shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ジョンの「ロックンロール」ルーツ特集③

2016-03-26 | Oldies (50's & 60's)
①Bring It On Home To Me (Sam Cooke) ~ Send Me Some Lovin' (Little Richard)
 サム・クックの歌はソウルフルでありながら黒人特有の暑苦しさ、押しつけがましさを微塵も感じさせないところが凄い。「ワンダフル・ワールド」しかり、「ツイスティング・ザ・ナイト・アウェイ」しかりで、ゴスペル直系のソウル・フィーリングをその艶のある声で軽妙洒脱に表現する歌い回しはクールそのものだ。スローに歌い上げる時でも決して自己陶酔型にならないところが超一流の証であり、この「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」においてもジワジワと聴き手の心に染みこんでくる説得力溢れるヴォーカルを聴かせてくれる。
 ポールもカヴァー・アルバム「CHOBA B CCCP」で取り上げていたこの「ブリング・イット・オン・ホーム・トゥ・ミー」はサム・クックが1962年ヒットさせた曲で、ジョンやポール以外にも様々なアーティスト達によってカヴァーされているR&Bの大スタンダード・ナンバーだ。ビートルズ的な視点から言えば「ユー・リアリー・ガッタ・ホールド・オン・ミー」系に属するバラッドだが、この曲をリトル・リチャードの「センド・ミー・サム・ラヴィン」とメドレーで繋げようというジョンのアイデアも慧眼という他ない。前々回取り上げた「リップ・イット・アップ~レディ・テディ」といい、このトラックといい、ジョンのロックンロールに対する造詣の深さとセンスの良さを感じさせるメドレーだ。
 サム・クック盤(RCA VICTOR 47-8036)はdog on top、つまりレーベル面で犬が上にいるのがオリジナルで、ミシガンのレコ屋からセット価格 $5.60でゲット。一方リトル・リチャード盤(Specialty 579)はデラウェアのレコ屋からセット価格 $5.25で入手した。
Sam Cooke Bring It Home To Me

LITTLE RICHARD send me some lovin' SPECIALTY 1957


②Bony Moronie (Larry Williams)
 ラリー・ウイリアムズはビートルズが「スロー・ダウン」「ディジー・ミス・リジー」「バッド・ボーイ」と3曲もカヴァーしなければ、(特に日本では) “知る人ぞ知る存在” で終わっていたかもしれない通好みのR&Bシンガーだ。そんな彼が1957年に放ったヒット曲がこの「ボニー・モロニ―」で、同じスペシャルティ・レーベルのニュー・オーリンズ系R&Bシンガーということでどうしてもリトル・リチャードとキャラがかぶってしまうのだが、飄々とした語り口で軽やかに歌うそのスタイルはギンギンにシャウトするリトル・リチャードとは又違った魅力を持っている。
 上記の3曲すべてでリード・ヴォーカルを取っているジョンはラリー・ウイリアムズの大ファンを公言しており、アルバム「ロックンロール」で彼の曲をカヴァーしたのも必然と言える。学生時代から何十回何百回と歌ってきたであろうこの「ボニー・モロニ―」で、とぐろを巻く大蛇のように聴く者を威圧するフィル・スペクター入魂のウォール・オブ・サウンドをバックに、オリジナルよりもテンポを落として気持ちの重心を下げ、凄味すら感じさせるヤクザなヴォーカルで毒を撒き散らすジョンが最高にカッコイイ(^o^)丿
 ビートルズがカヴァーした曲のオリジナル・シングルは中古市場でも人気があってビッドが集中するので、ラリー・ウイリアムズの場合もビートルズがカヴァーした「スロー・ダウン / ディジー・ミス・リジー」(Specialty 626)と「バッド・ボーイ」(Specialty 658)の2枚は安く手に入れるのにかなり苦労したのだが、この「ボニー・モロニ―」(Specialty 615)はあまり人気がないのか市場にダブついており、60's初期の2ndプレスながらNM状態の盤をたったの$3.75で手に入れることが出来た。スペシャルティ・レーベルの60'sプレス盤は、アルバムは何故か変なエコーが掛かった気持ち悪い音で思わずブチ割りたくなったが(←もう二度と聴きたくない...)、シングルに関しては50'sプレス盤と遜色ない分厚い音がするので狙い目だと思う。
1957 HITS ARCHIVE: Bony Moronie - Larry Williams

