shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ベンチャーズ・カヴァー特集⑩「ダイアモンド・ヘッド」

2014-11-08 | エレキ・インスト
①小山貢・豊 with Dr.Project
 ベンチャーズのトリビュート盤は何枚も持っているが、その中で一番ターンテーブルに乗る回数が多いのがこの「津軽より愛をこめて ~津軽三味線 play ザ・ベンチャーズ~」だ。これはベンチャーズ・クラシックスの数々を津軽三味線でカヴァーしてしまおうというという大胆不敵な発想から生まれたアルバムで、以前紹介したドクターKこと徳武弘文率いる Dr.K Project をバックに津軽三味線の小山流家元である小山貢と小山豊の親子が持てるテクニックの限りを尽くしてガンガン弾きまくるという痛快無比な1枚だ。前代未聞のリード三味線とバンドとの息もピッタリ合っていて、異色コラボによる単なる “面白カヴァー” という次元を遥かに超越したカッコイイ「ダイアモンド・ヘッド」になっている。ドンやノーキーにもぜひ聴かせたい逸品だ。
ダイアモンドヘッド


②U-900
 津軽三味線の次はウクレレだ。この曲が入った「ウクレレ・ベンチャーズ」はU900(ゆー・きゅうひゃく)という謎のユニットがベンチャーズの名曲をウクレレ+脱力ヴォーカルでユル~くカヴァーした珍盤で、YouTubeにもウサギのU(ウー)とクマの900(クレレ)という2体の編みぐるみを使ったプロモ・ビデオがアップされている。 “ワン、トゥ、スリー、フォー!”というユル~いカウントから始まるこの曲ではウクレレのリラクゼーション溢れるサウンドが結構エエ味を出している。ウクレレとベンチャーズって意外に合うんやね。 “口(くち)テケテケ” には笑わせてもらったが、 “ウッ!” “ハッ!” という掛け声も含めてゆるキャラのヴォーカル・パート(?)は何度も聴いていると色物臭がだんだん鼻についてくるので、出来ることならウクレレ・オンリーのインスト・ヴァージョンで聴いてみたいものだ。
U900 -Diamond Head


③植木等
 これはたまたまYouTubeで見つけた。あの「植木等」+「サーフィン」ということで聴く前から大方の予想はついてはいたが、実際に聴いてみてそのあまりの脱力ぶりに思わずイスから転げ落ちそうになった(・o・)  サーフ・インスト・クラシックスの数々に歌詞を付けてメドレー化し、植木等に歌わせるなんて企画、一体誰の発想やろ?と半ば呆れながらネットで情報収集すると、何とあの大瀧詠一師匠のプロデュースだった。いやはやまったく、師匠の目の付け所は凄いですわ。まぁ邪道と言ってしまえばそれまでだが、 “アホくさ~” と思いながらも何度もリピートしてしまう中毒性こそがこの植木&大瀧コラボの魅力なんじゃないかという気がする。 “わかっちゃいるけど、やめられな~い!” とはまさにこのことだ。
植木等「サーフィン伝説」


④Jon & The Nightriders
 脱力系が続いたのでここらで一発正統派のベンちゃん・カヴァーをひとつ。ジョン&ザ・ナイトライダーズは1980年にデビューして以来息の長い活動を続けているアメリカのサーフ・インスト・バンドで、彼らが1999年リリースのアルバム「ムーヴィング・ターゲット」に入っていたのがこのベンチャーズ・カヴァーだ。ディック・デイルやデュアン・エディ直系でパンクの影響をも随所に感じさせるイケイケのサウンドがこのバンドの一番の魅力であり、この曲でも活きのいいプレイで楽しませてくれるのだが、ベンチャーズのオリジナル・ヴァージョンのインパクトが強すぎるせいか、テケテケもスクラッチも無い「ダイアモンド・ヘッド」というのはどうしても違和感を感じてしまう。やっぱりテケテケあっての「ダイアモンド・ヘッド」なのだ。
Jon & The Nightriders - Diamondhead


⑤Ventures
 ベンチャーズ・ナンバーは名曲名演が目白押しなので一番好きな曲を選べと言われたら困ってしまうが(←私の場合は「10番街」か「木の葉」かな...)、ベンチャーズの曲で一番有名な、いわゆるひとつの代表曲を選べと言われたら(特に日本では)この「ダイアモンド・ヘッド」でキマリだろう。これまで見てきたように彼らのレパートリーの大半は他アーティストのカヴァーなのだが、この曲はダニー・ハミルトンが彼らのために書き下ろしたオリジナル・ヒット曲。元々は「マーフリーズボロ」(←テネシー州の地名だそうな...)というタイトルで全然サーフィンぽい曲じゃなかったものにベンチャーズがテケテケ・アレンジを施し、曲名も「ダイアモンド・ヘッド」へと改題してこのようなサーフ・ロックの名曲に仕上げたという。ラッキーなことにYouTubeに原曲がアップされていたので一緒に下に貼り付けてみたが、聴き比べてみると全然雰囲気が違うのが興味深い。もし元の形のままで世に出ていたらあれほどの大ヒットにはならなかっただろう。まさに “曲の錬金術師集団” の本領発揮である。尚、「マーフリーズボロ」の方は1年後に再々アレンジされて「ワイルド・ウーリィ」という曲名でアルバム「ワイルド・シング!」(1966年)に収録されているので聴き比べてみるのも一興だろう。
ベンチャーズ - ダイヤモンド・ヘッド The Ventures - Diamond Head

The VeNtuReS ~MURFREESBORO~ (RARE UNRELEASED TAKE!!) Aka: ~WILD & WOOLY~
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ベンチャーズ・カヴァー特集⑨「夜空の星」

2014-11-01 | エレキ・インスト
①キャンディーズ
 私は大好きな曲は出来る限り色んな人の歌や演奏で聴いてみてその違いを楽しみたいと考える人間なのだが、残念なことにこの曲のカヴァーにはめったにお目にかかれない。こんなにエエ曲やのに、何で誰もカヴァーせぇへんのやろ?と不思議に思っていたところ、たまたまヤフオクで落札したLP盤「キャンディーズ・ライブ ~蔵前国技館 10,000人カーニバル Vol.2~」の中にこの曲を発見して狂喜した。日本エレキ・インスト史上屈指の大名曲を大好きなキャンディーズの歌声で聴ける喜びはとても言葉では表現できない(^o^)丿 「みごろ! たべごろ! 笑いごろ!!」で加山雄三と共演したのがきっかけでこの曲を取り上げたということらしいが、アレンジはオリジナル・ヴァージョンのままなのにその洗練されたコーラス・ハーモニーによって見事にキャンディーズ色に染め上げているところが凄い。ライヴの高揚感も名演度アップに貢献しているようだ。やっぱりキャンディーズは最高やね(≧▽≦)
キャンディーズ 夜空の星(ライブ)


②Mustangs
 現役のエレキ・インスト・バンドで私が最も好きなのがフィンランドのムスタングス。彼らのCDは何枚も持っているが、そんな中で私が最も気に入っているのが2000年の東京公演の模様を収録した「ライヴ・イン・ジャパン」だ。彼らのライヴはスタジオ録音の演奏を更に高速化したようなイケイケのプレイが特徴で、ノリ一発で押しまくる疾走系ノルディック・エレキ・サウンドが実にスリリング(≧▽≦) 特に後半の「さすらいのギター」、「さらばシベリア鉄道」、そしてこの「夜空の星」と続くセトリには涙ちょちょぎれる。「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」をパロったジャケットのセンスも最高だ。
Mustangs


③寺内タケシとブルージーンズ with ノーキー・エドワーズ
 寺内タケシ御大はライヴ盤も含めるとこの曲を何度も演奏しているが、私が愛聴しているのは1986年にリリースされたノーキー・エドワーズとの共演盤「日米エレキ大合戦」収録のヴァージョンだ。日米を代表するエレキ・インスト第一人者による和気あいあいとしたセッションだが、ノーキーはカントリー・ミュージック、寺内御大は津軽三味線というそれぞれのルーツを感じさせるお得意フレーズが出るわ出るわのワンコソバ状態で大いに楽しませてくれる。悠揚迫らぬノーキーのリラクセイション溢れるプレイと原曲の持つ昭和歌謡的要素を見事に引き出した寺内御大の気合い十分なプレイの対比が面白い。
夜空の星 「音のみ」


④加山雄三
 60年代をリアルタイムで知らない私は長い間加山雄三のことを “歯の浮くような歌詞やクサいセリフ入りの「君といつまでも」みたいな激甘ソングばかり歌ってるオッチャン歌手” だと誤解していた。だからベンチャーズがカヴァーしたこの「夜空の星」が彼の作品だと知った時はホンマに驚いたが(←しかもこの曲、シングルで「君といつまでも」のB面に入ってるんよね...)、その後ベンチャーズ系イケイケ・エレキ・インスト・ナンバー満載のCD「ザ・ランチャーズとともに」を聴いて初めて自分が彼のほんの一面しか知らなかったことに気が付いた。彼のエレキギターをフィーチャーしたナンバーでは他に「ブラックサンド・ビーチ」や「モンキー・クレイジー」なんかも気に入ったが、やはりエレキ・インストのカッコ良さと昭和歌謡の哀愁メロディーが絶妙にマッチしたこの曲が断トツに素晴らしい。バックの演奏は寺内タケシとブルージーンズで、コテコテのテリー節丸出しで弾きまくる御大のプレイが楽しめる。
Yuzo Kayama - Yozora No Hoshi


⑤Ventures
 この曲を初めて聴いたのは私のベンチャーズ体験の原点とでも言うべき4枚組ボックス「EPコレクション」で、大袈裟ではなく全103曲中で最も衝撃を受けたのが「Yozora-No-Hoshi」と題されたこのトラックだった。わずか2分足らずの短い曲だがイントロからエンディングまで一気呵成に突っ走る怒涛の展開で、“何ちゅうカッコエエ曲なんや...(≧▽≦) ” と感激しながらタイトルを見て初めて日本の曲のカヴァーだと知った次第。オリジナルの加山ヴァージョンを更に高速化し、哀愁をまき散らしながら疾走する痛快無比なエレキ・インスト・ナンバーへと昇華させた彼らのアレンジ・センスはいつものことながらもう見事という他ない。鉄壁のリズム・セクションをバックに切っ先鋭いナイフのようなフレーズを連発するノーキーのスリリングなプレイも圧巻だ。
夜空の星Yozora-No-Hoshi/ザ・ベンチャーズThe Ventures
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ベンチャーズ・カヴァー特集⑧「シークレット・エージェント・マン」

