shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「The Beatles at the Hollywood Bowl」復刻ブートCD聴き比べ

2022-09-25 | The Beatles
 1977年に出たビートルズの「At the Hollywood Bowl」は2016年に映画「Eight Days A Week」の公開に合わせてジャイルズ・マーティンがオリジナルとは大きく異なるモダンな音作りでリマスターし、青いジャケットを纏ってオフィシャル・リリースされたが、その結果、ジョージ・マーティンが作り上げた古式ゆかしいオリジナル・ヴァージョンは闇から闇へと葬られようとしている。ちょうど映画の「Get Back」と「Let It Be」みたいな関係性と言えなくもないが、77年にリアルタイムで国内盤の「スーパー・ライヴ!」LPを買ってそれこそ擦り切れるくらい聴きまくってきた私としてはエコーの効いたオリジナルの音作りにもめちゃくちゃ愛着があるので、出来ればどちらのヴァージョンも手軽に車の中で聴けるCDフォーマットで手元に置いておきたい。ということで、色々と買い集めた「At the Hollywood Bowl」復刻CDの中から音の良かったものを聴き比べてみた。

①Empress Valley 版
 私が最初に買ったオリジナル・ハリウッドボウルの復刻ブートはエンプレス・バレイから出た紙ジャケCDだ。まだジャイルズによるニュー・リマスター青盤が出る前のことで、リアル・サウンドボード音源ではなくジョージ・マーティンがプロデュースしたオリジナルLP音源を収録したCDは他に存在していなかった(←多分)状況で、“LP盤起こしでもなく、ジャケだけ国内盤で音源は流出サウンドボード音源を使用したものでもない、国内盤LP “EAS-80830” のマスター・リールからの収録!” というメーカーの煽り文句を見て一も二もなく購入したのだが、実際に聴いてみたところ、まさに看板に偽りナシの高音質盤で大喜びしたものだ。
 まず何と言ってもヴォーカルと各楽器の音のバランスが絶妙で、気持ち良くビートルズのライヴに浸ることができるところが素晴らしい。特に量感豊かでありながらキリリと引き締まった低音の出方は特筆モノで(←「Ticket To Ride」が一番わかりやすい...)、オリジナルUK盤LPも含めてこれほど凄い音のハリウッド・ボウルはそれまで聴いたことがなかった。これがマスター・リールの音なのか... と感心させられるスーパーウルトラ高音質。残念ながらこのCDは今ではもう廃盤らしくて入手は困難なようだが、エンプレス・バレイの廉価レーベルであるムーンチャイルドから出ている1,000円盤「Hollywood Bowl Concert Complete Edition」が音が良くて、おまけに3公演分のリアル・サウンドボード音源も聴けるというハイコスパ盤としてオススメだ。

②Core Collection Project 版
 このCDはCore Collection Projectというよく知らないメーカーのブートで、「2015 リマスター」と「1977 オリジナル・マスター」の2種類のハリウッドボウル音源が収録されているのだが、“現行オフィシャルその他音源とはミックスも質感も全く異なる高音質オリジナルマスター音源ならではの、音に厚みと奥行きのある、鮮度と音圧感に優れた迫力ある非常に高品位な豊かで素晴らしい音質” という謳い文句についつい釣られて買ってしまった。まず「2015リマスター」だが、各楽器の分離がクリアーでなく、ヴォーカルもいまいちほぐれない。ベースがモコモコしててシンバルがシャカシャカうるさいという、私が最も嫌う音作りだ。どんな音に仕上がってるんやろ?と楽しみだっただけに落差が激しく期待ハズレ感がハンパない。マスタリング担当エンジニアは耳鼻科にでも行った方が良いのではないか? こんな安っぽい音が “高品位” だなんてちゃんちゃらおかしい。
 前半の「2015リマスター」の糞みたいな音を聴き終えて “あ~1,500円損した...(>_<)” とガッカリしながらも “一応後半の「1977 オリジナル・マスター」も聴いとくか...” と期待せずに聴き進めたのだが、驚いたことにこれがもうめちゃくちゃ良い音でビックリ(゜o゜) 何よりもまず音が分厚くてスピーカーからグイグイ迫ってくる感じが超気持ちイイ。ベースはしっかりと音楽の根底を支え、リンゴのドラミングの一打一打がしっかりと演奏を引き締めている。何よりもライヴの圧倒的なエネルギーをCDに封じ込めているところが凄い。私的には満点に近い音作りだ。多分「2015リマスター」の方は今後二度と聴かないと思うが、この「1977 オリジナル・マスター」の方はCDヴァージョンのリファレンスとして聴き続けていきたい。

