shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「With The Beatles」アルゼンチン・モノラル盤

2023-09-30 | The Beatles

 先週の土曜日に母親の美容院の送り迎えの合間を縫って久々に B-SELS に行き、短時間ながらも至福の時間を過ごすことができた。その時にお店にあったレコードの中から何枚か、それぞれ少しずつ聴かせていただいたのだが、その中の1枚の音が頭から離れず、1週間経った今日、今度は母親の MRI検査の結果待ちの間に病院を抜け出して前回の続きを聴かせていただこうと再び B-SELS を訪れた。転勤のせいで “仕事帰りにB-SELS” が出来なくなったのは残念だが、おかん行きつけの美容院と病院が B-SELS に近くてラッキーだ。
 そのレコードというのが今日取り上げる「With The Beatles」のアルゼンチン盤で、最近モノラル盤ばかり聴いている私が目ざとく見つけた1枚だ。商品紹介ポップには “レア! アルゼンチン・モノ” “鮮烈!! すばらしい音! オススメです” “盤うすいスレのみ、当時のアルゼンチン盤の中ではかなりの美盤です” “2nd Label、ただ 2ndといっても 1stはほぼ市場に出ないのでオリジナルと言っていいと思います” と書かれていたが、私の目を引いたのは他でもない「鮮烈」というパワー・ワードだった。
 そう言えば2年ほど前にここで同じ「With The Beatles」のベネズエラ盤を購入したが、あれも凄い音がしていたなぁ... などとその凄い音体験を思い出し、同じ南米ということで大いに期待しながらSさんにお願いして聴かせていただいたのだが、何よりもまずその盤質の良さに驚かされた。余程音溝の状態が良いのだろう、とにかくチリパチ音がほとんど無く、NM+と言ってもいいぐらいにクリアーな音でビートルズの若さ溢れるロックンロールを楽しめるのだ。その時は時間の関係でA面の半分ほどしか聴くことが出来ず、この1週間ずーっと気になっていたので、今日また近鉄奈良駅近くまで行くことになって、これ幸いと続きを聴かせてもらいに行ったというワケだ。

 私:おはようございます。今日はこの前少し聴かせていただいた「With The Beatles」のアルゼンチン盤をもう一度聴かせていただけますか?
 Sさん:もちろんです。
 私:先週聴かせていただいた時、盤質が良くってノイズがほとんど無く、めっちゃ気持ち良く聴けたので気になってたんです。
 Sさん:立ち上がりはラウドカットみたいにガーン!ときませんけど、音的にはすごく良いと思います。
 私:(A①「It Won't Be Long」を聴きながら)めっちゃ盤質良いですねー 南米盤でこれはちょっと信じられないレベルですよ。この独自マトの音も好みですし。
 Sさん:結構エエ感じでしょ?
 私:(A③「All My Loving」がかかる...)ホンマに60年代の音そのもの、っていう感じですね。好っきゃわぁ、こういう音。
 Sさん:うん、ホントそうです。
 私:(A⑥「Till There Was You」がかかる...)ポールの声が瑞々しい! 絶妙な潤い感というか、この音は素晴らしいですね。アコギの響き具合いも最高ですよ。
 Sさん:真空管のエエ音ですね。
 私:A⑦「Please Mister Postman」も歪み感が全然無いですね。
 Sさん:(A面が終わり、盤を裏返しながら)ただ、ラウドカット盤を聴き慣れていると、やっぱりこの立ち上がりの部分がねぇ...(と言いながらアンプのヴォリュームを少し上げる...)
 私:いやいや、これはこれで素晴らしいバランスの音やと思いますよ。私が言うと、一体どの口が言うてんねん!と言われそうですが...(笑)
 Sさん:ハッハッハッ(と大笑い)
 私:普段ラウドカット盤ばかり聴いてるので、たまにはこんなのもエエもんですよ。それにこの独自マトの音作りは私のスイートスポット直撃ですし。
 Sさん:確かに音の傾向がラウドカット盤に似てますね。だからヴォリュームを上げて聴くとすごく鮮烈な音が楽しめます。
(ここで私の携帯が鳴り、おかんから診察終わったから早よ迎えに来いという連絡が入る...)
 私:まだB面の途中ですけど、これいただきます!
 Sさん:えっ、エエんですか?
 私:もちろん! B-SELSのレコードには100%の信頼を置いてますんで。残りは帰ってからゆっくり聴きます。
 Sさん:いつもありがとうございます。
 私:いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます。エエ週末になりそうですわ...(^.^)