2014-10-25 | エレキ・インスト
①RCサクセション
 原子力問題や戦争、テロといった政治的にタブーなテーマを扱った歌詞を洋楽のメロディーに乗せて歌う清志郎の替え歌プロテスト・ソング集「カバーズ」は極論すればジョン・レノンの「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」のように “歌詞を聴かせる” ことを意図して制作されたアルバムだが、名曲名演揃いのこのアルバムの中でも特に気に入ったトラックが大韓航空機爆破事件の事を歌ったこの「シークレット・エージェント・マン」だ。生々しい歌詞もインパクト絶大だったが、イントロに金賢姫の肉声を入れ、後にHISで共演することになる演歌の坂本冬美に3番を歌わせて(←INFを “世界通貨基金” と勘違いしてたアホな私は最初歌詞の意味がよぉ分からんかった...)そのコブシの効いた歌声で曲の展開にメリハリをつけるなど、彼のトータル・プロデューサーとしての卓越した音楽的センスに唸ってしまう。冬美姐さんの起用によって “単なるベンチャーズ・カヴァー” を超越した存在感を持つに至った大傑作だ。
SECRET AGENT MAN (金賢姫) .wmv


②Brian Setzer & Tomcats
 トムキャッツはストレイ・キャッツの前身的存在といえるロカビリー・トリオで(←まぁ例えるならブライアン・セッツァーにとってのクオリーメンみたいなもんか...)、この演奏は1980年5月30日にニューヨークのTKs Placeで行われたギグの模様を収めたオフィシャル・ブートレッグ・ライヴ・アルバム「リップ・イット・アップ」に入っていたもの。ブライアン・セッツァーはBSOのライヴ1曲目に「ハワイ・ファイヴ・オー」をもってくるほどの熱狂的なベンチャーズ・マニアであり、このベンちゃん・カヴァー祭りも元をただせば彼の「キャラバン」がきっかけになったワケだが、そんなセッツァー兄貴の若かりし頃の熱演が聴けるこのトムキャッツ版「シークレット・エージェント・マン」も竹を割ったようなストレートアヘッドなロックンロールで、ノリ一発で聴き手をノックアウトする素晴らしい演奏だ。やっぱりセッツァー兄貴は最高やでぇ~(^o^)丿
Brian Setzer & The Tomcats - Secret Agent Man


③Willie Mitchell
 このウイリー・ミッチェルという人は名前すら聞いたことがなかったのだが、大好きな「シークレット・エージェント・マン」をやっているのをYouTubeで知り、どんなんかなぁと試聴してみるとこれが中々エエ感じ(^.^)  この曲が入っているアルバム「イッツ・ホワッツ・ハプニン」には他にも「ジ・イン・クラウド」や「ア・テイスト・オブ・ハニー」、「ウリー・ブリー」といった名曲がいっぱい入っていたので迷わずゲットした。 “メンフィス・ソウル” と呼ばれるアーシーなサウンドで聴く「シークレット・エージェント・マン」は実に新鮮で、ベンチャーズを始めとするエレキ・インスト・バンドと同じようにギターを使っていながらこれほど違った雰囲気の演奏になるものかと感心させられた。顎が落ちそうな(?)このグルーヴ、たまりませんわ... (≧▽≦)
Willie Mitchell - Secret agent man


④Johnny Rivers
 私は昔から海外TVドラマの主題歌が大好きでそれらを集めたコンピレーションCDも持っているのだが、不幸なことにその盤の中にこの曲は入っておらず、又この「ザ・シークレット・エージェント」という番組を実際に見たこともなかったので、当然ジョニー・リバースのオリジナル・ヴァージョンを耳にしたこともなかった。私がこの曲を初めて聴いたのはベンチャーズのヴァージョンで、その後清志郎師匠やセッツァー兄貴の秀逸なカヴァーを聴き、最後の最後に辿り着いたのがこのオリジナル・ヴァージョンというワケだ。ジョニー・リバースというシンガーについては恥ずかしながら名前だけしか知らなかったが、調べてみると1964年にビートルズ旋風が吹き荒れる中、チャック・ベリーの「メンフィス」をカヴァーして全米2位まで行ったバリバリのロックンロール・シンガーとのこと。この曲でも持ち前のノリの良さで楽しませてくれるが、私的には初めてオリジナルの歌詞をちゃんと聴けたことが一番の収穫で、スパイの悲哀を見事に表現した “Odds are he won't live to see tomorrow♪”(奇妙なのは彼が明日を目にするために生きようとはしていないことだ...)のラインがたまらなく好きだ。
JOHNNY RIVERS - Secret Agent Man 1966


⑤Ventures
 私が初めて買ったベンチャーズ盤はCD黎明期の1984年(!)に出た「サーフィン・デラックス」という偏った選曲のベスト盤(←CD1枚が3,500円もしたんよね...)だったため、その後20年という長きに亘って彼らのほんの一側面しか知らずに過ごして遠回りしてしまったが、「木の葉の子守唄」を聴いてコレはえらいこっちゃとばかりに買ったのが「ベンチャーズ・EPコレクション」という4枚組ボックス・セット。ベンチャーズ・マニアとしての今の私があるのはこのボックスのおかげであると言っても過言ではない。CD4枚全103曲を一気呵成に聴き通した時のメカラウロコ感は今でも忘れられないが、そんな中で強く印象に残ったキラー・チューンの1曲がこの「シークレット・エージェント・マン」だった。このベンチャーズ・ヴァージョンは持てるテクニックを駆使して縦横無尽に弾きまくるノーキーの歌心溢れるプレイに圧倒される痛快無比なロックンロールに仕上がっており、先の「木の葉」と共に私をベンチャーズ狂いにさせた思い出深いナンバーだ。尚、この曲が入っているアルバム「バットマン」はトホホなジャケット(←TV番組「バットマン」のスタートとタイミングを合わせるために大急ぎで制作されたせいであんな手抜きアートワークになったらしい...)のせいかファンの間ですら滅多に話題に上ることのない不憫な1枚だが、私的には名曲名演てんこ盛りの超愛聴盤なのだ。
THE VENTURES SECRET AGENT MAN
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ベンチャーズ・カヴァー特集⑦「10番街の殺人」

2014-10-19 | エレキ・インスト
①小山ルミ
 ベンチャーズ歌謡といえば何はさておき小山ルミの「さすらいのギター」だが、彼女はシングルだけでは飽き足らずにアルバム1枚丸ごとベンチャーズ・カヴァーという「小山ルミ / ベンチャーズ・ヒットを歌う!」をリリースしており、ベンチャーズ・クラシックスとカルト歌謡の邂逅が生み出すザ・ワン・アンド・オンリーな小山ルミ・ワールドが思う存分楽しめる。中でもこの「10番街の殺人」は吸引力抜群の彼女のヴォーカルが聴く者に強烈なインパクトを残し、一度聴いたら忘れられないヴァージョンに仕上がっていて言うことナシ(^.^) その完成度の高さは二匹目のドジョウを狙って全く同じタイトルでリリースされたアン・ルイス盤の比ではない。尚、この曲に日本語詞を付けたのは初期キャンディーズや山口百恵、麻丘めぐみらの一連のヒット曲の作詞を担当した千家和也で、歌謡ポップスとして違和感なしに聴ける内容になっている。
十番街の殺人


②Dr.K Project
 日本におけるベンチャーズ系エレキ・インストの第一人者であるDr. Kこと、徳武弘文(海外のミュージシャンが “トクタケ” を “ドクターK” と呼んだことからこのニックネームがついたという...)が “日本のメル・テイラー” の異名を取る三浦晃嗣と組んで結成したのが Dr. K プロジェクトだ。この演奏はエレキ・インストの楽しさを後世に伝えようと積極的にライヴ活動を行っている彼らが1997年に開催した “ベンチャーズ・ナイト” の時のもので、まるでメル・テイラーが墓場から蘇えってきたかの如き入魂のプレイでバンドをガンガンプッシュする三浦さんのドラミングに胸が熱くなる。血湧き肉躍る演奏というのはこういうのを言うのだ。ノーキー・エドワーズというよりもむしろジェリー・マギーに近いスタイルで味のあるプレイを聴かせる徳武さんも素晴らしい。それにしてもモズライトの野太い音はいつ聴いてもタマランですなぁ... (≧▽≦)
Dr.K Project ♪♪ 十番街の殺人


③Shadows
 アメリカのベンチャーズ、スウェーデンのスプートニクスと並ぶ世界3大エレキ・インスト・バンドの1つがイギリスのシャドウズだ。しかし圧倒的なグルーヴと天才的なアレンジ力で “エレキ・インスト” というジャンルを軽く超越してみせたベンチャーズ、他の誰にも真似の出来ない独特の北欧サウンドで唯一無比な世界を作り上げたスプートニクスに比べると、私にとってシャドウズというのはイマイチのめり込めないところがある。悪くはないのだけれど(←クリフ・リチャードのバックでやってるヤツなんかは結構好き...)、もひとつ地味というか、渋すぎるというか、少なくとも私の心にグッと迫ってはこない。どちらかというと、エレキ・インストの “音” そのものを追及しているような印象を受けるのだ。1969年に出たこの「10番街」も原曲に忠実なアレンジの演奏で、ベンチャーズ・ヴァージョンと比べると両者の違いは一聴瞭然。やっぱり私は骨の髄までベンチャーズ派だ。
The Shadows Slaughter on 10th Avenue


