすることが少なくない。この前も USアマゾンのトップ・ページを開くと、いきなり真っ赤な AC/DC のロゴと頭に角を立てるポーズをするアンガス・ヤングの雄姿が目に飛び込んできた。 AC/DC がニュー・アルバムを出しとったんか... それもライヴ・アルバムとは... これはエライコッチャである。これを聴かずして年は越せない(←何でやねん!)、ということで私は即、買いを決めた。
 この「ライヴ・アット・リヴァー・プレート」は2009年のワールド・ツアーの中から3日間で20万人を動員したアルゼンチンのブエノスアイレス公演の模様を収録したもので、彼らにとっては1992年の「ライヴ」以来20年ぶりのライヴ・アルバムということになる。全19曲中、この前作ライヴとは収録曲が13曲かぶっているのだが(←何十年経とうがライヴ定番曲は絶対に外せへんもんね...)、様々な公演の中からベスト・テイクを寄せ集めて1曲1曲がフェイドイン・フェイドアウトという独立した形で編集されていた前作が “ライヴ音源によるベスト盤” 的色彩が強かったのに対し、今回の盤は一公演丸ごと収録という形を取っており、ライヴの熱気をそのまま真空パックしたような感じで臨場感がハンパない。やはりライヴ盤はこうでなくっちゃ(^o^)丿
 AC/DCの曲は基本的に全部好きだが、ディスク1で特に気に入っているのが70's AC/DC屈指の名曲⑤「ダーティ・ディーズ・ダン・ダート・チープ」だ。私がこの曲を初めて聞いたのはジョーン・ジェットによるカヴァーでそれもかなりカッコ良かったが、さすがに本家のノリは凄まじい。キャッチーなサビに合わせて “ダン、ダッ、チー♪” と口ずさんでしまうこの曲はライヴで異様に盛り上がる定番曲だ。
AC/DC - Dirty Deeds Done Dirt Cheap [HD] Live at River Plate (Argentina)


 高揚感を煽るように切っ先鋭く切り込んでくるギターがインパクト絶大なあのイントロだけで大歓声が沸き起こる⑦「サンダーストラック」もめっちゃ好き。この曲はロックのプリミティヴな初期衝動を強烈に感じさせる問答無用のヘッドバンギング・ソングで、その圧倒的なグルーヴ感がめちゃくちゃ気持ちいい(^_^) コーラスに合わせて “サンダー!!!” と叫びながら拳を突き上げたくなる(?)のは私だけではないだろう。
ACDC - Thunderstruck - Live At River Plate [HD] Legendado


 ディスク2ではまず何といっても④「ユー・シュック・ミー・オール・ナイト・ロング」である。さすがは南米の国だけあってオーディエンスの熱狂ぶりは凄まじく、スタジアムを埋め尽くした大観衆がサビを大合唱しながらうねりまくる様は筆舌に尽くしがたい。曲のグルーヴを根底から支えるフィル・ラッドの堅実にしてツボを心得たドラミングはアンガスのリフとの相性も抜群で、彼こそがAC/DCの骨太サウンドの影の立役者なのだと改めて実感させられる。セット・リストの曲のほとんどがフィル・ラッド在籍時のものというのも偶然ではないだろう。
AC/DC - You Shook Me All Night Long [HD] Live at River Plate (Argentina)


 そしてそんな④に負けず劣らず凄いのが⑥「ホール・ロッタ・ロジー」だ。イントロの “デケデ デケデケ♪ アンガス!” というお約束のアンガス・コールからノリノリで疾走するこの曲のカッコ良さを何と表現しよう? とにかくこの骨太なリフ、最高ではないか! この1曲にロックンロールの様々なエッセンスが凝縮されていると言っても過言ではないだろう。ロックンロール・トレインにまたがった巨大なバルーンのロジーが登場するというド派手な演出に煽られて会場のボルテージもまさに最高潮(^o^)丿 リフの鬼神、アンガス・ヤングの真骨頂が思う存分堪能できるスリリングなナンバーだ。
AC/DC - Whole Lotta Rosie [HD] Live at River Plate (Argentina)


 いよいよコンサートも佳境に入り、⑧「ハイウェイ・トゥ・ヘル」のあの耳慣れたギター・リフが響き渡ると同時に湧き起る大歓声... そして7万人の大合唱だ。この異様なまでの盛り上がりはあの伝説のドニントン・ライヴさえも凌駕しているように思う。とにかく理屈抜きに身体が揺れる原始的なタテノリ・グルーヴが圧巻だ。やっぱりAC/DCはエエのう... (≧▽≦)
AC - DC- Highway To Hell- Live At River Plate HD 2009


Difficult To Cure / Rainbow (Pt. 2)

2012-11-26 | Hard Rock
 このアルバムを語る時に避けて通れないのがポップ路線への賛否だが、アメリカン・マーケットを意識したバンドのコマーシャル化路線に対する “魂を売り渡した” といった類の批判に対してリッチーは “俺たちはいつの間にかへヴィでアンダーグラウンドなバンドになりすぎていた。 当時はアバが俺の大のお気に入りで、ああいう風な曲を書きたいと常々思っていた。メロディアスで堂々としたポップ・ソングを演奏したい。一般受けするような曲が欲しかった。みんなが感情移入できるような曲を書かないとダメだと思った。郵便配達人が自転車に乗りながら口笛で吹くような曲をね。” と反論している。言いたいことは分かるけど、ファンとしてはリッチーにはどうしてもパープル~70'sレインボーのハイテンションなブリティッシュ・ハードロックを期待してしまう。
 そんなこちらの気持ちを知ってか知らずか、このアルバムにはめちゃくちゃカッコイイ疾走系ハードロック曲が入っている。それが⑥「キャント・ハプン・ヒア」で、「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」で一時は絶縁を考えた私に “やっぱりリッチーはエエなぁ...(^.^)” と思い直させてくれた、レインボーならではのハイスピード・チューンだ。取って付けた様なユル~いイントロはイマイチだが、「オール・ナイト・ロング」を高速回転させたようなキャッチーなメロディーとディープ・パープルを想わせるようなノリノリの演奏がたまらんたまらん(≧▽≦) レインボーはやっぱりこういうスピード感溢れるリフ・ロックに限るわ! 出来ることならコージーが叩いてやっさんが歌うヴァージョンを聴いてみたかった、というのは欲張り過ぎか...
RAINBOW - Can't Happen Here {THE FINAL CUT 1985}


 軽快なギターのイントロから一気に疾走し始める②「スポットライト・キッド」はリッチー節炸裂のギター・ソロがインパクト絶大で、腹一杯リッチーを聴いた!という満足感を味わえる至福のナンバーだ。これで間奏部の軽薄極まりない音色のキーボード・ソロさえなければ80年代の「キル・キン」になったかもかもしれない。 “いた、便所虫~♪”(1分25秒)の空耳もお忘れなく(^.^)
Rainbow -Spotlight Kid


 ③「ノー・リリース」はちょっと変わった感じの曲で、前半部分は武骨でメタリックな演奏なのだが、3分を過ぎたあたりから手拍子が入り、まるでクイーンの「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」みたいなファンキーな展開に突入、リッチーってこういうファンキーなノリは嫌いやったはずやのに... と訝しく思っていると、後半部でハッと我に返ったかのように疾走し始めるところが何とも可笑しい。決して名曲名演といえる代物ではないが、それでもついつい聴いてしまうんよね...(^.^)
Rainbow - No Release


 ⑨「ディフィカルト・トゥ・キュア」はベートーベンの「第九」をレインボー流ロックンロールにアレンジしたもので、重厚なイントロから一転して軽快な「歓喜の歌」のメロディーが響き渡る。クラシックに疎い私でも知っているキャッチーなテーマを皮切りに次から次へとオリジナルなメロディーを紡ぎ出すリッチーのインプロヴィゼイションは痛快そのものだ(≧▽≦) 更に3分40秒あたりからドン・エイリーにキース・エマーソンが憑依し ELP チックなキーボード・ソロを展開、このままプログレ・ワンダーランドに突入するのかと思っていると再びリッチーが登場し、「第九」のメロディーを奏でてメデタシメデタシ(^o^)丿 エンディングの笑い袋は意味不明だが、これもリッチー流の遊び心か? 因みに邦題は「治療不可」になっているが「Difficult To Cure」なら「治療困難」ですな。
 この後、レインボーは「ストレイト・ビトゥイーン・ジ・アイズ」と「ベント・アウト・オブ・シェイプ」というアルバムを出すのだが、そのどちらでもリッチーはあまり目立っておらず、「デス・アレイ・ドライバー」と「ドリンキング・ウィズ・ザ・デビル」の2曲以外はほとんど印象に残らない平凡な内容だ。そういう意味でもこの「ディフィカルト・トゥ・キュア」でレインボーは終わった、と感じるのは私だけだろうか?
Rainbow - Difficult To Cure (1981)