 家に帰ってこのレコードを聴きながら(→実は今3回目聴いてます...)この文章を書いているのだが、ウチのシステムでもめちゃくちゃ良い音で鳴ってくれて大喜びヽ(^o^)丿  非ラウドカットの「With The Beatles」では少し前にここに書いたパイ・プレス盤とタイマンを張れるくらい気に入っている。Sさん、今回も素晴らしいレコードをどうもありがとうございました。

「Layla」のUK “真正” 1stプレス盤ゲット!

2023-09-24 | Rock & Pops (70's)

 少し前にヤフオクで色々とレコードを見ていた時のこと、アイテム写真下の「この商品も注目されています」の欄にデレク&ザ・ドミノスの「Layla」が3万円ぐらいの値段で出ているのを見つけた。私は「Layla」のUK初回盤を確か£20ぐらいで手に入れた記憶があり、US初回盤も$20弱だったので “レイラってそんなに高かったっけ???” と興味を引かれた。
 “これってヤフオクでよく見かける素人コレクター狙いのボッタクリかな?”とも思ったが、“もしかして何か凄いレア盤なのかも?” という好奇心に駆られて見てみると、タイトルに [稀少] UK初回マト A1/B2/C1/D2 [Peter Maurice 表記] と書いてある。 Peter Maurice? 誰やそれ? ゼップの Peter Grant みたいなモンか? と不思議に思ってネットで調べてみると、“初回マトの中でも最初期プレスの盤は Side-3のTrack 3の楽曲クレジット表記が Peter Maurice になっており、その後すぐに Lark Music に変更された” のだという。ちょうど「With The Beatles」UK 1N盤「Money」の Jobete → Dominion Belindaみたいなものだろう。
 へぇ~、そうなんや...(゜o゜)  自分のUK盤は確か eBayで1st プレスって書いてあるのを買った記憶があったが、念のためにと思って確認すると、そこには無慈悲な Lark Music の文字が...(*_*)  えぇ... 騙された... あるいはセラーが無知だっただけなのかもしれないが、とにかく私がUK 1stプレスと信じて聴いてきた盤は実は2ndプレスだったという厳しい現実に直面させられた。
 まぁ中途半端な知識しかないのにセラーの言葉を鵜呑みにした私が悪いのかもしれないが、そんなことよりもまず「Layla」のUK 1stプレス盤を手に入れることが先決だ。同じ失敗を繰り返さないためにネットで色々調べてみたところ、1stプレスの条件としては、①マトリクスがA1/B2/C1/D2、②センター・レーベル外縁部が凸ではなくフラット、③Side-3のTrack 3の楽曲クレジット表記が Peter Maurice 、というもので、更に④Side-2の楽曲クレジット表記が2行ではなく3行のものが1stプレスの中でも earliest なのだという。
 早速eBayをチェックしてみたところ、UK 1stプレスというタイトルで数枚出品されていたが、そのどれもが Lark Music 表記だった。次に Discogs を見てみたが、1970年にUKでリリースされた「Layla」だけで何と9種類も載っていてビックリ。ここのセラーには商品説明の写真とは違う盤を平気で載せているド素人が少なくないので、いちいちセラーにメールして確認するしかない。私は盤質 VG+以上のブツを出品しているセラーに片っ端からメールして返事を待った。