④Anita O'Day
 「ウォーク・ドント・ラン」や「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」がベンチャーズのオリジナルではないと知った時の驚きは前に書いたが、この「10番街の殺人」もコテコテのベンチャーズ・オリジナルだと信じて疑わなかったので、ジャズ・ヴォーカルのアニタ・オデイのアルバム「インコンパラブル」の中にこの曲を見つけた時に “何でアニタがベンチャーズやってんねん?” と不思議に思い、あわててベンチャーズCDの解説を読み返して初めて真相を知ったという恥ずかしい思い出がある。私は字を読むのが面倒くさくてライナーノーツを滅多に読まないので、まだまだ知らないことや勘違いがいっぱいありそうだ(笑) リチャード・ロジャース作品にしては取り上げるジャズ・ミュージシャンも少なく、他にはアート・ヴァン・ダムやジミー・スミスぐらいしか知らないが、私的に一番マシだったのが持ち前のスキャットを駆使してこの単調な曲に何とか変化を付けようと試みているこのアニタのヴァージョンだ。裏を返せばあのアニタ・オデイをもってしてもこの程度ということで、ベンチャーズのロック・アレンジがいかに画期的なものだったかを逆説的に物語っているように思う。
Anita O'Day - Slaughter On 10th Avenue


⑤Ventures
 この「10番街の殺人」はアメリカの作曲家リチャード・ロジャースが1936年に「オン・ユア・トウズ」というブロードウェイ・ミュージカルのために書いたスローな劇中曲がオリジナルで、それにベンチャーズが見事なロックンロール・アレンジを施して彼らの最高傑作とまで言われるエキサイティングなエレキ・インスト・ナンバーにまで昇華させたのがこのヴァージョンだ。強烈なディミニッシュ・コードのスライド・ダウンから始まりドラムス→ベース→リズム・ギターと続くイントロ部分のカッコ良さを何と表現しよう? ベンチャーズ史上、いや、ロックンロール史上屈指の名イントロではないか! さらにAメロが始まってリード・ギターがメロディーをストレートに弾いているにもかかわらず、もはや原曲の面影はどこにもない。ブロードウェイ・ミュージカルの凡庸な劇中歌がたちまち永久不変のロックンロール・クラシックスへと変化したのだ。これこそがベンチャーズを聴く醍醐味であり、一過性音楽を持続性音楽へと変えてしまう曲の錬金術師集団としての彼らの本領が見事に発揮されたアレンジが痛快だ。又、後半1分30秒をすぎたあたりで聴けるフェイク気味の必殺フレーズもたまらんたまらん(≧▽≦)  以前BSの番組で Char がそのあたりの魅力を力説しているのを聞いて我が意を得たりと思ったが、ノーマークだった人は是非ともそこんところに注意して聴いてみて下さいな(^.^)
Ventures - Slaughter on Tenth Avenue - 45 rpm

Charが語るベンチャーズ

Vera Zorina in Slaughter on Tenth Avenue
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ベンチャーズ・カヴァー特集⑥「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」

2014-10-14 | エレキ・インスト
①加山雄三&ハイパーランチャーズ
 ベンチャーズの「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」(原題:「Ten Seconds To Heaven」)はめちゃくちゃカッコイイ曲なのになぜかカヴァー・ヴァージョンは数えるほどしか存在しない。手持ちの盤を調べてみても、井上宗孝とシャープ・ファイブやザ・スペイスメンといった60年代の日本のエレキ・エンスト・バンドがリアルタイムで取り上げているぐらいで、海外のエレキ・インスト・バンドによるカヴァーは1枚もないというお寒い状況だ。ひょっとするとベンチャーズのヴァージョンがあまりにも素晴らしすぎておいそれと手が出せないのかもしれない。そんな数少ないこの曲のエレキ・インスト・カヴァーの中で私が最も気に入っているのが加山雄三&ハイパーランチャーズのヴァージョンで、ヘタな小細工をせずに真っ向勝負でストレートにカヴァーしているところがいい(^.^)  一音一音にベンチャーズへの愛とリスペクトが感じられるのだ。還暦を過ぎてなおこれだけのプレイを聴かせる加山雄三こそ “永遠のギターキッズ” の名に相応しいと思う。
パラダイス・ア・ゴー・ゴー


②Caterina Valente
 「Ten Seconds To Heaven」のオリジナルは1953年のブロードウェイ・ミュージカル「キスメット」の挿入歌「ストレンジャー・イン・パラダイス」で、トニー・ベネットのヴォーカルで全米2位の大ヒットになり、めでたくスタンダード・ナンバーの仲間入りを果たしたとのこと。私が好きなヴォーカル・ヴァージョンはカテリーナ・ヴァレンテのもので、ウェルナー・ミューラー編曲指揮のオーケストラをバックに持ち前の伸びやかな歌声を聴かせてくれる。彼女は数か国語を駆使して世界中の歌をオリジナル言語で歌ったことから “歌う通訳” などと呼ばれているが、その最大の魅力は大排気量のアメ車を想わせるようなパワフルなヴォーカルに尽きるのではないか。この曲はクラシックの有名曲を歌った「クラシックス・ウィズ・ア・チェイサー」というアルバムに収録されているが、スタンダード・ソングを集めたCD「スーパーフォニックス」のボートラにも入っているので、女性ヴォーカル・ファンにとってはそっちの方が断然お買い得だ。
Stranger In Paradise (Caterina Valente)


③ Johnny Smith
 「ストレンジャー・イン・パラダイス」はヴォーカルだけでなくティナ・ブルックスやバリー・ハリス、ケニー・ドリューといったインストのミュージシャン達も取り上げているが、そんな中で私が一番気に入っているのがまたまた出ましたジョニー・スミス。この曲はブルーのジャケットが美しい10インチ盤「イン・ア・メロウ・ムード」に入っており、初めて聴いた時は「ウォーク・ドント・ラン」のこともあったので “ひょっとして「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」もジョニー・スミスがオリジナルなんか???” と思ったが、曲名を見ると「ストレンジャー・イン・パラダイス」となっており、色々調べてベンチャーズの方がこのスタンダード・ソングをロック・アレンジしたのだと知った次第。ドン・ラモンドの瀟洒なブラッシュに乗って軽快にスイングするジョニー・スミスが素晴らしい。
Johnny Smith Quartet - Stranger in Paradise


④Natasha Morozova
 私はジョニー・スミス盤を聴いて以来 “「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」の原曲はスタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」” だと信じて生きてきたのだが、何と「ストレンジャー・イン・パラダイス」には更なる元ネタがあった。それがロシアの作曲家アレクサンドル・ボロディンが作った「ダッタン人の踊り」(原題「Polovetsian Dances」)という曲で、何でも「イーゴリ公」という有名なオペラの一節らしい。YouTubeで検索してみると合唱やら管弦楽やら色んなのがゾロゾロと出てきたのだが、どれもこれも眠たくなるような代物で辟易し、見るのやめよーかなーと思い始めていたところで偶然見つけたのがこのナターシャ・モロゾワという人。名前からしてロシア人らしいということ以外は何も分からないが、オペラ臭さを微塵も感じさせないエキゾチックなムード横溢の妖しげなヴォーカルが気に入った。どうやらCDは出ておらずDL販売のみのようだが、たまたまアマゾンの無料クーポンがあったので、彼女の「ロシアン・エニグマ」からこの「ポロヴェツィアン・ダンシズ」(英題:「Fly Away On The Wings Of The Wind」)をダウンロード。何度も聴いているうちに彼女の歌声にハマってしまう中毒性をはらんだヴォーカルだ。あぁおそロシア...
Polovtsian Dances -Borodin - Prince Igor - Natasha Morozova -"Russian Enigma"


⑤Ventures
 まるでベンチャーズのために書かれたような、エレキ・インストの魅力全開のこの曲を初めて聴いた時、私は「ウォーク・ドント・ラン」や「10番街の殺人」の時と同じくベンチャーズのオリジナルだと信じて疑わなかった。その後、スタンダードの「ストレンジャー・イン・パラダイス」をロックにアレンジしたものだと知ってビックリしたのだが、同時に長いこと不思議に思っていた邦題の謎が解けたような気がした。つまり東芝の担当者が元歌の「ストレンジャー・イン・パラダイス」から「パラダイス」を拝借し、そこに当時流行していた「ゴー・ゴー」をくっ付けて「パラダイス・ア・ゴー・ゴー」になったのではないか。もしそうなら実に安直な発想から生まれた邦題なワケだが、原題をそのままカタカナ表記にして「テン・セカンズ・トゥ・ヘヴン」とやるよりもずっといい。何よりも言葉の響きがカッコイイではないか(^o^)丿 やはり洋楽の邦題はこうでなくてはいけない。
 演奏の方はもう文句の付けようのない素晴らしさで、ベンチャーズ史上屈指の大名演と言い切ってしまおう。イントロのマラカスにリバーブを深くかけたドン・ウィルソンのリフが絡んでいくところなんかもうゾクゾクしてくるし、ノーキーのリード・ギターに影のように寄り添うエレピも実に効果的。メルとボブのコンビが生み出すタイトなリズムも完璧だ。余談だが、この曲がなかったら「ウルトラQ」のあの有名なテーマ曲は生まれなかったんじゃないか... と考えてるのは私だけかな? 尚、この曲は65年にシングル・カットされているがオリジナル・アルバムには未収録で、67年にリバティ・レコーズ・クラブから通販のみで発売されたアルバム「The Versatile Ventures」にのみ収録されているのでアナログ・ファンは要注意だ。
ザ・ヴェンチャーズ - パラダイス・ア・ゴー・ゴー
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ベンチャーズ・カヴァー特集⑤「ラップ・シティ」