ジョンの「ロックンロール」ルーツ特集②

2016-03-13 | Oldies (50's & 60's)
①You Can't Catch Me / Chuck Berry
 チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」という曲は「カム・トゥゲザー」の元ネタとして有名になった曲である。ジョンが「ロックンロール」でカヴァーしたヴァージョンを聴いた時にはそのカム・トゥゲザーなアレンジ(笑)のせいか(←Aメロなんかそっくりやん...) “こりゃアウトやわ(>_<)” と思ったものだったが、その後かなり経ってからチャック・ベリーのオリジナル・ヴァージョンを聴いた時には、「マイ・スウィート・ロード」と「ヒーズ・ソー・ファイン」みたいな瓜二つのヴァージョンを想像していた私としては、確かに曲想が似ているところもあるにはあるがテンポの違いもあってか目くじら立てて騒ぐほど似ているとは思えなかった。
 しかし尊敬するチャック・ベリーへのオマージュとしてジョンがアダプトした歌詞の一節 “Here comes old flat-top♪” が仇となり、裁判で敗色濃厚と悟ったジョンが「ロックンロール」にこの曲の版権を持っているモーリス・レヴィ絡みの曲を3曲入れることで示談にするハメになったという経緯は皆さんご存知の通り。 かように “パクリ” と “オマージュ” の線引きというのは難しい(>_<)
 この曲はチャック・ベリーのデビュー曲「メイベリーン」から59年の「バック・イン・ザ・USA」までの21枚のシングルの内で全米ホット100にもR&Bチャートにもランク・インしなかった唯一の曲で(←もっとつまらん曲でもチャート・インしてるのに不思議やわ...)、あまり売れなかったせいか数あるチャック・ベリーのシングル盤の中で「カム・オン」(←ストーンズがデビュー・シングルでカヴァーした曲)に次いで入手が難しかったのがこのレコードだ。だから去年の秋に2ヶ月ほどeBayで網を張り、運良く BUY IT NOW で出品された直後にポチってピカピカ盤を$10.00でゲットできた時はめっちゃ嬉しかった。尚、この盤(Chess 1645)はオリジナルと同じくチェスの駒を描いたシルバートップのレーベル・デザインで再発されているのだが(←こーゆーの、ホンマに迷惑なんよね...)、オリジナル盤のB面は「ハバナ・ムーン」なのに対し再発盤のB面は「ダウンバウンド・トレイン」なのでコレクターの皆さんは騙されないように気を付けましょう。
Chuck Berry -"You Can't Catch Me" (From the 1956 film Rock, Rock, Rock!)


②Slippin' And Slidin' (Little Richard)
 「スリッピン・アンド・スライディン」のオリジナルはリトル・リチャードだが、一般に広く知られるようになったのはジョンが名盤「ロックンロール」でカヴァーしてからだろう。私のこの曲との出会いはもちろんジョンのヴァージョンなのだが、アルバム「ロックンロール」のA面を聴き終えて盤を裏返し、B面1曲目に置かれたこの曲が始まった瞬間にスピーカーから迸り出る怒涛のロックンロールにブッ飛んだのを今でもよく覚えている。それにしても何とカッコ良い演奏だろう! ノリノリで猥雑でド迫力... まさにロックンロールを歌うために生まれてきたようなジョン・レノンという男の真骨頂といえる必殺の名カヴァーだ。シングル・カットしたわけでもないのにプロモーション・ビデオまで作るという熱の入れようからもジョンがこのカヴァー・ヴァージョンの出来に絶対的な自信を持っていたことが分かろうというものだ。
 この「スリッピン・アンド・スライディン」はリトル・リチャードにとって「トゥッティ・フルッティ」に続くスペシャルティ・レーベルでの2枚目のシングル「ロング・トール・サリー」(Specialty 572)のB面に収められていた曲で、ビートルズは69年のゲット・バック・セッションでこの曲をジャムっており、彼らお気に入りのロックンロール・クラシックスの一つだったことが窺える。50年代スペシャルティ・レーベルで状態の良いシングル盤を見つけるのは難しいのだが、私はラッキーなことにVG++の盤を$7.00で買うことができた。
1956 HITS ARCHIVE: Slippin' And Slidin' - Little Richard (correct single version)


③Peggy Sue (Buddy Holly)
 バディ・ホリーはチャック・ベリーやリトル・リチャードと並んでビートルズに多大な影響を与えたアーティストである。そもそもビートルズというバンド名からしてバディ・ホリーのクリケッツにインスパイアされたものだし、彼らの “3コードをベースに、立って楽器を弾くバンド”というスタイルの源流はバディ・ホリー&ザ・クリケッツだったとポール自身が語っている。しかもポールは76年にホリーの楽曲の版権を取得し、バディ・ホリー・ウイークというイベントまで開催しているのだ。一方ジョンはアルバム「ロックンロール」で「ペギー・スー」をカヴァーし、イントロの雷鳴の如きドラミングやパワー・コードによる圧倒的なドライヴ感、そしてホリーの専売特許であるヒーカップ唱法を見事に再現し、ポールに負けず劣らずの “バディ・ホリー・マニア” ぶりを発揮している。
 このようにジョンやポールを夢中にさせたバディ・ホリーの一番の魅力はカントリーやR&Bのフレイバーを活かした軽快なロカビリー・サウンドにあり、時代の最先端を行くコンボ・スタイルでそのリズミックなポップ・フィーリングを表現した点に尽きると思う。そういう意味で、バディ・ホリー直系と言ってもいいエヴァリー・ブラザーズからもビートルズが多大な影響を受けたのは大いに頷ける話だ。
 バディ・ホリーのレコードはアメリカでは「ザットル・ビー・ザ・デイ」や「イッツ・ソー・イージー」のようにザ・クリケッツ名義のものはブランズウィック・レーベルから、「ワーズ・オブ・ラヴ」やこの「ペギー・スー」のようにバディ・ホリー単独名義のものはコーラル・レーベルから(←どちらもデッカの傍系レーベル)リリースされている。「ペギー・スー」(Coral 9-61885)のファースト・プレスではコンポーザーのクレジットにバディ・ホリーの名前が入っておらず、60年代プレス以降の盤から入るようになったというからややこしい。私が買ったのはオレンジ・コーラルの初版で、NM状態の盤が$5.00だった。
Buddy Holly, Peggy Sue (with lyrics).wmv