 結局上記の条件④を満たしている盤は1枚だけでしかも送料込みで4万円以上もしたので即却下。それ以外ではアイスランドのセラーが盤もジャケットもキレイな Peter Maurice表記盤を出していたが、送料が$52とバカ高いのと、メールした直後に$10も値上げするという畜生っぷりにムカついたので即ブロック。結局残った中で盤質が一番良さそうな盤をイギリスのセラーから購入したのだが、ジャケットの縁がセロテープで補修されているということもあってか、たったの£28で買うことが出来た。送料込みでもヤフオクの1/3以下、アイスランド鬼畜野郎の約1/2の値段で買えたのが嬉しい。後は盤質が説明通りのコンディションであることを祈るのみだ。
 イギリスから2週間で到着したパッケージを開封して早速レコードをチェック。ジャケットのセロテープ補修が痛々しいが、肝心なのはレコード盤の方だ。マトリクスもフラット・レーベルも、そしてもちろんPeter Maurice表記もセラーの説明通りで、しかも嬉しいことに盤面も無傷のピッカピカ状態だったので大喜び。そして最後にデッドワックスに刻まれたスタンパー・ナンバーを見てぶったまげた。何と 1/1/1/1,、つまりスタンパーが “オール1” という奇跡的な盤だったのだ。
 Side-2の楽曲クレジットは3行じゃないので上記の条件④の信憑性に関しては大いに疑問符が付くことになるが、そんなことはどうでもいい。私にとっては盤質とスタンパー・コードこそが大正義なのだ。この「Layla」はビートルズで言えば 1G/1G、つまり最も若いスタンパーから作られた盤だということだ。因みにこのレコードはイギリスの老コレクターが終活の一環(!)として出品していたもので、“発売日にロンドンのレコ屋で買った...” とメールでは言っていたが、まさかこんな究極の最初期プレス盤を、しかもNM状態で手に入れることが出来るとは夢にも思わなかった。
 いつものようにウルトラソニック・クリーニングを行った後、ワクワクドキドキしながらレコードに針を落とすと、静寂の中からそれまで聴いたことがないような生々しい「Layla」がスピーカーから飛び出してきた。何じゃこりゃ!!!と思わず ! を3つも付けてしまうような凄い音だ。UKオリジナル盤はUS盤とは違ってラフ・ミックス、つまりお化粧を施していないすっぴんのレイラが楽しめることで人気が高いが、今、目の前で鳴っているのは “これまで聴いてきたレイラは一体何やってん!” と叫びたくなるような異次元のサウンドだ。中でも一番感銘を受けたのはギターの音の尋常ならざる野太さと抜けの良さで、とにかく 2nd プレス盤が裸足で逃げ出すくらいの超絶リアリティーなのだ。この衝撃は「Please Please Me」の 1G/1G盤を聴いた時の感動に近いものがある。
 元はと言えばヤフオクで見かけた盤がきっかけとなってとんでもない大物をゲットしたことになるが、これだからレコード・コレクターはやめられへんなぁ... と我が身の幸運をレコードの神様に感謝している今日この頃だ。