2014-10-09 | エレキ・インスト
①Marksmen
 1961~1962年頃、ノーキー・エドワーズは一時的にベンチャーズを離れて活動していた時期があり、その時にジーン・モールズというギタリストと組んで結成したバンドがマークスメンだ。しかしこのグループは長続きせず、結局ブルー・ホライズン・レーベルからシングル盤を1枚出しただけでノーキーはベンチャーズに戻ることになるのだが、その彼らが唯一残したレコードというのが「ナイト・ラン」という曲で、何と「ハンガリー舞曲第5番」をロックンロールにアレンジした、いわば「ラップ・シティ」の前身と言えるナンバーなのだ。この「ナイト・ラン」は時流を反映してか、ハンド・クラッピングを上手く使って思わず踊りだしたくなるような楽しいツイスティン・ロックンロール・チューンに仕上がっており、3年後にベンチャーズとして別アレンジでレコーディングされた緊張感漲る「ラップ・シティ」と聴き比べてみるのも面白い。尚、このシングル盤は超稀少でコレクターの間ではかなりの高値で取引されているらしくヤフオクでも4万円の値がついていてビックリしたが(←某サイトに “博物館級のお宝レコード” と書いてあったがいくら何でもそれは言い過ぎ...)、そんな激レア盤の白レーベル、つまりプロモ盤をeBay で$35で落札した時はホンマに嬉しかった。CDではレア・トラック・コンピ集「イン・ザ・ヴォールツ」のVol.4に入っているのでベンチャーズ・ファンは要チェックだ。
The Marksmen - Night Run - 1960 guitar instrumental Ventures.wmv


②寺内タケシとバニーズ
 私は長いことクラシックを “退屈で高尚ぶってていけ好かない音楽” として敬遠してきた。フリージャズのようにブツブツが出るほど不快感を覚えるというワケではないのだが、無味乾燥で聴いているうちに眠たくなるツマラン音楽として無視してきたのだ。そんな私の偏見を木っ端微塵に打ち砕いたのが寺内タケシとバニーズの「レッツゴー運命」で、“クラシックにもこんな魅力的な旋律があったのか…” と瞠目させられたものだ。とにかくベートーベンがナンボのモンじゃいとばかりにファズをバリバリに効かせてガンガンギュンギュン弾きまくる寺内御大のプレイは痛快そのもの。この「ハンガリー舞曲第5番」でもあえてベンチャーズ・ヴァージョンを模倣せずに独自のアレンジで勝負したのが大正解で、実にユニークでカッコ良いカヴァーになっている。それにしても合いの手まで弾き切ってしまう御大の気合いの入り方はホンマに凄いですわ(≧▽≦)
Hungarian Dance No 5


③European Jazz Trio
 ヨーロピアン・ジャズ・トリオがこの曲を演ってると知った時、ハッキリ言って全く期待していなかった。というのもジャズ初心者の頃に買った同ユニットのデビュー・アルバム「ノルウェーの森」のあまりの軟弱さにウンザリして即刻売り払った苦~い過去があるからだ。その後数回メンバーチェンジをしたらしいが詳しいことは全く知らない。しかしこの「Ungarische Tanze Nr. 5」(←ドイツ語で「ハンガリー舞曲」の意)を聴いてみると、“リリカル” で “ロマンチック” が売りのこのトリオとしては珍しく(←失礼!)スインギーなピアノトリオ・ジャズになっており、十分傾聴に値する演奏だ。特にドラムスが大張り切りでピアノをガンガンプッシュしていることろが◎。クラシックの名曲をジャズ化したアルバム「幻想のアダージョ」の中では最上のトラックと言っていいと思う。
European Jazz Trio - Ungarische Tanze Nr. 5


④David Garrett
 上で書いたように私はクラシック音楽には何の興味も無いが、去年ゼップの「カシミール」の絶品カヴァー(←関係ないけど、スーパーでZEPPINカレーのパッケージを見た時、一瞬ZEPPELINに見えてしまった...)を探していた時に知ったデヴィッド・ギャレットというヴァイオリニストはその数少ない例外で、ドラムやギターを入れてゼップ以外にもポールの「死ぬには奴らだ」やマイコーの「スムーズ・クリミナル」、エアロの「ウォーク・ディス・ウェイ」といったロック/ポップスの名曲をスリリングに演奏していたので迷わず購入。クラシック臭さを全く感じさせないアグレッシヴなプレイは私のようなロック・ファンでも十分楽しめる内容だった。この「ハンガリー舞曲第5番」は私にとっては “ブラームスの書いたクラシック曲” ではなく “ベンチャーズの「ラップ・シティ」” として刷り込まれているので、上記のロック曲と同様に違和感なく楽しむことが出来た。これがクラシックではもったいない。ロックとして聴きたい逸品だ。
Hungarian Dance No.5 - david Garrett


⑤Ventures
 ①でも書いたように、この「ラップ・シティ」の原曲はブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」であり、1961年にまずノーキー・エドワーズがロックンロールにアレンジしてマークスメンのシングル「ナイト・ラン」としてリリースし、その3年後の1964年に今度はノーキー再加入後のベンチャーズが4人で再アレンジして「十番街の殺人」とのカップリングで両A面シングルとしてリリース。この曲を聴くまではベンチャーズをギター・テクニックが売りのエレキ・インスト・バンドだと誤解していたのだが、何となくメロディーだけは知っていたこのクラシック・ナンバー(←もちろん曲名も作曲者も知らんかったが...)をこんなにスリリングなロック・チューンにしてしまうベンチャーズってホンマに凄いわ!!!と驚倒し、彼らの真価はどんな素材でもその抜群の音楽センスで唯一無比な “ベンチャーズ・ミュージック” へと昇華させてしまうところにあるのだと痛感した次第。速弾きで正確にピックのアップダウンを繰り返すノーキーの鬼気迫るプレイが圧巻だ。尚、この曲のシングル・ヴァージョンはアルバムとは違うミックスで、リード・ギターが2本ダビングされていて圧倒的な音圧のサウンドが楽しめるらしいので、近いうちにぜひとも手に入れて聴いてみたいと思う。
THE VENTURES - RAP CITY
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ベンチャーズ・カヴァー特集④「ウォーク・ドント・ラン」

2014-10-03 | エレキ・インスト
①Steve Howe
 今回の特集を組むにあたって何か面白いカヴァーはないかいなぁ... とYouTubeで色々と検索していた時に偶然見つけたのがコレ。あのスティーヴ・ハウが「ウォーク・ドント・ラン」演ってんのか... 私は好奇心にはやる心を抑えて早速試聴を始めたのだが、スパニッシュなムード横溢のイントロに続いてエイジアで耳に馴染んだあのギターの音が響き渡った瞬間、“おぉ、コレめっちゃエエわ!!!” と快哉を叫んでいた。私にとってのスティーヴ・ハウは、難解なイエスではなくポップなエイジアでの数々の名演が脳に刷り込まれているので、「ドント・クライ」を想わせる大仰なソロや彼お得意のスパニッシュ・アレンジ(←絶妙のタイミングで鳴り響くカスタネットがたまらんたまらん...)が出てくるたびに大コーフンしてしまう(≧▽≦) 大袈裟に聞こえるかもしれないが、「ウォーク・ドント・ラン」という曲が身悶えして歓喜に打ち震えている... といった感じの、名旋律・名アレンジ・名演奏と三拍子揃ったスーパーウルトラ大名演だ(^o^)丿 こんなカッコイイ「ウォーク・ドント・ラン」に巡り合えただけでも今回の特集を思いついた甲斐があったというものだ。
Steve Howe - Walk Don´t Run


②Chet Atkins
 ビートルズ・ファンである私にとってチェット・アトキンスという名前は “ジョージ・ハリスンに大きな影響を与えたギタリスト” として記憶にインプットされてはいたが、チャック・ベリーやリトル・リチャードのようにラジオでかかることは滅多になく、かなり長い間 “「ビートルズ・フォー・セール」で聴けるカントリー・フレイバーたっぷりの奏法=チェット・アトキンス奏法” という活字情報を鵜呑みにして何となく分かった気になっていた。やがて21世紀に入ってベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」をアトキンスが演っていると知り、その頃始めたばかりのeBayで$5.00ポッキリで手に入れたのが「ウォーク・ドント・ラン」入りの名盤「ハイファイ・イン・フォーカス」(1958年)だった。そのサウンドは耳に馴染んだベンチャーズともオリジナルのジョニー・スミスとも違うユニークなもので、ミディアム・テンポで軽やかにスイングするその変幻自在のフィンガー・ピッキングにすっかり魅了されてしまった。因みにドンとボブはこのアトキンス・ヴァージョンを聴いてすっかり気に入り、ベンチャーズでも録音しようと思い立ったのだという。まさにベンチャーズの原点とでも言うべき演奏だ。
Chet Atkins - Walk, Don't Run


③Neil Andersson
 何年か前にジプシー・ジャズにハマっていた頃、ジャンゴ・ラインハルト屈指の名曲「ドゥース・アンビアンス」が入っているCDを手当たり次第に買いまくっていた時に知ったのがこのニール・アンダーソンというギタリスト。アメリカ北西部出身ということもあってか本場ヨーロッパの王道マヌーシュ・ギタリスト達とは又違ったユニークな音楽性の持ち主で、ジャンゴの曲を演りながらジョージ・シアリング・クインテットのような軽妙洒脱な味わいも感じさせて中々面白い盤だった。そんな彼が新たに結成したマリブ・マヌーシュというプロジェクトがリリースしたのが「サーフ・ジャズ」というアルバムで、ビーチ・ボーイズの「サーファー・ガール」やベンチャーズの「アパッチ」「テルスター」「パイプライン」そしてこの「ウォーク・ドント・ラン」といった一連のサーフィン・ミュージックをリラクセイション溢れるスインギーなプレイでジャズ化しており、エレキ・インストとマヌーシュ・スイングを絶妙にブレンドさせたノリの良い演奏が楽しめる。カタイことは抜きにして60'sの名曲を一緒に楽しみましょうや!といった感じの親しみやすいヴァージョンだ。
マリブ・マヌーシュ