Difficult To Cure / Rainbow (Pt. 1)

2012-11-23 | Hard Rock
 レインボー祭りもいよいよ80年代に突入だ。ハードロック史に残る名盤「ダウン・トゥ・アース」を作り上げ、リッチー、コージー、やっさんの “新三頭体制” スタートかと思った矢先、レインボー・サウンドの屋台骨を支えてきたコージーがバンドのコマーシャル化に我慢できなくなり脱退、これにすっかりヤル気をなくしたやっさんもニュー・アルバムのリハーサル中にアメリカに帰ってしまいそのまま脱退と、バンドは飛車角抜きの危機的状態に陥るが、オレがオレがオレがのリッチー御大はドラマーにボビー・ロンディネリ、そして3代目ヴォーカリストにジョー・リン・ターナーを迎えて親米コマーシャル化路線を更に推し進め、バンドの転生を図る。その結果生まれたのがこの5thアルバム「ディフィカルト・トゥ・キュア」(邦題は「アイ・サレンダー」)である。
 このアルバムを聴いての第一印象は、メンバー・チェンジによってサウンドがガラッと変わったなぁということ。 “メロディアスでパワフルで緊張感漲るハードロック” というのがそれまでのレインボーの売りだったが、いかんせんコージーとやっさんの抜けた穴は大きく、 “メロディー” は相変わらず健在だったもののハードロックの生命線と言うべき “パワー” と “緊張感” においては明らかに後退しており、ごく普通のアメリカン・ロック・バンドのような聴きやすいサウンドになってしまっている。まぁそれこそがリッチーの狙いだったのだが...
 新ヴォーカリストのジョー・リン・ターナーは “吠え” も “ガナリ” もしないイケメン・シンガーで、リッチーの考える “アメリカ受けするロック” にはピッタリだったが、アンドレややっさんという “キャラが濃い” ヴォーカリストに比べて線の細いジョーではどうしても見劣りがしてしまう。例えるならハミルトンの抜けた後にペレスが入ったマクラーレンみたいなモンで(←F1ファンにしか通じないマニアックな例えですんません...)、 “この曲にはこの声でないと...” という決定的な吸引力に欠けるのは否めない。ということで “三頭体制” から “一頭支配” へと変わってしまったレインボーだが、それでも聞かせてしまうのはひとえにリッチー御大の “唯一無比な” ギターの魅力故だろう。
 ジャケット・デザインはフロイドやゼッペリンで名を馳せたあのヒプノシス。何でも元々はブラック・サバスの「ネバー・セイ・ダイ」用に作られて不採用になったものをレインボーの新作に流用したとのことで、おそらく原題の「Difficult To Cure」に引っ掛けたのだろうが、私的にはちょっとビミョー(>_<) 少なくともジャケットから音が聞こえてくる “ジャケ名盤” からは程遠い安直なデザインだ。
 このアルバムでは前作の「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」に引き続きラス・バラードの作品①「アイ・サレンダー」を取り上げている。これはもう “一体どうすればアメリカで愛されんだぁ???” というリッチーの気持ちの表れ... なワケないか。冗談はさておき、アルバムから 1st シングルとしてカットされたこの曲は当時ラジオから頻繁に流れており、 “アィサレェ~ンダ、アィサレェ~ンダ♪” と執拗に繰り返されるサビメロはしっかりと頭にこびり付いていたが、私的には “「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」よりははるかにマシやけど、レコードを買いたいと思うほどではないな...” というのが正直なところで、まぁ可もなく不可もなしといった感じ。やはりまだ “リッチーといえば「ハイウェイ・スター」や「バーン」...” というようにディープ・パープルの幻影を追っていたのだろう。
 しかしあれから30年以上が経った今の耳で聴くとこれが中々の名曲名演で、ジョー・リン・ターナーの線の細いヴォーカルもかえって適度な哀愁を醸し出していてエエ感じやし、何よりもバックでガンガン響き渡るキーボードの連打がめちゃくちゃ効いている。御大の歌心溢れるギター・ソロも文句ナシで、実に良く出来たパワー・ポップに仕上がっているのだ。尚、この曲はアメリカでは105位止まりと全くヒットしなかったがイギリスでは「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」の6位、「オール・ナイト・ロング」の5位に続いて3位まで上昇、レインボーの親米路線サウンドは何故かイギリスでウケが良いようだ...(笑) (つづく)
RAINBOW [ I SURRENDER ] PROMO-VIDEO.


【おまけ】YouTube で何と西城秀樹ヴァージョンの「アイ・サレンダー」を発見! やっさんの「ナイト・ゲーム」をカヴァーしてるのは知ってたけど、まさかレインボーまでカヴァーしてるとは...(゜o゜)  他にも「オール・ナイト・ロング」とか「アイズ・オブ・ザ・ワールド」とか、やっさん時代のナンバーを中心に何曲か歌っているのだ。きっとレインボー大好きなんやね。面白いので貼っときます。
西城秀樹 アイ・サレンダー ラビィングユー・ベイビー

オールナイトロング 西城秀樹

HIDEKISAIJO アイズ・オブ・ザ・ワールド

Down To Earth / Rainbow (Pt. 2)

2012-11-18 | Hard Rock
 このアルバムは①「オール・ナイト・ロング」で幕を開ける。2代目ヴォーカリスト、グラハム・ボネットの名刺代わりの1曲であり、いきなりイントロの “ウォウゥ ウォウゥ ウゥ~♪” という雄叫びに度肝を抜かれる。まるでロニーの影を振り払うかのように響き渡るドスの効いたヤクザなヴォーカルは唯一無比で、まさにやっさんの魅力全開の名唱である。ドスドスと切り込んでくるコージーの剛力ドラムも実に強烈で “これぞレインボー!” と言うべきハードボイルドなサウンドが楽しめるのだが、メロディーに強烈なフックがあるのでちゃーんと “キャッチーで親しみやすいハードロック” になっているところが凄い。新生レインボーの1曲目にピッタリのナンバーだ。
 しかし歌詞には大きな変化が見られる。ロニーに “中世ファンタジーではなくラヴソングを書け!” と言っていたリッチーの方針通りにここで一気に方向転換、アメリカでウケそうな軽~い内容にシフトしていくのだが、それにしてもエライ変わりようである。少し前までは “バビロンの城門がどーたらこーたら” とか “王を殺せ!” とかいった中世趣味的な内容だったのがココにきていきなり “ねぇ彼女、ワイン飲む? 名前は? 今ひとり?” とたたみかけ、 “君に触れたい... オレのモノにしたい...” と露骨な表現で女性をナンパする歌詞が飛び出してくるのだからその落差にビックリ...(゜o゜) 歌詞を書いたのはロジャー・グローヴァー爺... 老いてますます盛んとはこのことか。
 PV も笑撃のケッサクで、ステージ袖でクネクネ踊ってる金髪のネーチャンをチラ見しながらグラサンに白ジャケット姿で歌うやっさん、いつもの黒衣で黙々とギターを弾く御大、そしてラフなスタジャン姿(?)でドラムを叩きまくるコージーと、見事にメンバーのファッションがバラバラなところが笑える。このビデオ、ホンマにオモロイわ...(^.^)
Rainbow All Night Long High Quality


 これに続く②「アイズ・オブ・ザ・ワールド」も素晴らしい。まるで全盛期のフォリナーのハードな側面だけを抽出して濃縮還元したかのようなキャッチーな歌メロを絶妙に歌いこなすやっさんの、ヴォーカリストとしての懐の深さを満天下に知らしめるナンバーだ。初めてこのアルバムを聴いた時、①②の連続パンチに完全KOされたのを覚えている。
 まずイントロの壮大なキーボードから風雲急を告げるようなムードが立ち込め、コージーの重量級ドラミングが爆裂してテンションは一気にマックスへ。曲を完全に自分のものにしたやっさんの力強いヴォーカル、アグレッシヴに弾きまくる御大のギター・ソロ、この曲の陰のMVPと言ってもいいぐらい変幻自在なプレイを聴かせるドン・エイリーのキーボードと、三頭体制期を想わせるドラマチックな展開が圧巻で、6分40秒という長さを微塵も感じさせない名曲名演だ。ギター・ソロの後にさりげなく入るピアノなんかまさに“音楽を分かっている”者にしか出来ない見事な職人ワザと言えるだろう。
Rainbow - Eyes Of The World