「Help!」メキシコのプロモ盤

2023-09-17 | The Beatles

 私がビートルズの各国盤を集めるのは、独自マトやプレスの違いでUKオリジナル盤とは一味違った音が楽しめるというのが一番の理由だが、ごくたまにその国独自のアートワークで “おぉ、このジャケットめっちゃエエやん!” とジャケ買いするケースがある。有名なところではフランスの「ホース・カヴァー」やデンマークの「エスキモー・カヴァー」、オランダの「シェル・カヴァー」などがあるが、これら以外にも全世界規模でまだまだ存在しているだろう。eBay検索では基本的にページをスルロール・ダウンしながら良さそうなアイテムを探していくので、そういう珍しいジャケットのブツがあるとパッと目に留まるのだ。
 ある時「Help! LP」で検索していてとてもユニークな色遣いの盤を見つけた。白地に茶系色を基調にした、まるで70年代の海賊盤を思い起こさせるようなアートワークが目を引く。何じゃこりゃ?と思ってタイトルを見ると “Mexico Promo Radio Unique cover PS” とある。へぇ~、こんなプロモ盤があったんか... 初めて見たわ... と思いながら商品説明を読むと “Promo Radio Station: The record is official. The cover is promo art.” ということで、どうやら正規盤らしい。更に “Megarare cover Mexico LP promo record, in great conditions, no marks or writings, minimal acoustic noise, very hard to find, unique cover, very nice copy.”(珍カバーのメキシコ・プロモ盤、状態良好でスレ・書き込み無し、ノイズ最小限、入手困難、ユニークなカバーの良盤)と書いてあったのと、$40という手頃なお値段に釣られてウォッチリストに入れることにした。
 メキシコ・キャピトルの「Help!」ということは、A①「Help!」のイントロに007のテーマがくっついているUS盤と同じ内容ということである。これまで何度も書いてきたように私はビートルズのUS盤に対して良い印象を持っていない。アルバムをバラバラに解体して云々とかいう以前の問題として、単純に音そのものが眠たいからである。エコーがドバーッとかけられた盤は論ずるにも値しないが、それ以外のレコードもUK盤の足元にも及ばないヘタレな音ばかり。例外的に音が良い「Magical Mystery Tour」以外はターンテーブルに乗ることは滅多にないし、それより何よりUS盤の半数以上は持ってすらいない。
 「Help!」のUS盤に関して言うと、大昔に$9.99で買ったモノ盤が1枚あるだけで、しかも「I Need You」のイントロにザーッという不快なノイズが入っているのが嫌で隣室のレコード墓場に眠っている。このメキシコ・プロモ盤の盤質が “最小限のノイズ” という説明通りならジャケットと中身の一石二鳥というワケだ。因みにメキシコの通常盤を調べてみたら、ほぼ同じアートワークでビートルズの写真だけがカラーというものだった。
 これはジャケットも珍しいしビッドが集中したらいらんなぁ... と思いながらとりあえず$60でスナイプしたところ、あっけなく$42で落札。USキャピトル系のビートルズってやっぱり世界的に人気無いんやなぁ... と思いながらも珍盤を安く買えて嬉しかった。これで音が良かったら万々歳だが、そっちの方はまぁボーナスみたいなものだ。
 送料が安かったせいか、3週間かかって今日到着したばかり。お目当てのジャケットは問題ナシのグッド・コンディションだったが盤の方は満身創痍で、更に悪いことにB②とB⑤にえげつない深キズがある。“これのどこが no marks やねん!” と思いながら恐る恐る針を落としてみると、無音部では結構なチリパチ・ノイズが入るものの音楽が始まると音圧の高さとモノ針のおかげで見た目ほど酷くはない。少なくともSP盤よりはマシなレベル(笑)だが、やっぱり盤質詐欺は気分が悪い。試しにステレオ針に変えてみるとこれがもう聞くに堪えないくらいの盛大なノイズの嵐でビックリ。特に深キズの箇所なんかヤバすぎて思わず針を上げてしまうほどで、no marks / minimal acoustic noise が聞いて呆れる。まぁUSマザーと言うことで最初から音に期待はしていなかったが、それでもウソはいかんでしょ! それともこのメキシコのセラーは目も耳も不自由なのだろうか?
 気になるマトリクスはと言うと、手持ちのUS盤「Help!」を隣室から引っ張り出してきてデッドワックス部を見比べてみたら、同じキャピトルにもかかわらずメキシコ独自のマトだった。面白そうなので聴き比べてみたところ、US盤の方が明らかにクリアーなサウンドで、しかもメキシコ盤のA①「Help!」は1:50あたりで一瞬音がこもる箇所があって(→メキシコに送られたマスターテープの不良か???)、レッドブルのヘルムート・マルコじゃないが(←F1ファンにしかわからないネタですんません...)メキシコは所詮メキシコなんやなぁと思わされた。
 このように盤質・音質に関してはハズレだったが、先に書いたようにそもそもこのレコードは “目で楽しむ” 珍盤として取ったものなので特に問題はない。今後ターンテーブルに乗ることはあまりないと思うが、時々取り出してジャケットを眺めるには良いアイテムだ。まぁ明日も休みやし、久しぶりにタコスでも作ろうかな...(^.^)