④Johnny Smith
 ベンチャーズ・クラシックスとして知られている曲の多くはスタンダード・ナンバーや他アーティストの楽曲をカヴァーしたものなのだが、ベンチャーズ・ヴァージョンのインパクトがあまりにも強すぎて、ついつい彼らのオリジナル曲だと勘違いしてしまうことがよくある。この「ウォーク・ドント・ラン」という曲も実はジョニー・スミスの演奏がオリジナル。何でもジャズ・スタンダードの「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」のコード進行を借用して作ったらしい(←オイゲン・キケロの「ソフトリー」がもろに「ウォーク・ドント・ラン」そっくりなのはそのせいなんだろう...)。
 ジョニー・スミスは私が大好きなジャズ・ギタリストの一人で、今から10年ほど前に買った彼のアルバム「イン・ア・センチメンタル・ムード」の中にたまたまこの曲が入っており、 “何でジョニー・スミスがベンチャーズのカヴァーやってんねん???” と不思議に思ったのだが、1954年に出たジョニー・スミス盤に1960年のベンチャーズのヒット曲が入っているというのはどう考えてもおかしい。慌ててベンチャーズ盤のクレジットを見ると、何と作曲者はジョニー・スミスになっているではないか! いやはやまったく、目からウロコとはこのことだ。
 両ヴァージョンを比べてみると、ベンチャーズが8ビートにアレンジしてアップテンポで演奏しているのに対し、ジョニスミの方は実に落ち着いたソフトな演奏で、ハラハラと舞い落ちる木の葉のようなメロウな音色で非常に繊細な表現をしているのが大きな特徴だ。彼の幽玄な音世界で楽しむ「ウォーク・ドント・ラン」もベンチャーズとは又違った味わいがあっていいものだ。
JOHNNY SMITH

オイゲン・キケロ バッハのソフトリー サンライズ


⑤Ventures
 ベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」には2種類のスタジオ・ヴァージョンが存在する。1960年のデビュー・シングル「ウォーク・ドント・ラン」(全米2位)と、サーフィン・アレンジを施した再演ヴァージョン「ウォーク・ドント・ラン'64」(全米8位)だ。前者はボブ・ボーグル(リード・ギター)、ドン・ウィルソン(リズム・ギター)、ノーキー・エドワーズ(ベース)、そしてスキップ・ムーア(ドラムス)というメンツでレコーディングされたもので、ノーキーがリード・ギターを担当しメル・テイラーがドラムを叩いている後者と聴き比べてみるとそれぞれのプレイの特徴がハッキリと聴きとれて実に面白い。私はメル・テイラーこそがベンチャーズ・サウンドの要だと思っている人間なので、スキップ・ムーアのプレイも捨て難いが(←特にあのイントロは当時としては斬新だったと思う...)どちらか一方を選べと言われればやはり後者ということになるだろう。ドン・ウィルソンのトレモロ・グリッサンド(←要するにテケテケですな...)も冴えわたっていて言うことナシだ (^o^)丿 それにしても2度もトップ10に入る大ヒットを出してもらった原作者のジョニー・スミスは印税がガッポリ入って笑いが止まらんかったやろなぁ...(-。-)y-゜゜゜
The Ventures - Walk -- Don't Run (original) - [STEREO]

The Ventures - Walk Don't Run '64
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ベンチャーズ・カヴァー特集③「パイプライン」

2014-09-28 | エレキ・インスト
①Stevie Ray Vaughan & Dick Dale
 「パイプライン」のカヴァーで真っ先に頭に浮かんだのが、アネットとフランキー・アヴァロン主演の映画「バック・トゥ・ザ・ビーチ」(1987)のサントラ盤に入っていたこの演奏。「ミザルー」で一世を風靡したディック・デイルと我が最愛のギタリスト、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが共演しているのだからこれはエライコッチャである。 “キング・オブ・ザ・サーフ・ギター” と “テキサス・ハリケーン” のギター・バトルは何度見ても鳥肌モノで、ピンクのスーツを着てトレードマークであるゴールドのストラトを弾きまくるディック・デイルもカッコイイが(←バッハみたいなバロック・ヘアーにはワロタ...)、偉大なる先輩を立てながらも野太い音で歌心溢れるソロを聴かせるレイ・ヴォーンのプレイに惚れ惚れする。一音一音に魂がこもっているというか、説得力が違うのだ。ギターを弾くために生まれてきた男、スティーヴィー・レイ・ヴォーン会心の名カヴァーだと思う。
Stevie Ray Vaughan & Dick Dale - Pipeline (1987)


②ザ・タイマーズ
 “エレキでテケテケ” の代名詞とも言える「パイプライン」を何とアコギでパンキッシュに演奏しちゃったのが忌野清志郎率いるザ・タイマーズだ。これは彼らが1989年末の年越しライヴ「ロックンロール・バンドスタンド」に出演した時のもので、CDやDVDでオフィシャルにリリースされていない貴重な演奏だ。始末書持参の全共闘スタイルでのライヴというのもインパクト絶大だが(←コレをNHKの衛星放送で生放送してたんやから凄いわ...)、そういった演出が霞んでしまうぐらいメンバー全員ノリノリのプレイで楽しませてくれるところが◎。何よりもアコギでこれだけのグルーヴを生み出せる彼らの演奏技術の高さに唸ってしまう。鉄パイプで武装して「パイプライン」という彼らのユーモアのセンスも大好きだ。因みに pipeline というのは大波が作り出すパイプ状の水のトンネル空間を意味するサーフィン用語なのだそうだ。
ザ・タイマーズ パイプライン 1990


③Johnny Thunders
 パンクな「パイプライン」といえばもちろんこの人、ジョニー・サンダース。ニューヨーク・ドールズ脱退後の1978年にリリースしたソロ・アルバム「ソー・アローン」の1曲目に入っていたのがこのカッコ良い「パイプライン」だ。ファッション重視で音楽的中身のない有象無象のロンドン・パンクとは違い、ニューヨークのパンク・ロッカーの演奏からは50~60年代ロックンロールへの愛情やリスペクトがしっかりと伝わってくるので聴いてるこちらも安心して音楽に浸ることができる。このジョニサン・ヴァージョンもソリッドなギターが唸りを上げる痛快無比なカヴァーに仕上がっていて言うことナシだ。この人は筋金入りのジャンキーで、下に貼り付けたライヴ動画の冒頭でも「パイプライン」を演奏する前にステージ上でつかみ合いの喧嘩をする生々しいシーンが映っていて驚かされるが、ヘロヘロにラリッていながらもアグレッシヴに「パイプライン」を弾き切ってしまうところが凄いと思った。
Johnny Thunders - Pipeline (live)


④Chantays
 カヴァーがオリジナルを凌駕したビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」や「ロックンロール・ミュージック」の場合と同じく、「パイプライン」というとどうしても “ベンチャーズの曲” というイメージが強いが、この曲の元々のオリジナルはシャンテイズというカリフォルニア出身の若者5人組から成るインスト・バンド。デビュー・シングルとして地元のマイナー・レーベルからリリースされローカル・ヒットしていたこの曲に目を付けた大手のドット・レーベルが権利を買い取って全国展開したところ全米4位まで上がる大ヒットとなったということらしい。残念ながら彼らはこの曲以外はヒット曲に恵まれず、いわゆるひとつの “一発屋さん” で終わってしまったが、サーフ・インストの大スタンダード・ナンバーとして様々なミュージシャンにカヴァーされているこの曲のオリジナル・アーティストとして音楽史にしっかりとその名を刻んだだけでも大したものだと思う。
The Chantay's - Pipeline (Lawrence Welk Show 5/18/63)


⑤Ventures
 今回の特集をするにあたってシャンテイズのオリジナル・ヴァージョンとベンチャーズのカヴァー・ヴァージョンをじっくり聴き比べてみたのだが、同じ3分足らずのエレキ・インストでありながら注意深く聴くと両者の微妙な、しかし決定的な違いが見えてくる。チープなノリが魅力のシャンテイズに比べてベンチャーズの方が明らかにギターの音に鋭さがあり(←コレめっちゃ大事!)、巨大な波のうねりを表すトレモロ・グリッサンドの “テケテケテケ” 奏法も太くて粘っこい。メル・テイラーが生み出す圧倒的なグルーヴもシャンテイズとは比べ物にならないくらい凄まじい。こういった違いの一つ一つが積み重なって一方を歴史の巨人になさしめたのだ。
パイプ・ライン Pipeline'65 【Resize-HQ】 The Ventures
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ベンチャーズ・カヴァー特集②「木の葉の子守唄」

2014-09-24 | エレキ・インスト
①Davie Allan & The Arrows
 私は昔、ベンチャーズに狂って “寝ても覚めてもエレキインスト” という時期があったのだが、その頃に手に入れたベンチャーズ・トリビュート盤「スウィンギン・クリーパーズ ~ア・トリビュート・トゥ・ザ・ベンチャーズ」の中で断トツに気に入ったのがこのデイヴィ-・アラン & ジ・アロウズの「木の葉の子守唄」だ。 “キング・ファズ” の異名を取るだけあって、ベンチャーズ・ヴァージョンに潜むガレージ・ロックのDNAをしっかりと受け継いだアグレッシヴな演奏が楽しめる。おバカっぽい美女とこれまたお約束のモズライト・ギターをフィーチャーした遊び心溢れるジャケット・デザインもたまらんたまらん(≧▽≦)
木の葉の子守唄


②Gerry Mulligan
 私のこの曲との最初の出会いはジャズ初心者の頃に買ったジェリー・マリガン・カルテットのパシフィック盤に入っていたこの演奏で、それまで武骨な音しか聴いたことがなかったバリトン・サックスで信じがたいソフトなサウンドを出しながら軽快にスイングするジェリー・マリガンの名人芸と「木の葉」の曲想がピッタリ合っており、幽玄の美とでも言うべきチェット・ベイカーのトランペットと対位法的に絡むインタープレイの妙味に唸らされたものだ。チコ・ハミルトンとボブ・ホイットロックという名手二人が後半部でテンポを上げて瀟洒なリズムを刻むところがたまらなく好きだ(^.^)
Gerry Mulligan '52 - Lullaby Of The Leaves


