shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Beatles 1962-1966

2008-10-31 | The Beatles
 ビートルズは私の音楽人生の出発点である。中1の時に友人から借りたこの The Beatles 1962-1966、通称「赤盤」を初めて聴いた時の衝撃は言葉に出来ないほど強烈なものだった。それまで音楽とはほとんど無縁の生活を送ってきた私にとって、この「赤盤」との出会いがその後の人生を決定づけたと言っても過言ではない。星の数ほどいるバンドの中でビートルズの一体何が特別だったのか... メロディーが覚えやすいとか、リズムが乗りやすいとか、コーラス・ハーモニーがすごいとか、そういう次元を超越して、彼らの音楽はとにかくエネルギーに満ち溢れていた。理屈を超えて心に迫ってくるものがあった。そういう意味では借りたのが「青盤」でなくてラッキーだったのかもしれない。確かに Let It Be もHey Jude も名曲だとは思うが、それは頭で考えての結果。やっぱり私は初期から中期にかけての「エネルギッシュに突っ走るロックンロールバンド」としてのビートルズにより魅かれる。 She Loves You の「♪ヤァー・ヤァー・ヤァー♪」を聴いて熱い衝動がこみ上げ、All My Loving のリズムギター三連符にのけぞり、A Hard Day's Night のイントロ「ジャーン!」でぶっ飛び、Help!(今でもこの曲が一番好き!)の疾走するようなスピード感にKOされたのだ。
 巷ではビートルズの公式ベスト盤は「1」ということになってるらしいが、とんでもない話だ。あんなもの、英米で1位になった曲を寄せ集めただけで選曲や曲の配置に何のポリシーも工夫も見識もない「エセ・ベスト盤」に過ぎない。そもそも世紀を揺るがす大傑作「ラバー・ソウル」から1曲も入ってないベスト盤なんてちゃんちゃらおかしい。その点この「赤盤」には「ラバー・ソウル」からちゃーんと6曲入ってるし、2枚組LPのA面からD面まで、選ばれるべくして選ばれた珠玉の名曲名演の数々がまさに「ここしかない!」という位置に置かれ、まるでトータル・アルバムのような大きな流れを生み出している。選曲したのはジョージ・ハリスン、見事としか言いようがない。
 今でも昨日のことのようにハッキリと覚えている。「たった一度の再放送!」と銘打って日本公演が放送された時の、羽田から都内へ向かうビートルズの車の映像のバックで、先導するパトカーのサイレン音がフッと途切れて一瞬無音状態になった後、静寂を破るように響き渡った「ミスタァ~ァァ、ムゥンラァァイ!」っていうフレーズを。ビートルズは今も昔も最高のロックンロール・バンドなのである。

The Beatles - Help
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It's All Right With Me / Sara Lazarus

2008-10-30 | Gypsy Swing
 ヴォーカル入りのマヌーシュ・スウィング盤は珍しい。数曲だけヴォーカルが特別参加というのはたまに見かけるが、ヴォーカリスト名義の作品のバックをジプシー・サウンドで、というのは滅多にない。しかもそのギタリストが天下のビレリ・ラグレーン、それもジプシー・プロジェクトでの参加となると、これはエライこっちゃである。サラ・ラザラスは94年のモンク・コンペでも優勝した実力派ヴォーカリストでここでもユニークな歌声を聞かせているが、やはりこの盤はビレリ・ラグレーンを聴くためにあると言っても過言ではないだろう。①のGypsy In My Soul... 何という素晴らしいバッキングだろう!音楽を知り尽くしたその道の達人のみが成し得る肩の力の抜けたプレイ。ちょうど「アニタ・シングズ・ザ・モスト」のオスカーピーターソンみたいな感じである。その盤でアニタも歌っていた②のTaking A Chance On Love、こちらはテンポをやや落としてじっくりと聞かせるが、ここでもビレリの細かいワザがキラリと光る。彼は速弾きだけの凡百ギタリストとは次元が違うのだ。アップテンポの③What A Little Moonlight Can Do では歌心溢れるソロを連発、ウィズストリングスの④で十分休憩を取った後(笑)、⑤のIt’s All Right With Me で再び大爆発(≧▽≦) この曲のテンポ設定はマヌーシュ・スウィングにとって理想的なのかもしれない。いや、もうここまでくるとマヌーシュとかジャズとかは関係なしに、ただ「素晴らしい音楽」でいいのではないか。そう思わせるぐらいこのヴァージョンは優れている。続くスロー・バラッドの⑥Dans Mon Ikeではサラにそっと寄り添うようなプリティなプレイを聞かせ、ミディアムで気持ち良さそうにスウィングする⑦Deed I Do やノリノリの⑧Down With Loveでも絶妙なオブリガートでサラをサポートする。そして①と並ぶこの盤のベスト・トラックとでもいうべき⑩The Way You Look Tonight... この曲でのビレリは持てるテクニックの限りを尽くしてバッキングの妙を聞かせてくれる。そのギターのイントロを聴いただけで、これから素晴らしい音楽が始まる予感が高まる。暖かく厚みのあるギターの音色と抜群のスイング感に身をゆだねる心地良さ... 汲めども尽きぬ泉のように湧き出る柔軟なフレーズの波状攻撃が圧巻だ。疲れていてもこれを聴くと「よっしゃ、頑張るぞ~!」という元気な気持ちにさせてくれる、まるでユンケルみたいな盤である。