③Lighthouse 版
 「At the Hollywood Bowl」の '77 LPオリジナル・ミックスに関しては数多くのブート・レーベルから復刻版が出ており、①②以外にも何枚か所有している。これにLPを加えると一体何枚同じミックスのライヴ音源を買えば気が済むねんと笑われそうだが、私にとって「Hollywood Bowl」音源物は、ちょうど「Get Back」セッション音源なんかと同じで、新しいタイトルが出るたびに “多分あんまり変わらんやろなぁ...” と思いながらもついつい買ってしまうという実に厄介な(?)代物なのだ。
 このライトハウス製「ハリウッド・ボウル」が出たのは確か2~3年くらい前だったと思うが、“ハリウッド・ボウルの1977年オリジナル・ミックス・バージョンを国内盤カセットテープより復刻! LPよりも迫力があり、高音もはっきり出ている良音源。テープソースならではの重厚なサウンドのハリウッド・ボウル!” というメーカー情報に興味をそそられて(←ブート屋さんから見たらカモやね...)購入。オリジナル盤であれブートレッグであれ、ビートルズのこととなると理性が吹き飛んでしまうのはいつものことだ(笑)
 カセットテープからイコライズを一切施さずにデジタル化したというその音は他の音源とは少し雰囲気が異なるアナログチックなサウンドで、ウォーミーでヴィンテージな味わいが耳に心地良い。マスター・リールならではのクリアネスが凄い①や中域の押し出し感に目を見張る②に比べると音像は幾分小ぶりに思えるが、その分どこまでいっても聴き疲れのしない好バランスな音作りだと思う。先月手に入れたB'zのカセットを聴いた時にも思ったことだが、カセットテープの音も一味違ってて悪くないですな。
The Beatles At The Hollywood Bowl

Everything Was Right / The Beatles

2022-09-18 | The Beatles
 「Revolver」ボックスセットのオフィシャル・リリースが正式に発表された。当初は「Sgt. Pepper's」以前の、4トラック・レコーディングされた音源はニュー・ミックスを作るのが困難なのでリリースに?マークが付いていたが、その後映画「Get Back」でピーター・ジャクソン監督のオーディオ・チームがヴォーカルと楽器とを分離する方法(“デミックス” というらしい...)を開発し、それが今回のリリースを可能にしたという。ジャイルズ・マーティンがこの “デミックス” を “ケーキを小麦粉・卵・砂糖に分離するようなもので、他と混ざっているものがひとつもない状態” と実にわかりやすく例えてくれているが、テクノロジーの進化というのはホンマに凄いなぁと感心させられた。この技術が今後「Rubber Soul」や「Help!」などにも使われるかもしれないと考えると、ビートルズ・ファンとしてはピーター・ジャクソン監督に足を向けて寝れない。
 今回の「Revolver」もこれまでと同じように様々なフォーマットで発売されるが、私が狙うのはもちろん「スーパー・デラックス・エディション」の輸入盤。薄っぺらい解説・対訳を付けただけで輸入盤よりもCDで5,000円、LPで7,000円も高い “ぼったくり”価格の国内盤なんぞに用はない。早速アマゾンやタワレコ、HMVなどで値段を比べてみたら、HMVの “まとめ買い価格” が一番お買い得そうだったので即予約。まだ1ヶ月以上先のリリースになるが、YouTubeにアップされた「Taxman」を聴いてますます期待が膨らんだ。早よ10月末にならんかな...(^.^)
Taxman (2022 Mix)