③Claude Williamson
 世間ではほとんど知られていないけど自分の中では大名演という、いわゆる “自分だけの名曲名演” を持つことはディープな音楽ファンの愉しみの一つだと思うのだが、私にとってそんな1曲がクロード・ウィリアムソンがインタープレイ・レーベルからリリースした「メモリーズ・オブ・ウエスト・コースト」(1990年)のラストに収められていたこの曲だ。ベースによるテーマ部からピアノのサビへと移行する流れが好きでついついヴォリュームを上げてしまうのだが、そこに待ち受けているのがチャック・フローレスの爆裂ドラム(笑)というワケで、アコースティック・ベースの音色を存分に楽しめてしかも軽快にスイングするという、私にとってはまさに理想的なピアノトリオ・ジャズが展開される。若い頃の押し一辺倒のプレイとは一味も二味も違うツボを心得たプレイを聴かせるウィリアムソンが素晴らしい。
クロード・ウィリアムソン


④Mary Hopkin
 私が持っているこの曲の9割以上はジャズのものだったので、メリー・ホプキンの1stアルバム「ポストカード」の中にこの曲を見つけた時は “あのメリー・ホプキンがジャズを歌ってんのか???” と不思議に思ったのだが、「木の葉の子守唄」以外にもフランク・レッサーの「インチワーム」(←ポールが「キス・オン・ザ・ボトム」で取り上げてた曲)やガーシュインの「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」、アーヴィング・バーリンの「ショウほど素敵な商売はない」といったスタンダード・ナンバーが入っており、それらがみな彼女の清楚な歌声によって瑞々しい輝きを放っていることに驚かされる。この曲の本質である “ララバイ”、つまり子守唄としての魅力をこれほどまでに引き出したヴァージョンを私は他に知らない。単なるポップシンガーにはとても出来ない味わい深い歌唱であり、そんな彼女の資質を見抜いたポールの慧眼に脱帽だ。
Mary Hopkin "Lullaby Of The Leaves" 1969


⑤Ventures
 2005年12月3日は私にとって忘れることのできない記念すべき日だ。この日、コレクター仲間で集まって「木の葉の子守唄」の聴き比べ大会をやったのだが、その時に聴かせてもらったのがこのベンチャーズ・ヴァージョンだった。当然ジャズ一色の選曲になると予想していた私にとっては意表を突かれた形で、 “何でテケテケのベンチャーズがこんなジャズのスタンダート曲をやってるんやろ?” と不思議で仕方なかった。
 ところが実際にLPに針を下ろして曲が始まると、いきなりメル・テイラーのドラム・フィルが炸裂して度肝を抜かれた。パワフルなドラムの連打が生み出すグルーヴに圧倒され言葉も出ない。トレモロを多用したボブ・ボーグルのギターもめっちゃスリリングで、これこそまさにロックンロール!と叫びたい衝動に駆られるカッコ良さである。この瞬間に “「ダイアモンド・ヘッド」や「パイプライン」といったサーフィン・エレキ・インスト専門の懐メロ・バンド” という私のベンチャーズに対する間違った認識は木っ端微塵に吹き飛び、それ以来彼らは私にとって特別なバンドになったのだった。
 とにかくこの凄まじいまでのエネルギーの奔流に身を任せて聴く快感はとても言葉では表現できない。理屈を超えた原始的なロックの初期衝動... ベンチャーズを聴くというのはつまりそういうことなのだ。この曲はCDよりもアナログLPで、それも音が拡散してしまうステレオ盤ではなく、パワーが一極集中して怒涛のように押し寄せるモノラル盤でアンプの音量を思いっ切り上げて聴きたい。
The Ventures - Lullaby Of The Leaves
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ベンチャーズ・カヴァー特集①「キャラバン」

2014-09-18 | エレキ・インスト
 ブライアン・セッツァー・オーケストラの「キャラバン」をきっかけにしてこの前の3連休にベンチャーズ関連のカヴァー曲を色々と引っ張り出して聴いてみたのだが、これが予想以上に面白かったのでこのブログで特集してみることにした。色んなカヴァー・ヴァージョンと本家ベンチャーズを聴き比べてみるのも一興だろう。題して“ベンチャーズ・カヴァー祭り”。第1回は当然「キャラバン」だ。

①Carpenters
 カーペンターズは「イエスタデイ・ワンス・モア」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」で70年代を席巻したポップ・グループとして日本でも抜群の人気を誇っているが、彼らのキャリアのスタートがカーペンター兄妹に友人のベーシストを加えたジャズのピアノトリオだったという事実は意外と知られていない。かく言う私もYouTubeでリチャード・カーペンター・トリオの「キャラバン」を偶然見つけて “あのカーペンターズがジャズ???” と不思議に思ったのだが、いざ聴いてみるとゴキゲンにスイングするカッコ良いジャズだったのでビックリ(゜o゜)  王道フレーズを連発するリチャードのスインギーなプレイを聞けば彼のジャズに対する造詣の深さがよくわかるし、弱冠15歳にして堂々たるプレイを聞かせるカレンのドラミングも凄い。後で知ったのだが、彼女の好きなドラマーはリンゴ・スターとジョー・モレロ(←渋っ!!!)とのこと。さすがはカレン、ええ趣味してるわ(≧▽≦)
The Carpenters - Caravan [1965]


②Rosenberg Trio
 「キャラバン」という曲をバリバリにスイングさせるのは至難のワザだと思うのだが、ジプシー・スイング界の巨匠であるローゼンバーグ・トリオの手にかかればこの通り! まるで鎖を解かれた犬のように(?)奮然とスイングし始めるのだから音楽は面白い。“スピード命” の速弾きジプシー・ギタリストはゴマンといるが、ストーケロ・ローゼンバーグのように “歌心溢れるメロディアスな速弾きプレイ” という一見誰にでも出来そうで実は中々出来ないことをサラッとやってのける人はそうそういない。スイングの根底をしっかり支えるリズム・ギターが生み出すグルーヴもたまらんたまらん(^o^)丿
The Rosenberg Trio - Caravan


③Connie Evingson
 ①②でお分かりのようにジャズの演奏に関して私はアホの一つ覚えのようにひたすら “スイング” を追求しているのだが、この「キャラバン」という曲のオリジナルは砂漠を旅する隊商(←つまりキャラバンですね...)のことを歌ったエキゾチックなムード溢れるナンバーだ。そんな “異国情緒路線” のカヴァーで特に気に入っているのがこのコニー・エヴィンソン・ヴァージョンで、彼女の艶のあるしっとりとしたヴォーカルがこの曲の持つエキゾティシズムと絶妙なマッチングをみせ、曲にさらなる彩りを添えている。 私はそんなコニーたんが大好きだ。
Caravan - Connie Evingson


④Duke Ellington
 この曲のオリジナルであるデューク・エリントンのビッグ・バンド・ジャズは単純明快にスイングするカウント・ベイシーとは違い、私には難しすぎてその良さがイマイチ分からない。しかしスモール・コンボでのエリントンは全くの別モノで、ベースのチャールズ・ミンガス、ドラムスのマックス・ローチというツワモノ2人と組んだピアノトリオで水を得た魚のようにガンガン叩きつける彼の “ジャングル・ピアノ” が楽しめる「マネー・ジャングル」は私の愛聴盤だ。この「キャラバン」でもリズムを重視したパーカッシヴなプレイで聴く者を圧倒、その超ド級の迫力は圧巻の一言に尽きる。澤野商会が乱発している有象無象の軟弱ピアノトリオとは対極に位置する硬派なジャズの最右翼がコレだ。
Duke Ellington - Caravan


⑤Ventures
 誰の演奏だったかは忘れたが、この「キャラバン」という曲を初めて聴いた時の第一印象は “何かしんねりむっつりしてて気持ち良くスイングせぇへん曲やなぁ...” というネガティヴなものだった。それから何年か経ってベンチャーズによるカヴァー・ヴァージョンを聴いてこの曲に対する私の悪印象は木端微塵に吹っ飛んだ。何というノリの良さだろう! 彼らの真骨頂といえるその比類なきグルーヴによって曲が活き活きと躍動しているのが凄い。そういえばこの特集のきっかけとなったブライアン・セッツァーによるカヴァーにも彼らへの深い愛情とリスペクトが感じられた。やっぱりベンチャーズは最高だ(^o^)丿
ベンチャーズ - キャラバン The Ventures - CARAVAN
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King Of The Surf Guitar / Dick Dale

2010-07-13 | エレキ・インスト
 曲そのものは色々な所で使われていて耳にする機会が多いはずなのに、そのタイトルや演奏者はあまり知られていない、というケースが結構ある。今日取り上げるディック・デイルの「ミザルー」もひょっとするとそんな1曲かも知れない。いきなり「ミザルー」と言われても、それこそ “見ざる、聞かざる” で何のこっちゃ?状態かもれないが、あのシビレるようなギターのイントロを聴けば “あぁ、あの曲か!” という人が多いだろう。
 この曲は元々ギリシャのポピュラー・ソングで、正式なタイトルは「ミシルルー」。 “エジプト女性” という意味らしいのだが、そう言われれば何となく中近東風な薫りの漂う旋律もあって、妖しげな魅力を振り撒いている。この曲を一躍有名にしたのはディック・デイル&デルトーンズのエレキ・インスト・ヴァージョンで、サーフ・インスト・ブーム前夜といえる1962年にリリースされウエスト・コースト・エリアでローカル・ヒット。私が初めて耳にしたのはそれから30年以上たった1990年代半ばのことで、当時人気があった格闘技 K1 を見ていてピーター・アーツの入場テーマ曲としてこの曲が流れてきた時はブッ飛んだ。まるでガレージ・パンク・バンドのようなスリリングなサウンドのインパクトが強烈で、誰が演ってんねんやろ?と気にはなったが、ジャズにどっぷりハマッていた時期だったこともあってそれ以上は追及しなかった。
 その数年後、映画「タクシー」の DVD を見た時にこの曲と再会、冒頭で主人公が宅配スクーターで街中を疾走するシーンとスピード感溢れる曲想がピッタリ合っていて感心したものだが、ちょうど時を同じくしてエレキ・インスト・ミュージックにハマっていたこともあって、色々調べてこのディック・デイル盤に辿り着いた。聞くところによると「パルプ・フィクション」という映画にも使われていたらしいのだが、そっちの方は見ていないのでよく分からない。
 届いた CD で早速この③「ミザルー」を大音響で聴いてみて、異常なまでのハイ・テンションで突っ走るギター、どこか哀愁を感じさせるホーンのメロディー、絶妙なグルーヴを生み出すドラミングと、他のエレキ・インスト・バンドとは激しく一線を画すそのアグレッシヴなサウンドに圧倒されてしまった。尚、他に私が知っているこの曲のカヴァーもすべてインスト物なのだが、2004年のアテネ・オリンピックの閉会式でギリシャ№1ディーヴァであるアンナ・ヴィッシがノリノリでこの曲を歌う姿は妙に新鮮だった。
 米ライノ・レーベルが編集したこの「キング・オブ・ザ・サーフ・ギター」には1961年から64年までの代表曲16曲と80年代の2曲を含めた全18曲が収められており、③「ミザルー」のようにシンプルでありながらエモーショナルなプレイが満載だ。60年代の演奏では②「シェイキン・ストンプ」、⑤「サーフ・ビート」、⑧「ハヴァ・ナギラ」、⑨「ライダーズ・イン・ザ・スカイ」、⑪「ナイト・ライダー」、⑫「ミスター・エリミネイター」、⑯「バンザイ・ウォッシュアウト」といった疾走系チューンがいい。意地悪い言い方をすればどれを聴いてもみな同じ金太郎飴的サウンドというか、「ミザルー」の焼き直しに過ぎないのだが、「ミザルー」好きの私としては大歓迎だ。
 しかしこの盤の真の宝は長~いスランプから復活した80年代録音の⑱「パイプライン」だ。ここで彼は何とあのスティーヴィー・レイ・ヴォーンと共演しているのだから SRV マニアの私としては居ても立っても居られない。何と言っても “サーフ・ギターの王様” と “夭折の天才ギタリスト” の迫力満点のギター・バトルである。耳に馴染んだベンチャーズやシャンティーズのテケテケ・サウンドとは一味も二味も違う重量級の「パイプライン」が圧巻だ。この夢のような共演が聴けるだけでもこの CD を買ってよかったと思う。それにしてもビデオクリップのスティーヴィー・レイ、いつ見てもホンマにカッコエエなぁ... (≧▽≦)