Sara Lazarus with Bireli Lagrene's Gipsy Project

Gypsy In My Soul / Connie Evingson

2008-10-29 | Gypsy Swing
 コニー・エヴィンソンはミネソタを中心に活動するジャズ・ヴォーカリスト。声質はジェニー・エヴァンス似で、私の大好きな「クール&ハスキー」系。これまで8枚のCDを出しており、ストレートにジャズを歌ったものが2枚、ミュージカル集1枚、クリスマスソング集1枚、ペギーリー・トリビュートが1枚、ビートルズ・トリビュートが1枚、そしてホットクラブ・バンドをバックにジプシー・スウィングを歌ったものが2枚である。ペギーリーにビートルズにジプシー・スウィング?それって私の3大フェイバリットやん!!! コニーちゃんとはめっちゃ気が合いそうだ(笑) 今日ここでご紹介するのはそんなジプシー・スウィングを歌った1枚「ジプシー・イン・マイ・ソウル」である。因みにこの盤ではアメリカの3つのホットクラブ・バンドがバックを務めており、そっちの方も聴き所といえるかも。まずはナット・キング・コールで有名な①Nature Boy。原曲の持つ哀愁を上手く引き出しながらもテンポを上げてスインギーに歌っている。これはいい!リズムギターが大活躍でのっけからマヌーシュ・ワールド全開だ。タイトル曲の③Gypsy In My Soul、いきなり「マイナー・スウィング」のメロディーから入っていつの間にか「ジプシー・イン・マイ・ソウル」になり、エンディングで再び「マイナー・スウィング」に戻る、という見事なアレンジ。彼女のスキャットがめっちゃ雰囲気あるんよね。クラリネットもエエ味出しとるし、これはたまらんなぁ...(≧▽≦) ジャンゴの④Nuages も幻想的でマヌーシュの香りに溢れてるし、イントロの軽快なリズム・カッティングが心地良い⑤Lover Come Back To Me ではストレート・アヘッドなコンテンポラリー・ジャズと伝統的なマヌーシュ・スウィングの見事な融合が聴ける。⑥Lullaby Of The Leaves ではギターとヴァイブをバックにジャジーな雰囲気を醸し出しており、この曲の名唱№1に断定したいほど素晴らしいヴァージョンだ。⑨Caravan ではエリントンが泣いて喜びそうなぐらい原曲からエキゾチックなムードを引き出すのに成功している。そしてラストはスイングの極致が聴ける⑮'S Wonderful!変幻自在のスキャットを聞かせるコニーちゃん、もうノリノリである。ジャズとかマヌーシュとかを超越して、すべての音楽ファンに推薦できる名盤だ。

ULTRA Pleasure / B'z

2008-10-28 | B'z
 B'z は日本で最高のロック・ユニットである。CDを何千万枚売り上げたとか、ヒットチャート連続1位がどうのとか、そんなしょーもない理由からではない。彼らが凄いのは何よりもまずその楽曲のクオリティの高さ、これに尽きる。「商品」として完璧に近いパッケージをこの20年間出し続けてきたこと自体、奇跡に近い。例えばこの ULTRA Pleasure というベスト盤に収録された30曲、そのすべてがヒット曲としての「顔」を持っている。60'sや80'sのアメリカン・トップ40ポップスが今でも人々に愛され続けているのと同様に、B'zの楽曲には時の試練に耐えて人々の記憶に残る何かがある。時代のあだ花的にヒットしてブームが去ればあっという間に忘れ去られて消えていく凡百のJ-Popsとは次元が違う。格が違う。
 松本さんの作る覚えやすくキャッチーなメロディー、稲葉さんの書く心に響く歌詞、バンドが一体となって作り上げるエッジの効いたソリッドなサウンド、練りに練られたアレンジとサウンド・プロダクション... これらすべてが揃って初めてB'zの音楽にマジックが生まれる。ペイジ&プラントではゼッペリンになれないのと同じ理屈である。
 少し前にNHKでB'zのドキュメンタリー番組をやっていた。特に印象に残ったのは、わずか8小節20秒のギターソロのために納得のいくフレーズがみつかるまで何週間もかけて色々試し続ける松本さんの「職人のこだわり」と、メロディーに合った歌詞を何度も何度も推敲しながら作り上げていく稲葉さんの「プロフェッショナリズム」だった。その場で楽曲が生き物のように変化していく様はまるでビートルズのアンソロジーを聴いているような面白さで、名曲名演誕生の舞台裏を覗き見ているようなスリルを味わえた。
 このベスト盤には彼らがこれまでに蓄積してきた音楽体験のすべてが詰まっている。レッド・ゼッペリン、エアロスミス、AC/DC、モトリー・クルー、ヴァン・ヘイレン、ボン・ジョヴィ、ディープ・パープル... これらの良質なハードロック・エッセンスを凝縮し、彼らのフィルターを通した上で現代の感性で再構築したものがB'zの音楽なのだ。まさにロック界の北斗神拳(笑)、B'zに後退はないのである。