ジョンの「ロックンロール」ルーツ特集①

2016-03-06 | Oldies (50's & 60's)
 前回の「ビー・バップ・ア・ルーラ」ではジーン・ヴィンセントのオリジナルも併せて取り上げたが、折角なのでアルバム「ロックンロール」でジョンがカヴァーした曲のオリジナル・シングルで手持ちの盤を特集してみることにした。

①Stand By Me (Ben E. King)
 多くのビートルズ・ファンも同じだと思うが、私が初めて聴いた「スタンド・バイ・ミー」は決定版とでもいうべきジョン・レノンのカヴァー・ヴァージョンであり、ベンEキングによるオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはそれからかなり経ってからのことだった。例えるならフェラーリに乗った後に普通の国産スポーツカーに乗るようなモンで、その時は “へぇ~、これがオリジナルか...” ぐらいの印象しかなかった。決してオリジナル・ヴァージョンも悪くはないのだが、「ロックンロール・ミュージック」や「ツイスト・アンド・シャウト」の時にも書いたように、ジョン・レノンによってカヴァーされるということは要するにそういうことなのだ。いまいちインパクトに欠けると感じてしまうのは決してベンEキングのせいではない。
 しかし何年か前にYouTubeで見つけたベンEキング・ヴァージョンとポリスの「エヴリ・ブレス・ユー・テイク」とのマッシュアップは大いに気に入った。私が一番物足りなく思っていたのはオリジナル・ヴァージョンのストリングス・アレンジがセンチメンタリズム過多に感じられるところだったが、マッシュアップによってポリスの名ドラマー、スチュワート・コープランドのパーカッシヴなドラミングが楽曲全体をピリリと引き締めて独特なグルーヴ感を生み出しており、これならベンEキングのヴォーカルでも悪ぅないなぁ...と感じ入った次第。アトランティック傍系のアトコ・レーベルから出たオリジナル・シングルはアメリカのレコ屋からの一括購入でNM盤が$3.75だった。
Ben E. King - Stand By Me (HQ Video Remastered In 1080p)

The Police vs Ben E King- MASH UP


②Rip It Up~Ready Teddy (Little Richard)
 ビートルズでリトル・リチャード担当と言えばポールである。喉の張り裂けそうなハイトーンでシャウトする「ロング・トール・サリー」のインパクトは絶大だし「カンザス・シティ」や「ヘイ・ヘイ・ヘイ」、そしてソロになってからもカンボジア難民救済コンサートやプリンス・トラスト'86での「ルシール」など、ビートルズ・ファンにはポールのヴォーカルを通してリトル・リチャードを知ったという人が多いのではないかと思うし、私もその一人だった。だからジョンが「ロックンロール」の中でリトル・リチャードのナンバーをメドレーも含めて4曲も取り上げているというのは少し意外な感じがしないでもないが(←あのチャック・ベリーですら2曲やというのに...)、ジョンもポールに負けず劣らずのリトル・リチャード信者だったということか。
 「リップ・イット・アップ」と「レディ・テディ」は元々スペシャルティ・レコードからリリースされたシングル(Specialty 579)のA面とB面だったもので、ジョンはその2曲を実に巧妙にメドレー化して歌っているのだが、ビートルズ時代の「カンザス・シティ~ヘイ・ヘイ・ヘイ」と同様に何の違和感もなく一気呵成に聴けてしまうところが凄い。この2曲は全盛期のプレスリーもカヴァーしているので三者を聴き比べてみるのも一興だろう。
 リトル・リチャードのスペシャルティでのシングルはパッと見は同じようなレーベル・デザインで何度か再発されているらしいので識別が難しいが、私が調べた限りでは盤が分厚くて中央の太い黒並線内に黄色い細線が入っているのが50年代プレスの初回盤、盤は分厚いけれど黄色い細線が入ってないのが60年代初め頃の2ndプレス盤、そしてレーベル左側にFrom Specialty LP, "Little Richard's Grooviest 17 Original Hits" という文言が入っているのが80年代プレス再発盤のようだ。実際に聴いてみて1stプレスと2ndプレスの音質の違いは分からんかったので、コスパを考えるとリトル・リチャードのUSオリジナル・シングルは2ndプレス盤狙いがベストかもしれない。私が買ったのは1stプレスで、VG++盤が$5.25だった。
Little Richard And His Band - Rip It Up/Ready Teddy (Specialty 579) 45 rpm