Taxi- Scooter Scene


Dick Dale & Stevie Ray Vaughan - Pipeline (hq audio)


Anna Vissi - Misirlou
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Live In Japan / The Mustangs

2010-07-11 | エレキ・インスト
 私はLP であれ CD であれ、ジャケットを人一倍重視する。もちろん音楽である以上、中身が主役なのは言うまでもないが、少なくとも音楽とその器であるジャケットが一体となって一つのパッケージ商品として流通している以上、両者は密接に結びついており、まさに不可分なものだと言えるだろう。「アビー・ロード」と言えば真っ先に頭に浮かぶのは個々の曲ではなく4人が横断歩道を渡る例のジャケットだし、「サージェント・ペパーズ」もあの絢爛豪華なジャケットなしには考えられない。「クリムゾン・キングの宮殿」の衝撃性はあのグロテスクなジャケットあってのものだし、ピンク・フロイドの「狂気」やディープ・パープルの「イン・ロック」、デレク&ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」などは、ジャケットだけで既に名盤のオーラを発している。昨今流行りのミュージック・ダウンロードなどというものは、私に言わせれば音楽文化の破壊以外の何物でもない。
 ビートルズに比べるとベンチャーズのアルバム・ジャケットには “何じゃいコレは???” というものも無いことはないが、中にはキラリと光るジャケ名盤も少なくない。私が一番好きなのは、ヌッと突き出た3本のモズライト・ギターのヘッドとハトが豆鉄砲を食らったような表情の金髪美女とのコントラストがたまらない「ノック・ミー・アウト」で、バリバリと歪んだモズライト・ギターのサウンドが聞こえてきそうな名ジャケットだ。ライヴ盤では「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」が断トツに素晴らしい。神社の前で蛇の目傘を持った着物姿の女性と談笑する4人の姿が印象的なこのジャケット、何と言ってもベンチャーズ自身が「ベンチャーズ1999-2006」(青盤)でセルフ・パロディしているぐらいだから相当気に入っているのだろう。
 そんなある時、 “エレキ共和国” という、エレキ・インスト・ファンの聖地のようなサイトを見ていて上記の「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」のパロジャケと思しき CD を発見!それが今日取り上げるムスタングスの「ザ・ムスタングス・ライヴ・イン・ジャパン」である。彼らは1980年代から活躍しているフィンランドのエレキ・インスト・グループで、同じ北欧出身の先輩バンドであるスプートニクス直系の透明感溢れるサウンドが特徴だ。
 この「ザ・ムスタングス・ライヴ・イン・ジャパン」はほとんどの曲が3分以内なので一気呵成に聴き通せてアッと言う間に全22曲63分が過ぎ去っていく。のっけからザ・サウンズの①「エマの面影」、そしてベンチャーズ歌謡の定番②「二人の銀座」という哀愁の名曲2連発で一気に彼らの世界に惹き込み、その後は全盛期のスプートニクスが現代に蘇ったかのような北欧系エレキ・サウンドのアメアラレ攻撃で気持ちエエことこの上ない。特に哀愁舞い散る⑪「Ajomies」(霧のカレリア)なんかは絶品だ。
 ライヴの後半ではベンチャーズというよりも小山ルミで有名な⑯「さすらいのギター」、太田裕美の⑲「さらばシベリア鉄道」、そして加山雄三&ランチャーズの⑳「夜空の星」と、まさに怒涛のような昭和歌謡の嵐に涙ちょちょぎれる。この流れの中で聴くとロシア民謡の⑰「ダーク・アイズ」(黒い瞳)だって、聴きようによってはザ・ピーナッツの「恋のフーガ」に聞こえなくもない(笑) そういえば彼らは他の盤で黛ジュンのカヴァーなんかも演ってたし、私のような昭和歌謡好きのエレキ・インスト・ファン(←結構多いと思う...)は要注目のバンドだろう。
 パロジャケ盤は玉石混交で、これまでも面白そうなジャケットに釣られて買ってカスをつかむこともあったが、虎穴に入らずんば虎児を得ず(←そんな大袈裟な...)、このアルバムは買って大正解だった。ただ、録音がキレイすぎるのが玉にキズで、もっと野太い音で録っていれば60'sのバンドみたいなギザッとくるサウンドになったとは思うが、それ以外は文句ナシ。特に「さらばシベリア鉄道」~「夜空の星」と続く昭和歌謡版疾走系エレキ・インストの真髄が聴けるだけでこのアルバムは超愛聴盤なのだ。

The Mustangs - さらばシベリア鉄道


The Mustangs - さすらいのギター

Ventures On Stage

2010-07-08 | エレキ・インスト
 私は “日本の夏” といえば “金鳥の夏” と続けたくなるコテコテの昭和世代だが、エレキ・インスト・ファンにとっては “夏だ、エレキだ、ベンちゃんだ!” ということで、 “夏といえばベンチャーズ” がお約束。まぁ土用の丑の日が近づくとウナギが食べたくなるのと似ているのかもしれないが、私も毎年この時期になるとなぜか無性にベンチャーズが聴きたくなってくる。
 彼らが信じられないくらいのハイ・エナジー、ハイ・テンションを維持し、ロックンロールの王道を行っていた1960年代のアルバムはどれもこれも甲乙付け難い出来で、特に1965年前後のアルバムなんかもう神懸かり的とでも言えそうな物凄い演奏が目白押し。私はスリリングでグルーヴィーな彼らのプレイを大音響で聴きながらユルユルに弛んだ精神にカツを入れ、明日への活力にしている。
 数年前に plinco さんのおかげでナツメロ・サーフィン・インスト・バンドではなく超一流のロックンロール・バンドとしてのベンチャーズに開眼した私は、彼らのディスコグラフィーを参考にしながら eBay で彼らのオリジナル盤を集めていったのだが、この「ベンチャーズ・オン・ステージ」は大名盤「ライヴ・イン・ジャパン」と時期も曲目も殆ど被っていたこともあって、その “60's ベンチャーズ音源・根こそぎ(?)ゲット・プロジェクト” の最後の最後に買った1枚だ。落札価格はたったの $3.00で、ほとんど送料のみで入手できてめっちゃ嬉しかった。尚、このアルバムは当時日本だけで発売されていた「ライヴ・イン・ジャパン」が大ヒットしていたこともあり英米のみで発売され、日本ではここから3曲がEPとして出されたのみで、フル・アルバムとしてのリリースはそれから12年後の1977年になってからという非常にややこしい状況を引きずる1枚だ。
 LP のライナーによるとこのライヴ盤は1ヶ所で収録されたものではなく、A面の4曲①「ワイプ・アウト」、②「ジャーニー・トゥ・ザ・スターズ」、③「10番街の殺人」、④「キャラバン」が日本、B面前半の3曲①「ペダル・プッシャー」、②「アパッチ '65」、③「バンブル・ビー」がイギリス、後半の3曲④「ドライヴィング・ギターズ」、⑤「ウォーク・ドント・ラン~パーフィディア~ララバイ・オブ・ザ・リーヴズ」、⑥「イエロー・ジャケット」がアメリカでのライヴということになっている。 “へぇ~、日本公演以外のライヴも聴けるなんてラッキー(^o^)丿” と期待に胸を膨らませて LP に針を落とすと聞こえてきたのは明らかに不自然な拍手や歓声が被せられたベンチャーズの演奏で、特にB面の英米ライヴなんかもう断続的に黄色い歓声が乱れ飛ぶというめちゃくちゃなオーヴァーダブ(←ビートルズのパリ・オランピア・ライヴみたいな感じ...)が施されており、何か割り切れないものを感じながら聴いていた。もうちょっとマシな編集はでけへんかったんかねぇ...(>_<)
 その後、ベンチャーズ版「ウルトラ・レア・トラックス」というか「アンサーパスト・マスターズ」というか、いわゆるひとつの未発表音源集「イン・ザ・ヴォールツ」シリーズの Vol. 4 がイギリスのエース・レコードからリリースされ、その中でA②④B①③④⑤⑥の拍手・歓声ナシ “アンダブド・ヴァージョン” が聴けた時は大感激!寄せては返す波のような不自然な歓声のうねりに邪魔されずにベンチャーズの演奏が楽しめてめっちゃ嬉しかった。
 結局この「ベンチャーズ・オン・ステージ」はペギー・リーの「ビューティー・アンド・ザ・ビート」etc と同じく偽装ライヴ盤だったワケだが、この頃のベンチャーズは観客を前にしたステージ演奏であろうとノー・オーディエンスのスタジオ・ライヴであろうと関係なしに凄まじい演奏を繰り広げていたことは厳然たる事実。特にノーキー・エドワーズのスリリングなギター・ワークとメル・テイラーの爆裂ドラミングには言葉を失う。中でも「ライヴ・イン・ジャパン」に入っていないB①「ペダル・プッシャー」は必聴の名演だ。このアルバムは音質の面でも編集の面でも「ライヴ・イン・ジャパン」には遠く及ばないが、ベンチャーズ・ファンならこの1曲のためだけにでも買う価値はあると思う。