B'z 衝動

The Art Of Lounge Vol. 3 / Janet Seidel

2008-10-27 | Jazz Vocal
オーストラリアの癒し系、ジャネット・サイデルは私の大のお気に入り。ドリス・デイ~マーサ・ティルトン系の清楚で温かみのあるそのナチュラルな歌声に惚れ込んでいる。初めて彼女の歌声を聴いたのは9年前のこと、吉祥寺ディスクユニオンでエサ箱を漁ってた時に彼女の Comes Love がかかった。スモールコンボをバックにどこかノスタルジックなムードを醸し出す自然な語り口がすっごく心地良かった。あまりの素晴らしさにコーフンして店員さんに「今かかってるの、誰ですかっ?」と詰め寄ったのを今でも覚えている。それからというもの、彼女の新作が出れば必ず買うようにしているが、ハズレは1枚もない。ペギーリー集、ドリスデイ集、ブロッサムディアリー集... どんなテーマであろうと彼女の一声で完全にジャネット・ワールドと化してしまう。それだけでも凄いことなのに、実は彼女のCDにはもう一つ聴き所がある。各楽器の音が実に生々しく録られているのだ。私はすべての楽器の中でブラッシュが一番好きなのだが、ここで紹介する The Art Of Lounge Vol. 3 ではそのブラッシュが大活躍しており、もう嬉しくて嬉しくてたまらない(≧▽≦) ①のMoonglow からいきなりデカイほうきで床を掃くようなブラッシュ・サウンドが聴け、そこに彼女の歌声が乗ってくるともう言葉に出来ない快感が全身を襲う。軽快にスイングする②I Could Write A Book、とろけるような歌い方がたまらない③Always、ストリングスが効果的な④Midnight Sun、粋の極み⑥Canadian Sunset、間奏で印象的なソロが連発される⑦Whatever Lola Wants、これしかないというテンポ設定がジャジーなグルーヴ感を生む⑧Lullaby Of Birdland、絶妙なブラッシュ・ワークがたまらない⑨Cow Cow Boogie、サンバのリズムが愉しい⑩Trolley Song、水が滴り落ちるようなしっとり感が絶品の⑪Cry Me A River、そよ風のような軽やかさがエエ感じの⑫Breeze And I、落ち着いた雰囲気の⑬Over The Rainbow、究極のリラクセイションを味わえる⑭Dream... すべてが完璧だ。しかしこのCDで一番の聴き所は何と言っても⑤のMiami Beach Rhumba。心の琴線に触れまくる哀愁のメロディーをエキゾチックに歌うジャネットがたまらない。歌良し曲良し演奏良しの、万人に愛されてしかるべきヴォーカル名盤だと思う。

The Trolley Song
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「涙の太陽」特集

2008-10-26 | Cover Songs
「涙の太陽」... この曲を初めて知ったのはスプートニクスの In Japan を聴いた時のことだった。アルバムの中でもダントツに素晴らしい曲だったのでクレジットを見ると Y.Nakajima - R.Hotrivers とある。えっ、この曲は日本人が作ったんか?調べてみると作曲が中島安敏さんで作詞の R.Hotrivers とは何とあの湯川れい子さんだったのだ。湯川で Hot river ですか...(>_<) それから「涙の太陽」集めの日々が始まった。その成果というか、この曲の私的 TOP 3 ヴァージョン(順不同)をご紹介:
①エミージャクソンとスマッシュメン「涙の太陽」
 エミージャクソンはイギリス系日本人(本名は深津エミ!)で、スマッシュメンはブルーコメッツの変名。洋モノに憧れてた当時の日本人の心理を突いて「外国の歌」としてプロモし大ヒットしたという。流行のテケテケ・サウンドを上手く使ったジャパニーズ・プップスの傑作で、「下手くそなアストロノウツ(笑)」みたいなギターがエエ味出しとるなぁ...
②スプートニクス「Spotnicks In Japan」
 スタジオ盤の「イン・トーキョー」でも演ってるけど、やっぱりこのライブ・ヴァージョンの方が好き。疾走するようなスピード感がたまりまへん。大張り切りでドラムを乱打してるジミー・ニコルは64年ビートルズのオーストラリア公演でリンゴの代役を務めたことで有名。
③サンディー&ザ・サンセッツ「ORIENTATION」
  ケイト・ブッシュっぽいミステリアスなサンディーのヴォーカル、こわれた感じを上手く出してるヘタウマ・ギター、超快感横揺れリズムを叩き出すばらけたドラムと、実にカッコ良いアジアン・ニューウェイヴ・ロック!!! それにしても彼女の声は存在感あるなぁ...
 他にも 寺内タケシとブルージーンズ、安西マリア、エド山口と東京ベンチャーズ、渚よう子、愛内里奈、Mi-Ke、田中美奈子、メロン記念日、Happie、と色んなヴァージョンがあるが、とにかくこの曲、時代を超えてこれほどカヴァーされ続けてるってことは日本人の心に訴えかけてくる何かがあるんだろう。カヴァー・ソング・ハンター冥利に尽きる名曲だ。