 ③「ノー・タイム・トゥ・ルーズ」は70年代AC/DCを想わせるストレートなロックンロールで、コージーの刻むへヴィーなリズムとリトル・リチャード顔負けのシャウトを聴かせるやっさんのヴォーカル(0分59秒のお茶目な “アハッ♪” にはクソワロタ...)がめっちゃエエ感じ。レインボーには非常に珍しいバック・コーラスもばっちりキマッている。
Rainbow - No Time To Lose


 このアルバム中で私が一番好きなのが⑧「ロスト・イン・ハリウッド」で、私の中では「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」と一二を争うレインボーのベスト曲だ。イントロのコージー怒涛のドラミングから目も眩むようなスピードで繰り広げられるスリリングな演奏はまさに鳥肌モノ! 爆発的な圧力で背後からガンガン煽りまくるコージーのドラムをガッチリと受け止め、 “パワーにはパワーで対抗” するかのように強烈なダミ声でガナりながら凄まじい勢いで突っ走るやっさんに “炎のヴォーカリスト” の真骨頂を見る思いがする。更に絶妙なチェンジ・オブ・ペースになっているドン・エイリーのキーボード・ソロを受けて満を持したかのように御大リッチーが登場、キレキレ状態でめちゃくちゃカッコ良いソロをキメるところがたまらんたまらん(≧▽≦)
 とにかくメンバー全員の鬼気迫るハイテンションなプレイの応酬に圧倒されるこの曲、ちゃんとバック・コーラスで要所要所をシメながらメロディアスに疾走するところなんか80年代HRシーンを先取りしているように思う。これこそまさに “ハードロック桃源郷” である。レッド・ゼッペリンに「ロックンロール」があるなら、レインボーにはこの「ロスト・イン・ハリウッド」がある... そう言い切ってしまいたいぐらいカッコ良いキラー・チューンだ。アルバムのラストを飾るのにこれ以上相応しい曲はないだろう。
Rainbow - Lost In Hollywood


 結局グラハム・ボネットはこの「ダウン・トゥ・アース」1作きりでレインボーを脱退(←仲良しのコージーが辞めてすっかりヤル気を無くしたらしい...)、4オクターブあるといわれるその声を活かしてマイケル・シェンカーやイングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイといったスーパー・ロック・ギタリスト達と共演することになるのだが、その輝かしいキャリアを見れば彼がどれほど素晴らしいヴォーカリストなのかが分かるだろう。軽々しく “やっさん” 呼ばわりしてナメとったら怒るでしかし!
【おまけ】やっさんwww

Down To Earth / Rainbow (Pt. 1)

2012-11-15 | Hard Rock
 ロック・バンドにとってそのイメージを決定づける最も重要な要素の一つがリード・ヴォーカリストの “声” である。たとえギタリストが主役のバンドであってもそれは変わらない。ヴァン・ヘイレンのヴォーカルがデイヴ・リー・ロスからサミー・ヘイガーに変わった時も全く別のバンドに生まれ変わったかのような印象を受けたが、リッチー率いるレインボーもまた同様で、初代ロニー・ジェイムズ・ディオ、2代目グラハム・ボネット、3代目ジョー・リン・ターナーという違ったタイプのヴォーカリストを擁していたこともあって、それぞれの時代によってかなりアルバムの雰囲気が異なるのだ。
 そんなレインボー歴代ヴォーカリスト3人の中で私が断トツに好きなのが2代目のグラハム・ボネットである。三頭体制の中で強烈な個性を誇っていたロニーの後釜というのは並大抵なことでは務まらないが、ロニーに勝るとも劣らない強烈な個性の持ち主であるグラハムの起用はまさに大正解で、さすがは御大!と言いたくなる見事な人選だ。
 グラハム・ボネットの最大の魅力はその声である。ロニーがどちらかと言うと “吠える” タイプのヴォーカリストなのに対し、グラハムは血管がブチ切れんばかりに青筋を立てて “叫ぶ” タイプのパワー・シャウターで、そのハスキー・ヴォイスで強烈なシャウトをぶちかます様はフォリナーのルー・グラムを更にパワー・アップしたような感じ。ビブラートを使わないそのストレートな唱法は当時のリッチーが目指していた “初期アメリカン・ハードロック的なサウンド” にピッタリだ。
 グラハムのもう一つの特徴はそのユニークなファッション・センスである。短髪・リーゼントで派手なスーツかアロハにサングラスというスタイルはどうみても街のチンピラそのもので、故・横山やすし師匠にそっくりなのだ。長髪・皮ジャンが定番のハードロックの世界では異端中の異端であり、ステージでもビデオでも思いっ切り浮いている。私なんかこの時期のレインボーのビデオを見るといつも彼にばかり目が行ってしまい、さすがのリッチーやコージーもやっさんのバックバンドに見えてしまう(笑)
 それはともかく、私はレインボーの歴史の中でこの “グラハム期” のサウンドが一番好きなので彼がアルバム1枚きりで脱退してしまったのが本当に残念だが、そういう意味でもレインボーの全アルバム中で最も愛聴しているのがスタジオ録音アルバム4作目にあたるこの「ダウン・トゥ・アース」なんである。
 アルバムからの第1弾シングル⑤「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」はラス・バラードが書いたポップ・ソングのカヴァーであり、コージー脱退の引き金になったことでも知られるナンバーだ。事の顛末は、まずプロデューサー兼ベーシストのロジャー・グローヴァーがこの曲を気に入り、レインボーをコマーシャル路線に持っていこうとしていたリッチーもこの曲をカヴァーすることに賛成したが、コージーは大反対。彼が言うには “この曲はレインボーには向いていない... ファンは何だこりゃ?と思うだろう... 良い曲であることは間違いないが俺たちはレインボーだろ?... 今まで君臨してきた分野の音楽があるじゃないか... 「スターゲイザー」や「バビロンの城門」みたいな曲をやった後にどうしていきなり「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」なんだよ? 気は確かか? リッチーがそういう方向に行くつもりなら俺は抜けて他の事をやった方がよさそうだと決心したんだ。” とのこと。まったく以てごもっともである。
 結局コージーが折れて “わかった。やるよ。ただし1回しか叩かない。それで終わりだ。” ということになったらしいが、コージーの機嫌を損ねるリスクを考えればそうまでしてこの曲をやる必要があったのかは大いに疑問だ。この曲のヒットとコージーの脱退を天秤にかければ、レインボーが失ったものはあまりにも大きかったと言わざるを得ない。尚、1993年にこの曲をカヴァーしたブライアン・メイのバックでドラムスを叩いていたのが他ならぬコージーというのも考えてみれば面白い巡り合わせであり、この曲のベストと私が信ずるのがそのブライアン・メイ・ヴァージョンなのだ。やはり曲とアーティストの相性というのは大事やなぁと思う。
Russ Ballard - Since You've Been Gone (Supersonic, 1976) FAMILIAR ???

Rainbow - since you've been gone

The Brian May Band - Since You've Been Gone


 不幸なことに私がリアルタイムで初めて聴いたレインボーがこの曲で、ラジオから流れてきたのを聴いて “何じゃいコレは? ホンマにあのリッチーがやってるんかいな...(>_<)” と幻滅したものだった。今ではさすがに寛容になったのか当時ほど抵抗はなくなったが、それでも自分から進んでこの曲を聴こうとはあまり思わない。ボストンとジャーニーとサヴァイヴァーを足して3で割ったようなコテコテのアメリカン・パワー・ポップを何が悲しゅーてブリティッシュ・ハードロックの王道であるレインボーで聴かなアカンのか? 結局この曲で偏見を持ったせいで私はレインボー入門に少し遠回りするハメになってしまったが、もしもあの時ラジオでかかった曲が①「オール・ナイト・ロング」や⑧「ロスト・イン・ハリウッド」だったとしたらその時点で即レインボーの大ファンになっていただろう。
 結局この曲はアメリカでは彼らにとって初のチャートインを果たしたものの57位止まりと振るわなかったのだがイギリスで6位まで上がるスマッシュ・ヒットを記録、アメリカン・マーケットを意識してイギリスで大ヒットというのも考えてみれば皮肉な話である。 (つづく)