 そういうわけで最近は「Revolver」関連の音源を聴くことが多いのだが、そんな中でも車の中でよく聴いているのが今日取り上げる「Everything Was Right」というCDだ。これは「Revolver」のリリース40周年を記念して PUBLIC RADIO INTERNATIONAL が製作し、2006年5月23日に放送されたラジオ・プログラムを収録したもので、単に曲を流してインタビューを挟むというありきたりなものではなく、別ミックス、アウトテイク、ミックスダウン前のテープなどを使いながら、マーク・ルイソンやジョージ・マーティンといった関係者のインタビューと共に「Revolver」の音楽性を掘り下げていくという、実に濃い内容の番組なのだ。
 このプログラムではアルバムの全曲とリード・シングル「Paperback Writer / Rain」について様々な角度から分析が行われており、非常に興味深い情報が詰め込まれている。例えば「Paperback Writer」で繰り返し “フェ~ラ~ジャ~カ~♪” と聞こえるバック・コーラスが実はフランス民謡の「フレール・ジャック」だなんてこの番組を聴くまでは全く知らなかったのだが(←「All You Need Is Love」といい、この曲といい、ビートルズってフランス好きなんやね...)、ヴォーカルとコーラス・パートだけを取り出した音源で検証すると確かに「フレール・ジャック」そのものだ。荒ぶるギター・リフやブンブン唸るリッケン・ベースもしっかりと抽出して、そのアグレッシヴなサウンドの秘密を解き明かしている。ポップ・ソングの世界で paperback writer という言葉自体が珍しく、ネイティヴですら “Paper bag, right turn” と聞き違えたという空耳エピソードも面白かった。
 空耳と言えば、「And Your Bird Can Sing」の歌詞に関する考察でボブ・ディランとの関連について言及されているのだが、面白かったのはビートルズのアメリカ上陸の際に初めて「I Want To Hold Your Hand」を耳にしたディランが歌詞の “I can't hide...♪” の部分を “I get high...♪” だと勘違いし、64年夏のUSツアー時にビートルズが滞在しているNYのホテルにマリファナ持参で訪ねていったところ、彼らがまだ “ハイになったことがない” と知って驚いていたというエピソード。ネイティヴ同士でも空耳とか聞き違えって結構多いんやね。
 「Taxman」でオーディオ・エンジニアがポールの鬼気迫るギター・ソロを分離・抽出して聴かせてくれたり、「I’m Only Sleeping」でテープの逆回転効果をジョージ・マーティンが実際の音を使って解説したり、「Here There And Everywhere」のコーラス・ハーモニーやコード進行の妙に焦点を当てて分析したり、「Good Day Sunshine」をその元ネタであるラヴィン・スプーンフルの「Day Dream」と聴き比べてみたりと、初心者でもマニアでも楽しめるような興味深い内容が満載だ。
 シングルを含む全16曲の中で最も時間が割かれているのはやはりというか当然というか「Tomorrow Never Knows」で、テープ・ループがスベッたとかダライラマがコロンだとかビートルズ・ファンには耳タコのエピソードが延々と語られるが、リンゴのドラミングを“まるでマシーンのような正確さでシンプルかつ効果的なグルーヴを生み出している” と大絶賛しているところにめっちゃ共感。聴けば聴くほどにこの超絶ドラミングの凄さに圧倒される。又、ジェフ・エメリックがハモンドオルガン用のレズリースピーカーを使ったドップラー効果でジョンのヴォーカルを加工したプロセスをこの曲のアウトテイクを使って解説しているところがリアリティーがあってよかった。
 多くのビートルズ・ファンにとって、「Revolver」と言われて真っ先に頭に浮かぶのは他でもないこの「Tomorrow Never Knows」だと思うが(違いますか?)、「Sgt. Pepper's」の「A Day In The Life」と同様に、この「Revolver」でも最後の最後に「Tomorrow Never Knows」でジョンが全部持って行ったなぁ... という思いを強くした。幸いなことにこの番組は以下のURLで聴くことが出来るので、興味のある方はどーぞ↓
https://archive.org/details/everythingwasrightthebeatlesrevolver/02+Everything+Was+Right+Part+II.m4a