涙の太陽・・・エミー・ジャクソン

Another Smash / The Ventures

2008-10-25 | エレキ・インスト
 ベンチャーズは「懐メロ・バンド」なんかじゃない。れっきとした「本物のロックンロール・バンド」である。今でこそハッキリとこう断言できるが、そのことに気付いたのはほんの3年前。私、901さん、plincoさんというジャズ好き3人衆が「木の葉の子守唄」の名演を持ち寄ってウチの家で聴き比べ会をやった時のこと、ハードバップ・キングの異名を取るplincoさんが選んだのはしかし、意外にもベンチャーズだった。「え?ベンチャーズ?」... 当時の私にとってベンチャーズは「ダイアモンド・ヘッド」「ウォーク・ドント・ラン」「10番街の殺人」「パイプライン」「ワイプアウト」の5曲で十分の懐メロ・バンドにすぎなかった。差し出されたLPに針を下ろすといきなりメル・テイラーのドラム・フィルが爆裂!シンプルかつパワフルなドラムの連打が素晴らしいグルーヴを生み出し、トレモロを多用したボブ・ボーグルのギターもめっちゃスリリング!この瞬間に私のベンチャーズに対する偏見は木っ端微塵に打ち砕かれた。何と言うカッコ良さ!これこそまさにロックンロールの原点である。それから約半年間、私は熱に浮かされたようにeBayでベンチャーズの60年代オリジナル盤を買い漁り、徹底的に聴き込んだ。いやぁ~、まいった。今まで知らなかった名曲名演のオンパレード、ゼッペリンやELPといった70年代初頭のブリティッシュ・ロック・バンドの元ネタの宝庫ではないか!ベンチャーズに対して目を開かせてくださった plinco さんには足を向けて寝られない。そんなベンチャーズ再認識のきっかけとなったこのLP、まずはジャケットに注目である。何これ?Another Smash で「強打をもう一発」って... そのまんまやん!それもバイオリンで殴るか、ふつう...(>_<) そのせいか、2ndプレスからは大の字に手足を広げた人間のシルエットのジャケに差し替えられてるけどね。中身の方も「木の葉の子守唄」「ブルドッグ」「ライダーズ・イン・ザ・スカイ」といった傑作が目白押しだが、その中でも個人的に愛聴してるのがB-5のGinchy。元々「木の葉」のB面として発売されたもので、テンポをちょっと下げたら「二人の銀座」になりそうな(ならんならん!)物悲しいメロディーをフェンダー・ギターが奏でる隠れ名曲。この盤をお持ちの方は一度そういう耳で聴いてみて下さい。

The Ventures - Lullaby of the Leaves

Gypsy Vagabonz

2008-10-24 | Gypsy Swing
 ジプシー・スウィング界のニューウェイヴ、Gypsy Vagabonz は「女性ヴォーカル+ギター2本+ベース」の男女混成ジプシージャズ・ユニット。vagabond とは英語で「放浪者」という意味で、「ヴァガボンズ」と発音する。決して「バカボン」ではない。「ネオ・スウィング系乙女ジプシージャズ」というのがキャッチフレーズらしい。さっそく試聴サイトを見つけた。そこに5曲アップされており、聴いてみてめっちゃ気に入ったので即購入。全7曲(①は曲というより②のイントロっぽい作りなので実質6曲)わずか19分17秒のミニアルバムだが、いきなり②BOOM BOO でガツーン!とやられる。ジプシー・スウィングをロカビリー風味で料理し、J-Popsをふりかけて一丁あがり、みたいな愉しい曲。何でもアリの無国籍サウンドといった感じだが、これでいいのだ。で、それに続くのが③のThe Gift、これには完全にKOされた。先日のカフェ・マヌーシュのライブでも大喝采を浴びていた人気曲で、この曲の持つ哀愁とジプシーギターのサウンドが絶妙なマッチングを見せており、涙ちょちょぎれる素晴らしさ。もう1曲のスタンダード⑤I LOVE PARIS も完全にマヌーシュ曲と化し、原曲よりもずっとテンポを上げることによって独特なグルーヴ感を生み出すことに成功している。しかし一体誰がこの曲をジプシー・スウィングで演奏しようなどと思いつくものか?ホンマにええセンスしてるよなぁ。それはそうと試聴サイトにあった Love Me Or Leave Me と Just One Of Those Things が何故このCDに入ってないんやろ?特に1分ジャストでフェイドアウトしてしまう Love Me... はぜひフル・ヴァージョンでCD化してほしい。Just One Of... の方はライブ音源で、コレが又めちゃめちゃカッコエエんよね。ライブといえば YouTube にアップされてる The Gift も凄いノリで、ギター2本の「ジャガジャガジャガ」とかきむしるような迫力満点のプレイに圧倒されること間違いなし。理屈じゃなくてハートでプレイするVagabonzの新感覚ジプシー・スウィング... 荒削りなところもあるが、これでいいのだ!