Long Live Rock 'n' Roll / Rainbow

2012-11-12 | Hard Rock
 レインボー祭り第2弾の今日は「レインボー・ライジング」に続く 3rdアルバム(←ライヴ盤は除く)でいこう。このアルバムの原題は「ロング・リヴ・ロックンロール」なのだが、世間一般的には「バビロンの城門」という邦題の方が圧倒的に有名だし、黄色がかったベージュをバックにメンバーの顔のイラストが描かれたシックなジャケット(←カラフルな虹をフィーチャーした他のアルバムとは雰囲気全然違うなぁ...)にも単純明快な「ロックンロール万歳」よりは何となく高尚そうな(?)「バビロンの城門」というタイトルの方がしっくりくる。「銀嶺」とか「翔る」とかいう難しい漢字が使われてないこともあって、私もこの邦題の方に馴染んでいる。
 この作品はリッチー、コージー、ロニーのいわゆる “三頭体制” 最後のアルバムであり、初期レインボーが目指していた “攻撃性と芸術性を兼ね備えた様式美ハードロック” の完成形といえる、しっかりとまとまったタイトなバンド・サウンドが楽しめる。バンド名から “ブラックモアズ” が消えてただの“レインボー” 名義になったのも、ちょうど “ポール・マッカートニー&ウイングス” から “ウイングス” に変わったのと同じく、前作の成功で自信を付けたリッチーの “もうワシのワンマン・バンドとちゃうでぇ!” 宣言だろう。
 アルバムは全8曲でサウンドの傾向は前作の延長線上にあって大きくは変わらないが、この頃からリッチーがアメリカン・マーケットを意識し始めたせいか長尺曲は姿を消し、コンパクトにまとまった楽曲を中心に構成されており、 “贅肉を削ぎ落とした切れ味鋭いハードロック” が展開されている。
 アルバム冒頭を飾るタイトル曲①「ロング・リヴ・ロックンロール」はこれまでのレインボーの曲には希薄だったキャッチーなフックを持ったノリの良いロックンロール。キャッチーでありながら決して軽くならないところはレインボーならではで、コージーの叩き出すヘヴィーなシャッフル・ビートに乗って “顔面アンドレ・ザ・ジャイアント” ことロニー・ジェイムズ・ディオがハイテンションなヴォーカルを聴かせてくれる。いやぁ、この曲ホンマにカッコエエわぁ...(≧▽≦)  私なんか “ドカドカドカドカ!!!” とたたみかけるようなドラムのイントロを聴いただけでアドレナリンがドバーッと出まくるし、クルクルと目が回るような御大のギター・ソロも相変わらず冴えわたっていてゾクゾクさせられる。空耳ファンは4分01秒からの “ダメだよ!やめてよ!やめてよ!やめねーよ!” も要チェックだ。
Rainbow - Long Live Rock and Roll - Re-EQ'd


 ライヴ盤「オン・ステージ」の鬼気迫るプレイでもお馴染みの⑤「キル・ザ・キング」も圧倒的に素晴らしい。 “これぞレインボー!” と思わず快哉を叫びたくなるような超絶ハイスピード・チューンで、前作の「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」と同様に “速さ” と “重さ” を見事に両立しており、凄まじいまでのスピード感とスリリングな展開に圧倒される疾走系ロックンロールだ。御大のギターは “クルクル~♪” を通り越して “キュルキュル~♪” (←ベタな擬音ですんません...)と聞こえるぐらいアグレッシヴ。前作は「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」、今作はこの「キル・キン」で決まり!である。疾走せずに何のレインボーか!!!
Rainbow - Kill the King


 アルバムの邦題になった④「ゲイツ・オブ・バビロン」は起承転結のあるドラマチックな構成にアンドレ、じゃなかったロニーの粘りのあるパワフルなヴォーカルがドンピシャにハマった感のあるナンバーで、バビロンというだけあって中近東っぽいミステリアスな薫り横溢のヘヴィー・ロックに仕上がっている。コージーの迫力満点のドラミングが高い緊張感を醸し出しているし、何と言っても御大のギター・ソロが抜群にカッコイイ(^o^)丿 まさにリッチーが目指した中世ヨーロッパ的様式美ここに極まれり!と言いたくなるような名曲名演だ。
Rainbow-Gates of Babylon


 上記の3曲以外では⑥「ザ・シェッド」が好き。ファンの間ではほとんど話題にも上らない不憫な曲なのだが、その重厚でゴリゴリしたサウンドは完全にゼップ系のへヴィー・ロック。私の耳にはヴォーカル以外はあのキングダム・カムそっくりに聞こえるぐらい(笑)ゼップっぽいナンバーだ。イントロのギター・ソロにはゼップの「ハートブレイカー」の薫りが濃厚に立ち込めているし、コージーのドラミングもまるでボンゾが墓場から蘇えってきたかのようだ。私が持っているUKポリドール原盤の音はイマイチで、前作に比べてバスドラの重低音の迫力が不足しているように感じてしまうのだが、ドラムの音をもっと上手く録っていればこの曲の評価もガラッと変わったかもしれない。最新のリマスターCDでも買ってみようかな...
 レインボーはアルバム収録曲の出来不出来のバラつきが大きいバンドだと思うが、①④⑤のような超有名曲以外でこういう隠れ名演を探すのもファンの愉しみの一つだろう。やっぱりレインボーはエエなぁ...(^.^)
Rainbow - The Shed (1978)

Rainbow Rising / Blackmore's Rainbow

2012-11-08 | Hard Rock
 前回はストレスが溜まるとついつい高い買い物をしてしまうという話だったが、いくらなんでもイラッとくるたびにそうそう高いオリジナル盤ばかり買うわけにもいかず、何か他の方法でストレスを解消しなければならない。そんな時に聴きたくなるのがハードロックである。ハードロックと言えば(少なくとも日本では)誰が何と言おうとレッド・ゼッペリンとディープ・パープルという2大バンドにトドメを刺す。オマエの好きなAC/DCはどーした?デフ・レパードはどないしたんや?と言われそうだが、私のように70年代ハードロックの洗礼を受けた世代の人間にとって、ゼップとパープルというのは別格というか、思い入れもひとしおというか、とにかく特別な存在なのだ。
 この両者はたまたま同時期にバンドとしてのピークを迎え、70年代前半のハードロック・ムーヴメントを牽引したということでついつい “ハードロックのパイオニア” として一緒くたにされたり、あるいは “ゼップ派 or パープル派?” という風にライバル関係を喧伝されたりしてきたが、音楽的にはこの両者はかなり違う。頑固一徹ハードロックに徹してその様式美を極めんとしたパープルと、ハードロックの枠を超えた幅広い音楽性で独自の世界を確立していったゼッペリン... 私の場合はどちらかと言うとゼップ派なのだが、ストレス疲れでココ一発の元気が欲しい時に聴きたくなるのは圧倒的にパープルであり、そこから派生したリッチー・ブラックモアのレインボーなんである。ワンパターンと言われようが大仰でウルサイだけと言われようが、あの単純明快な “分かりやすいハードロック” は唯一無比。ということで今日はリッチー御大率いるレインボーの「ライジング」(邦題:「虹を翔る覇者」)にしよう。
 1975年にリリースされたこの 2nd アルバムは地味だった前作からベース、ドラムス、キーボードをメンバー・チェンジ、特にコージー・パウエルというハードロック界屈指の天才ドラマーの加入によりリッチー、ロニー、コージーのいわゆる “三頭体制” がスタート、ロックの荒々しさに溢れたタイトでスリリングなバンド・サウンドが堪能できる。レインボー初代ヴォーカリストであるロニーのヴォーカルは私の好みとは少し違うが決して嫌いではないし、コージーの爆裂ドラミングに触発された御大のスリリングなリフと独特のソロ・フレーズのアメアラレ攻撃がこのアルバムのクオリティーを大いに高めている。
 このアルバムはジャケットも素晴らしい。レインボーの、いや、パープル・ファミリーの全アルバム中でも最高傑作ではないか? 虹をつかむ手の力強さがダイレクトに伝わってくるようなそのイラストはアルバムの内容とピッタリ合っていて、そのセンスの良さに唸ってしまう。50年代モダンジャズは半分 “ジャケットを聴く” ようなものだが、ハードロックにおいてもジャケットはとっても重要なのだ。
 収録曲は全6曲。A面も悪くはないが(特に③の「スターストラック」は結構好き...)、やはりこのアルバムは何と言ってもB面に尽きるだろう。このB面の2曲は共に8分を超える大作で、そのどちらもが全く長さを感じさせない名曲名演なのだから恐れ入る。まずはB面の1曲目にあたる⑤「スターゲイザー」だが、“様式美ヘビー・メタル” の典型と言ってもいいようなスケールのデカいドラマチックなナンバーで、初期レインボーの中世ヨーロッパ志向が結実した感のあるその壮大な曲想と重厚なグルーヴに圧倒される。 “なぁ6,6,6,6,6階さわらせて~”の空耳にも大爆笑だ(^o^)丿
【空耳アワー】「6階さわらせて」 Rainbow Stargazer