「With The Beatles」デッカ・プレス vs パイ・プレス

2023-09-10 | The Beatles

 この前B-SELSに行った時にマトリクスによる音の違いの話で盛り上がったのだが、そこで話題に上がったのがちょうどその前日に「日記」に書かれて即売り切れたという「With The Beatles」のデッカ・プレスだった。よくよく考えてみれば、「With The Beatles」に関しては “究極のラウドカット” を探し求めてマト1盤を何枚も買うくせに、それ以降のマトはマト4とマト7をそれぞれ1枚ずつ申し訳程度に持っているだけで、レアなパイ・プレスはおろか、割と有名なデッカ・プレスですら持っていないという体たらくだった。
 Sさんにそのことを言うと “いやいや、その方が Shiotchさんらしくていいんじゃないですか?” と笑っておられたが、筋金入りの “ビートルズきちがい” を自認する私としては他社プレスの話になった時に “えーっ、まさかデッカ・プレスも聴いたことないんでっか?” と言われたらぐうの音も出ない。そういえば何年か前にB-SELSで「My Sweet Lord」のプレスによる音の違いを教えてもらい、パイ・プレスの音が気に入って買ったことを思い出した。それに「With The Beatles」の他社プレス盤はラウドカットではないけれど、-7Nだって少しヴォリュームを上げれば捨てたモンじゃない。
 こーなってくると何だか無性にデッカやパイでプレスされた「With The Beatles」の音が気になってくる。EMIプレス盤と比べて “It Won't Be Long” の爆裂具合いはどうなのか... 「Roll Over Beethoven」のイントロはキレッキレなのか... これは是非とも現物を手に入れて実際に自分の耳でその違いを確かめなければならない... と心に決めた私は久々にハイ・テンションで B-SELS を後にした。
 家に帰って早速 eBayをチェックするとラッキーなことに盤質Exのデッカ・プレス盤が£25というお買い得価格で出ているではないか! 自分の中では £1≒155~160円 というイメージだったのだが、その時見たら171円でビックリ(←今は184円でぺんぺん草も生えない...)。こんな酷い円安を放置して知らぬ存ぜぬの日本政府なんぞ消えてなくなれ!と叫びたい気持ちになったが、結局誰も来ずに無風で落札できて(←人気無いのかな?)、送料込みで7,200円で買えたのは不幸中の幸いだった。オークションってホンマに運ですな...
 勢いづいた私は “こーなったらパイ・プレスもいったれ!” と同じeBayで検索してみたところ、あるにはあったのだが、何と£250(約45,000円)と£300(約55,000円)という無慈悲な値付けに開いた口が塞がらないし、Discogsに至ってはパイ・プレスの出品すら見当たらないのだからお話にならない。これは万事休すかな... と諦めかけた時に、CD and LPというヨーロッパの通販サイトのことを思い出した。レイアウトが見にくいのと現物写真が載ってないという致命的な欠陥のために滅多に見ることはないのだが、背に腹は代えられない。