The Gift / Gypsy Vagabonz

Douce Ambiance / キヨシ小林

2008-10-23 | Gypsy Swing
NHK番組の「ウクレレおじさん」として有名なキヨシ小林さんは、日本人で初めてフランスのジャンゴ・フェスティバルに参加した、日本のマヌーシュ・ギタリストの草分け的存在である。ウクレレ・アロハマンとマヌーシュ・ギタリストの2足のわらじを履きこなす凄い人なのだ。彼の1stジプシーギター・アルバムDjango Swing は、アップテンポな演奏が新鮮なMy One And Only Love や女性ヴォーカル・フィーチャーのShanghai、哀愁舞い散るAnniversary Song(ドナウ川のさざ波)等、マヌーシュ・スウィングに留まらない彼の多様な音楽性が集約されたような素晴らしい内容だったが、リズムギターが引っ込んで聞こえるおとなしめの録音なのが惜しかった。それに対して2nd にあたるこの Douce Ambiance では葛巻善郎さんという超こだわりのレコーディング・マスタリング・エンジニアがリズムギターをデカく音録りした(エヴァンス・トリオのヴァンガード・ライヴにおけるスコット・ラファロみたいな録音バランス!)せいもあってか1曲目からスイング感が全開で、ザクザク・リズムが快感を呼ぶ。やっぱり音楽のわかった録音エンジニアってすご~く大事なんやね。ザクザク効果が特に顕著なのがジャズ・スタンダードの⑦How High The Moon と⑪Night And Day で、息子の小林なおさんが刻むギターのリズムが大きなうねりを作り出し、音楽を前へ前へと推し進めていく大きな推進力になっている。親子でスイング、ってめっちゃエエねぇ。そして待ってましたのチャボロ・シュミット特別参加!③のTchavolo Swing は自分の持ち歌ということもあってかプリプリバリバリと気持ち良さそうに弾きまくっている。それにしても一音弾いただけでその場の空気を変えてしまうチャボロの圧倒的存在感は凄いの一言。触発されたキヨシさんもノリノリで、軽快なテンポでホットなソロが続く至福の3分57秒である。①④⑨といったシャンソン・ミュゼット系の曲にはアコーディオンも参加しており、パリのエスプリが横溢する粋なアルバムになっている。更に②Douce Ambiance(甘い雰囲気)と⑬Songe d’Automne(秋の夢)という自分だけの「隠れ名曲」を教わったアルバムとしても忘れられない、いいことだらけの私的マヌーシュ愛聴盤なのだ。

Gypsy Swing Jazz / Swing Amor

2008-10-22 | Gypsy Swing
 熊本を拠点に活動する若手4人組マヌーシュ・スウィング・バンド Swing Amor のデビュー盤。まず注目すべきは彼らがチャボロ・シュミットの代表曲である⑪Mire Pralを取り上げているところ。聴いてみるとやはりというべきか、いきなりチャボロ・ライクなリズムギターが爆裂!弦が切れそうなぐらいザクザク刻んでくれる。こりゃー最高だ!映画「僕のスウィング」の冒頭で強烈なインパクトを与えたチャボロ・ヴァージョンが完璧すぎるせいか、どのバンドも手を出しかねているようでこの曲のカヴァーはとってもレアなのだが、Swing Amor は大胆にも挑戦し、チャボロの名演に迫る見事な演奏を聞かせてくれる。特に「ジャララララララッ!!!」と弦を擦るところなんかもう最高(^o^)丿そのチャボロも取り上げていたガーシュウィンの①Lady Be Good、ジャンゴの②Minor Swing、ビレリの⑤Made In France、マヌーシュ・スタンダードの王様⑥Dark Eyesと名曲名演のオンパレードで、バリバリのマヌーシュ・スウィングが展開する。④のSwing Easy は、ずばり「Swing Amor 版 Tchavolo Swing」といった感じのスインギーなオリジナル曲で、彼らのチャボロへの傾倒ぶりがわかろうというもの。ハイテクニックなプレイを繰り広げながらも決して技術至上主義を前面に押し出さず、正統的なマヌーシュ・スウィングという土壌を愛し続ける実にシンプルな音楽をポンと提示したところにSwing Amor の魅力がある。「型」にこだわるマヌーシュ・バンドが多い中、自分たちのルーツを的確に表現した彼らの音楽がかえって新鮮に映るのだ。特に上記の⑪でマヌーシュ・スウィングの俗に言う「泥臭い」フィーリングが圧倒的な凄さで流れ出した瞬間、思わず鼓動が激しくなった。ここまでマヌーシュ・スウィングが好きなのか、といった徹底的な自我意識が描写されていて聴いてて胸が熱くなる。彼らの音楽はその背景、土壌、そして何より信じる音楽への敬意の重要性というものを教えてくれる。まるでベテラン・バンドの作品を聴き終えたような充実感と深い満足感。マヌーシュの真髄、躍動するリズム、どこを切っても充実の手ごたえが飛び出してくる。チャボロ・シュミットやモレノといったいわゆる「ザクザク・マヌーシュ系」のギターが大好きな人にはこたえられないアルバムだ。