ペダル・プッシャー

太陽の彼方に / アストロノウツ

2010-03-15 | エレキ・インスト
 エレキ・インスト特集最終回は日本におけるエレキ・ブームの火付け役と言われている「太陽の彼方に」、演奏はもちろんアストロノウツである。時は1964年、太平洋の向こうアメリカはビートルズ上陸で上を下への大騒ぎだったが、日本ではアストロノウツの「太陽の彼方に」が大ヒット、それに追い打ちをかけるように藤本好一がこの曲に “のってけ のってけ のってけ サーフィン、波に 波に 波に 乗れ乗れ~♪” という摩訶不思議な歌詞を付けてカヴァーし、この “のってけ~♪” フレーズが日本中で大流行、ここにベンチャーズの「ウォーク・ドント・ラン」(←邦題が“急がば廻れ” って...???)や「パイプライン」が怒涛のように押し寄せ一気に日本のエレキ・ブームは沸点に達したという。
 当時の音楽雑誌に載ったアストロノウツの広告ページを見てみると、そこには “全世界で爆発的大流行、'64の新リズム...サーフィン!!!” という文字がデカデカと踊っている。いつから “サーフィン” がリズムの名称になったのかは知らないが(笑)、まぁ何もかもが大らかで平和な時代だったということだろう。
 この曲、よくよく聴けば同じフレーズを転調して繰り返しているに過ぎず、起承転結もエンディングに向けての怒涛の盛り上がりもない、非常に単調な構成なのだ。まぁだからこそ先の “のってけ のってけ~♪” という単純な歌詞と結びつき、東京オリンピックで浮かれていた一般大衆の頭の中で脳内ループ現象を起こしたのかもしれない。ということで、今日は「太陽の彼方に」5連発で乗ってけぇ~♪

①Astronauts
 アストロノウツはサーフィンとは全く縁のないコロラド州の、しかもインスト専門というワケでもない、単なるローカル R&R バンドだった。アメリカではほぼ無名に近かったのに、何故か日本だけでこの曲がサーフィン・サウンドとして大ヒット。まぁベンチャーズとは次元も格も大違いだが、素晴らしき一発屋として日本洋楽史に永遠にその名を残すグループだ。
太陽の彼方にMovin' [Mono]/The Astronauts #1963#


②藤本好一
 この人のことはよく知らないが、寺内タケシとブルージーンズのバンド・シンガー(?)だったらしい。歌手そのものよりも、タカオ・カンベ(神戸孝夫...アニマルズの「悲しき願い」の訳詞は傑作!)という人が書いた歌詞、コレがアホらしいけれどめっちゃキャッチーでインパクトは抜群だ。
太陽の彼方・・・藤本好一&寺内タケシとブルー・ジーンズ


③寺内タケシとブルージーンズ
 こちらは歌なしのインスト・ヴァージョン。アストロノウツ・ヴァージョンを凌駕する勢いで、寺内御大も気合いの入り方が違います(≧▽≦) この曲は御大のお気に入り曲らしく何度もレコーディングしているが、私は疾走感溢れるこのヴァージョンが一番好きだ。
太陽の彼方に


④ゴールデン・ハーフ
 私が初めてこの曲を聴いたのは多分このゴールデン・ハーフ・ヴァージョン。まだ小学生だったが「黄色いサクランボ」とか「チョットマッテクダサイ」とか大好きで、ドリフの全員集合も毎週見ていた。エバ好きやったなぁ...(^.^)
ゴールデン・ハーフ 太陽の彼方


⑤シュガー
 このシュガーに関しては、確か “クタバッチマエ~♪” と高音でハモッてたコーラス・グループという記憶しかない。そんなことよりも特別ゲスト(?)で張り切る西城秀樹のドラミングが結構サマになっててカッコイイ... (≧▽≦) まさにヒデキ感激!と言いたくなるお宝映像だ。
太陽の彼方に  シュガー

Spotnicks In Japan

2010-03-14 | エレキ・インスト
 私がエレキ・インスト・バンドでベンチャーズに次いで好きなのがスウェーデンのスプートニクスだ。今でこそこう言い切っているが、アメリカやイギリスのヒット・チャートしか知らなかった私は数年前までは彼らの演奏どころかその名前すら知らず、 “スポットニックスって何?” 状態だった。たまたま G3 の “欧米エレキ対決” 企画で901 さんや plinco さんに聴かせていただいた「霧のカレリア」に昭和歌謡と共通する哀愁を感じ、すっかり気に入ってしまったのがすべての始まりだった。
 日本人の心の琴線を震わすマイナー・メロディー(←サビに挿入されたロシア民謡の「トロイカ」がテーマのメロディーと絶妙に溶け合ってます!)をいかにも北欧らしい澄み切ったクリアーなトーンのギターが奏でるこの曲は、スプートニクスがまだ無名だった1961年にフィーネーズ名義でフィンランド・フィリップスから「AJOMIES」というタイトルでリリースしたものものを、1963年のアルバム「イン・ベルリン」に「KARELIA」と改題して再レコーディング、日本では1965年に大ヒットしたというエレキ・インスト屈指の大名曲だ。私はすぐにベスト盤CDをゲットし、ネットでディスコグラフィーを調べ、当時 SWEDISC というレーベルから出ていたボートラ満載のオリジ盤 CDを探す日々が始まった。“スポットニックス”(笑)から比べれば大きな進歩だ。
 当時は既にレコードや CD はネットで買うようになっており、大阪や神戸まで足をのばすことは滅多になかったのだが、天の啓示か、何となく出かけた大阪CDハンティングで思わぬ大収穫(^o^)丿 梅田のディスクJJ でベンちゃんの廃盤 CD を大量に買い込んだ勢いで、一気にミナミも根こそぎいったれとばかりに立ち寄った日本橋のサウンドパックで私を待っていたのがこの「スプートニクス・イン・ジャパン」CD だった。確かオリジ盤ディスコには載ってなかった気がするが、「イン・ジャパン」ということでベンちゃんのケースと同じように日本盤がオリジに違いないと直感した私は1,400円という安さもあって即決した。
 全14曲中、ベスト盤で既に知っていたのは①「ザ・スプートニクスのテーマ」、②「ジャニー・ギター」、④「ハヴァ・ナギラ」、⑦「霧のカレリア」、⑧「空の終列車」の5曲だが、私が断トツで気に入ったのが⑥「涙の太陽」という、ベスト盤には入っていない1曲だった。作詞作曲は Y.Nakajima - R.Hotrivers... ナカジマって、日本人??? ネットを駆使して色々調べ、作詞の R.Hotrivers が湯川れい子さんだと分かりビックリ(゜o゜) 湯川で Hot river というオチだが、日本では1965年にエミー・ジャクソンでヒットしたこの曲を翌66年2月の来日公演で初披露という手際の良さだ。とにかくこの⑥は疾走するようなスピード感がめちゃくちゃカッコ良く、この後にリリースされる「イン・トーキョー」に収録されたスタジオ録音ヴァージョンを遥かに凌ぐ素晴らしさで、私が「涙の太陽」収集を始めるきっかけになった名演なのだ。因みに大張り切りでドラムを乱打してるのは64年ビートルズのオーストラリア公演で扁桃腺のリンゴの代役を務めたジミー・ニコルだ。
 このライヴ盤では⑥以外にも③「何も云わないで」や⑭「見上げてごらん夜の星を」といった日本の歌が何曲か収録されているが、その中で⑥に次ぐ名演としては⑩「夏の日の想い出」が彼らの北欧トーンにピッタリ合っていてエエ感じだ。と、ここまで書いてきて、「夏の日の想い出」って、以前当ブログの「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」でみながわさんに教えていただいた日野てる子の曲ではないか!今の今まで気がつかなかったが、間違いなく “きれいな月ぃがぁ~♪” で始まるあの曲だ。哀調曲の極北に位置するような鈴木道明メロディーを、ボー・ウィンバーグの哀愁を帯びた切ないギターの音色で聴けるのだからたまらない。それにしてもこんな風に思わぬところで繋がるから音楽ブログは面白い(^.^) 一人でネチネチ聴いてたら日野てる子なんて名前、知らないままスルーしていただろうから...
 ⑤「聖者の行進」、⑨「ヘイ・グッド・ルッキン」、⑪「オーヴァー・アンド・オーヴァー」、⑬「ホワット・アイ・セイ」といった曲はヴォーカル入りの平凡なロックンロールで、スプートニクスならではの持ち味が生かされているとは言い難い。彼らはこの頃から徐々に “怪しげな宇宙服を着てスペース・サウンド(笑)を奏でる北欧のギター・インスト・バンド” というイメージからの脱却を図るようになっていくので、このアルバアムはいわゆる過渡期突入直前のライヴと言え、見方を変えれば “爛熟期” 、花で言うと散り始める間際の最も美しい時期の彼らのサウンドを見事に音盤に封じ込めた傑作ライヴと言えるだろう。ただ、この盤は録音レベルがかなり低いので、私はデジタル・ヴォリュームを使って CD-R に焼き直し、ルディ・ヴァン・ゲルダー録音みたいな迫力満点のサウンドにして楽しんでいる(^o^)丿

涙の太陽


カレリア


夏の日の想い出
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