 う~ん、それにしても見にくいなぁ... 最近老眼が進んで細かい文字を見るのが億劫なので、ページ毎の商品表示数を最大の500に設定して “Pye” で検索をかけてみたところ、300枚近く出品されていた「With The Beatles」の中で1件だけヒット。盤質はNMで値段を見ると €100となっている。私はパイ・プレス盤の相場というのがどれくらいなのかよくわからないのだが、少なくとも eBay の1/3の値段である。これってひょっとしてラッキーちゃうの?とコーフンしながらも念には念を入れてセラーにメールでマザー/スタンパーを確認すると(←海外からレコードを買い始めてからすっかり人を信用できなくなってしまった...)1時間もしないうちに返信が来て、A面が “P 2 11/A” でB面が “P 3 12/A” とのこと。これは本物だ!と小躍りした私は即買いを決めた。
 それから10日ほどしてまずデッカ・プレス盤が届いた。私がジャズのアナログ・レコードを買い始めた時、50年代のレコードでよく見られるセンター・レーベルの Deep Groove(深溝)を初期プレスを示す指標の一つと見なしていたこともあって DG のある盤に対する思い入れは非常に強く、「With The Beatles」デッカ・プレスのセンター・レーベルに刻まれた DG を見ただけで良い音がしそうな気がした。
 早速EMIプレス(-7N)と聴き比べてみたところ、デッカ盤の方が優等生的というか、音がキレイで細かい音もしっかりと聞こえる感じがする。何度も切り直すことによってバランスを最適化していった -7Nの音を更に突き詰めたようなサウンドで、一般ピープルにとっては非常に聴きやすい音作りだと思う。ただ、ラウドカットに慣れきった私の耳(←ハッキリ言って異端ですわ...)にはデッカもEMIも大同小異でイマイチ物足りない。ロックンロールにはやはり “度肝を抜くような重低音が轟きわたり、中音域がバーン!と張り出してきて、キレッキレの高音域が躍動する” -1Nのエグい音作りが最高だ。
 それから2日して今度はパイ・プレス盤が到着。EMIだけでは生産が追いつかず、DECCA社に委託してプレスされ、更にそれでも間に合わずにPYE社にまで委託するハメになったという曰く付きのレコードだ。EMIやデッカの盤がフラット・エッジなのに対し、このパイ・プレス盤はナイフ・エッジと呼ばれる形状をしており、スタンパー・コードはどれもA。しかしマザーに関してはちょっとややこしくて、色々調べてみたところ、数字は 3 12と 2 11の2通りなのだがそれと組み合わせるアルファベットが私の P 以外にも PB や QA など何種類かのパターンがあるようでいまいちよくわからない。。
 肝心の音の方だが、ハッキリ言ってめっちゃ私好みの音だ。とにかくシャープで音の輪郭がクッキリハッキリしていて押し出し感が強く、その一方で倍音もキレイに伸びているという、まさに言うことナシの高音質。ラウドカットの長所をちゃんと残しながらも「Till There Was You」のようなバラッドを美しく聴かせるところは只者ではない。もちろんAラスの「Please Mister Postman」も歪み無く聴けて大満足だ。
 3枚を改めて聴き比べてみてその音の印象はまさに三者三様で面白かったが、1枚選ぶとすれば迷うことなくパイ・プレスだ。自分にとっての「With The Beatles」は UKのスタンパー1G、オーストラリア、デンマークの -1Nラウドカット盤がトップ3なのだが、今回聴いたパイ・プレスはそれらに迫る堂々の4番手だし、残りの2枚もラウドカット御三家に次ぐ第2グループの中ではかなり上位に来ると思った。それにしてもこの「With The Beatles」というレコードを私は一体何枚買えば気が済むのだろうか???