Swing Amor "Minor Swing"

F1中国GP

2008-10-21 | その他
 低レベルとはいえチャンピオン争いも佳境を迎えた中国GPだが、レースそのものは手に汗握るバトルもオーバーテイクもほとんどど見られず、実に淡々と進んでハミルトンがポール・トゥ・ウィンで圧勝。ベルギーみたいに急に雨が降ってくるとか、カナダやシンガポールみたいにピットで何か信じられへんような大事件が起こるとか、富士みたいに誰かがアホな突っ込みをするとか、とにかく余程のことがない限り予選順位のまま退屈なパレード・ラップに終始してしまうという現代F1を象徴するようなしょーもないレース。唯一の見所がフェラーリのチームオーダー発令による人間模様の綾、ってゆーのがねぇ... レース後のトップ3インタビューでチームオーダーについてしつこく質問され苦笑いするキミの表情が妙に印象的やった。それにしてもキミ、これ見よがしにストレートで30kmもスピードダウンせんでもエエやん(笑) よっぽど譲るんが嫌やったんやろなぁ... まぁ表向きは「チームのため」とか言ってるけど、「チームメイト(で自分より格下で年俸も1/3以下)のマッサがチャンピオン取ってしもうたら、来年チーム内での自分の立場がのぉなってしまうし... ハミルトンは大嫌いやけど、どうせ自分がなれへんのやったらチャンプはもうハミルトンでエエわ。」とか考えてたりして。で、2週間後に行われる最終戦のブラジルGP、もうほとんど決まったも同然のチャンピオン争いやけど、ひょっとしてハミルトンのブリヂストンタイヤが悲鳴を上げてバーストするかもしれへんし、メルセデスエンジンがあぽーんするかもしれへんし、突然雨が降ってきて... それは跳ね馬の方がもっとヤバイか(笑)... まぁとにかく何が起こるかわからんから、そんなハプニングを密かに期待しつつ(←不純!)次の3連休は夜更かしするとしよう。

Chiemi Sings / 江利チエミ

2008-10-20 | 昭和歌謡
 少し前までは江利チエミといっても「昔テネシーワルツをヒットさせた歌手で、高倉健の元嫁さん」、という程度の認識しかなかった。ある時HMVのサイトでたまたまこの「チエミ・シングス」というCDを聴いてブッ飛んだ。何なん、この強烈なスイング感は!①のCrazy Rhythm 、いきなりブラッシュの乱れ打ちで始まりチエミのスキャットが炸裂する。お師匠さんのカール・ジョーンズとのデュエット(もちろん英語)ながら一歩も引かない、っちゅーかむしろ彼女の方がリードしながらグイグイと引っ張っていく。バックは白木秀雄クインテット... バリバリのジャズである。②のHow High The Moon も凄い。声も歌い方もまるで40年代半ばのジューン・クリスティーそっくり。途中のスキャット部分では、とても日本人とは思えないグルーヴィーなノリに圧倒される。1953年の録音... ってベツレヘムでクリス・コナーが、ヴァーヴでアニタ・オデイが傑作を連発する少し前に日本にこんなジャジーな女性ヴォーカル盤が存在したなんてまさに驚きだ。⑬のThe Naughty Lady Of Shady Lane では英詞と日本語詞を織り交ぜながら歌詞が物語風に進む(「ウスクダラ」でも同じ手法が取られた)のが面白いし、ラストのセリフ部分もめちゃくちゃ愉しい。ここには今の音楽が忘れてしまった「親しみやすさ」や「分かりやすさ」が満ち溢れている。⑱のCarioca、彼女の代表曲のひとつであるこの曲、ここに入ってるのは東京キューバンボーイズをバックに歌ったステレオ・ヴァージョン。確かに彼女の正確無比なスキャットは絶品なんやけど、一体どこで録音したのか残響音がキツすぎるのが残念。やっぱり63年にカウントベイシー・オーケストラの日本公演で競演した際のライヴ・ヴァージョンが最強でしょ。スタジオ・ヴァージョンよりもさらに速いテンポで飛ばすチエミとベイシー・オーケストラのスピード感が実にスリリングなこのヴァージョン、YouTubeにもアップされとったので興味のある方はどうぞ。⑲のI Get A Kick Out Of You でもシャープス&フラッツをバックにスイングしまくり、とってもカッコイイジャズに仕上がっている。やっぱり音楽は聴いてみないと分からない。「素晴らしいジャズ・ヴォーカリストとしての江利チエミ」と出会えてホントにラッキーだ。

キャリオカ Carioca

Stairways To Heaven / V.A.