Rainbow - Stargazer HD


 そしてこれに続く⑥「ア・ライト・イン・ザ・ブラック」こそこのアルバムの、いや、初期レインボーの最高傑作!!! ハードロックかくあるべし!と言いたくなるような攻撃性を持ったカッコ良いナンバーで、パープルの「ハイウェイ・スター」や「バーン」路線の超疾走系ロックンロールだ。とにかく息つく暇もなく繰り出されるハイ・テンションなプレイの連続攻撃はまさに圧巻の一言で、8分12秒があっという間に過ぎ去っていく。ツインバスを駆使して煽りまくるコージーとアグレッシヴなケンカ・リフで応戦するリッチーの凄まじいバトルが炸裂するスリリングな展開がたまらんたまらん(≧▽≦) 血湧き肉躍るとはこのことだ。真のハードロック好きならこの1曲のためだけにでもこのアルバムを買う価値があると思う。
Rainbow - A Light In The Black ( Los Angeles Mix )
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Love Gun / Kiss

2012-10-21 | Hard Rock
 このブログで “音壁” といえば “ガールズ” に決まっているが、今日は音壁は音壁でもガールズではなく胸毛系ロッカーによるスペクター・トリビュート・ネタである。私が初めてフィル・スペクターの名前を耳にしたのはもちろんビートルズの「レット・イット・ビー」だったが、あのアルバムは既に出来上がったテープに彼が後から手を加えたという特殊なケースであって、決してスペクター本来の “ウォール・オブ・サウンド” ではない。彼の真骨頂は何と言っても60's前半のフィレス・レーベルの作品群にあり、そういう視点で見ると、私にとっての音壁初体験はロネッツでもクリスタルズでもなく、何とあのキッスだった。
 当時中学生だった私はリアルタイムでいきなり「キッス・アライヴ」の洗礼を受けたバリバリのキッス・ファンで、「デトロイト・ロック・シティ」や「ブラック・ダイアモンド」、「ロックンロール・オールナイト」といった痛快無比なロックンロールを聴いて大いに盛り上がっていた。そんな中、1977年にリリースされたのがアルバム「ラヴ・ガン」で、私は行きつけのレコ屋に予約しておいて発売日に速攻で買って帰り、ドキドキしながらターンテーブルに乗せた。(←中高時代は大抵このパターンやったな...)
 アルバムは期待通りの素晴らしさで “やっぱりキッスはエエのぉ...(^.^)” と悦に入っていたのだが、中でも一番インパクトが強かったのがラストに収められていた⑩「ゼン・シー・キスト・ミー」という曲だった。このアルバムのほとんどの曲はグリッター・サウンド系のヌケの良いロックンロールなのに何故かこの曲だけは明らかに異質なサウンドだったので、不思議に思って解説を読んでみるとフィル・スペクターがプロデュースしたクリスタルズというガール・グループのカヴァーとのこと。キッスならではのポップ・センスでフィル・スペクターを解釈した “キッス版ウォール・オブ・サウンド” がすっかり気に入った私は、あのキッスにこういう演奏をさせてしまうフィル・スペクターという存在に改めて興味を抱くようになったのだった。そういう意味でも私にとっては忘れ難い1曲であり、あれから35年経った今聴いても耳が吸い付く名曲名演だ。
Kiss then she kissed me


 B面1曲目に収められたアルバム・タイトル曲⑥「ラヴ・ガン」もレコードが擦り切れるぐらいよぉ聴いたなぁ... 何と言ってもマシンガンの発射音を模した “デデデデン デデデデン!!!” というイントロはインパクト抜群だし、エース・フレーリーの必殺リフとシンプルでありながら歌心溢れるソロ(←ユニゾンのとこなんかもうシビレまっせ...)なんかもう絶品!!! ポール・スタンレーのカッコ良さここに極まれりと言いたくなるような野性味溢れるヴォーカルも文句ナシで、彼らの最大の魅力である親しみやすくて哀愁感漂う歌メロに涙ちょちょぎれるキラー・チューンだ。とにかくハードでありながらメロディアスにロックするという、アメリカン・ハード・ロックのお手本のようなナンバーで、私的にはキッス・トップ3に入れたい(←ひょっとすると一番好きかも...)超愛聴曲だ。
KISS - Love Gun キッス - ラヴ・ガン


 タイトル曲を差し置いてアルバムからの1st シングルに選ばれた②「クリスティーン・シックスティーン」もめっちゃ好き(^o^)丿 ピアノにベースが寄り添いギターが絡みつくようにスタートするカッコ良いイントロといい、初期ビートルズを想わせるコーラス・ハーモニーといい、単調な旋律の繰り返しが生み出すグルーヴ感といい、3分間の中に “キッスらしさ” が凝縮されたようなキャッチーなナンバーだ。尚、ギター・ソロのフレーズはこの曲のデモに参加していたエディー・ヴァン・ヘイレンが考えたものをエースがそのまま使ったらしい。
kiss - Christine sixteen (Love gun)


 この他にもディープ・パープルの「バーン」を裏返しにしたような勢いのあるロックンロール①「アイ・ストール・ユア・ラヴ」、エースの脱力ヴォーカルが病み付きになる④「ショック・ミー」、底抜けにポップで楽しい⑤「トゥモロー・アンド・トゥナイト」、タイトなアメリカン・ロックンロール⑨「プラスター・キャスター」など、名曲が目白押し。確かアルバムのおまけとして “KISS LOVE GUN” と書かれた紙鉄砲が付いており、BANG! と大きな音をさせて喜んでいた自分が懐かしい(^.^)
 このアルバム以降、メンバー間の確執が表面化しバンドは活動休止を宣言、ソロ・アルバムを制作してガス抜きをするも結局ピーターとエースが脱退し、 “キッスが最もキッスらしかった時代” は終焉を迎えるのだが、そういう意味でもこの「ラヴ・ガン」はキッスの全盛期である “第2期キッス3部作” のラストを飾る名盤としてロック・ファンには必聴の1枚だと思う。
KISS Shock Me The Last KISS DVD (HD)
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Songs From The Sparkle Lounge / Def Leppard

2012-06-06 | Hard Rock
 デフレパさんが止まらない(笑) 前回はドクロのだまし絵ジャケットが面白い「レトロ・アクティヴ」だったが、今回はカヴァー・アートに無頓着な彼らにしては珍しいパロジャケ(?)の「ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ」を取り上げようと思う。
 このアルバムは2008年にリリースされたもので、間に傑作カヴァー集「イェー!」を挟んでいるとはいえ、オリジナル・アルバムとしては例の「Ⅹ」以来6年ぶりである。その前作「Ⅹ」はCD1枚を聴き通すことが苦痛なほど私の好みとはかけ離れた退屈極まりない内容だったし、90年代以降は「スラング」→「ユーフォリア」→「Ⅹ」→「イェー」というように駄盤と名盤が交互にやってくる傾向があったので、この新作には正直言ってあまり期待していなかった。
 そんな私の注意を引いたのがこのジャケット... 言わずと知れた「サージェント・ペパーズ」のパロジャケである。色使いや構図はどちらかと言えば「リンゴ」に近いものがあるが、ジャケットに登場するのがバンドのメンバーと世界の有名人(?)たちというコンセプトは「ペパーズ」そのもの。80~90年代のメンバーの写真が散りばめられている(←やっぱりユニオンジャックのタンクトップ姿のジョーが一番目立ってますな...)というのも「ペパーズ」同様、過去の自分達を葬り去ろうという発想なのかもしれない。
 メンバー以外の有名どころでは、モナリザや自由の女神、ツタンカーメンに芸者ガールなどがフィーチャーされており、アートの薫り横溢の「ペパーズ」のパロディーとしては中々興味深いチョイスだが、なぜかキッス・メイクをしたパンダや見ザル言わザル聞かザルの三猿なんかも登場する(←前列右隅でヴィヴィアンとクラッシュ・テスト・ダミーの間にいてるのはアジャ・コング... なわけないか)。探せば他にも色々と発見がありそうだが、CDの小さいジャケットはめっちゃ目が疲れるのでこの辺でやめとこう(笑)
 で、そんな意味深なジャケットの中に入っている音はと言えは、時間とお金をたっぷりかけて徹底的に音を作り込み、究極の完成度を目指すという従来の「ヒステリア」路線とは対極にある “シンプルでライヴ感溢れる骨太なロック・サウンド”。12年前に “脱・ヒステリア” を目指して失敗した「スラング」の教訓を見事に活かし、グランジ/オルタナのような一過性音楽にすり寄るのではなく、70年代の AC/DC のような王道ロックンロールをベースにしながら随所に伝統的なブリティッシュ・ロックのエッセンスを散りばめたのが功を奏しているように思う。
 個々の楽曲の中ではやはりシングル・カットされた②「ナイン・ライヴズ」が出色の出来。「アーマゲドン」や「プロミセズ」を想わせる明るいノリはまさに彼らならではだし、 “Let 'em roll, let 'em roll ~♪” の流れるようなメロディー展開も最高だ(^o^)丿 ロックンロール回帰を宣言するかのようにシャープでエッジの効いたギター・リフを前面に押し出し、更にこれでもかとばかりに息の合ったバック・コーラスでデフレパ印の刻印を押す... もうお見事!と言うしかない名曲名演である。尚、Aメロを歌っているのはティム・マッグロウといカントリー・シンガーで、Bメロからがジョー・エリット。日本盤CDにはボートラとしてマッグロウ抜きの “真正デフ・レパード・ヴァージョン” が収録されており、私がそちらを愛聴しているのは言うまでもない。
Def Leppard-Nine Lives (Def Leppard Only)