The Beatles In Atlanta Whiskey Flat

2022-09-11 | The Beatles
 先日隣室のレコード棚を整理していたら中学時代に買った海賊盤レコードが大量に出てきた。CD時代に入って以来すっかりお役御免という感じで引退を余儀なくされたレコードたちだが、今とは違ってなけなしのお小遣いをためて買い集めただけに、1枚1枚に思い出が染みついている。せっかくなので久々に何か聴いてみようと思い立ち、真っ先に手に取ったのが「The Beatles In Atlanta Whiskey Flat」だった。
 このレコードは「In Atlanta Whiskey Flat」というタイトルにもかかわらず、実際はどこのコンサートの音源なのかがハッキリわかっていないという摩訶不思議な1枚である。私がまだ右も左もわからなかった中学生の頃に、ジョージア州アトランタにある “ウイスキー・フラット” という会場でのライヴだと思って買ったものだが(←普通はそう思いますよね?)、その後ビートルズ本の海賊盤特集記事に “ビートルズが初めてアトランタ公演を行ったのは1965年であって、1964年のUSツアーではアトランタでコンサートを行った事実はなく、いつどこで録音されたのかは不明” と書いてあったのを読んで “何じゃそれは???” と呆れると同時に初めて海賊盤の何たるかを教えられた思い出のレコードだ。
 やがてこの「アトランタ・ウイスキー・フラット」の名称で親しまれてきた音源は実は1964年9月2日のフィラデルフィア・コンベンション・ホールでのコンサートを収録したものだというのが定説となり、私も “そうなんか...” と納得していたのだが、最新の研究によると当日撮影された映像と合わない箇所があるとかで、まだ100%確実とは言えないらしい。
 まぁフィラデルフィアであれどこであれ、コンサートを行ってもいない “アトランタ” という言葉がタイトルに入っていること自体が意味不明。これに関しては8月30日のアトランティック・シティ公演と混同した説とかあって結構面白いのだが、詳細は松本常男氏の名著「ビートルズ海賊盤事典」のp379~381に書いてあるので興味のある方はどーぞ。
 とまぁこのように “看板に偽りあり” のレコードなのだが、私はこの「アトランタ・ウイスキー・フラット」という言葉の響きが気に入っていて、「アトランタ」と言えば真っ先に「ウイスキーフラット」という言葉が頭に浮かんでしまう。因みにさっき Whiskey Flat でググってみたが、大きなコンサート・ホールは出てこず、西部劇にでも出てきそうなカリフォルニアの小さな田舎町の画像が表示されて拍子抜け。要するにアトランタにもアトランティック・シティにも “ウイスキー・フラット” という場所は存在しないということだが、それなのにどうしてこの “Atlanta Whiskey Flat” というタイトルが付けられたのか謎は深まるばかりだ。まぁどこのコンサートのものにしろ、元になった音源は地元のFM局で中継された放送をエアチェックしたものというのは間違いないらしく、そのせいか手持ちの海賊盤レコードの中でも一二を争う音の良さなのだ。
 この音源に関して言うと、CD時代に入ってからは「Philadelphia 1964 Reel To Reel」(IMPレーベル)がめちゃくちゃ音が良かったのでずーっとそれを愛聴してきたのだが、3ヶ月ほど前にライトハウスから「Philadelphia 1964 Soundboard:Reel To Reel」というタイトルでアップグレード音源盤がリリースされ、ハムノイズとかが軽減されてこれまで以上に気持ち良く聴けるようになったのが喜ばしい。
 1964年USツアーのビートルズと言えば何といってもハリウッド・ボウルでのライヴに尽きると思うが、ライヴ・レコーディングを前提としたハリウッド・ボウルのカッチリまとまった演奏とは違って、こちらのフィラデルフィア(?)公演盤はライヴならではのラフで勢いに溢れた演奏が実に新鮮に響く。何よりもまずA①「Twist And Shout」の勢いを維持したまま間髪を入れずに次曲A②「You Can't Do That」になだれ込む展開が超カッコイイし、ジョンやポールのMCにも心なしかリラックスした雰囲気が漂う。特にジョンがめちゃくちゃ楽しそうで、A④「She Loves You」のヴォーカルなんてもうノリノリだ。B③「If I Fell」でジョンとポールが吹き出しそうになりながら歌うところは聴いてて実に微笑ましいし、続くB④「I Want To Hold Your Hand」でのバンドが一体となったノリの良い演奏も聴きどころだ。この頃のビートルズはまだライヴに全力投球しており、気合いの入ったエネルギッシュな歌と演奏が楽しめるのが嬉しい。
 映画の影響で最近はゲットバック・セッション音源ばかり聴いていたが、こうやって初期ビートルズのライヴを聴くと、その荒々しいロックンロールこそがすべての始まりであり、私の音楽人生の原点であることを改めて思い出させてくれる。ジェット・スクリームと呼ばれる嬌声は確かに凄まじいが、それをも上回るパワーでビンビン伝わってくるロックンロールのエネルギーは感動的だ。
The Beatles September 2 1964 Convention Hall, Philadelphia PA