2008-10-19 | Led Zeppelin
 私はカヴァー・ヴァージョンが大好きで、面白そうなカヴァーを集めるのがライフワークのひとつになっている。特にビートルズとレッド・ゼッペリンという2大バンドのカヴァーは見境なく買ってしまう習性がある。ある時、動物の鳴き声だけでビートルズナンバーをカヴァー(笑)した Beatle Barkers というレコードをネットで検索していて偶然 WFMU's BEWARE of the BLOG というとんでもないサイトを見つけた。何とゼッペリンの代表曲「天国への階段」のカヴァーを101ヴァージョンも集めてアップロードし、MP3で聴けるようになっているのだ。さすがの私もこれにはビックリした。いくら有名曲といってもジャズのスタンダードナンバーじゃあるまいし、まさか101ヴァージョンとは... 何たる執念!その101曲中22曲(約1/5!)を収録したのがこの Stairways To Heaven というCDなのだ。なんでも The Money Or The Gun というオーストラリアのトークショー番組の最後に毎回ゲストが「天国への階段」を自分流のスタイルでカヴァーするというコーナーがあって、その中から選びぬいた22組らしい。
 無機質なビートをバックに歌うマライアキャリーみたいな①、マンハッタントランスファーそっくりのコーラスがジャジーな③、大笑い必至の横山ホットブラザーズ風⑤、リッキーリージョーンズ風のアンニュイな⑧、ルーシーインザスカイウィズメリーホプキン(爆)な⑨、なりきりエルヴィスが笑える⑩、メタル・クリムゾンをバックに歌うクリッシー・ハインドみたいな⑫、カントリーウエスタンちっくな⑮、ファルコ風「ロック・ミー・ゼッペリン(笑)」なヒップホップの⑯、バングルズ風ガールズ・ロックが愉しい⑳など、知ってる音楽の幅が広ければ広いほど楽しめるしかけになっている。
 そんな中で一番気に入ったのが⑭の The Beatnix。「ワン、トゥー、スリー、フォー」の掛け声で始まり、「抱きしめたい」にそっくりなメロディー(もちろん手拍子入り)に「天国への階段」の歌詞が乗せられ(これが又ピッタリ合ってて笑える)、最後は「ツイストアンドシャウト」っぽく盛り上がって終わる。ビートルズのファンもゼッペリンのファンも、ぜひ一度聴いてみて、大笑いして下さいな。
Stairway To Heaven - The Beatnix

Physical Graffiti / Led Zeppelin

2008-10-18 | Led Zeppelin
 レッド・ゼッペリンの「Ⅰ」はバリバリのハードロック・アルバムで、69年当時の音楽シーンを考えればまさに画期的なサウンドだった。ダイアナロス&スプリームズがアフロヘアーで “Love Child~♪” なんて歌ってた時代に、いきなりの「コミュニケイション・ブレイクダウン」である。初めて耳にした人達は軽く3メートルはブッ飛んだに違いない。数ヶ月後に発表された「Ⅱ」も同じイケイケ路線の作品で、1st 同様強烈なエネルギーを発散する八方破れのスタイルだった。しかし彼らが “額面どおりのハードロック” を演奏したのはこのアルバムまでで、これ以降はハードロックを越えた “ゼッペリン・ミュージック” としか言いようのないワン・アンド・オンリーなスタイルを築き上げていく。
 71年発表の「Ⅲ」はそれまでのイケイケ路線とは大きく異なるアコースティックギター主体のサウンドで、ギンギンのハードロックを期待していたファンから総スカンを食ったと言われるアルバムだったが(←後追いの形で聴いた私も最初は???だった...)、今になって考えてみると後の彼らのスタイルに大きな影響を与えている。つまり、ジミーペイジのギター奏法の、フレーズ中心からリフ中心への変化である。「Ⅳ」で彼らは再びハードな音に戻るのだが、ペイジのギターは「Ⅰ」や「Ⅱ」のスタイルには戻らず、「Ⅲ」のスタイルを今度はエレキギターによって展開していくようになる。ひとつの同じリフを執拗に繰り返すことによってバンド全体の音が混沌とした大きな塊となり、聴く者の眼前に屹立するのだ。5thアルバムの「聖なる館」ではまだ様々な試行錯誤が見られたが、そういった紆余曲折を経た後で、まるでスッコーンと突き抜けたかのようにゼップのスタイルがほぼ完成したように思えるのが この6thアルバム「フィジカル・グラフィティ」である。
 私はビートルズの場合と同じくゼップのアルバムも悪戦苦闘しながらすべてUKオリジナル盤で手に入れてきたのだが、このアルバムに関しては最初何も分からずにレイター・プレスの再発盤を買ってしまい(←スワンソング・レーベルの見分け方ってどこにも載ってなかったもので...)、届いたアルバムに針を落としてみて“何か音が平板で迫力がイマイチやなぁ...” と思って eBay の過去のデータを詳しく調べ直した結果、自分の間違いに気付いた次第。見分け方のポイントは、レーベル面内周のやや右上部分にワーナー・コミュニケーションズの “Wロゴ” があるのが再発盤で、“Wロゴ” が無いのが正真正銘の1stプレス。再発盤のヘタレな音にどうしても満足できなかった私は結局もう一度eBayでこのアルバムを取り直したのだが、大袈裟ではなく音の鮮度・密度・エネルギー感すべてにおいて月とスッポンほどの違いがあった。落札価格は再発盤が£16で1stが£24だったが(←当時のレートで2,220円と3,340円...)、まぁこの程度の授業料ですんで良かったと思っている。
 このアルバムは2枚組の大作で、特にディスク1のこれでもかとばかりに聴き手を圧倒するソリッドなリフのアメアラレ攻撃は快感の一言に尽きる。シンプルかつダイナミックなサウンドに一発KOされた①「カスタード・パイ」、メロディアスなブルース・ロックがカッコイイ②「ザ・ローヴァー」、大きなうねりの中に立ち込める凄まじいまでの存在感に圧倒され11分という長さを全く感じさせない珠玉の名演③「イン・マイ・タイム・オブ・ダイング」、明るく親しみやすいメロディーとノリノリの演奏がゴキゲンな④「ハウズィズ・オブ・ザ・ホリー」、スティーヴィー・ワンダーの「迷信」を彷彿とさせるファンキーさが斬新な⑤「トランプルド・アンダー・フット」、砂漠をゆっくり旅しているかのような錯覚に陥るエスニックなアレンジとプリミティヴなパワーに満ち溢れたボンゾの骨太ドラムが印象的な超大作⑥「カシミール」... そのすべてが圧巻だ。
 ディスク2はもう “何でもアリ” の世界で、ハードロックというよりはむしろ世界中の様々な音楽の要素を貪欲に取り入れてゼッペリン・ミュージックの可能性の拡大に取り組んだ民俗ロックという感じ。そんな中で特に気に入っているのがアグレッシヴなリフがスリリングな⑥「ワントン・ソング」、軽快なブギウギ⑦「ブギー・ウィズ・ステュ」、後期ゼップを象徴するような骨太なサウンドがたまらない⑨「シック・アゲイン」で、そのどれもが№1ロックバンドとしての風格と余裕のようなものを強烈に感じさせるナンバーだ。
 レッド・ゼッペリンと有象無象のロックバンドとの一番の違いはその唯一無比なグルーヴにあり、それが最も顕著な形でレコード盤に刻まれているのがこの「フィジカル・グラフィティ」である。特に完璧な流れを誇るディスク1は非の打ち所のない完成度で、ゼッペリン・ミュージックの金字塔と呼べる素晴らしい1枚だと思う。彼らの全作品中で最もターンテーブルに乗った回数が多いのもこのアルバムだ。
Led Zeppelin - Custard Pie