 跳ねるようなリズムが耳に残る③「カモン・カモン」はゲイリー・グリッターやスレイドを想わせるグラム・ロックで、彼らが愛した古き良きブリティッシュ・ロックへのオマージュとして胸を打つ。まさに前作のカヴァー集「イェー」での成果が見事に結実した1曲と言える。グラム・ロック特有のノリの良さに加えてメロディーも覚えやすく歌詞もシンプルなので、ライヴで大ウケしそうなナンバーだ。ていうか、演ってるメンバーが一番楽しんでたりして...(^.^)
Def Leppard Live - c'mon c'mon


 ビリー・ジョエルとは同名異曲の⑧「オンリー・ザ・グッド・ダイ・ヤング」はチープ・トリックっぽいメロディーと中期ビートルズっぽいサウンドが見事に溶け合ったキラー・チューンで、どこかの曲で聞いたことがあるようなフレーズが出るわ出るわのワンコソバ状態。ベテランの味と言ってしまえばそれまでだが、一段と円熟味を増したジョーのボーカルも説得力抜群だし、ノスタルジックな味わいを醸し出すコーラス・ワークにも涙ちょちょぎれる。とにかくビートルズ・ファンはコレを聴いてイスから転げ落ちて下さいな(^.^) 
Steve Clark Only The Good Die Young
 
 
 上記の曲以外にもクイーンの「ジェラシー」にそっくりな大仰バラッド④「ラヴ」、まさに1曲丸ごとデフレパ節といった感じの⑦「ハルシネイト」、バリバリ弾きまくるギターがたまらない疾走系ロックンロール⑨「バッド・アクトレス」、ヘヴィーなリズムとへヴィでグルーヴ感溢れるリフ展開が後期ゼッペリンを彷彿とさせる⑩「カム・アンダン」なんかが気に入っている。ボーナス・トラックを除けばトータル・ラニング・タイムはわずか39分だが、つまらん曲を無理やり詰め込んで60分も70分も聴かされるよりはこっちの方がよっぽど潔くて気持ち良い。
 このアルバムは「ヒステリア」の分厚いサウンド・プロダクションを期待して聴くと肩透かしを食うが、様々な試行錯誤を繰り返しながらも地道にライヴ活動を重ねることによって迷いを吹っ切り、原点回帰して新たなスタートを切ったデフレパのシンプルなロックンロールを楽しむのには恰好の1枚だ。

【おまけ】音楽とは何のカンケーもないけど、YouTube でこんなん見つけました。オモロイので貼っときます(^.^)
Pacman Frog catch some touch screen bugs.

Retro Active / Def Leppard

2012-06-03 | Hard Rock
 私はレコードであれ CD であれ、アルバム・カヴァーのデザインに拘る人間である。だからジャケットも何もない楽曲ダウンロードなどという今時のシステムは問題外。音楽はLPなりCDなりの器としてのカヴァー・デザインと中身の楽曲をトータルで楽しむのが当然と信じているので、音楽を聴くのにジャケット・イメージは不可欠だ。まぁケータイやMP3プレーヤーで音楽を聴くような今の若い世代にはダウンロードで十分なのかもしれないが...
 かく言う私も若い頃はそんなことは何も考えずにただ “ハイ、ポーズ!” 的なアーティストの写真で満足していた。しかしやがてジャズも聴くようになり、ベツレヘムのバート・ゴールドブラットやブルーノートのリード・マイルスといったジャケット・デザイナーが手掛けた作品の素晴らしさに開眼、アルバムをジャケット・デザインをも含めた一つのパッケージとして楽しむようになった。
 そういう目で改めて手持ちのロックLPを眺めてみると、「ラバー・ソウル」、「リヴォルヴァー」、「サージェント・ペパーズ」、「アビーロード」といった一連のビートルズ盤は言うに及ばず、フロイドの「狂気」やクリムゾンの「宮殿」、デレク&ドミノスの「レイラ」のように “聴かずして音が聞こえてくるような” ジャケット名盤が少なくない。特に60年代後半から70年代前半にかけてのいわゆる “ブリティッシュ・ロック黄金時代” にリリースされたアルバムには素晴らしいデザインの盤が多く、部屋のインテリアとしても最適だ。
 しかしハードロックのバンドは概してそういうことに無頓着なのか、エエなぁと思えるようなアルバム・カヴァーは極端に少ない。デフ・レパードも例外ではなく、どのアルバムもジャケット・デザインはイマイチだ。初期の2枚なんかほとんど印象に残らないようなトホホなデザインだったし、絶頂期の3枚もジャケットに関しては可もなし不可もなしという感じで中身の素晴らしさを全く反映していない。初のベスト盤「ヴォールト」や起死回生の大名盤「ユーフォリア」に至ってはホンマに売る気あんのか?と疑いたくなるような無味乾燥なデザインで、彼らのジャケット・センスを疑ってしまう。そんな中で私が唯一気に入っているジャケットがこの「レトロ・アクティヴ」である。
 最初このジャケットを見た時は一瞬 “ドクロかよ...” と呆れたのだが、よくよく見るとこれが “化粧鏡に映る女性” なのだ。目の錯覚を巧く利用した、いわゆるひとつの “だまし絵” というヤツなのだが(←元ネタはコレらしい...)、私はこういうセンス溢れるジャケット・デザインが大好きなんである。確かエアロスミスのベスト盤にもフランス人形を使ったドクロのだまし絵ジャケットがあったが、出来としてはこっちの方が遥かに洗練されていると思う。
 このアルバムはスティーヴ・クラーク在籍時代のシングルのB面や未発表曲などを集めた “アルバム未収録曲集” なのだが、単なる “企画盤” と侮ってはいけない。バンドに最も勢いがあった頃の曲ばかりなのでクオリティーの高さはハンパないし、ダークな曲から美しいバラッド、名曲カヴァーに疾走系ロックンロールと、非常にヴァラエティーに富んだ内容になっている。しかも新たにヴォーカル・パートを録り直したりギターを追加したりしてリミックスをやり直した完全な “ニュー・ヴァージョン” になっている曲がほとんどなので、元々のオリジナル・ヴァージョンとの聴き比べというマニアックな楽しみ方もできるのも◎。
 全14曲中で断トツに気に入っているトラックがスウィートの名曲をカヴァーした③「アクション」だ。彼らはスウィートの大ファンで(←2006年リリースのカヴァー・アルバム「イェー」でも「ヘル・レイザー」を取り上げている...)、その音作りにおいて多大な影響を受けていることは明らかだ。特にキャッチーなサビを強力なコーラスで歌うところなんかもうスウィート一子相伝の秘奥義(?)と言っても過言ではなく、この「アクション」でも本家に勝るとも劣らないくらい分厚いコーラス・ハーモニーを聴かせてくれる。ここに収録されているのはシングル「メイク・ラヴ・ライク・ア・マン」のB面に入っていたのとは違うニュー・ヴァージョンで、ピック・スクラッチを多用したアグレッシヴなギター・プレイやリック・アレンのたたみかけるような爆裂ドラミングによって更にパワーアップされ、まるでレップスのオリジナル曲かと思わせるくらいノリノリで迫力満点の演奏が楽しめる。コレは圧倒的に「レトロ・アクティヴ」収録のニュー・ヴァージョンの方が優れている。
Def Leppard - Action Official Music Video・1994