「Born To Run」RLカットのリマスター盤

2022-09-04 | Rock & Pops (70's)
 私は「リイシュー(再発)盤」「リマスター盤」と聞くと “どーせ薄っぺらい音しかせぇへんのやろ... そんなモンにいちいち金かけてられるかい!” という偏見・先入観をもって見下す悪い癖がある。実際のところ、リマスターやリミックスでいくら現代的な装飾を施そうが、音楽自体が持つチカラにおいてオリジナル盤を凌駕した例は「ペパーズ」のニンバス・スーパーカット盤という例外中の例外を除けばほとんど記憶にない。
 だからビートルズ(→もうすぐ出る「Revolver」のボックス・セット楽しみ~♡)以外の再発盤には目もくれずにスルーしてきたのだが、先日ネットで “ボブ・ラドウィックがリマスターした「Born To Run」がどーのこーの...” という記事を目にして居ても立ってもいられなくなった。
 ボブ・ラドウィックとはもちろんあの「Led Zeppelin Ⅱ」の “Hot Mix” 盤で有名な世界屈指のマスタリング・エンジニアのこと。そのRL刻印はジャズ界における RVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)刻印に匹敵するくらいの威光を放っており、ネット・オークションでRL刻印ありの盤にビッドが集中して値が吊り上がるのをこれまで何度見てきたことか。実際にそのロック魂溢れるサウンドを聴いてみれば、何故RL刻印盤がこれほど人気なのかがわかるだろう。
 そんな彼がロックのバイブルとでも言うべき「Born To Run」をリマスターしているとは知らなんだ... 私としたことが何たる不覚(>_<)  大慌てで調べてみると、確かに2014年にスプリングスティーンの全カタログをリマスターしているではないか! これはえらいこっちゃである。特にLPの方は8年前に限定盤でリリースされたこともあって、いつ廃盤になってもおかしくない。私はとりあえずまだ在庫のあるアマゾンで「Born To Run」を購入して一体どんな音に仕上がっているのか聴いてみることにした。
 そもそもこのレコードはその邦題をこのブログのタイトルにするぐらいの愛聴盤なのだが、その音質に関しては、“ブルースが敬愛するフィル・スペクターを意識して音を重ねたためにモコモコ感が拭えない、霧がかかったような音” とその筋では揶揄されてきた(←私はそうは思わないが...)という曰く付きのアルバムだ。今回せっかくの機会なので手持ちの「Born To Run」の聴き比べをやってみた。

①US盤
 私が持っている「Born To Run」のUS盤LPは、カタログ№がJCではなくPCで始まっていてマト末尾が 1A/1A、更に裏ジャケのプロデューサー名にスペルミス(→Jon Landau がJohnになっとる...)がある最初期プレスだ。そのせいか、音の鮮度は抜群で、Eストリート・バンドが生み出す圧倒的なグルーヴが実に気持ち良い。各楽器の音が混然一体となって襲い掛かってくるようなプリミティヴなサウンドはまさにロックの王道という感じで説得力抜群! これのどこに “霧” がかかっているというのだろう? この音が気に入らない人はきっとオーディオ的にどうこうと言いたいのだろうが、少なくともロックンロール的にはこの野太い音で全く問題ないと思う。

②UK盤
 私の「Born To Run」UKプレスはマト A1/B1盤で、ビートルズのUKオリジナル盤で言えば “1G” に相当する、こちらも最初期プレスである。当然裏ジャケもUS盤と同様にJohn Landau 表記だ。音の方は中低音がしっかりしたUK盤ならではの腰の据わったサウンドで、武骨なUSオリジナル盤よりも抜けが良く、クリアーで派手な音作りが印象的だ。ちなみにこのレーベル・デザインは Sunburst Label というらしい(←勉強になるわぁ...)が、ネット・オークションでたまに見かける赤CBSレーベルのUK盤はレイター・プレス(A5/B4)なのでご注意を!

③2014リマスター盤
 で、いよいよ2014年にボブ・ラドウィックがリマスターした盤である。まず手に持った感触がズシリと重くて(180g!)期待に胸が高鳴る。針を落とした数秒後に静寂を破ってリスニングルームに響き渡るA①「Thunder Road」のイントロのピアノとハーモニカの音からしてめちゃくちゃクリアーで驚かされるが、私が何よりも凄いと思ったのは各楽器の音をクリアーに響かせながら、なおかつ音全体のエネルギー感が格段にパワー・アップしているところ。ただ単に音圧を上げただけの “なんちゃってリマスター” とは激しく一線を画す “高品位な爆裂サウンド(?)” なんである。上記のUS盤とUK盤の “良いとこ取り” という感じの、真にあらまほしき音なのだ。いやぁ、やっぱり巨匠の技は凄いですわ。
 ということで、もうこーなったらスプリングスティーンだけでなく、ありとあらゆるロック名盤をRLカッティングで聴いてみたい... と思わせるくらいこのリマスター盤の音には感銘を受けた。手持ちの音源をRLカッティング仕様とかニンバス・スーパーカット仕様、インドのチューブ・カッティング仕様(笑)みたいな感じで自在に調節できる高性能イコライザーとかあったらエエのになぁ...
Bruce Springsteen - Born to Run (Official Video)