「Rubber Soul」トルコ盤

2023-09-03 | The Beatles

 最近はこれまでの “欲しいレコード、特にビートルズ関連盤は金に糸目をつけずに買う” という放蕩生活をやめて大人しくしていたのだが、先日 Discogs から例の “ほしいものリストから1点の新しいアイテムが出品されています” というメールが来て、鋼のような硬い決意が大きく揺らいでしまった。Discogsは見にくいβバージョンになってからご無沙汰していたのだが、数枚の “どうしても手に入れたいレコード” だけは “ほしいものリスト” に入れたままにしてあり、そのうちの1枚が出品されたというのだ。
 そのレコードというのが「Rubber Soul」のトルコ盤で、eBayでも過去15年間で数枚しか出てこないというスーパーウルトラ稀少盤だ。う~ん、これはさすがに見逃せない。売り値が €180のところをダメ元で10%オフの €162でオファーしてみたところ、すんなり了承されてビックリするやら嬉しいやら... 結局約24,000円で喉から手が出るほど欲しかった「Rubber Soul」のトルコ盤をゲットした。
 支払いを済ませてから発送までに2週間もかかったのでかなり不安だったがトルコ・ポスト(PTT)はすこぶる優秀らしく、発送からわずか9日で到着。こんな大物を買うのは久しぶりだったのでパッケージを開ける時はめっちゃドキドキしたが、出てきた盤の状態を目視確認したところ目立つキズが無かったので一安心。ある意味一番曖昧というか主観的な差が生じやすい VG+ という盤質表記だったので気が気ではなかったのだ。私は逸る気持ちを抑えながらいつものように超音波クリーニングをしてからレコードをターンテーブルに乗せた。ビートルズのレコードを買うのは「With The Beatles」のOZ盤(←“ラウドカット最強盤” で大騒ぎしたヤツ)以来3か月ぶりである。コーフンするなという方が無理だ。
 スピーカーから出てきた音はこれまで私が経験してきた中域の分厚いトルコ盤の音とはかなり違う、どちらかというとスッキリしたサウンドで、高域もキレイに伸びている。手に持ったビニール盤の質感も違っていて何か軽い感じで、量ってみたら135gしかなかった。マトは -5とかなり後の方なので1966年以降にプレスされたもののようだ。
 私が持っているUKモノラルの「Rubber Soul」はマト-1ラウドカット盤ばかりで、マト-5はおろかマト-4すら持っていないのでUKプレスと比べようがないが、ラウドカット盤に慣れた耳には “強烈なエネルギー感には欠けるがバランスの取れた聴きやすい音” としか言いようがない。とにかく個々の楽器が突出していないので、BGM的に “ながら聴き” するのにピッタリの音なのだ。これはトルコ云々関係なしにマト-5自体がこういう音なのだろうか。ここはやはりSさんに聴いてもらうしかないな... と考えた私は早速B-SELSにこのレコードを持って行った。最近ご無沙汰気味だったのでめっちゃ楽しみだ。

 私:まいど。お久しぶりです。
 Sさん:おぉ、shiotchさん!
 私:今日は久々に珍しいレコード手に入れたんで持ってきましてん。
 Sさん:「Rubber Soul」ですか... トルコ盤ですやん。
 私:そうですねん。ぜひご感想を聞かせて下さい。
 Sさん:(レコードをかけながら)マト-5ですね。悪くないじゃないですか。
 私:そうそう、そのマト5の音を知らないのでご意見を伺おうと思って。今まで一杯聴いてきやはりましたやろ?
 Sさん:もちろん何枚か売ったことはありますが、マト-5は数が少ないですからねぇ。それにマト-4よりも人気があるんですよ
 私:へぇ、そうなんですか?
 Sさん:マト-4って数が多すぎてありふれてるっていうか、ありがたみがないのかもしれませんね。それにマト-5の音って結構良いんですよ。
 私:なるほどねぇ... 自分はラウドカット盤しか眼中になかったんで全然知りませんでした...(笑)
 Sさん:それと、盤質もあるかもしれませんがB面の方が音が良いですね。
 私:そうなんです。ビートルズのレコードって何故かそのパターンが多いですね。
 Sさん:この「If I Needed Someone」なんてマト-1とマト-4の中間ぐらいの音してますよ。
 私:いやぁ... 勉強になりますわ。ウチの「Rubber Soul」はアホの一つ覚えみたいにラウドカット盤ばっかりですもん。
 Sさん:(大笑いしながら)確かに。
 私:もし仮に僕がマト-4や-5の盤を買ったとしても結局ターンテーブルに乗るのはマト-1になるでしょうし...
 Sさん: そうでしょうね(笑)
 私:「With The Beatles」も同じですよ。一応マト-4Nやマト-7Nも持ってますが、今まで1回か2回ぐらいしか聴いたことないですからね。聴くのはいつもマト-1Nラウドカットのスタンパー1G盤か、この前ここで買ったOZ盤ですわ。
 Sさん:いやいや、shiotchさんらしくていいじゃないですか(笑)
 私:まぁこのトルコ盤も思ってた音とは違いましたが、実際に聴いてみないとわかりませんもんね。頻繁に聴くことはないと思いますが、これはこれでまぁ面白いです。

 ということで、今回はマトが進んだUK盤のことも知ることが出来て中々興味深いお話しだった。久々にビートルズのレコードを買って元気が出てきたが、これまで我慢してきた反動でまためちゃくちゃレコード買いまくりそうな(←リバウンドかよ...笑)自分がちょっと怖い気もする今日この頃だ。