 元々アルバム「ヒステリア」用にレコーディングされたものの、アルバムの流れに合わないとの理由で外され(←確かにあの中にこの曲の居場所はないな...)シングル「アルマゲドン」のB面に入れられた⑩「リング・オブ・ファイアー」は疾走感バリバリのロックンロールでありながら、そこはかとない哀愁を感じさせる隠れ名曲。サビで “Are you ready, ready for burning~♪” とハモるところ、そしてそこに絡んでいく荒々しいギター・リフがたまらなく好きだ。ここに収められているのは「レトロ・アクティヴ」用にヴォーカル・パートを一部録り直してギターをオーヴァーダブし、ドラムスも入れ直したもので、ギター・リフがフェイド・インしてくる元のヴァージョンに比べ、いきなり鋭いナイフのようにアグレッシヴに切り込んでくるギターのイントロがめちゃくちゃカッコ良い。ドラムスのサウンドはエレクトリック・ドラムの元ヴァージョンもアコースティックな生ドラムのニュー・ヴァージョンもそれぞれの良さがあって甲乙付け難いが、私的には僅差でニュー・ヴァージョンに軍配を上げたい。こういう聴き比べってファンとしてはホンマに楽しいなぁ(^o^)丿
Def Leppard - Ring Of Fire


 ⑤「シーズ・トゥー・タフ」は「アドレナライズ」の日本盤のみに収録されていたボーナス・トラックで、最初聴いた時はジョーのヴォーカルといい、バック・コーラスの付け方といい、ギターのフレーズといい、どこを取ってもシンデレラのデビュー・アルバム「ナイト・ソングス」を想わせるメタル・サウンドでビックリ(゜o゜) ホンマに一瞬トム・キーファーが憑依してるんちゃうかと思ってしまうくらいハイトーンでシャウトしっ放しのジョー・エリオットが楽しめるという、今となっては非常に貴重なナンバーだ。ここでもやはり録り直したリック・アレンのドラムスが功を奏し、よりパワフルでダイナミックなナンバーへと昇華されている。私の経験では再レコーディングやリミックス(←リマスターじゃないよ...)すると大抵はロクな結果に終わらないものだが、このアルバムはここで取り上げた③⑩⑤以外にも随所でリ・レコーディング&リミックス効果が現れており、そういう意味でもレップス・ファンなら外せない1枚ではないかと思う。
Def Leppard - She's Too Tough

CMT Crossroads DVD / Def Leppard

2012-05-29 | Hard Rock
 3年ぐらい前のことだったと思うが、いつものようにネットを見ていてたまたま開いたHMVのトップページに “歌姫テイラー・スイフトとデフ・レパード、夢の共演!” の文字が躍っていた。アマゾンにせよ HMV にせよ、この手のトップ・ニュースはたいていワケの分からん J-POPS 関連の記事ばかりでいつもはスルーしているのだが、 “デフ・レパード” の6文字は見逃さない。
 早速その記事に目を通してみると、そこには “カントリー・ポップス界の歌姫、Taylor SwiftとDef Leppardとの夢のコラボレーション! カナダの人気音楽テレビ番組CMT CROSSROADSによって実現したスペシャルライブの映像が遂にリリース! この番組は2008年11月30日にオンエアされた、Def Leppardの名曲を全米で大人気のシンガー、Taylor Swiftが歌うスペシャル・セッション! とにかく、このライヴはとても素晴らしいジョイント・ライブなのでお互いのファン方は必見です! US ウォールマートのみで販売されています限定アイテムの為、無くなり次第終了となります。” と書かれていた。
 テイラー・スイフト??? “全米で大人気” とのことだが、顔はおろか名前すら知らない(>_<) テイラー・デインやったら知ってるんやけどね...(笑) まぁ誰と共演していようがお目当てはレップスやし、トラックリストを見ると「フォトグラフ」、「ヒステリア」、「ラヴ・アンド・ヘイト」、「シュガー・オン・ミー」といった愛聴曲を演っていて、いやがうえにもテンションが上がってくる。しかも私は “限定アイテム” という殺し文句に滅法弱い。HMV では3,500円を超えるボッタクリ価格だったので、 US アマゾンで新品を10ドルでゲットした。送料込みでもHMVの半値以下だ(^o^)丿 もちろんリージョン・フリーである。
 この DVD は本編8曲、ボートラ3曲の全11曲が収録されており、そのうちデフレパ・ナンバーは6曲。曲と曲の間にはレップス5人とテイラー嬢によるざっくばらんな音楽談義(?)が挿入されているという構成だ。そこで彼女が語ったところによると、彼女の母親が熱狂的なデフ・レパード・ファンで、彼女は幼いころからずっと「パイロメニア」や「ヒステリア」を聴いて育ったのだという。因みにこの DVD のタイトルの CMT とは Country Music Television のことで、その中でカントリー・アーティストとロック・アーティストが共演する企画のコンサート番組の名称が Crossroads というのだそうだが、彼女にこの「クロスロード」出演の話が持ち上がった時に誰と共演したいかと聞かれ、 “デフ・レパード!” と即答。たまたま彼女のツアー・マネージャーがドラマーのリック・アレンのお兄さんだったという凄い偶然から話がトントン拍子に進み、ついに彼女の夢が実現したというわけだ。その辺の経緯を大コーフンしながら語っている姿は実に微笑ましいが、そういえば彼女のドラマー(←ステージ向かって右側のスキンヘッドの人)のバスドラがリック・アレンのユニオン・ジャック・デザインをパロッた星条旗柄になっていて、ロゴのフォントもデフレパ仕様になっているのにもご注目(@_@)
 ステージはレップスとテイラー・スイフト・バンドの共演という形で進行、オープニングの①「フォトグラフ」ではギタリスト4人が横一列に並んでイントロのリフを弾き、ヴォーカルはテイラー嬢が先発。う~ん... 一生懸命歌ってるのは十分伝わってくるのだが決定的に何かが足りない(ー_ー)  この有名なロック・ソングを歌いこなすには彼女の声質は細すぎるのだ。例えるならF1マシンに細いタイヤをつけて鈴鹿の130Rやスパのオー・ルージュを全開で走ろうとするようなもの。極太レーシング・タイヤで走るようにいくはずがない。だからジョーの野太いだみ声ヴォーカルが入ってきた途端に曲が活き活きと躍動し始めるのがよく分かる(←ただし、ジョーはいくら何でもちょっと太り過ぎ。ステージに立ってる姿はまるで特撮映画の“大魔神”みたい...)。 それと、HMV の記事には “テイラー・スイフトの歌唱力も素晴らしいですが、スタイル良し、更にこの美貌...” と書いてあったので期待していたが、何か歌はイマイチやし容姿も私の好みのタイプではないので(←特に目の周りのキラキラ・メイクは生理的に無理!!!)ちょっとガッカリ。バックバンドの赤毛のヴァイオリン弾きのオネーチャンの方がエエな...(^.^)
Def Leppard & Taylor Swift - Photograph (Live at Crossroads)


 テイラー嬢の歌声は①のようなロック・ソングには向かないが、一転④「ヒステリア」のようなミディアム・スロー・バラッドにはドンピシャとハマるようで、中々エエ味を出している。この曲はあのモンスター・セラー・アルバム「ヒステリア」の中でも屈指の美メロ・ナンバーで、赤毛のオネーチャンの奏でるヴァイオリンも曲に絶妙な彩りを添えているし、間奏で彼女のバンドのギタリストがフィルとヴィヴィアンを両脇に従えてめっちゃ嬉しそうにスライド・ギターを弾く姿にも和んでしまう。
Hysteria (Live) Def Leppard & Taylor Swift


 今回のコラボレーションの中で断トツに素晴らしいのが⑥「ホェン・ラヴ・アンド・ヘイト・コライド」だ。この曲は「フットルース」や「トップ・ガン」のような80年代のサントラ名盤に入れたらぴったりハマりそうなキラー・バラッドで、当時なら男女デュエットでシングル・カットして全米№1確実といったところ。80年代は音楽が音楽らしかったホンマにエエ時代だったが、それはさておき、敢えてブリティッシュ・ロック色を捨てて本気で売れ線を狙ってきた時のレップスの底力が存分に発揮された大名曲である。そんな原曲に敬意を払いながら歌詞を噛みしめるように歌い上げるテイラー嬢のヴォーカルは心にグッとくるものがあるし、ジョーの説得力溢れる歌声はもう圧巻の一言だ。バックの弦楽団の演奏も曲とのマッチングも完璧で、聴く者の心の琴線をビンビン震わせる。レップス・ファンはこの1曲のためだけにでもこの DVD を買う価値があると思う。
When Love & Hate Collide (Live) Def Leppard & Taylor Swift