Led Zeppelin - In My Time of Dying -1 - 1975 Earl's Court.avi

Led Zeppelin - Kashmir (Live Video)

Led Zeppelin - Sick Again

DECARAJUE / Cafe Manouche

2008-10-17 | Gypsy Swing
 先日のCafe Manoucheライブ終了直後に川瀬さんから最新作のこのCDを直接購入。一般発売は10/19とのことなので、1週間早く聴けるのが妙に嬉しい。この「ちょっとでも早く新作を聴きたい感」ってめっちゃ久しぶりやなぁ(≧▽≦)  リアルタイムで活躍してるアーティストでは Cafe Manouche と Janet Seidel と B'zぐらいか(←好みが無茶苦茶やん!) 何よりもまず目を引くのがカラフルなジャケット。ピンク/イエロー/ブルーをあしらったタイトル文字、上下縁、そして中村さんのセーターの色使いが実に新鮮である。早速1曲目から聴いていく... タイトル曲の①Decarajue は中村さんのオリジナルで、フランス語で「ズレてる」って意味らしい。派手さはないものの、妙に心に引っ掛かる曲とでもいえばいいのか、聴き終えた後も何故か頭の中で鳴り続けるタイプの曲だ。そうさせているのは中村さんの輪唱的曲想と川瀬さんの絶妙なリズム・カッティング。ホンマに匠の技ですな。一通り聴き終えた感想としては... 予想してたのと何かちょっと違う。前作にあったあの緊張感と性急とでもいうべき疾走感はここにはない。「究極のジプシー・スウィング」といえる前作に対して「さらに深化し続けるジプシー・スウィング」といえるくらいアレンジが練られている。それが一番顕著に現れているのが⑩のMinor Swingだ。マヌーシュ・スウィング界で最もカヴァーされてきたであろうこの大名曲は、だからこそというべきか、どうしてもアレンジが似通ってくるものだが、Cafe Manouche のヴァージョンは一味も二味も違う。のっけから全開で斬新なソロを展開する山本さん、1分54秒からのわずか30秒の間に「言いたいことをすべて言い切ったような」ソロを聞かせる中村さん、そのバックで顎が落ちそうなくらい気持ちの良いリズムを刻み続ける川瀬さん... こんな Minor Swing 聴いたことない! これこそが Cafe Manouche の新境地であり、ジプシー・スウィングの未来形なんだと思う。CDの帯に「ジプシースウィングのこれからの扉を開けるアルバム」と書いてあったが、まさに看板に偽りなしの名盤だ。
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