 コンサートのエンディング曲⑧「ポァ・サム・シュガー・オン・ミー」のイントロのリフが鳴り響くとオーディエンスは総立ちで大盛り上がり(^o^)丿 この曲もテイラー嬢には少し荷が重いが健気に先発を買って出るその意気やよし。しかしやはり餅は餅屋と言うべきか、絶妙のタイミングで炸裂するジョーの “フゥア!” というドスの効いた掛け声一発(1分14秒あたり)でロック色が一気に急上昇!!! フィルに絡むヴァイオリンのオネーチャンのシャープでトリッキーな動きも見ものだし、デフレパ勢のバック・コーラスも圧倒的に素晴らしい。しかし何と言ってもこの曲の白眉はリック・アレンのパワフルなドラミングだろう。両脚を駆使してあの圧倒的なグルーヴを生み出すそのミラクルなプレイは鳥肌モノだ。やっぱりデフ・レパードはエエなぁ... (≧▽≦)
POUR SOME SUGAR ON ME - Def Leppard & Taylor Swift

Euphoria / Def Leppard

2012-05-24 | Hard Rock
 私は大学生の時に「フォトグラフ」に衝撃を受けてから30年来のレップス・ファンなのだが、そんな私なりに彼らの歴史を総括すると、1979~1982年(「オン・スルー・ザ・ナイト」、「ハイ・アンド・ドライ」)が大ブレイクへの序章ともいうべき “胎動期” 、1983~1991年(「パイロメニア」、「ヒステリア」)がヒット曲を連発して時代を牽引した “絶頂期” 、1992~1995年(「アドレナライズ」、「レトロ・アクティヴ」、「ヴォールト」)が大成功の余韻に浸りながらその収穫を味わった “安定期” 、1996~2005年(「スラング」、「ユーフォリア」、「Ⅹ」)が時代と対峙した “迷走期” 、そして2006年以降(「イエー」、「ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ」、「ミラーボール」)のレップスは過去の呪縛から解き放たれ、迷いを吹っ切った “充実期” と言えるのではないかと思う。
 中でもグランジ/オルタナ・ロックやラップ/ヒップホップなどの非メロディアスな音楽が台頭してミュージック・シーンが大きく歪み、1980年代のキャッチーで陽気なハードロックが廃れていって、頂点を極めた感のあるレップスにさえも逆風が吹いていた1990年代中盤から2000年代初めにかけてリリースされたオリジナル・アルバムは、オルタナを意識しすぎて墓穴を掘った「スラング」やロックな衝動が感じられず心に残るメロディーもない「Ⅹ」(←10作目のこれは “テン” じゃなくて文字通り “バツ” ですな...)といった駄作凡作が目立つが、そんな中で奇跡的に往年の輝きを取り戻したかのようなレップス・サウンドを聴かせてくれるのが1999年にリリースされたこの「ユーフォリア」である。
 まずは何と言ってもアルバム1曲目を飾る超ハイスピード・ナンバー①「デモリッション・マン」のカッコ良さ、コレに尽きる!!! とにかく前作「スラング」がトホホな内容だっただけに、CD をトレイに収めてから音が出てくるまで “またオルタナっぽかったらイヤやなぁ...” と正直かなり不安だったのだが、そんな私の不安を木端微塵に打ち砕くかのようなノリノリのロックンロールが炸裂! サビの疾走感といい、爽快なコーラス・ハーモニーといい、ドライヴ感溢れるアグレッシヴなギター・プレイといい、まさに “レップスここに再生&完全復活!!!” と声を大にして叫びたくなるようなスーパー・ウルトラ・キラー・チューンだ。特に0分33秒の “Destination anywhere~♪” と力強くハモるところがたまらんたまらん(^o^)丿 そういえば車の中でこの曲が鳴った時、一緒に乗ってたウチの母親が満面の笑顔で “エエ曲やなぁ...元気でてくるわ(^.^)” と即座に反応したのにはビックリ(゜o゜) 80才を目前にしてこんな疾走系ハードロック・ナンバーを楽しめるとは、さすがは私の母親である。次はメタリカでも聴かせてみよう(笑) とにかく “メロディアスでありながらバリバリにロックする” というレップスの魅力が存分に発揮されており、このアルバム中の、いや90年代以降のレップスの最高傑作だと言い切ってしまおう。尚、ラストでギターを弾いているのは元F1ワールド・チャンピオンのデイモン・ヒルだ。
Demolition Man - Def Leppard


 テンション上がりまくりの①に続いてこの②「プロミセズ」の甘酸っぱいイントロが流れてきた瞬間に時間の概念が崩壊、あの「ヒステリア」が席巻した1980年代へとタイム・スリップしたかのような錯覚に陥る。「ヒステリア」や「フォトグラフ」、「アニマル」といった過去の名曲を想わせるような珠玉のメロディーが現れては消え、消えては現れるという感じの、どこを切っても哀愁舞い散るデフレパ節が堪能できる王道ナンバーで、お約束の分厚いコーラスも耳に心地良い。やっぱりレップスはこうでなくっちゃ!!! と言いたくなるような、まさに彼ら以外の何者にも創り得ないザ・ワン・アンド・オンリーな世界観を持った音楽として目の前に屹立するのだ。口の悪い連中はセルフ・コピーだとか言うかもしれないが、それがどーしたソー・ホワット? この曲はそんな批評が単なるタワゴトに聞こえるぐらいポジティヴな空気に満ちている。時代がどう変わろうと素晴らしい音楽は永久不変の輝きを放つという最高の見本がこのトラックだ。
Def Leppard - Promises Music Video


 ③「バック・イン・ユア・フェイス」もめっちゃ好き(^o^)丿 “オマエの目の前に戻ってきたぜ!” というタイトルはレップスの復活を信じて待ち続けたファンへの力強いメッセージとして心に響く。ハンド・クラッピングや “ヘイ!” という掛け声が印象的なこの曲はゲイリー・グリッターやスージー・クワトロを彷彿とさせるものがあり、 “ニュー・グラム・ロック” とでも呼びたくなるようなキャッチーなナンバーに仕上がっている。 “ユニオン・ジャック” 、 “シアー・ハート・アタック” 、 “ジャンピン・ジャック・フラッシュ” 、 “リーダー・オブ・ザ・パック” といったフレーズが飛び交う歌詞も楽しい。
Back in your face- Def Leppard


 ⑥「ペイパー・サン」は重厚でシリアスな曲想を持った大作で、めちゃくちゃヘヴィーなリフと一糸乱れぬコーラス・ハーモニーが圧倒的に素晴らしい。サビのメロディーは名曲「フーリン」のリサイクルだが、演奏の重心を下げることによってうねるようなグルーヴを生み出すことに成功している。哀愁を感じさせるエモーショナルなラストのギター・ソロもブリティッシュ・ロックの王道を行くものだし、演奏のスケールのデカさも特筆モノ。とにかくそのドラマチックな展開はめっちゃスリリングで、聴けば聴くほどグイグイ引き込まれていく名曲名演だ。こんな凄い曲を書けるロック・バンドはレップスの他にはちょっと思いつかない。
Def Leppard Paper Sun (fan video)


 T.レックスの「20th センチュリー・ボーイ」をパロッたようなタイトルの⑧「21st センチュリー・シャ・ラ・ラ・ラ・ガール」は思わず一緒に口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディーをモダンな感覚でまとめ上げた名曲名演で、ライナーによると、最初のうちは “デフ・レパードの持ち味を最大限に活かしながら、しかもモダンな要素をふんだんに取り入れた曲作り” という難しいテーマの中で試行錯誤を繰り返していたらしいが、この曲の完成によってアルバムの明確な方向性が築かれていったという。イントロでおやっ?と思わせておいてAメロBメロで徐々に盛り上げていくという手法はお見事という他ないし、吸引力抜群のサビのメロディーや押し寄せる波のようなバック・コーラスも圧巻だ。
 他にも「ラヴ・アンド・ヘイト」を裏返しにしたような佳曲④「グッドバイ」や緊張感漲るインスト曲⑩「ディスインテグレイト」、超カッコ良いハードロック絵巻⑬「キングス・オブ・オブリビオン」といった素晴らしい楽曲が一杯詰まったこのアルバム、残念ながら全盛期の売り上げ枚数には遠く及ばなかったが、メロディーの弱い曲を数曲削って10曲ぐらいに絞り、もっと早い時期にリリースしていれば間違いなく大ヒットになっていただろう。発売時期や売り上げ枚数で言えば「アドレナライズ」までが “三部作” ということになるが、20世紀の最後を締めくくる1999年という年に彼らが自信を持って “-ia” で終わるアルバム・タイトルを付けただけあって、「パイロメニア」、「ヒステリア」と並ぶ真の “三部作” の完結に相応しいのは間違いなくこのアルバムだと思う。
Def Leppard - 21st Century Girl.mpg